2021/06/26 07:16

ジャパニーズアイビーからブルックスに代表される大人のアメリカントラッドに染まっていった1984年、雑誌ポパイに「フレンチアイビー」が紹介されると衝撃を受けた。丁度その頃メンクラでフランスのJ.M.Westonが紹介され、見開きいっぱいに載った黒の180ローファーを見て「よしパリに買いに行くぞ」と思ったものだ。誰もが新しい着こなしを求めていた時代だったのだろう。
それまでのアイビーのように「ねばならない…」よりずっと自由に色やアイテムを楽しみつつ、アイビースタイルからは外れない。かと思えばジーンズに革靴を履いてラコステのポロシャツを合わせる…なんてマニュアルっぽいところもあって、アイビー信者だった自分もすんなり入れたのだと思う。
中でもリーバイスとウェストンの組み合わせにやられた。正反対の組み合わせから洒落た着こなしが生まれるところなどラルフローレンにも通ずるスタイルがある。そこで今回はLevi's×J.M.Westonの組み合わせを中心にフレンチアイビー四方山話を書いてみようと思う。
※扉の写真は手持ちのJ.M.ウェストン
(1) ①1986年製376

リーバイス×ウェストンのトップバッターは何と内羽根の376フルブローグになる。購入は初クロコと同じ1995年だが製造年順なので最初の登場という訳だ。太めのシルエットが特徴のリーバイス201にはローファーよりカントリーシューズが合う。シボ革のフルブローグで純正スポンジソール仕様というのも正に田舎向け。酷使し続けて35年、裂け目もあるが未だ現役というウェストンの底力を見せてくれる。
②Levi’s201XXとのコンビ

リーバイスUSA企画による201XXは復刻版の中でもワタリが太く、シンチバック(尾錠)のついた正に労働着。型番の201も501の廉価版だったそうで、1937年~1942年頃の501XXをイメージして風に型番201を再使用したのだとか。ホワイトオークのコーンデニムを用いたり隠しリベットを再現したりと当時は画期的だった。トップボタン裏の555刻印で有名になったバレンシア工場の作りは今も評価が高く、古着としての価値も上がってきているようだ。
(2) ①1988年製180黒

1988年はカーレースのF-1でホンダとマクラーレンが初タッグを組み16戦中15勝した年だ。ヨーロッパ旅行中行く先々でホンダの名前を目にした。帰国前にパリのシャンゼリゼ店で初ウェストンを買ったが、何もない店内でF-1の話をしつつ両足を計測された。暫し待つと「モカシン、ヴァラ」と言いながら出してきたのが写真の靴。伝説のタイトフィットに長年耐え、30年を経た今極上の履き心地という果実を得ている。
②180黒の着こなし

フレンチアイビー三種の神器は「ラコステ・リーバイス・ウェストン」だと思う。特にフレンチアイビーのキーアイテムとしてラコステは今も気に入ったものがあるとつい買ってしまう。元祖アイビー信者はフレンチバージョンでも小物に拘る。ベルトは靴と同じウェストンのポロサスクロコ、時計もリボンベルトに替えたバブルバックとお気に入りで揃えてみた。
Polo Shirt : LACOSTE
Jeans : Levi's501white1996y
Belt & Shoes : J.M.Weston
Socks : Brooks Brothers
Watch : Rolex
③フランス製のラコステに拘る

海外駐在時の戦利品。全てフランス製のラコステだ。巷ではフララコだのフレラコだの呼ぶそうだがタグにMADE IN FRANCEがあるものがフレンチアイビー暗黙の了解。どれも年2回のセール時期に20%オフで買ったものだ。数年前フランス製のラコステが復活したがその後再販の気配を見せない。こんなことならもっと買っておけばよかった…。
(3) ①1990年製180クロコ

1995年のNY店での購入。製造が1990年だからNY店で5年間も売れなかったことになる。当時はニューヨーカーも中々手を出さなかったのだろう。月日は流れ四半世紀が過ぎた今エキゾチックレザーの靴はすっかり定着して様々な靴メーカーやブランド、誂え靴屋がクロコダイルの靴を世に出している。だがクロコローファーの元祖といえばこのウェストン、キングオブローファーの称号は伊達じゃあない。
②180クロコと505プレミアム

最近はリーバイスUSAもアメリカ製のジーンズに力を入れているようでプレミアムと称して「MADE IN THE USA」コレクションをリリースしている。アメリカ製501や505が買えるのは嬉しいが日本企画のLVCが全てアメリカ製でなくなったのは痛い。それにしても180クロコは31年が過ぎたというのにほとんど購入時と変わらない外観に驚く…履く回数が少ないのもあるがウェストンの堅牢さは特別だろう。
(4) ①1991年製180茶

1991年パリ駐在帰りの父親が帰国土産に買ってきた180(茶)。180黒と同じサイズゆえ万力締めの再来だったが不思議と馴染むのは黒より早かった。当時日本でウェストンが買えたのはシップスだけ。帰国後早速この靴を履いて渋谷のミュージアムフォーシップスに直行、店員と四方山話をした。それにしてもこの靴でさえ30年が経過、型崩れもなく最初と同じ姿の靴なんて他にはちょっとないだろう…。
②180茶の着こなし

フレンチアイビーたらしめる核となるアイテムがウェストン…ならばラコステに拘らず様々なアイテムを自由に混ぜたいところ。ここでは日本のシップスがアメリカに別注したボタンダウンシャツとシルバーバックルがクールなラルフのクロコベルト…それにフランス軍採用スイス製クロノに日本のユニクロソックスと多国籍編成の着こなしにしてみた。
Shoes : Weston180
Jeans : 1989y Levis501
Shirt : Ships Made in USA
Belt : Ralph Lauren
Watch : Airain TYPE20
Socks : Uniqlo
(5) ①1993年641濃茶

1993年は海外駐在前の有休消化でフランスとイタリアを訪問。久々のウェストンシャンゼリゼ店はモダンで明るくディスプレイまであって驚いた。早速買いたての641(ゴルフ)でパリを散策、リッジウェイ版純正ソールは敷石が多い公園で威力を発揮し、帰国前にはすっかり馴染んでいた。ところでこのゴルフ、レディスは最初からキルト付だがメンズは別売…仕方なく後年買い足したものを付けて撮影している。
②641濃茶の着こなし

641はゴルフの愛称だがジャーナリストシューズとも呼ばれているそうな。どこへでも履いていけてそれなりに見えるからだとか。とはいってもテイラードものよりカジュアルが合うだろう。ここではラコステに替わってブルックスのポロシャツを用意。ジーンズも日本製リーバイス501大戦モデルと捻りを加えてみた。アーキュエイテッドステッチがペンキ書きという特殊性ゆえ大戦モデルの501は結構人気らしい。
Jeans : Levi's44-501XX
Shoes : Weston641
Polo shirt : Brooks Brothers(USmade)
Belt & Socks : Mulberry & Uniqlo
Watch : Rolex16233
(6) ①2000年製180サマー

ジーンズは色落ちの進んだ501XX1996年製。靴もジーンズの色落ち具合に合わせて夏らしくサマーローファーをチョイス。ブレイク製法の180だ。現在は廃版となりルモックという名で展開されている。毎年夏限定とはいえ素足風ソックスでよく履いたせいかソールがかなり薄くなってきた。思えば2000年夏のパリ…酷暑の中677(ハントダービー)を買うつもりだったのに涼し気なサマーローファーになったという曰く付きの靴だ。
②サマーローファーとルモックの違い

左のサマーローファーは#180の木型に対して右のルモックは#281。サイズも左(サマーローファーが)7.5-Cに対して右(ルモック)が8-D となっている。店員の助言どおりルモックの方が細身だ。180のサイズより「ハーフ上げが良い」と聞いていたが実際は「ウィズも1段上げ」だったことになる。写真からは違いがほとんど分からず、やはり「靴は履いてみないと分からない」という結論に帰する。
(7) ①2010年製180アリゲーター

2010年の夏、パリのルーブルへ久々の訪問と思ったら休館日…急遽ウェストン本店でエスプレッソを飲みながら購入したのが写真の180アリゲーター。この時も初ウェストンの22年前と変わらぬ計測結果に感心した。キツいと思ったが万力締めほどでもなく意外に馴染むのが早そうだ。肝心のリーバイスは1996年製505。ワタリの細い505の方がローファーには合うと実感。
②180アリゲーターと96年製505

ワニ革のローファーは1990年代後半を境に天然クロコダイルから養殖アリゲーターに替わったそうでマットな表面が特徴。それでも左右対称になるようにワニ革素材を見比べてカットしたのだろう、この靴もかなり左右対称になるよう工夫している。ジョンロブなどワニ革のローファーを展開するブランドは他にもあるがやはりウェストンは別格だ。
(8) 2018年製677

コロナが流行る前年の2018年パリを訪問。滞在したアパートに近いウェストンマドレーヌ店で購入した677ハント。マドレーヌ店の在庫とシャンゼリゼの在庫を比べて一番良いものを選んだ。ハントダービーは接着リブのない手縫い靴なので思ったよりも返りが良く履き心地も柔らかいという説もあるが真偽のほどは履き込んでみないと分からない。キルトは日本購入。
②2018年製677の着こなし

ラルフローレンの提唱する折衷主義はフレンチアイビーと共通する部分がある。ならばラルフのアイテムとも好相性のはず…ここではシャツベルトソックスの全てをポロラルフローレンで揃えてみた。デニムは復刻版55-501いわゆるビッグEでワタリが広いので靴も安定感のある677と相性が良いようだ。
(9) ハント677のMTO

マドレーヌ店にあった677の別注サンプル。定番品が1910€なのに対して3100€…何と1190€ものアップチャージだ。1€=133円の今、16万円のアップだがその分格好良さも半端じゃない。コロナ禍が収まったらパリでオーダーしようと思う…リッジウェイタイプの純正ラバーソールでアッパーはシボ革とカーフのコンビに掬い縫いと出し縫いは写真のように…なんて想像するだけでも楽しい。
紳士靴の本場は?と聞かれると「イギリス」と答えることが多いが、実は一つのメーカーで一番多く所有しているのは目下フランスのウェストンになる。かつてはエドワードグリーンだったこともあるが、いつの間にか英仏逆転現象が起きていたのだ。ロンドンに行ってもエドワードグリーンの店に寄ることはないがパリに行くと今もウェストンに必ず立ち寄るのも本音の表れかもしれない。
そしてジーンズといえばやはりリーバイス…昔はリーばかり履いていたし今もRRLや国産のジーンズを時々買ってはエイジングを楽しんでいるが、いつも探しているのはリーバイスなのだ。ボタンダウンシャツがブルックスに行き着くのと同じ…オリジナルには敵わない。そう考えるとフレンチアイビーが推すリーバイス×ウェストンのタッグは自分にとって一番興味のある組み合わせということになる。
最近は既製品を買うこともだいぶ減ったがこれから先もウェストンやリーバイスを求めて店巡りをするだろうしフランス製のラコステが出たら真っ先に買うんだろうと思う。フレンチアイビーの影響力恐るべし…。
byJun@RoomStaff