2020/11/02 12:01

靴はお洒落の要…接客のプロは履いている靴から訪問客の人となりを見定め、顧客に繋げるという。たとえカジュアルな服装でも選ぶ靴にはその人の個性が滲み出るものらしい。堅牢な靴、軽やかな靴、お洒落な靴、履き込んだ靴、なるほどこう書くだけでなんとなく履き手のイメージが湧いてくる気がする。
リーガルからスタートして1980年代に渡欧、ウエストンやグレンソンの舶来靴を知って弾みが付いたのか、気に入った靴をあれこれ買った。修理が効くグッドイヤーの靴が中心ゆえ断捨離の憂き目にも合わず着実に増え、途中からはビスポーク靴にも手を伸ばしたので今や120足超の靴が毎日出番を待つようになっている…。
そこで今回は数多の中から靴の永世定番を選ぶなら…をテーマに特集を組んでみることにした。
(1) 片足ずつ並べてみる

昔SNS上のやり取りで「靴コレクションが見たい…」とフォロワーからリクエストされた事があった。その時は撮影場所の問題もあって、既成靴と誂え靴の2回に分けて写真をポストしたが(扉の写真はその時の誂え靴の集合写真)、「次は片足ずつ並べて撮影するよ…」と返事をしたのを思い出して、今回は手持ちの靴の片足(右側)だけを並べて撮影してみた。既成靴60足+誂え靴60足の計120足のラインナップは見応えがある。さて、この中から靴の永世定番を選んで行くことにしよう。
〜内羽根タイプから〜
(2) #23 パンチドキャップトウ

穴飾りが満載のブローグが好きなわりに最初に選んだのはシンプルなパンチドキャップトウ…。一文字のラインとアイレット両側のみの穴飾りは黒ならばフォーマル寄りの装いにも使えるし、スエードならば大柄のジャケットやパンツにシンプルなデザインがバランス取りに都合が良い。特に黒は手持ちの中で一番履いてることが何よりの証拠。永世定番の筆頭にあげたい。
左…フォスター&サン(誂え)
右…ジョンロブパリ(既成)
シャツ
パープルレーベル
ポールスチュアート
ネクタイ
ラルフローレン
(3) #24 セミブローグ

内羽根式の靴から次に選んだのがセミブローグ。Wの形に革が重なるフルブローグと比べると靴が曲がるジョイント部分に切り返しがないのでセミブローグの方が快適になる。左のスエード靴の甲下部分をよく見てほしい。毛足が寝ている部分が線になっているのが分かると思う。ここが屈曲部分で何もない方が履き心地が良いのは間違いないだろう。
左…G.クレバリー(誂え)
右…チャーチズ(既成)
シャツ
バティストーニ(誂え)
フライ(MTO)
ネクタイ
パープルレーベル
〜外羽根タイプから〜
(4) #25 プレーントウ

外羽靴は本来カントリー用、スーツに合わせないというルールもあるらしいが、磨かれた外羽根のプレーントウとサックスーツの組み合わせはアメトラの正統、個人的には気にしない。とはいえやはり王道はジャケパンスタイルだろうし、休日ならばデニム&セーターやベストとチノパンと合わせても様になる。セミブローグの項でも触れたが革の重なりがないシンプルなプレーントウは一番履き心地が良い靴のはず。永世定番に相応しいといえよう。
左…ボノーラ(既成)
右…Eグリーン(既成)
セーター…ポールスチュアート
ベスト…ビームス+
ソックス…Bブラザーズ&パンセレラ
(5) #26 エプロンダービー

外羽根式の中で個人的に一番好きなのがこのエプロンダービー。中でもスキンステッチのシームがトウの先端に走るタイプにそそられる。立派なフェチだ。シティスーツには合わないが厚手のツイードやヘビーオンスのデニムとの相性は最高、中でもソールがヘビーなタイプを1足は用意しておくと着こなしに幅が出ること間違いなし。
左 JMウエストン(既成)
右 ジョンロブロンドン(誂え)
シャツ
ブラックフリース
ネクタイ
バーニーズ
(6) #27 ウイングチップ

フルブローグというよりウイングチップと呼びたいのがアメトラファン。そしてウイングチップならば内羽根ではなく外羽根がお約束になる。ソールは分厚く穴飾りが踵まで伸びるロングウイングはアメリカンの象徴、外せない。写真は英米を代表する靴メーカーのウイングチップだが、上二つは英国調でスマート、下二つは米国風で無骨というのが面白い。用途の広い靴として永世定番に相応しい。
上段
Eグリーン・ジョンロブ
下段
オールデン・クロケット
〜個性的なタイプから〜
(7) #28 ギリー

ギリーシューズはアイルランド生まれの靴だそうだが、スコットランドで見かける機会が沢山あった。中でもキルト姿の紳士が履く黒のギリーから覗くアーガイルソックスが素敵で、タンなしがデフォルトとのこと。残念ながら写真はどちらもタン付き。ある程度靴が揃うとギリーのデザインが気になるようで確かに独特のオーラがある。外羽根式(左)と内羽根式(右)のギリーがあり、デザインのバラエティも豊富だ。実は目下タンなしの正統派ギリーを注文中なので、到着したらブログで紹介しようとあれこれ考えている。
左 ボノーラ(誂え)
右 クロケット(MTO)
フェアアイルベスト
ポロラルフローレン
シャツ
ハケット
ネクタイ
ポロラルフローレン
〜スリッポン式から〜
(8) #29 ローファー

新型コロナウィルスの感染拡大でリモート化が進みスーツの売り上げが落ちているそうだ。革靴もスニーカーに駆逐されるかもしれない…とさえ言われるがローファーは革靴の中で最後まで残るに違いない。特に写真のラルフ特製リボンローファーは傑作だと思う。プレッピーファンならばリボンの色違いで1週間分履きたくなるかも知れない…。残念ながらラルフでは最早クロケットジョーンズに別注しておらずデッドストックも出物がない。となると余計に欲しいのが人の常…永世定番として記録しておくことにした。
左 カーフ(旧ロゴ)
右 コードバン(新ロゴ)
刺繍入りパンツ
ポロラルフローレン
ソックス
ポロラルフローレン
(9) #30 ウエストンローファー

ローファーはどれも似たり寄ったりと思うかもしれない…が、JMウエストンのローファーは別だ。以前緑と青を持っていたが今はこの5足。同じブランドのローファーを色違いでこれほど持つなんて普通はあり得ない。モカ部分より一段高い履き口、絶妙にカーブしたサドル(甲バンド)、英米のローファーとは異なるデザインがフレンチトラッドの妙を感じさせる。未体験の人には気に入った色をまず一足履くことをお勧めする。永世定番に入れる意味が分かって貰えるに違いない。
上段 茶・黒・右端のみルモック
下段 クロコ・アリゲーター
ネクタイ
ポロラルフローレン
(10) #31 ペニーローファー

サドルのスリットにペニーを挟んだことからその名が付いたペニーローファー。長らくブルックスブラザーズ別注のAlden製アンラインドローファーに付けらた愛称がペニーローファーだった。ブルックスブラザーズがオールデンとの提携を解消したことでアンラインドローファーも幻となってしまった。今後この傑作靴が復刻するのはオールデンが意を決した時だろう。その時が来ることを今は願うのみだ。写真はオールデンによる日本のラコタ別注15周年と20周年の限定生産品。
オールデン謹製アンラインドペニー
左 15周年限定200足
右 20周年限定100足
シャツ
ブルックスブラザーズ
クリーブ
(11) #32 スプリットトウ

つま先にスキンステッチのある靴が好きなことは(5)で既に書いたが、その仕様をローファーに盛り込んだのが写真のスプリットトウカジュアル。靴好きならばドーバーのつま先部分がローファーになったと言った方が分かりやすいだろうか。こちらは英国靴の腕の見せ場ともいえる。カジュアルなスリッパ風の靴に手練れの職人の技を盛り込むところなど永世定番級間違いなし。
上段
ジョンロブ(既成)
下段
左 : Eグリーン(既成)
右 : Gクレバリー(誂え)
ソックス
ブルックスブラザーズ
靴は奥が深い。同じデザインでも靴底の厚さや素材、切り返しのちょっとした違いで別物に見える。ましてや靴好きならば似たようなフルブローグもウイングチップ風だったりスコティッシュ風だったり、或いはアデレードタイプだったりバルモラルタイプだったり、明快な違いが見てとれる。
周囲からはムカデ?と揶揄されつつもいつのまにか数が増えるのは仕方のないこと。何しろ壊れることがないし廃れることがほぼないからだ。ここが服との大きな違い…気に入った靴を我慢できたらこんなことにはならないのだが、ツイードスーツにローファーではダメで無骨なウイングチップがどうしても必要と思ってしまうのだ…
今回は120足の中から10型選んだが、永世定番はまだまだありそうだ。次回近いうちに永世定番靴編をまとめ上げようと思っている。
by Jun@Roomstaff