2019/10/06 05:39

第3作が公開予定の映画Kingsman(キングスマン)は英国スタイル好きの男性必見の映画だ。1作目の暗号”Oxfords, not brogues”(和訳はウイングチップじゃなくてオックスフォード…)は当時靴好きの間で話題になったがカジュアル化全盛の今、オックスフォード=ストレートチップよりフルブローグの方が気分…“Brogues, not oxfords“だよな〜…と思ったものだ。
そこで今回は紳士靴の中で最もデコラティブなフルブローグについて改めて考えてみようと思う。
❶正統派フルブローグ

❷イミテーションブローグ

W部分の革の重なりを排して一枚革にウイングのライン(穴飾り付のパーフォレーション)を配しただけのイミテーションブローグ。革が一重になると履き心地もガラリと変わる。ただしイミテーションだと革の重なる部分の端に見られるギザギザ(ギンピング)までは再現できないのでどうしてものっぺりとした印象が残る。
❸コンビネーションブローグ

フルブローグはセミブローグと並んでコンビ靴をオーダーしやすいデザイン…既成靴でもスエードやスコッチグレインと表革のコンビを見かけるが、いざ自分で好みの素材や色の組み合わせを決めるのは難しい。こちらはジャーミンStの名店フォスター&サンの担当職人のディレクションによる1足。トーンの近い茶革で仕上げた傑作だ。
❹外羽根のフルブローグ

こちらは外羽根のフルブローグ…このデザインをウイングチップと呼ぶサイトもあるようで、本来フルブローグとは内羽根のみに使われる用語かもしれない。古い英国のサンプルシューズを基にオーダーしたもの。外羽根ながらベヴェルドウェストというスマートな仕上がりが特徴…
❺スタグスエードのフルブローグ

毛足の長いスタグスエードはスエードにあらず(牡鹿版バックスキンと同じ鹿の起毛素材)。その軽さと柔らかさは他の革素材と全然違う。このスエードでフルブローグを作るならイミテーション以外の選択肢はないだろう。こちらはジョージクレバリー作。正に手袋のような履き心地を味わせてくれる至高の一足だ。
❻スペクテイターブローグ

正統派のフルブローグを茶と白で仕上げた1足。レースステイ両脇のスワンネックがお洒落なジョージクレバリー製。スペクテイターやコレスポンデントシューズと呼ばれるこのスタイル、白い部分はホワイトバックスがお約束らしく、白カーフを使った既成靴だと確かに光り過ぎて目立ってしまう。
❼番外編スコティッシュブローグ

最もデコラティブなはずのフルブローグのさらに上を行く靴があった。それが上のスコティッシュブローグだ。レースステイ部分がノコギリの歯のようになっている(ギリースタイルの特徴)のに加え、つま先と両サイドにアザミの花模様の穴飾りが入る派手さ…なのにくどく感じないのだから紳士靴の奥は深い。こちらはクロケット&ジョーンズのMTO。色の差が出やすいウイスキーコードバンをムラなく仕上げる実力が光る。
ところでフルブローグ好きな靴マニアは大抵セミブローグにも触手が伸びるはず…ご多分に漏れず自分もフルブローグ同様セミブローグが大好物だ。ひょっとして一番多いかもしれない。近いうちに手持ちのセミブローグを紹介しようと思う。
by Jun