2023/02/07 01:15

靴好きは大抵靴下にもこだわるもの。パンツの裾に隠れて殆ど見えないのに人目を引く。それもそのはずSock(靴下)の隠語には「強烈な印象を与える」という意味もあるくらいだ。スーツ姿には薄手でスムーズな靴下を、カジュアルな服装には色や素材はもちろんゆったりとした履き心地の靴下を知らず知らず選んでいるに違いない。
ドレスコードがなくなって革靴を履く機会も一気に減った。日頃スニーカーやせいぜいローファーに綿パンとスウェット、アウターを羽織ってしまうとネクタイがないだけにお洒落のしどころは靴下くらい。そのせいか近頃ソックスが大いに気になる。先日も英国の老舗に注文したが返事がない…商品到着まで紆余教説がありそうだ。
そこで今回はカジュアルソックスに的を絞ってあれこれ考えてみようと思う。
《コットンソックス》
【ラルフローレンの広告①】

ソックスといえば80〜90年代ラルフローレンの広告を思い出す。当時日本の靴下はどれもゴムがきつくて足に跡が付くほど…ところがラルフの広告に出てくるソックスは蛇腹のようにゆるゆる…なぜかそれが格好良かった。ほどなく日本でもルーズソックスが大ヒット、靴下がファッションの主役を演じる時代が突如やってきた…。
(1) 日本未展開

日本のソックスは履くうちにずれるなんて欠陥商品という思いがあったのだろうか。仕方なくルーズなソックスを求めてNYやハワイに出向いては買い物ついでにアメリカ製のソックスを買い足したことを思い出す。写真はどれも30年くらい前のもの。当時と殆ど変わらずデッドに近いものもある。
(2) 履き口

ラルフローレンのアメリカ製ソックスは履き口部分の一番上だけゴムが入ったものと(左2足)とゴムなし(右2足)のものがあった。どちらにしても履くうちにずり落ちてくる。そのたるみ具合がいい塩梅に出るのが魅力だった。残念ながらアメリカ製のソックスは90年代半ばに姿を消してしまいファクトリーも廃業したようだ。
【参考資料①】

ソックスの履き口を拡大したところ。リブ編み部分の最上部に数本のゴム糸が通っているのが見えると思う。このゴムだけでふくらはぎにソックスを留めておくことは到底不可能、歩くうちにすぐずり落ちてしまう。だからといってパンツの裾をまくって靴下を引っ張り上げはしない…そのままルーズに履くのが格好良かったのだ。
【ラルフローレンの広告②】

再びラルフローレンの広告から…ボートに乗った青年とデッキスニーカーにゆるゆるなホワイトソックスが絵になる。素足で履かないのが肝、くしゃくしゃな足元はルーズソックスが流行る前の広告だがインパクトを与えた可能性がある。因みにルーズソックスは和製英語、バギーソックス(Baggy Socks)がそれに該当するらしい。
(3) デッキスニーカー(その1)

ラルフの広告を参考にまずはキャンバスデッキから…アイビー世代はレトロなスニーカー好き。エアマックスは若者に任せてローテクタイプ一直線だ。写真はアナトミカのデッキスニーカー、古いトップサイダー好きなオーナー肝入りの内振りラストで作られている。心血注いだ効果は絶大で本家トップサイダーより履き心地が良い。
(4) 履いてみる

適度なルーズ感が出ている楽ちんソックスはゴムなし履き口のおかげ…慣れてしまうとゴムのきつい普通の靴下が窮屈で仕方ない。因みに写真のように最初からゴムが入っていない靴下はスラウチ(だらしないの意)ソックスと呼ぶそうな。一度スラウチソックを履いてみて欲しい。ストレスのない足首は病みつきになるはず。
(5) デッキスニーカー(その2)

こちらは秋冬用のデッキスニーカー。元祖スペリーソールのトップサイダーにNYのローイングブレザーズが別注をかけたスペシャルバージョン。アッパーはキャンバスの代わりにヘリンボーンツイードを採用している。エッジ部分を走る2色の青線がチャームポイント、日本未展開ものゆえ本国サイト経由でNYから取り寄せた。
(6) 履いてみる

「どんな服にも似合う究極の靴下の色は…」というタイトルのネット記事を読むと「春夏に素足で過ごすとき足元のコーデに悩むことはないのに秋冬になっていざソックスとなったら急に悩ましくなる。だったら素足の時と同じように足の部分を肌色に近づければいい。」とある。なるほど…ということで肌色に近いアイボリーを選んでみた。
【ラルフローレンの広告③】

88年の広告。当時ポロのドレスシューズは英国製かイタリア製、カジュアルシューズはメイン州のモカシンがラインナップの中心だった。ティンバーランド似のストラップ付モカシンも恐らくメイン州産だろう。この時代の広告といえば靴はもちろん靴下も見どころ、チラりと見えるカーキ色のソックスが参考になる。
(7) デッキモカシン

上の広告と同じカーキ色のコットンソックスにメイン州のデッキモカシンを用意。最近アメリカ製の靴の値上がりは凄まじくモカシンでさえ以前のAldenカーフ並み、そのAldenのコードバンシリーズに至っては少し前のロブパリ級だ。知人が「セレクトショップから欧米のインポートものが消えた」と言ってたがさもありなん…。
(8) 履いてみる

ソックス選びの肝はボディ(踵から履き口まで)の長さ。ここが短いと素足が見えてしまう。その点ラルフのソックスは大丈夫。チノパンの裾を折り返すとゆるゆるな足首の上にポロポニーが来る絶妙な長さが心憎い。こうしたルーズな靴下の火付け役は1988年の映画「ワーキングガール」で主人公が履いていたエアロビ用ソックスだとか…懐かしい。
【参考資料②】
ソックスのボディ

ソックスのボディ長の比較。一番左はオーガニックスレッズのコットンソックス。アメリカ製だがボディが短く夏向きか…。LLビーンのウールソックスは標準的な米国サイズ。ユニクロはボディも短く幅広なゴム部分がきつい。一番長いポロのソックスが長さやワンポイントの位置、履き口のフィットにこだわって作られているのが良く分かるだろう。
(9) マウンテンブーツと

お次はブーツソックス。本格的な登山靴とはいかないが雰囲気のよく似たマルモラーダを用意。アイボリーのボディに白黒の履き口、赤いラインが洒落たソックスだ。最近は革製の登山靴を見かけることも珍しくなった。昔の山男は皆手入れの行き届いた手縫いの革製登山靴を履いていたものだ。
(10) 履いてみる

ブーツの上でたるむソックス。ゴムなしの履き口では自然と写真のようなひだひだが出来てしまう。それにしてもコットンとはいえ地厚なブーツソックス、薄手の靴下と同じつもりで足入れすると靴が「きつい!」と感じることも多い。当然ドレスシューズはボツ、自ずとカジュアルシューズやブーツ系に落ち着くというわけだ。
《ウールソックス》
(11) ラグソックス

ここからは秋冬用のラグソックス。ラグソックスの由来を調べたら「ウール用品の古着を再生したラグウールから来ている…」との説があった。今はコットンラグソックスもあるが本来ラグソックスといえばウール素材のものを指したらしい。左はL.L.Beanのウールラグ、右は日本のHALISONマウンテンソックス。
(12) L.L.ビーンVSハリソン(価格)

無地と色付きの糸で編み上げたミックスソックスをラグソックスと呼ぶ向きもあるがL.L.ビーンはそのままラグソックスの名で、一方ハリソンはマウンテンソックスと命名している。履き心地はどちらも快適で保温力も互角。価格はアメリカ製のL.L.ビーンが2足セットで5,390円(1足2,695円)、ハリソンが1,980円とL.L.ビーンがやや高い。
(13) L.L.ビーンVSハリソン(素材)

ウールの割合はL.L.ビーンが77%でメリノウールを使用。ハリソンは76%で太番手のスコッチウールをベントレー社の超ローゲージ編み機で仕上げたもの。どちらもウール素材についてはこだわりがあるようだ。ゴムのような弾力性をもつポリエステルの割合はL.L.ビーンの方がやや高い。
(14) L.L.ビーンVSハリソン(履き心地)

ウールの割合も寸法もほぼ同じL.L.ビーンとハリソン。ただゴムが横糸に編みこまれている範囲はL.L.ビーンが履き口の色違い部分のみなのに対してハリソンはボディ上部のリブ全体に及んでいる。ゆるゆるソックス好きとしてはL.L.ビーンに軍配を上げるが日本製ハリソンも捨てがたい。
(15) コンバース&ラグソックス

アイビー世代のレトロスニーカーお次はコンバースの登場。日本製と違ってナイキ傘下のコンバースはクッション付きのインソールが特徴。ふわっとした履き心地はリジットな国産コンバースと全くの別物だ。コットンより一段と地厚のウールラグソックスと合わせてみたが果たして履き心地は如何に…。
(16) 履いてみる

ウールラグソックスはコットンものより厚みがあるせいかくるぶしのたるみは少な目で程よい感じ…ただ紐を結ぼうにも靴下分足が膨らんだことで最後の結び目が一苦労する。肝心の履き心地はクッションソールのおかげできつさは感じないが次にCT70を買うならハーフサイズ上げても良いかもしれない。
(17) キャンプモック&ハリソン

写真はハリソンのマウンテンソックス。ところで最近ルーズソックスが40~60代男性の間で大人気、火付け役のソックス専業メーカー”タビオ”では「大人男子が履けるルーズソックス」が欠品続きとのこと。作りは昔のポロと同じ履き口のトップだけにゴムが入ったタイプ。よもや自分だけだと思ってたルーズなソックスが流行りだとは驚きだ。
(18) 履いてみる

好評な「大人男子が好きなルーズソックス」のコーデ例は残念ながら見つからなかったが90年代ラルフの広告からキャンプモックとチノパンの組み合わせにトライ。因みにハリソンのサイトによればこのマウンテンソックス、作りが大きめで薄手のインナーソックスの上に重ね履きすれば防寒対策は完璧とのこと…頼もしい。
(19) L.L.ビーンとL.L.ビーン

今度は鉄壁のコンビ、ラバーモカシン×ウールラグとL.L.ビーン同士の組み合わせ。ウールラグソックスは一見ミックスソックス風ながらプリントもの。ラバーブーツの方は公式サイトによれば厚手のソックスなら普段履いているアメリカサイズ(8.5-D)でOKとある。もっともハーフサイズの展開がないラバーモカシンは実際履いて確かめるのが一番か。
(20) 履いてみる

ハーフサイズ大きめのラバーモカシン(9-D)とラグソックスの組み合わせ。厚手のソックスなので緩くはないが試しに同じラバータイプの外羽根ガムシュー(8-D)にもトライ。個人的(8.5-D)には厚手のソックスを履いても9-Dのラバーモカシンより8-Dのガムシューの方がしっくりくる。革と違って伸びないビーンブーツのフィッティングは難しい。
(21) サドルシューズ&ハリソン

最後はハリソンのマウンテンソックス×ウォークオーバーサドルシューズの組み合わせ。モカシンやスニーカー、ブーツも良いがせっかくだから紐靴にもチャレンジ。ただしドレッシーな英国靴じゃソックスが浮くのでカジュアルなコンビのサドルシューズに挑戦。写真を見る限り良い感じだが履いた印象や如何に。
(22) 履いてみる

サドルシューズとマウンテンソックスのコンビ。靴下が厚いぶん内羽根が開いて紐を結ぶのに一苦労。それでも雰囲気は悪くない。何よりグリーン(チノパン)とベージュ(ソックス)の組み合わせは「落ち着きのある配色で相性は抜群」らしい。靴×ソックス×パンツの鉄板コーデとしてアーカイブ入りか…。
先述したタビオの「大人男子が履けるルーズソックス」を深堀りするとリモートワークを経験したことで「肩の力を抜いた」ファッションへの欲求があるようだ。タビオでは「ルーズなソックス」といっても靴の中でずれないようフィットする部分と力を抜く部分を上手く組み合わせるなど製品化には精密さが求められたという。
2023年春夏コレクションもオーバーサイズの上着やバギーパンツがトレンドだったりソックスメーカーの福助が丈の短い進化系ルーズソックスを展示会で発表したり…ルーズは「だらしない」ではなく、タイトフィットの反対即ち「楽」だと解釈すれば「大人男子が履けるルーズソックス」が中高年の男性に人気なのも頷ける。
たかがソックスと思いがちだがソックスは靴と服を結ぶキーアイテム。季節や環境、用途や気分に合わせて探してみるとされどソックスという思いに至る。
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