ビンテージLevi's①501編 | Room Style Store

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2021/05/15 16:39

40年以上の付き合いがある老舗ジーンズショップも今回のコロナ禍は想定外のようで、全商品を半額にするなど経営努力を続けているが、肝心のジーンズが売れないと嘆いていた。そんな折オーナーが転居の際自宅から90年代ブームの時に「売り切ったはず」のビンテージジーンズが出てきたらしく、GW真っ最中なのに店の片隅にひっそり積まれているのに出会ってしまった。



勿論当時の価格ではないがブランド物のジーンズよりはるかにお買い得。ジーンズ好きなら「おおっ」と唸るだろう。今世界中で車やバイクは一大ビンテージブーム。新車時の価格を遥かに上回る値付けの車両も多い。既にビンテージものが市場として機能するジーンズに飛び火する可能性もある。何しろビンテージジーンズの火付け元は日本、海外からの買い付けも多いと聞く。


そこで今回は人もまばらなGW中、馴染みのショップを応援すべく手に入れたジーンズを中心にビンテージジーンズ入門編を書き記してみようと思う。


(1) パッチ周辺
現行とは異なる雰囲気のリーバイス501。サイズ表記やしおりから日本国内で販売されていた商品であることは一目瞭然。購入店もリーバイスの正規販売店なので品質は間違いない。昔からLeeのUSAものばかり買っていた店だが、時折リーバイスの復刻版やエビスジーンズなど面白いものをいち早く教えてくれた店でもある。 


(2) 日本正規輸入品
サイズタグはサイズ毎に色分けがなされていた。平積みしても色で直ぐに分かるようにという配慮だろうか…日本の細やかさを感じる。因みにリーバイ・ストラウス・ジャパンの設立は1982年、その頃の輸入品ではないだろうか。ワクワクしながら試着してサイズを確認、購入後は改めて細部をチェックしてみた。


(3) フラッシャーの年号フラッシャーの年号は©1982 LS&Co。66モデル後期の次、80’s赤耳に相当する。ホッチキス留めの裏側から重なりを少しだけめくってギャランティの年号は130YEARだった。80年代後期は135YEARなのでやはり80年代前半のようだ。いくつものポイントをチェックしながら1本のジーンズを分析するのも中々楽しいものだ。


(4) 商品説明書面白いのがこの説明書…「アメリカ本社の伝統を誇る工場で熟練した人々の手によって縫製される」と書かれており、その工程をUSライン7仕様と呼ぶらしい。他の製品と区別するためツーホースラベルとレッドタブが付くとも書いてある。ライン7で調べると1本針の縫製仕様とのこと。「厳しい検査を受けた上で出荷…」とあるが縫い終わりの糸処理など大らかなのに笑ってしまう。


(5) 赤耳とインシームアウトシームは赤耳。その有無で価値が大きく異なる部分だ。裾上げはチェーンステッチでインシームがシングルステッチとチェック項目をこなしていく。デニムは毛羽立ちのある生地感。因みに店内には赤耳なしの脇割りモデルもあったが価格は随分開きがある。調べてみると83年に赤耳生地が生産を終え、幅広デニムが導入されると赤耳モデルと脇割モデルが混在し、86年には全て脇割りモデルになったようだ。


(6) ボタン裏の刻印とリベット
トップボタン裏の刻印は524。エルパソ工場製を示している。リベット裏はアルミ製でLS&CO SFという文字の外側に同心円が彫られている。70年代や80年代後半はプレーンな表面にLS&CO SFになっている。こうしたディテールの違いを丹念に調べたビンテージマニアの知識が集積されたネットの世界を検索すると本当に色々なことが分ってくる。


(7) 内側のタグ
ジーンズ内側のタグを見てみる。上段はW31-L36のタグ両面で下段がW34-L36のタグ両面。縮み率は10%だがフラッシャーにはWで1インチ、Lで3インチ縮むと記載されている。製造年月はどちらも8 3 524。1983年8月エルパソ工場製の事だ。想像どおりリーバイ・ストラウス・ジャパン設立間もない頃の輸入品だったことになる。


(8) ディテール
赤タブはスモールeの印刷。82年以降の501に用いられたようだ。またバックポケット両端は隠しリベットから黒糸によるカンヌキ留めに変更、通称黒カンと呼ばれるもので、こちらも製造年を知る手がかりの一つ。英語ならBAR TACKED( バータックド)と呼ぶそうで、フラッシャーの矢印部分にも書かれている。こうしたポイントを見ているうちに年代別ビンテージリーバイスのディテールが頭にどんどん入っていく。


(9) ラインナップ
当時のリーバイスのラインナップ。USライン7仕様で作られるジーンズは全部で4種類あったことが分かる。そういえばその中の3種類をアメリカ本国のショップから個人輸入したことを思い出した。確か海外駐在時の1996年だったと思う。その時の501と505、それに517もそろそろビンテージの仲間入りらしい…。2003年アメリカ国内のリーバイス工場が全て閉鎖されるまでの製品はいずれビンテージものになるに違いない。


(10) USライン7仕様
こちらがアメリカにメールオーダーしたUSライン7仕様のラインナップ。上から501、517、505。この時代のリーバイスの特徴は①色落ちがしにくい②ヒゲが出にくい③タテ落ちしない④セルビッジではないためアウトシームに独特のアタリが出てこない。履く回数が足りないこともあるが確かに色落ちしていない印象を受ける。調べたら製品の質が向上して色が落ちにくくなっているようだ。本来なら喜ばしいはずなのだが…。


(11) 90年製501の色落ち
こちらはジャスト90年製のリーバイス501。やはり古い生地の方が色落ちしやすく、ヒゲやアタリも出やすい。内股部分は傷みが激しく、当て布をしてミシンで補強ステッチを入れた。当時はこれ1本しかリーバイスを持っていなかったので文字通り履き倒す勢いだった。今改めて見てみると色落ち具合もそう悪くない。ビンテージ特有の表情に近い感じが出てる。



(12) 今回の501(その1)
ビンテージストック品(日本ではデッドストックと言うが正しくないらしい)ということで、一から育てる楽しみがありそうな今回のリーバイス。上の90年製501と比べるとポケットの形やアーキュエットステッチの形状はほぼ同じだがバックポケットのつく位置が低い。足を長く見せようというデザイン上の理由からか、時代が進むにつれて位置は少しずつ上がっているとのこと。変わらないように見えてデザインの変更は絶えず行われているということか…。

(13) 今回の501(その2)
左はW31-L36、右がW34-L36。ウエストの差は3インチもあるのにワタリや裾幅、何よりウエスト位置がほとんど変わっていない。ここ10年くらいはローライズが流行っていたが、最近は501のようなジャストなウエスト位置に回帰しているようで、なるほど「良質は決して流行遅れにならない」というリーバイスのブランドメッセージが具体性を帯びてくる。



(14) 80年代の逸品その①
80年代のプロダクツといえばJ.M.ウェストン180。1988年年製造のローファーは今年で33年もの、流石に靴の表面にはクラックが入り始めているがまだまだ現役。ここから長く使えるのが革靴の凄いところ。フランスのお洒落な着こなし紹介本BCBGの中で、確かリーバイス501にラコステのポロとウェストンのローファーという組み合わせがあったと思う。


(15) 80年代の逸品②
こちらはサブマリーナ。1680の後継16800は1980〜1986年に製造されたもので、写真は文字盤のインデックスに縁が付がない前期型。なので恐らくは1983年頃のものだろう。もしかすると今回のリーバイス501と同じ歳かもしれない。これに同年代のチャンピオンリバースウィーブのスエットでも着て80年代にタイムスリップしたようなコーデをするのも楽しそうだ。


GW中はリーバイスビンテージデニムのお宝品発見で思いもかけない楽しい毎日を過ごした。店もきっとツイッターやフェイスブックなどSNSを使って発信すればもっと客が来たかもしれないが、コロナの感染防止を考えて控えたのかもしれない。おかげで誰にも邪魔されることなく吟味して試着して納得して買うことができた。

最近自分の生まれ年のアイテムを所有したり身に着けたりしたいという要望を聞く。例えば車やバイク、時計やジーンズなど。冒頭でも述べたがビンテージ物のジャンルがしっかりしているものは誕生年の製品を探すことも容易なため、生まれ年のロレックスをしている男性もいる。靴で言えばウェストンやオールデン、衣類でいえばリーバイスがその筆頭か。

残念ながら自分の生まれ年のものは中々見つからないが、今回の83年製8月製造赤耳501も同年同月生まれのジーンズ愛好家なら欲しいと思うかもしれない。もしこのブログを読んで「実は…」と思う読者がいたら詳しくは価格応談ということでショップメールで確認されたい…。

By Jun@RoomStaff