田舎暮らしとジーンズ | Room Style Store

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2020/08/01 17:47

昔イギリスでひと夏を過ごした時のこと。ガーデニングの本場ということで何度か庭園を見る機会があった。貴族の屋敷から個人宅まで、行き届いた芝生にさりげなく配置されたベンチやテラコッタ色の小道、ハーブや見事なバラのアーチ、それでいて自然そのままに見える工夫にいつかは自分もと夢を描いて幾年月…。最近ようやく田舎家に長期滞在しては草刈りや私道の手入れ、樹木や花壇の花植えをぼちぼちと始めていたところだった。


ところが年明けから新型コロナウィルスの感染が拡大、移動の自粛もあって帰れずにいたら「庭の樹木が電線に触れている。」との連絡が入った。これは不要不急にあらずと判断、急いで帰省した。車に積み込んだ衣類はジーンズに綿シャツなどアメリカンなワークウェアばかり。残念ながらイングリッシュガーデンには程遠い粗野な庭ゆえ相応な服装ということになる。そこで今回は田舎暮らしの様子をジーンズを中心に着こなしを交えながら紹介しようと思う。
※扉は拘りの日本製ジーンズ

(1) 田舎暮らしの定番スタイル

田舎暮らしは夏の間に冬支度を終えておくのが肝心。薪ストーブがメインの暖房なので焚付用の木切れも欠かせない。昔は敷地内の木を伐採して燃料にしていたが、今はホームセンターに行けば写真のように束で買える。買い出しはヘンリーネックの半袖シャツにネル生地のウェスタンシャツとジーンズというマイ定番スタイルで。足元も短靴のワークオックスフォード(レッドウイング)が役に立つ。それにしてもこの靴…25年付き合っているが相変わらずのタフさが嬉しい。

(2) フルカウントのブッシュパンツ
今や世界的に評価の高い日本製(セルビッジ)ジーンズ。写真のフルカウントもジャパン品質を世界に広めた大阪ファイブの一角とのこと。トリムフィットのブッシュパンツはブッシュだらけの田舎暮らしに最適だ。一方洒落たチェックのウェスタンシャツはRRL。第1ボタンがコンチョ風という憎い演出が光る。第1期(1993~1998年)のRRLはサイズ感が大き過ぎて終了、満を持して第2期(2001年~)をスタートさせたことで、身幅も着丈も袖丈もジャストなシャツが手に入るようになった。

(3) 懐かしのジーンズ
1990年代にカモメペイントで一躍有名になったエヴィスジーンズ。国産プレミアムジーンズの先駆けとして一大ブームになったが、今はカモメペイントを知らない世代も増えてきている。もっとも田舎暮らしに「流行り廃り」は関係ない。太めのジーンズに大きめのワークシャツもまた良し…ということで足元も使い込んだL.L.Beanを履いてみた。25年もののガムブーツは田舎家に置きっぱなしだが、春夏秋冬いつ来ても役に立つ。手にした道具はミニ立鎌で除草に欠かせない道具のひとつ。

(4) ネルシャツ
写真のネルシャツは第一期RRLが終了する1998年、全商品が大幅値引になった際まとめ買いしたもの(海外駐在時)。SサイズなのにLサイズと見紛うビッグなつくりは流石に今のフィット感には合わないが、ボタンの質感や仕上げは流石のRRL。一方のエヴィスジーンズは90年代後半の購入。エヴィスもまた大阪ファイブの一角だが、なんと最近はアイコンともいうべきカモメペイントを入れないジーンズも購入できるそうだ。時代の流れを感じる。

(5) 自前の薪を集める
庭に広がる松林。冬になると毎年雪の重みで大ぶりな枝が折れては地面に落ちる。これが薪に最適なので枯れ頃の夏に拾い集めてカットするのも大事な仕事の一つ。松脂(松ヤニ)という言葉があるくらいだから油分も多く火力も強い。小枝や枯れた松の葉はBBQの火付けにも使える。服装の方はウェスタンシャツとリジットジーンズのデニムオンデニム。ブーツカットながらストレート寄りのシルエットが新鮮だ。足元はポロのバックルブーツ。

(6) デニムオンデニム
ヴィンテージ加工やパッチワーク、更にエンブロイダリーまで(刺繍)入ったウェスタンシャツ(キャンプシャツ)はポロの今季物。リミテッドエディションらしくRRLと間違えるほどのヴィンテージ感がある。ならばジーンズもと同じリミテッドエディションのRRLを投入(限定200本)。ロデオモチーフがお洒落なRRLのベルト(右横)にウエスタンブーツでも履けば気分はカウボーイか…。

(7) セラーペ柄のシャツ
当ブログ07/06「バイクとジーンズ」でも紹介したが、上はセラーペと呼ばれるメキシコ(系アメリカ)の男性が身に着けるカラフルな縞柄をモチーフに綿・麻混紡の生地で仕上げたシャツを着ている。ネイティブ素材をアレンジして魅力的なカジュアルウエアに仕上げるのがラルフローレンの真骨頂、匹敵するブランドはそうないだろう。手にしているのは市販の薪。火付きがよい分燃え尽きるのも早い。ひと冬分屋(内)外に積むと相当な量になる。

(8) RRLのコンビ
ジーンズはウォッシュのかかったミディアムブルー。夏らしく淡い色目に加えて当たりの柔らかい生地感が嬉しい。通常よりワンサイズダウンを履けばスリムストレートに近い雰囲気になる。シャツは台襟や前立ての裏、ガウントレットやカフの裏にも補強布があてがわれているので型崩れしない。シャツを着るというよりジャケットを羽織る感覚か。

(9) カモ柄ジーンズを履く
手にしたのは刈込挾。伸びた枝を切るのに欠かせない道具だ。樹木の剪定はやりだすときりがないので前日に目星を付けておく。翌朝、天気がよければひんやりとした時間帯に一気に作業を終えるのが賢いやり方だ。庭仕事の前に虫除けスプレーを忘れず一吹き。それでも仕事に出ると首やうなじ、耳のあたりに蚊が寄ってくるのでバンダナを巻いてみた。

(10) カモ柄の実力

自然の中に溶け込むカモ柄のジーンズ。林の中では目立たなくなるという見本か。靴はクロケット&ジョーンズのピーブルズ。JFJベーカー社のロシアングレインにリッジウェイソールのタフなキャップトゥダービーだ。英国カントリーシューズらしく足元が上品に見えるのは流石というべきか。日頃は軍手でも刃物を使う時は古いバイク用の革手袋が役に立つ。

(11) 夏の気温
山間いの田舎屋は夏でも涼しい。夏の日中は汗ばむものの明け方は10℃台に下がるので夏でも毛糸の服が欠かせない。写真はRRLの手編みベスト。夏でもツイードを着るスコットランドと似たようなもので、地元の人には当たり前でも外から見れば意外に思えるかもしれない。ポロのカモ柄ジーンズはストレッチ素材、野良仕事に便利な一本だ。

(12) エイジングを楽しむ
履いてきたジーンズは目下エイジング中のリゾルト…。DENIME(ドゥニーム)のデザイナーが立ち上げたメーカーだそうで、そのドゥニームもフルカウント同様大阪ファイブの一角、リゾルトも負けじと良いジーンズに仕上がっている。写真はスリムタイプの712。ウェストきつめなので履き慣らすのに根気が要るが、日本人に合うパターンで足の短さも隠してくれるのが嬉しい。足元はオールデンのタンカー。

(13) 追加の日本製ジーンズ

田舎家から帰った日に届いた岡山産のジーンズ。昔話の「桃太郎」でも有名な岡山にちなんでMOMOTARO JEANSと命名されている。15.7ozのデニムを100%藍染めで仕上げた逸品はTOP写真を見ても分かるように藍色の濃さが際立っている。ポケットのペイントはいざ鬼退治に行くという時の「出陣旗」に描かれた2本の白帯を模したようで、なにやら90年代のエヴィスのようではないか…。

(14) フィット感
比較的細身のモデルをチョイス。太腿は細身で膝から裾にかけてはストレートなラインなのでアイビーパンツの雰囲気がある。これならばジャケットスタイルにも合わせ易い。赤耳ならぬ桃耳に加え、インシームのステッチもピンクという作りが楽しい。これから時間をかけて新たなジーンズを履き慣らす楽しみがまた一つ増えた。

調査によると若い世代は服飾にそれほどお金をかけずジーンズもあまり履かないが、断層世代は服装にお金をかけ、休日にジーンズを履く割合が男女ともに50%を超えているそうだ。つまりオンラインショップで見かける国産プレミアムジーンズの購買層は若い世代よりも上の世代がメインということになる。自分のライフスタイルが調査の結果にうり二つという落ちに思わず笑いが出てしまった。

ジーンズを履くと親に小言を言われたり校則で禁止されたりした断層世代にとってジーンズは自由の象徴、休日=自由=ジーンズという発想になるのも頷ける。ただし田舎暮らしの場合、ジーンズはもっと生活に密着したものだ。汚れたら丸洗い乾いたらまた履く。作業も買い出しも家着もジーンズで事足りる。つまり気のおけない万能着なのだ。

次に行く時は田舎家にジーンズを何本か置いて帰ろうと思う。さて、どのジーンズを置いて帰ろうか…。
by Jun