永世定番 上着(秋冬)編その1 | Room Style Store

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2021/10/03 02:12


荒天のスタートとなった10月初日、気温は18℃と11月下旬並みの気候に加え、台風の影響で雨が激しく降っている。仕方なく家事でもと衣替えに専念…皺の寄った上着にアイロンのスチームを当てて袖山を膨らませて並べた。いつの間にかクローゼットの中はすっかり秋色に変わっていた。

スーツを着る必要もなくなり日頃はカジュアル、ネクタイを締める時も写真のように上着は十分ある。むしろ仕事用に限定したら出番のないままシーズンを終えてしまうかもしれない。「スーツやジャケットはもはや仕事着ではなくお洒落着である」と説く服飾関係者の言葉を思い出した。

そこで今回は春先に特集した永世定番の上着(春夏)編 の続き、(秋冬)編をまとめつつお洒落着としてのジャケットの使い道を考えてみたい。


【#56ネイビーブレザー】
(1) フランネル素材
ネイビーブレザーは春夏の永世定番にも出てくる紳士服のマストアイテム。羽織るだけで配慮のある身嗜みに変身する。写真は3パッチポケットに3つボタン段返りの純IVY調、お洒落に着るならクリケットベストやキャップを足してはみてはどうだろうか…ただし色数が増えすぎないようベストとエンブレムやキャップなど小物を「赤と黄色」で揃えている。
Blazer : Brooks Brothers
Trousers & Vest : Beams
Shirt & Tie : Polo Ralph Lauren
Cap : Alderney


(2) キャップを集める
ラフウェアにも良しジャケットスタイルに良し…昔からキャップが好きで旅行先で見つけては集めてきた。中でも右列奥のエルメスは高級感溢れるレザーを使いお値段もド級の逸品。他には左列手前の1970年代に流行った懐かしのアポロキャップ(風)。RRLの今季ものだ。後は右列手前のAlderney、なんとガンジーニットを手掛ける英国の老舗でもちろん英国製だ。そして左列一番奥はアメリカ製のRowing Blazers。
左列手前から
①RRL②RRL(三ツ星時代)③Rowing Blazers
右列手前から
①Alderney②SHIPS③Hermès


(3) 足元
紡毛系のフランネルブレザーに合わせてド定番グレーフランネルのパンツを履く。ついでにソックスも起毛感のあるアーガイルをチョイス、さて肝心な足元だがお洒落に着こなすなら紐靴よりローファーかタッセルスリッポンの方が良い。写真はクロケット&ジョーンズのコードパンローファー。


(4) クリケットベスト
イギリスではクリケットベストをビスポークできる。メーカーはロックフォード、ストライプの色と幅を自分の好みに指定し、ネックのみか、ネックとウェストの両方に入れるか選ぶ。もしセーターを選んだら袖口にストライプを入れることもできる。出来上がりは想像以上。懐かしのクラークス英国製デザートブーツと一緒に撮影してみた。


【#57ヘリンボーンツイード】
(5) ハリーキャラハン御用達
ハリスツィードのヘリンボーンは定番中の定番。若い頃背伸びして買ったが全然似合わなかったことを思い出す。写真は映画ダーティーハリーでクリントイーストウッド演じるハリーが着ていたツィードジャケットに触発されて買った2着目。3つボタン段返りでパッチポケットとまたもやアイビー調か?と思いきやウェストが絞られダーツも入っている。さてどこのブランドだろうか…答えは後に出てくる。
Shirt & Tie : Polo Ralph Lauren


(6) 足元
映画の話の続きだがハリー刑事は劇中内羽根の黒紐靴を履いていた。自分ならコードバンプレーントゥを合わせたいところだが未だに買わずじまい。コロナが収束したらアメリカに行って買おうと思っている。代わりに黒のウェストン180を用意、同じ黒のサキソニーパンツと合わせてモノトーン風なコーデにしてみた。仕事着の縛りを捨ててお洒落に着こなすなら…と考えるのも中々楽しい。


(7) ヘリンボーンに凝る
クローゼットを見るとヘリンボーンがやけに多い。ジャケットやコートまで数えると6着もある。写真は一番上がブルックスブラザーズの70年代ビンテージ。その下の2着は80~90年代のポロラルフローレンのニアビンテージもので全てアメリカ製。一番下が(5)で紹介したジャケット…これだけがイタリア製で何とベルベストが作っている。


【#58ウインドウペーン】
(8) ソフトな仕立て
秋冬ものといえば大柄のウィンドペーンも定番。コンサバからボールドまで生地は色々、既成で気に入らなければ仕立てるのはどうだろうか?写真はフィレンツェのサルトG.セミナーラで誂えたもの。ウェスト部分に斜めのダーツが入るフィレンツェ仕立ては格子柄が途切れないので見栄えが良い。カシミア50%の生地はドーメル、パッドや副素材は薄く袖付けもマニカカミーチャ仕上げの上着はカーディガンのようだ。
Jacket : Gianni Seminara 
Pocket Chief : RODA
Shirt : Micocci 
Tie : Kamakura Shirts


(9) 足元
トラウザーズは同じセミナーラで仕立てたもの。サルトでジャケットを誂える時は一緒にパンツを頼むと良い。仕上げの靴は上着の格子に入るオレンジを拾ってラッタンジのアランチャ(橙)をチョイス。上着の柔らかさとは真逆のタフなソールは買って23年も経つのにちっとも変わらない。イタリアは石畳が多いので靴のソールも硬いのだとか。


(10) イタリアの靴(その1)
一時期イタリアに年2〜3回通っていた頃はローマかミラノのラッタンジ、そのラッタンジを扱うフィレンツェのマウロヴォルポーニに必ず顔を出していた。結局その3店でもれなくラッタンジを購入したが、当時のラッタンジはどれも格好良かった。手前左のアスキットなんて世界一美しい手縫い既成靴とさえ思える。


【#59グレンチェック】
(11) ナポリ仕立て
グレンチェックはスーツでもジャケットでも定番柄。写真はナポリの名門キトン傘下のサルトリオのもの。アメリカやイギリスのジャケットより軽くてストレスのないイタリアものは「あぁ~やっぱりいいな」と思わせる魅力がある。イタリアに敬意を表して英国製のシーワード&スターン特製チーフ以外はオールイタリアンで組んでみた。
Jacket : Sartorio Shirt : Micocci
Trousers : LIverano su-misura
Tie : ETRO  Chief : Seaward & Stearn


(12) 足元
足元は廃業したミラノの名店アルカンドのノルベジェーゼ。サンプル靴なのでフィットはやや緩いが手縫い靴ならではのオーラがある。そういえばミラノでは同じく注文靴屋のメッシーナも閉店した。靴屋の近くにあるバールで英語とイタリア語を話す店主を介して故メッシーナ親方と注文のやり取りをしたりコーヒーをご馳走になったりしたことを思い出す。ユーロ誕生の陰で良質な店がどんどん閉店していった時代だ。


(13) イタリアの靴(その2)
アルカンドのノルベサンプル(右)とよく似たシルバノラッタンジ(左)。こちらはヴェンティベーニャ製法で作られている。この2足に限らずイタリアのUチップは摘みモカタイプが多い。アッパーと外羽根パーツの重ね方もよく似ている。最近ではローマ在住の靴職人吉本清一さんもよく似たイタリアンタイプのビスポークUチップをインスタグラムで紹介していた。


【#60ガンクラブチェック】
(14) 革ボタンに替える
アメリカから届いたばかりのガンクラブジャケットは金ボタンのブレザータイプ…少々派手なのでまずは革の包みボタンと交換するところからスタート。ボタンの直径を測って同じサイズのボタンを手芸屋のオンラインショップから取り寄せたら自分で付け替える。ボタン付けやパンツの簡単な裾上げなどはDIYを心掛けたい…。


(15) 袖を通す
さて、ボタンを交換したらいよいよ袖を通す。ジャケットはロウイングブレザーズ、アメリカ製で最初から切羽が切られているのが珍しい。例によって腕の短い自分には袖丈が長すぎる…切羽部分から直すのは大変なので肩から詰めたが、赤の格子が身頃と袖でずれてはいけない…いつもお世話になるコーダ洋服工房ではその辺をうまく調整しながら仕上げてくれた。
Jacket : Rowing Blazers
Shirt & Tie : Polo Ralph Lauren
Pants : Brooks Brothers


(16) 足元
ツィードとは相性抜群のスェード靴を用意。通常の牛革ではなく鹿革を起毛させたスタグスエードは特に毛足が長い。昔靴クリームを誤ってつま先に付けてしまったが中性洗剤を含ませた濡れタオルでたたいて汚れを落とし自然乾燥。その後ブラッシングをするだけで見事復活した。毛足の長さが七難を隠すといった感じか…。


(17) ペッカリーグローブ
胸ポケットにグローブを挿すのはファッション誌で紹介されていた着崩しテクの一つ…ツィードジャケットの胸ポケットにドレッシーなチーフは合わないな…と感じたらグローブ挿しにトライしてみて欲しい。ただしライニングなしの薄いグローブでないポケットに収まらない。個人的にはアンラインドのペッカリーをお薦めする。


【#61ソリッドツイード】
(18) ウィークエンドツイード
秋冬の定番といえば無地のツイードを忘れてはいけない。写真は名門ジョンGハーディーのウィークエンドツィードで仕立てた上着。正しくはブルーキャットレッグといいう生地だそうだがウィークエンドという名のとおり生地のウェイトは軽く着心地もライト。身頃のムーンポケットはウィンザー公のジャケットを参考にしている。
Jacket : Fallan & Harvey
Shirt : Purple Label Tie : Huntsman
Trousers : Incotex

(19) 足元
英国のジャケットということで足元も英国を代表するジョンロブを用意。ブルーのジャケットには定番のグレー系が鉄板なれど思い切ってペパーミントのコーデュロイパンツを履いてみた。イギリスのブランドじゃまず出てこない色目は意外にもサビルロウ仕立てと好相性…パンツ専業ブランドインコテックスの面目躍如といったところ。


【#62カシミアジャケット】
 (20) ブルージャケット
秋冬物の定番といえばカシミア。後年サビルロウのデイヴィス&サン傘下に入ったピーターハーヴィーに頼んだもの。体型が変化したので数年前銀座のサルトで袖筒から着丈、胴絞りまでかなり補正している。目下一番フィットしたジャケットかもしれない。トラウザーズは同じくデイビス&サン。
Jacket &Trousers : Davies&Son
Shirt : Paul Stuart 
Tie : Seaward & Stearn

(21) 足元
靴は同じロンドンの誂え靴フォスター&サンのエプロンダービー。コロナ過でジャーミンストリートのフォスターが撤退したことはSNSで話題になっていた。ロックダウンの影響など様々な要因が重なり今はビスポーク部門のみ工房をロンドン郊外に移して対応していると聞く。30年前の冬、初めてジャーミンの店を訪れた時のことを思い出した。


(22) ロンドンの誂え靴
エプロンダービーは秋冬靴の定番、エドワードグリーンのドーバーから始まりジョンロブ(左)でもフォスター(右)でも(実はクレバリーでも)誂えている。ラストメーカーは違えどボトムメイキングが同じ職人なので雰囲気が似ている。従兄弟のような関係といえば良いだろうか…。

雑誌のアンケートによれば一般企業ではスーツ派が6割弱でジャケット派は2割強、これが役職付きになるとスーツ派が約9割にも達する。ところがスタートアップ企業では一転してスーツ派が3割弱、ジャケット派が4割と逆転している。SDGsへの取り組み等もあり今後オフィスカジュアルの流れは加速し、スーツの退潮傾向は加速すると思われる。

一方外資系は「成果のでる服装であれば構わない(見た目で判断しない)」ということでノージャケットというところさえあるそうだ。中にはジーンズとポロシャツなんて答えもあったりして驚く。近い将来リモートワークで全てが完結すれば本社ビルやオフィスはもとよりオフィスウェアというカテゴリー自体もなくなる…そんな気さえしてくる。

その時永世定番としてリストアップしたアイテムはどんなふうに位置付けされているのだろうか。ひょっとして定番という言葉さえ意味のない時代になっているかもしれない。

By Jun@RoomStyle Store