2021/08/23 07:58

当店ではリーバイスデッドの66前期ビッグEや80年代赤耳、Levi's Vintage Clothingや90年代のユーズド、新旧RRLなどメイドインUSAのジーンズを揃えている。何しろBDシャツとジーンズはアメリカンカジュアルのアイコン、できるだけ米国製に拘わりたい。
一方個人的には日本のジーンズにも興味がある。輸入生地を参考に改良を重ねたジャパンデニムは今やエルメスやルイヴィトンをはじめ世界がそのクオリティを認めている。勿論デニム地だけでなくパターンやディテール、デザインなど品質改善に抜かりはない。
そこで今回は最新の1本を含め手持ちの日本製ジーンズについてあれこれ書き記してみようと思う。
(1) 最新の1本

日本の老舗ジーンズといえばビックジョン。前身は国産ジーンズブランド第1号Cantonを生産していたそうで当時は輸入生地だったものを国産化した日本最初のジーンズメーカーだそうだ。後に商品名をとって社名をビッグジョンに変更、昨年は創業80周年を記念して世界五大陸のオーガニックコットンをブレンドして織られたスペシャルな生地XXXXを発注、最新の1本はその生地で作られたもの、2本目のビッグジョンになる。
(2) デニムのウェイト

XXXXの生地は15.8オンスとヘビーオンスとしては比較的軽い。それでもジーンズ単体の重さは未洗い状態で910g…日頃13オンスあたりのジーンズに慣れているので重く感じる。中には28オンスの生地を使い重さ2.0㎏のジーンズもあるとか。調べてみたら「着用中にウェスト周りや膝裏、裾などにけがを負う可能性もある」とまで書かれている。身体を守る衣類で怪我したとあっては本末転倒になりかねない。
(3) 初洗いの準備

ケアインストラクションはレザーパッチ下、目立つのでナイフでカット。シュリンク率は6~8%とのことで、購入したW32-L33が最初の水洗いでウェスト股下ともに6㎝くらい縮むらしい。ショップから「買ったら最初に水洗いを行い、縮んだ状態で持ち込めば無料で裾上げする」とのこと…早速水洗いを敢行。
(4) 洗い後の変化

水洗いをする理由は①生地についた糊を落とす②生地が詰まることで綺麗に色落ちする③正確な裾上げができる…からとのこと。指示どおり裏返してボタンを留めジッパーを上げたら洗濯機で水洗い。一回では糊が落としきれないのかafterを見れば分かるがまだゴワゴワしている。レングスは確かに6㎝くらい縮み、ウェストもかなり締まったようだ。
(5) バックポケットの補強

ビッグジョンのバックポケットは横一文字のシンプルなステッチ。下半分は生地を二重にして補強、ものを入れても簡単に穴が開かないようにしたとのこと。普段ジーンズの後ろポケットにものを入れる習慣がないのでご利益には預かれそうもない。8月の東京は暑すぎるので信州の山小屋で初履きをすることにした。
(6) 信州で履き下ろし(その1)

スリムストレートとはいえ全体的にゆとりがある。32inchを選んだが31inchでもよかったか…。このまま毎日履き続ければアタリや色落ちを楽しめるが、なんせ暑い。色が濃くてヘビーなジーンズは後回しなりがちだ。ジーンズに限らず服好きは夏が来ると「早く秋が来ないか…」と思うのではないだろうか。
Boots : RRL
~他の国産デニム~
(7) ビッグジョンIVY(その1)

ビッグジョンの1本目。行きつけのジーンズショップから「これ良いですよ…」と薦められ、何十年ぶりかで買ったビッグジョンはIVYテーパードとお洒落なネーミング。クロップドパンツのようなシルエットは「上は紺ブレにBDシャツ、短く裾上げされたジーンズと本革ローファー」というアイビースタイルをイメージしたらしい。
(8) ビッグジョンIVY(その2)

踝丈が標準らしく、ソックスが着こなしの要となる。夏らしく淡い色目のアーガイルにホワイトバックスを履いてみた。靴下がよく見えるように裾を短く折り返すとセルビッジとアタリの出た裾が良いアクセントになっている。夏のお洒落靴ホワイトバックスだが、インスタを見ていても履いている人が殆どいないのが残念。手入れが大変そうだからか…。
Shoes : Crockett & Jones
(9) フルカウント(その1)

定番の5ポケッツばかりだと変わったデザインが欲しくなる。そんな時に買ったのが写真のフルカウント。準定番のブッシュパンツは時々品切れになるが今も買えるのが嬉しい。他の定番品同様13.7オンスのライトデニムを使用、ブッシュ(藪、茂み)パンツの名に反して普段使いに最適、履き心地も軽い。
(10) フルカウント(その2)

ジーンズのL字ポケットを見慣れた目には新鮮な貼りポケットがブッシュパンツの最大の特徴。ポケットのフラップ同様ウエストもドーナツボタンではなくスナップボタンが二つ並ぶ。当然前開きもジッパーになる。フルカウントは1995年の創業以来定番ジーンズを作り続けているとのこと。リーバイス501のようにフルカウントにも根強いファンがいるようだ。
Boots : Ralph Lauren
(11) 桃太郎出陣(その1)

バックポケットの白ラインやインシームの桃色ステッチ、赤耳ならぬ桃耳が特徴の桃太郎の出陣。他にもスレーキに織られた「桃の家紋」や革パッチの桃太郎など「如何にも日本らしいデニム」ということで海外での評判が高いようだ。15.7オンスの生地は冒頭のビッグジョンXXXXとほぼ同じ、洗濯後の雰囲気も似ているが特濃と名乗るだけあって藍色の濃さはビッグジョンを上回る。因みに出陣の白ラインが2本なのは二本=日本という洒落からだとか。
(12) 桃太郎出陣(その2)

インシームのピンクステッチやセルビッジのピンクラインはよほど近づかない限り分からない。シルエットは程よいスリム感でビッグジョンよりはタイトな雰囲気がある。レッドウィングからオールデンまで何を履いても似合うシルエットが特徴だ。2006年と新しいジャパンデニムブランドとのことだが、今後に期待したい。
Boots: Ralph Lauren
(13) リゾルト(その1)

リゾルトはドゥニームの創始者が新たに生み出したブランド。ストレートの710とテーパードの強い712から505をイメージしたという712をチョイス。生地は13.75オンス、裾のレングスは29、30、31から選べる。防縮加工(サンフォライズド)された生地とはいえ縮みを見込んで31をチョイス。
(14) リゾルト(その2)

リゾルトは股上が浅くテーパードの強いデザイン、どちらかというと(7)のビッグジョンと似たシルエットだ。色落ちは今回紹介した中でも1番早く、ヒゲも出始めている。ワンサイズ下がリゾルトお勧めのフィットらしいがそれに従うと最初はキツい。靴ならさしずめJ.M.ウェストンのローファー万力締めといったところか。慣れれば極上の履き心地になるか…。
Shoes : Timberland
(15) 色落ち具合

今回紹介したジーンズを色の順に並べてみた。やはり桃太郎出陣が一番濃くて真新しいビッグジョンXX002が続く。1番早く色落ちしているのがリゾルトということになる。同じ回数履いている訳ではないが、リゾルトの色落ちは結構早いという印象がある。
リーバイスがアメリカ国内の自社工場を閉鎖してからアメリカに残るジーンズ製造メーカーは少なく、様々なブランドの委託を受けているそうだ。テラソンとRRLの工場は同じだと聞いたこともある。日本のジーンズブランドも生地は特定のデニム工場に依頼するなど互いに融通しあってものづくりを進める様は似たようなものか。
アメリカといえば老舗ブルックスブラザーズのBDシャツを請け負っていたガーランドはコロナ禍で倒産後復活したが、テーラードを請け負っていたサウスウィックは復活しなかった。今回紹介した老舗のビッグジョンも8年前に官民ファンドで再生しており、アパレル業界の苦闘はまだまだ続きそうだ。
それにしても最近の若い人はジーンズを履かない…。
by Jun@RoomStyleStore