コートを纏う | Room Style Store

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2020/02/16 08:50

冬の着こなしは足し算、色の重なりや素材の重なりが装いに深みを与えてくれる。中でも着こなしの一番上に来るオーバーコートは面積が多いだけに素材やデザイン、色に拘るといつのまにか何着もクローゼットの中で増殖する要注意アイテムだ。


しかも丈の長さはジャケットの2倍近く、厚みもある。クローゼットのバーを高くしたり段違いで2本に増やしたり…あれこれ工夫して収納しているが、それでも心ときめくコートに出会うとつい買い足してしまう。


そこで今回はかくも服好きを惑わすオーバーコートの魅力やコーディネートなど…思いつくまま書き記してみようと思う。


(1) キャメルヘアのポロコート

冬も半ばを過ぎた1月の終わりに米国から到着、親戚を経由して手に入れたポロコートが今回のトップバッターだ。30年越しの念願かなってようやく手にしたラルフローレンのアイコン的存在。今季はラインナップなしだったので諦めかけていたら、1月に突如本国のオンラインストアに登場。しかもまさかのセール価格とくれば…買わない手はない。月遅れのクリスマスプレゼントのような、幸せな瞬間だった。


肝心のコーデの方だが、ポロコートはその名のとおりポロ競技の合間に着るベンチコート。スーツの上じゃなくてあくまでカジュアルに合わせたい。ブロックパターンのラルフローレンらしさ全開ラグビージャージにリゾルトのデニム712、足元はLL.Beanのモカシン(アメリカ製)でカジュアルに仕上げ、最後にポロコートをラフに羽織って完成。


(2)ポロコートの生地感

このところ、ラルフローレンのポロコートはイタリア製、スロバキア製と移り変わっていたが、今回は英国製の生地を使ってアメリカで縫製したとのこと。確かに上襟裏にはメイドインUSAのタグが…そして嬉し懐かしブルーラベルの旧タグも付いている。工場の出荷時期が大幅に遅れ、販売時期には既にウインターセールの盛りを過ぎた1月中旬だったのだろう、在庫が負債になることを避けようとしたのか値段を下げて売り切ったようだ。


2495$の定価が付いたこのコート、最終的にはなんと900$を切っていたと思う。もっともその頃には在庫もビッグサイズしかなかったはずで、マイサイズを買うタイミングを見極めるのはさぞ難しかったに違いない。


(3) アメリカンシューズの誘惑

上のポロコートのコーデに合わせたのは典型的なモカシンだったが、ビスポークシューズやコードバンの靴に向いていた興味がこのところアメリカンメイドシューズに移っている。


写真の靴は下から時計回りにポロカントリーのブルッチャーモカシン、 LL.Bean のモカシン、ティンバーランドのキャンプモカシン。どれもメイドインUSAで捨てずに取っておいたもの。最近履く機会がぐんと増えた。なんでも断捨離すれば良いわけじゃないという好例か…


(4) ヴィンテージのポロコート

こちらは 80〜 90年代のラルフローレン。ややワイドなショルダーや幅の広いラペル、ゴージの低さやボタン位置の低さが現行との違いか…こちらは正に品質の塊、重さも半端じゃない。こんなコートを販売したという事実がラルフローレンフリークの自分をさらに奮い立たせる。


コートの下はラグビー(by Ralph Lauren)のシャツにポロのレップタイ、ビームスのフラノパンツにこれまた古〜いVANのブレザー。靴をAldenロングウイングチップにして時計も交換…普段はアップルウォッチばかりだがここではヴィンテージのブライトリングにしてみた。


(5) ビスポークコート(イタリア編)

仕立て職人の中でもコートを担当する人が一番腕が立つらしい。ならばとオーダーしたのが写真のシングルチェスター…フィレンツェの名サルト、セミナーラのものだ。生地はドーメルのピュアカシミアで比翼仕立てのピークトラベル、スラントポケットというサビルロウじゃまず見かけないデザインだが、当主のジャンニが古いエスクワイヤ?のイラストを見て勧めたスタイル…中々どうして今となっては如何にもビスポークコートな雰囲気がたまらない。何より着心地の軽く快適なこと…正にインベストメントクロージング(投資に値する服)の代表だ。


シャツはユニクロ(ストレッチ機能が嬉しい。快適でフライと見間違えるくらいよく出来ていてお薦め…)、タイはエトロ、サルトリオの柔らかジャケットにストレッチ機能のついたフランネルパンツがビームス。快適なコートには楽チンなアイテムを合わせたいもの…締めの靴は90年製旧グリーンのマルヴァーン、ついでに時計も80年代のサブに交換している。


(6) ビスポークコート(イギリス編)

イタリアのビスポークコートが快適そのものならばサビルロウの仕立てコートは?ということでオーダーしたのが上のチェスターコート。セミナーラと同じシングルピークで3つボタンのスタイルをチョイス。サビルロウの老舗デイヴィス&サンらしく控えめなスラントポケットなれど生地の重さは特筆もの。テイラーロッジのピュアカシミアは肉厚のメルトンかと思うほど目の詰まった絶品だ。仕立ても当然心地がしっかり入った英国仕立て、背筋がピシッとしてくる。


コートの下はドーメルのヴィンテージ3プライモヘア生地で仕立てたスーツ…こちらもデイヴィス&サンにお願いしたもの。靴はフォスター&サンの黒、ビスポークシューズということで上から下まで誂えものかと思いきや、シャツは件のユニクロなのがミソ…タイもイギリスものじゃなくてラルフローレンで外している。


(7) バルカラーコート

90年代中頃の購入だから既に25年が経過したバルカラーコート…ヴィンテージ予備軍といったところだろうか。コットンギャバのコートといえばバーバリーかアクアスキュータムか…日本ではバーバリーの人気が高いが90年にロンドンを訪れた時はアクアスキュータムも中々どうしてリージェントストリートに立派な店を構えていた。ということで当方はアクアスキュータムをチョイス。今も裏地のチェック柄を見せてはバーバリーとの違いを密かに楽しんでいる。


コートの下はファーラン&ハービーのビスポークスーツ。映画「グレイフランネルを着た男」の影響を受けてオーダーしたものだ。シャツとタイはラルフローレン、靴はフォスター&サンのビスポーク。サソリのメダリオンも密かな楽しみの一つだ。


(8) ローデンコート

ローデンコートとはオーストリアのハンティングコートだそうで、ローデンクロスという生地で作られていること、両脇のポケットが貫通していて下のジャケットに届くように作られていることが特徴のようだ。このコートもオーストリア製…ポールスチュアートのタグが付けられた別注品ということになる。襟がレザーというのが遊び心に溢れていてなんとも洒落ている。コートの下のコーデは(7)のバルカラーコートと同じ。


余談だが青山のポールスチュアートが移転のため閉店した。石造りの外観、階段を上がって上に広がるスーツコーナー…ニューヨーク本店の面影を残す贅沢な作りの店だっただけに閉店が惜しまれる。スーツを買った時は自然光の入る天窓の下に用意されたフィッティングルームで袖つめ、裾上げなど細かな直しをしてもらい満足のいく一着を手に入れたことが懐かしい。昭和は遠くになりにけり…


(9) スプリングハズカム

三寒四温の言葉どおり2月になると暖かな日が増えてくる。となればスプリングコートの出番だ。今や温暖化の影響で爽やかな季節はほんの僅か、立春を過ぎたらどんどん着てこそ価値がある。コム引きで有名なマッキントッシュには珍しいロロピアーナのカラー素材がポイントのこのスプリングコート…カジュアルは勿論、意外にもスーツにフィットする優れものだ。何より着ていて気分がフワッと明るくなるのが楽しい。


コーディネートはデイヴィス&サンのビスポークスーツにルイジボレッリのタブカラーシャツ、ネクタイはポースチュアートで靴はクレバリーのビスポークスエードシューズを用意。コートと合わせて春らしいパステル調のネクタイが着こなしのポイントになる。


一年の大半をクローゼットで過ごし、活躍する時期が限られている割には場所は取るしメンテも気を使う…何かと面倒なコートだが、その分着る喜びも大きい。寒い冬を快適に過ごしたり春の冷たい風を防いでくれたり…何より装いに華を添えてくれる大物中の大物だ。実は手持ちのアイテムで一番多いのがコートだという男性が少なくないのも頷ける。

by Jun