2020/10/04 16:32
ひと時代前のことだが、カタログ雑誌が書店をにぎわしていた時のことを思い出してほしい。ブランド品やステイショナリー、靴や鞄…時計などなんでもござれ、かくいう自分も色々なジャンルのものを買っては読み漁ったが残念なことにどうコーディネートするか、どんな作りか、どんな機能があるのかなど知りたいことが分からず、ここで大量に古本屋に出したところだ。情報としては古かろうが、アランフラッサーの昔の本が今も新鮮なのとは随分違う。
自分が服飾に興味を持ったころは男性服飾雑誌の老舗はメンズクラブだけで、今のように色々な雑誌が何冊も出版されるようになったのは最近だと思う。とにかくメンクラ(メンズクラブのこと)はアイテムの歴史や背景といった蘊蓄話に着こなし例を加え、更に「街のアイビーリーガース」で読者のコーディネートを元にアドバイスを通じて着こなしのイロハを啓発するなど、今のご時世では出せない「濃さ」があった。そこで今後何回かに分けて当時の「濃さ」を受け継ぎながら、今の着こなしを交えて自分のワードローブを振り返り、同時に断捨離を進めつつ私的な永世定番を紹介しようと考えてみた。
手始めに今回はその第一回目としてアウター編(前篇)を紹介したい。
(1) #01 ピーコート

栄えある永世定番の第一号はピーコート。リーファージャケットとも呼ばれる両前仕立てのコートは錨が彫られた大きいボタンが特徴。海軍服が出自ゆえ色はネイビーがデフォルトだ。腕を下した状態で指先と同じ着丈のフィンガーチップレングスなのでかなりショートなコートになる。アメリカのSchottと迷ったが、海軍国のイギリスに敬意を表してグローバーオールを購入。スラントポケットのみのシンプルかつスリムなデザインが気に入っている。
Pコート : Gloverall
Pants : Brooks Brothers
Shirt : Brooks Brothers
Tie : Ralph Lauren
Boots : Crockett & Jones
Gloves: Merola
(2) コートの生地と手袋

Moon社製ウール80%+ナイロン20%のタフなメルトン生地を使ったGloverallのピーコートはカシミアもののようなしなやかさとは対極にあるが、軍服らしく凛とした立ち姿になるのは流石というべきか。一方の手袋、メローラは故落合正勝さんが本に書いて有名になったと思う。コンドッティ通りとコルソ通りのぶつかる辺りに店舗があった頃が懐かしい。写真はハンドメイドのアンラインドペッカリー。指に吸い付く感覚は英国製DENTSを凌ぐ。
(3) #02 キルティングジャケット


永世定番第2号はキルティングジャケット。中綿入りの素材をダイヤモンドステッチで挟み、膨らみを抑えたアウター素材は英国が本場、ハンティングや乗馬用の上着として有名だがスーツの上に羽織っても様になる。流石は紳士服の本場、英国を代表するアイテムらしい。ブランドもマッキントッシュやラベンハム、バブアーなどmade in U.K.がずらり…迷いに迷ったが、ツィード好きが高じてスコットランドを何度も車で回ったことが決め手となってマッキントッシュを推してみた。
Quilted jacket : Mackintosh
Fairisle vest : Polo by Ralph Lauren
Shirt : Brooks Brothers
Tie : Polo by Ralph Lauren
Jeans : Big John Ivy Slim
Scoks : Brooks Brothers
Shoes : Crockett & Jones
(4) ディテールの変化

左が今回紹介した2代目のキルティングジャケット。フォックスブラザーズのチェック地が決め手となって購入したもの。一方右はミレニアムの頃購入した初代。現行品との違いは身頃のボタンが小さいこと。マッキントッシュの字を大きく見せるためだろうか。どちらも同サイズだが身幅が大きく違う。現行品が細身なのは言わずもがな。他にも昔のゆったりとしたアウター(ダッフルコートなど…)が色々あって、冬が来る前にリフォームに出そうか思案中だ。
(5) #03 マッキノークルーザー

こちらは正統派英国調アウターに対するアメリカンアウトドアメーカーの回答。24ozのマッキノーウール(赤×黒の大柄)を袖と肩から胸まで二重にしたダブルマッキノークルーザーにシープスキンショールカラーを加えたウルトラヘビー級の防寒着。ウールパッカーコートと命名されたこのコート、都会ではオーバースペックだが厳冬期の信州では必需品。襟を立ててボタンを留めれば冷気を完璧にシャットダウン。うっすら汗をかくほどの暖かさが味わえる。
Wool packer coat : Filson
Shirt: Purple Label by Ralph Lauren
Belt : Polo by Ralph Lauren
Denim: RRL
Boots : John Lobb
Rucksack : Beams
(6) ブーツのソールを交換

マッキノークルーザーに合わせたブーツはソールを交換したばかりのロッキー。アメリカ最高峰の山の名を冠したこのブーツ、購入後25年経ってソールが崩れたのを機にジョンロブ丸の内店に聞いたところ「パーツの在庫はすでになし」とのこと。ならば純正に拘るか必要もなく、行きつけの靴屋でビブラム社のソールと交換したばかり。名前から分かるようにアメリカンなウールパッカーコートとの相性も良く我が田舎ではビーンブーツと並んで無敵を誇る。
(7) #04 ランチコート


ランチコートはその名のとおりランチ(牧場)で着るアウター。シャーリングからダック(帆布)、写真のような厚手のウール地までシェル素材は様々だがデザイン的にはウェスタン調が多い。ここで紹介するのはRRL第一期のランチジャケット。第二期になってから手の届きにくい価格になってしまったRRLだが昔はもっと手軽に手に入れられた。コーディネートは(5)のウールパッカーコートからシャツとベルトを交換し、誂えのツィードスーツからヴェストを拝借している。
Ranch coat : RRL
Shirt : Brooks Brothers
Waistcoat : Fallan & Harvey
Belt : Mulberry
Jeans : RRL
Boots : John Lobb(cottage line)
(8) ヴェストとベルト

上の写真で拝借したヴェストがこちら。ボタンホールは総手縫い、裏地がマスタードイエローという誂え物の雰囲気がプンプンしてくる。プレーンなV字ヴェストに手縫いで後付けしたラペルが面白い。誂えらしく真に身体にフィットしているのでインナーとして重宝する。ジャケットやコートの下に挟んで重ね着スタイルを盛り上げてくれる優れものだ。ベルトは英国のマルベリー社製。当時こうした革小物や鞄から入ったブランドだったと思う。
(9) #05 ポロコート




ロングコートが欲しいと思ったらいつかは手に入れるべきなのがポロコート…。元々ポロ競技の選手がチャッカ(競技タイム)とチャッカの間のウェイト(wait)に着るコートが出自らしくスポーツウエアとの相性も良く、それでいてテイラードものと合わせても見栄えがするマルチユーティリティーだ。残念ながらポロコートをラインナップしているブランドは多くないが、ラルフローレンならば完璧。何と昨シーズンはメイドインUSAに旧タグで復活したばかりで、インベストメントクロージングの代表格として推挙したい。
Denim jacket : Polo Ralph Lauren
Shirt : Brooks Brothers
Tie : Polo Ralph Lauren
Pants :Polo Ralph Lauren
Scoks : Brooks Brothers
Shoes : Crockett & Jones
(10) プレッピーなソックス

(9)の写真で小物ながら存在感のあるのがソックス。アメトラ調のレップタイやクレストタイをモチーフにしたものを用意しておくと履くだけであら不思議、一気にプレッピーな装いになる。ラルフローレンとブルックスブラザーズのものが洒落ていて重宝する。合わせたシューズもやはりラルフローレン。ホーウィン社製のシェルコードヴァンを用いたクロケットジョーンズ別注ローファーは穴飾りが入るなど洒落た味付けが効いている。
Shoes : Crockett & Jones
Socks : Polo Ralph Lauren
(11) #06 ライダースジャケット

ライダースジャケットは本来バイク用だがデザインと機能性が街着としても使えるということで流行り始め、今や定番アイテムになっている。30年ぶりの出戻りライダーになったのを機にバイク用の革ジャンとして購入した写真のRRLシングルライダー。ほぼ即決買いだったが、バイクに乗る時は勿論ちょくちょく街中でも着ている。永世定番に欠かせないレザー製品だ。因みにデニムもRRLでブーツはトリッカーズ。ヘルメットをボストンバッグに替えればGo to キャンペーンよろしく旅行にだって行ける。
Riders Jacket : RRL
Jeans : RRL
Boots : Tricker's
Helmet : Arai
(12) バイクに乗る時

ライダースジャケット本来の使い方…今の季節ならばジャケットの下は長袖のヘンリーネックTシャツでOK。最近のバイクウェアは背中や胸、肩や肘などプロテクターが内蔵されている。機能面でいえば革ジャンは時代遅れだが45年物のヴィンテージバイクに合わせるウェアとなるとエイジング感の出ているRRLレザージャケットがベストマッチ。ボトムスはストレッチの効くカーゴパンツ(ハリウッドランチマーケット)を選んでみた。
Cargo pants : 聖林公司
Bike : Kawasaki Z1-B
Glove : DAYTONA
昔は雑誌やショップの店員さんから情報を仕入れるのが近道だったが今や情報化時代。欲しい情報はオンラインですぐに手に入る。欲しいものも着こなしのサンプルも実践例も…。ところがいざ定番品を選ぼうとしたとき、どこのモノにするかは大いに悩むところだ。そんな時、決め手になるかは別にして「自分は…が良いと思う」という声は大いに助かる。
ピーコートならアメリカのFIDELITYかSCHOTTか…いやいやイギリスのCamplinかGloverallもいいぞ…どっこい有名メゾンの別注ピーコートだって悪くない。そんな時の助けになればと今回永世定番を企画したが、アウター編に続いて今後はインナーやニット、パンツにジーンズ、靴やアクセサリーなどイメージはある。問題はいくつに絞るか…だが、そこは切りのいい100選としたい。
by Jun@RoomStaff