永世定番 上着(春夏)編その2 | Room Style Store

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2021/06/13 14:48



フィレンツェのリヴェラーノやセミナーラでジャケットを誂えるとよく「ジャケットと一緒にパンツはどうか?」と聞かれる。素材で迷っていると「1本は仕事用に、もう1本は週末用に2本まとめてオーダーするのはどうだ?」と上手い提案をしてくる。イタリアの伊達男のジャケパンスタイルが様になるのも当然だと感じた。


コロナ禍によってスーツを着なくなった人はかなり多いだろう。今や既製服の世界でも良く似たコンセプトでジャケット+パンツ2本をプッシュしているところもある。スーツが必要な場面に備え1本は共布パンツでもう一本は異素材パンツでジャケパン風に…というコンセプトだ。ロンドンほどではないがイタリアよりコンサバな日本らしいのが共布パンツを用意するあたりか…(笑)


そこで今回は永世定番ジャケット編(カジュアル編)の続編として永世定番ジャケット編(オフィス編)についてあれこれ考えてみたい。


その1~ネイビーの上着~

ネイビーのジャケット(含むブレザー)は最もビジネス向き。大方は春夏物と秋冬物で何着か所有していると思う。定番のドスキンやトロピカル、サマーカシミアといった素材毎に、英国風、アメトラ風、クラシコ風といったテイスト毎に、選択肢は色々だがどれを選んでも間違いないしビジネスからオフに移っても重宝する真の優れものだ。


(1) #50 英国式ブレザー

① 正統派の着こなし ハンツマン出身の2人によって立ち上げられたファーラン&ハーヴィーが仕立てたブレザーはサビルロウスタイルには珍しいフレキシブルな感じが好きだった。サビルロウ仕立てにアメトラのアイコン、ナチュラルショルダーを加えたこのブレザーも仕事にオフに今もよく着ている。


②裏地に凝るロンドンのテイラーで注文すると「裏地の色」を聞かれる。大抵は控え目だが鮮やかな色をオーダーする人も多いようだ。歩く度にサイドベンツが微かに翻り、派手な裏地がほんのり覗くのが誂えの密かな楽しみらしい。


③ 黒の内羽根を合わせる
正統派の英国式ブレザーにはチャコールグレイのトラウザーズと黒の内羽根が合う。ロンドンでブレザーを注文するならグレーのパンツを一緒にオーダーしてみて欲しい。大抵テイラーは注文主が想像するより数段暗いチャコールグレーを薦めるだろう。英国式のブレザースタイルは自然と黒靴を選ぶようになっているのだ。
Jacket &Trousers : Fallan & Harvey
Shirt & Tie : Paul Stuart
Shoes : Foster & Son 
Bag : Hermes

(2) #51クラシコ調ジャケット
① ブレザーではなくジャケット…
クラシコイタリアの名門キトン(現在は脱退している)のネイビージャケット。背抜き大見返しのアンコン仕立ては信じられないほど軽い。イタリア人は金ボタンのブレザーよりコロッツォボタンのジャケットを好むと聞いていたが、これだけ柔らかく軽い生地で仕立てたジャケットだと重い金属ボタンでは下を向いてしまい似合わいだろう。


② サマーカシミア
サマーカシミア100%のジャケットはキトンの上質な専用テキスタイルが用意されていることの恩恵、かくも繊細な素材を甘く縫い合わせながら仕立てていることに感心してしまう。しかも良い意味で機械をうまく使っている。これを手縫いで仕上げたら値段もかなりのものになろう。

③ ネイビー&ブラウン
トラウザーズはチャコールより明るめのミディアムグレー。フォーマル以外黒靴を履かない(らしい…)イタリア人にとってはミディアムグレーの方が茶靴に合う王道のパンツかもしれない。ネイビー&グレーブをベースにネクタイと靴、鞄も全て茶系で揃えてみた。
Jacket & Tie : Kiton
Trousers : Incotex
Shoes : Bonora
Bag : Hermes


(3) #52アメトラ風ブレザー
①パッチ&フラップポケット
アメリカンなブレザーといえばパッチ&フラップポケットが代表的なディテール。元はアメトラ育ちだが3つボタン段返りのサックスタイルよりダーツ入りの2つボタンの方が用途は広い。アメトラタイプのネイビーブレザーはグレーパンツはもとよりマドラス柄のパンツまでなんでも会う万能着に違いない。


②ビジーな柄合わせも何のその…
ラペルのウェルトシームがアメトラ風なブレザーは何とベルベスト…着心地の柔らかさは天下一品だ。白のBDシャツ&クレストタイにバリーブリッケンの派手なマドラスパンツ、さらにタータン柄のトートとビジーな合わせだがブレザーが全体を引き締めているので破綻をきたさない。締めにクロケットのダーティバックスで英米伊合作プレッピールックの完成だ。
Jacket : Belvest
Shirt : Brooks Brothers
Tie & Bag : Polo Ralph Lauren
Pants : Barry Bricken
Shoes : Crockett Jones 


(4) #53ベージュのジャケット
①シルク&リネン
ベージュのジャケットは春夏にこそ相応しい。それもウールではなくコットンやリネン素材のものが一着は欲しいところだ。リネン100%を薦める雑誌も多いが個人的には皺の寄った上着が苦手なので、専らリネンにコットンやシルクの入った混紡素材をつい選んでいる。


② ローファーを合わせる
イタリアの男性は特にローファー好きなようで、ジャケパンは勿論スーツにさえローファーを合わせる。昔ミラノのリナシェンテで日本未入荷だったインヴィジブルソックスを買ったことを思い出した。素足風ローファー履きは踝が露出するのでとにかく涼しい。ベアフット(素足)に革靴なんて組み合わせ…イタリアの洒落ものが流行らせたに違いないが、あまりに快適で、いつの間にか夏に欠かせなくなってしまった。
Jacket : Sartorio
Shirt : Micocci
Tie : Liverano
Pants : Incotex
Shoes : George Cleverley

(5) #54ダブルのジャケット
① アイスグレーのジャケット
夏のジャケットはシングルばかりだったが試しにダブルを買ってみた。前ボタンを留めるのが決まりのダブルは夏だと特に暑い。開けっ放しはだらしなく見えるのでここは痩せ我慢か…。色目はアイスグレー、素材もリネンにコットン、シルクの入った三者混らしくクールなイメージがある。


②アングロイタリアン
ジャケットはパープルレーベル。縫製はイタリア製だが副素材の入りが少ないアンコン仕立てのナチュラルショルダー。着丈が短いのは最近の傾向、ハンドテイラードと言いつつボタンホールなどは機械縫いなのは愛嬌か。本開きの本切羽はいつもどおり池ノ上のコーダ洋服工房に依頼した。


③ 差し色ネクタイ
ここではネクタイを差し色にしたコーディネートに挑戦。グレーのトラウザーズにシャツとポケットスクェアを白無地にする。色数を少なくしつつⅤゾーンにライムグリーンのビビットなネクタイを単品で投入すると印象ががらりと変わる。バッグと靴は夏らしく明茶で揃えてみた。
Jacket : Pueple Label
pants : Incotex
Shirt : Fray
Tie : E.Marinella
Pocket square : Irish linen 
Shoes : George Cleverley
Bag : Hermes

(6) #55チェックのジャケット
① グレンチェック
チェックの上着も春夏用に1着は持っていたい。使い勝手の良い柄グレンチェックに白蝶貝のボタンがさわやかな印象の上着はパープルレーベルのファクトリーカルーゾ製。シャツは安定の「白無地」。一時期はストライプや格子柄しか着なかったが最近は顔まわりをすっきり見せる白無地が定番になりつつある。


②外羽根の靴
ナポリのロンドンハウスを紹介した写真を見ると当主のルビナッチ氏はスーツでもジャケットスタイルでも外羽根靴というのが好きなようだ。それに倣って茶色の外羽根セミブローグをイン。ネクタイは小紋のマリネッラを、ポケットスクエアに差し色のピンクをチョイス。鞄を除き上から下までイタリアものでまとめてみた。
Jacket : Caruso
Shirt : FRAY
Tie : E. Marinella
Pants : Incotex
Shoes : Silvano Lattanzi
Bag : Mansaw

日本も世界に遅れまいとオリンピックを前にコロナのワクチン接種率を上げている。フランスはこの夏海外からの旅行客を受け入れる方針を示し、アメリカも7月までにワクチン接種を7割完了させると発表した。オリンピックを契機に思ったよりも早く世界はノーマルに戻るかもしれない。

好きなジャケットを着てパブで一杯飲んで語らい週末を味わう…そんな日常が消えて2年目の6月。ようやく永世定番ジャケット春夏編も完結したが秋冬もののジャケットは春夏以上に数が多い。この秋に好きなツイードジャケットに再び袖を通す時、世界は日常に戻っているのかどうか…まだ涼しさの残る信州でふとそんなことを考えた。
By Jun@RoomStaff