ディープな商店街 | Room Style Store

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2023/03/21 02:08


平年より10日も早い3月14日に桜の開花宣言が出された東京…最速タイの記録だそうだが、早くも花見客で大賑わいの上野駅を久々に訪れた。昔は親戚のいる北海道を目指して上野駅から青森へ向かうのが毎年の行事だったが残念なことにその親戚も今は絶え、いつの間にかただ通過するだけの駅になっていたところだ。


久々の印象は昔より綺麗になったがかつて青森行の列車が発着していたホームは昔の面影を残している。しばし昔を懐かしんだら改札口を出て御徒町方面へ…大勢の人が行き交う高架下の右側は聞こえてくる言葉も様々、回復基調にあるインバウンド旅行客のようだ。さらに進むと目的地「アメ横」の看板が見えてきた。


そう、今回は数十年ぶりで訪れたディープな商店街「アメ横」での買い物記を紹介しようと思う。

《上野駅を懐かしむ》
(1) 頭端式ホーム
頭端式ホームと呼ばれる行き止まりのプラットホームが今も残る上野駅地上ホーム。15番線の車止めの前には有名な石川啄木の歌碑があってわざわざ写真を撮りに来る人もいる。「ふるさとの訛りが懐かしくなると停車場に行って人混みの中でそれを聞く…」という歌だが、生まれも育ちも東京なのになぜか胸に沁みる。

【参考資料①】
昭和50年代の上野駅
上野から青森行きの臨時急行に乗った頃の上野はまさにこんな感じだった。自由席の車両が停まる場所に何時間も前から並んで席取りに備える。指定席やグリーン席なんて贅沢な旅を知らなかった時代のことだ。急行と言いつつ辺鄙な駅で列車待ちをすることが多く、青森までゆうに10時間以上かかった。

【参考資料②】
パリのリヨン駅
こちらは頭端式ホームの様子がよく分かるパリのリヨン駅。別名櫛形ホームとも呼ばれるそうだ。過去ブログ「四都物語(前編)」から再掲している。日本ではこれほど大きなものはないが欧州を鉄道で旅すると中央駅は大抵この形だ。中でもローマのテルミニ駅は終着駅という言葉に相応しい作りが旅情を誘う。

(3) 上野駅(広小路口)
アメ横に行くなら反対側の「不忍口」が至近らしいが構内でノスタルジックに浸った後は近場の改札を出て人混みを避けつつ駅舎を後に…振り返るとそこは広小路口。昔高校を卒業した若者が働き手として集団就職列車で上京、最初の一歩を踏み出したのがこの広小路口だ。それを歌った「あゝ上野駅」の歌碑もすぐ横にある。

(4) アメ横の看板
人混みに流されていつのまにか通り過ぎていたアメ横の看板…慌てて振り返って撮影。写真の先が今しがた来た上野駅の方向。両側には飲食店が並ぶ。日本食というよりアジアンフード特有の臭いが懐かしい。シンガポール生活が長かったせいかキャンティーン(地元のフードコート)を思い出してしまう。

(5) お目当ての店
アメ横の看板を通り過ぎたらすぐ右手のセンタービルに入る。地下の食料品売り場は珍しい食材が手に入るので有名らしいが、本日最初の目的地は服仲間のお気に入り「ヤヨイ」だ。極狭の店内に並ぶ商品はアメトラ世代大喜びのアメリカものがざくざく…元祖セレクトショップといわれるがインポートショップの方が相応しそうだ。

(6) ヤヨイの一推し
ヤヨイといえばバリーブリッケン。1969年に創業、70年代にはポールスチュアートのOEMでチノパンの頂点を極めたと言われるも最近は廃業同然の状態が続いていた。数年前に日本別注で復刻。アメ横のミウラが前身のシップスやビームスでも扱うがスポーツ、ミリタリー、オーガニックの3種類が並ぶ充実ぶりが光る。

(7) バリーブリッケン
プレーンなフロントこそアイビーの基本。ビームス別注のプリーツ入りより地味だが1万円近く安い上にブレザーからスウェットまで守備範囲も広い。9オンスのヘビーウェイトツイルは洗うほどに身体に馴染むとのこと。タグのRN94064を調べたらオコンネルのパッチマドラスパンツと同じAll American Khakiと判明。

【参考資料③】
購入時
買いたてのパリッとしたチノパン。タグが付いたままの状態で撮影している。昔はチノパンといえども洗濯後は必ずクリースを付けて履いていたが最近はデニム暮らしに慣れたのかチノパンもクリースを落としている。写真撮影後にタグを外して洗濯機に入れて水洗い。糊が落ちて程よくパッカリングが出たらGoサインだ。

(8) ワンウォッシュ後
ワンウォッシュすると一気にヤレた雰囲気が漂う。そもそも滅多にドレスアップする必要がない田舎暮らしには履き込んだチノパンこそ最強のアイテム。美脚パンツと違って裾幅も狭すぎず広すぎず王道の21㎝。靴も写真のようなデッキモカシンからローファーやスニーカー、外羽根の革靴までなんでもござれだ。

(9) 履いてみる
バリーブリッケンスポーツというくらいだから足元の基本はスニーカーで…最近のハイテクものより歩き辛いし疲れやすいコンバースだがナイキ傘下の日本未展開CT70は巷のコンバースとは別物…クッション性の高いインソールのおかげで履き心地が劇的に違う。デザインも昔のコンバース風とポイントが高い。

【参考資料④】
上がりのチノパン
アイビー世代のチノパンはオリーブとカーキがあれば充分、これが上がりの2本だ。違いはカーキ(ミリタリー)が10オンスでオリーブ(スポーツ)が9オンス…季節によって履き分けるのも悪くない。よく見るとウォッチポケットのデザインが違っていたり昔のタグが復刻されていたりと中々の作り込みだ。

(10) スポーツソックス
店内で次に気になったのが写真のスポーツソックス。アメリカントレンチという名で製造はもちろんMade in USA。アメリカ産のスーピマコットンを68%使用してノースキャロライナで作られたものとか。製品名は「レトロストライプ」、昔懐かしアイビー調のボーダー柄が物欲を刺激する。

(11) 品揃え
売り場に並ぶレトロストライプのソックス。上に並んだ3,400円の方がウール混、下2段のコットンソックスは2,400円だ。どれも欲しくなる配色だがまずは1足買って試してから…。色も迷いに迷って定番のネイビー&イエローをチョイス。ネット販売の実勢価格は2,900円だからヤヨイで買うと割安なのが有難い。

(12) ソックスの雰囲気
ソックスを履いた図。踝から上がリブ編みなのでラグソックスのようにはいかないがイエローとネイビーのストライプが足元をほのかに彩る。平日にもかかわらず喧騒のアメ横メインストリートを一歩入っただけでセンタービル内は静寂そのもの。ゆったり時間が流れていた。月1回第3水曜日はセンタービルが休館日なのでヤヨイも閉まっている。

(13) Tシャツ
店長に「何かほかにお薦めは?」と聞いたところ紹介してくれたのが2,400円と格安なアメリカ製Tシャツ。インナーとして着るのが良さそうな薄めの生地だがアメリカ製らしく丸胴編み。袖丈の短さも昔風だ。それもそのはず、なんでも80年代のデッドストックものらしくピッタリサイズのMを購入した。

【参考資料⑤】
アメリカ製のTシャツ
Tee Swingという名のこのTシャツ、他店ではオンライン価格2,900円だがヤヨイでは2,400円とリーズナブル。因みにバリーブリッケンのチノ(スポーツ)もオンラインでは17,600円だが店頭価格は16,800円。その違いはネット販売では送料分が上乗せされるからとのこと。交通費をかけて来店してもお得なのが嬉しい。

【参考資料⑥】
シャツ類
上から下までびっしり商品が並んだ棚にはインディビジュアライズドやアイクベーハーにギットマンのシャツ類、テラソンのデニム等どれも手に取って見たくなるものばかり。オリジナル商品が多いビームスやシップスも昔はヤヨイのようにインポートもので溢れかえっていたのことをヤヨイが思い出させてくれた。

(14) 軍ものの聖地
楽しいひと時を過ごさせてもらったヤヨイの店長さんにお礼を言って次なる目的地へ移動…ミリタリーものの聖地といわれる上野の中田商店。マニアでなくとも訪れる価値ありの名店だ。MA-1やM65など人気アイテムが並ぶ店内はオンラインショップで予め在庫を確認してから行く方がスムーズに買い物が出来る。

(15) イレギュラー品
ネットで下調べしておいた軍放出イレギュラー品のスウェット。如何にもなミリタリーカラーとお洒落なデザインとは無縁の素っ気ない作りが却って新鮮だ。店頭に並ぶのは4点でサイズはMのみ。一点一点イレギュラー部分の違いが微妙に異なるので時間をかけて見極めてから納得の上会計へ…。

【参考資料⑦】
規格外の部分
毛羽立ちはあるものの一番のイレギュラー部分は後ろ身頃の色落ち(赤丸部分)だろう。バイクいじりや庭仕事、薪割りなど作業用に買ったスウェットなのでイレギュラーも織り込み済み、ところが意外や意外、着てみると色合いもさることながら着心地も良好、もう1~2枚欲しくなってしまう。

(16) スペック
製造はケンタッキー州のファクトリーCampbellsville Apparel Company、残念ながらファクトリーは既に廃業しているようだ。胸に付くロゴはU.S.M.C(United States Marine Corps)即ちアメリカ海兵隊を指す。オリーブドラブ色のスウェットなんて巷のショップを探しても中々ない。中田商店ならではの買い物だ。

(17) 着てみる
Mサイズといっても肩幅は52㎝、身幅も56㎝ある。着たらぶかぶかだったりして…と思ったがいざ着てみたら肩こそかなり落ちるものの全体的に程よいフィット感。ミリタリーチノとの相性もバッチリだ。上下が無地なら中のシャツは柄物に…。足元はコンバースのハイカットでハーレーに乗るのも絵になりそうだ。

(18) ウナギの寝床
中田商店を出て高架下に潜って上野方面へ移動。小さな店が所狭しと並ぶ様は吉祥寺とよく似ている。アメリカ屋に立ち寄ってスウェットの品揃えをチェック。昔ならリーバイスビンテージクロージングの品揃えも欠かさなかったがアメリカ製でなくなってからはリーバイスコーナー自体を見ることもなくなってしまった。

(19) 御徒町駅前通り側
帰りはアメ横通りの反対側、御徒町駅前通りを散策。オンラインショップで以前からお世話になっていたHINOYA(ヒノヤ)がこの日最後の目的地だ。浅草で創業後、昭和30年に上野に移転した「ひのや」は1973年に株式会社ヒノヤとしてアメリカからの輸入品、中でもリーバイスと軍の放出品を中心に商売をはじめた歴史がある。

(20) 桃太郎ジーンズ
最近は日本のデニムにも力を入れているヒノヤ。以前購入したミドルストレートの桃太郎ジーンズが気に入って、クラシックワイドとスリムフィットの雰囲気を確かめに店内を覗く。ずらりと並ぶ特濃インディゴ出陣シリーズを含めインバウンド客の中には日本のジーンズを名指しで買いに来る客も多いとのこと。

【参考資料⑧】
マイ桃太郎
ミドルストレートのマイ桃太郎。洗いたてが特にごわつくが長時間履き続けてこそ身体に馴染むというもの…とはいえ「履き慣らす」のも「言うは易し行うは難し」だ。それに特濃インディゴは色落ちしにくいので未だに一番濃いまま。せめてもとこのブログを書いている今は朝からずっと履いている。

(21) シュガーケーン
桃太郎ジーンズの他にヒノヤのお薦めが「シュガーケーン」。2万円を切る価格設定は中々のもの…尤もアメリカ製は42,900円と一気に値が張る。それでも自社工場製の生地を使うのでその価格で販売できるとのこと。会社は我が家にもあるホワイツビルやバズリクソンズを展開する東洋エンタープライズだ。

インバウンド客の多さにネットで調べたらアメ横は訪日外国人観光客の間で外せないスポットの一つらしい。その理由は①キャッシュレスで買い物ができる②日本のB級グルメを満喫できる③アクセスが良好だからとか。なるほど現金払いのみ?かと思うような小さな店でもキャッシュレス決済が行き届いている。

②B級グルメに関しては日本食のみならず多様化している印象を受けた。③アクセスの良さは数十年ぶりの自分でさえ御徒町と上野の高架下を中心にギュッとコンパクトに詰まった商店街は意外と分かり易い。あと一つ、忘れてならないのが舶来の殿堂と看板を掲げるほどアメ横は④外国製品のメッカということだ。

昔からアメ横は市価より3~4割安く舶来品が買える…と言われてきた。今は殆ど変わらないとはいえヤヨイや中田商店では他より少しでも安く品物を店頭に並べようとしている。差は僅かだがそんなアメ横の心意気が自分をリピートへといざなう。多分近いうちにまた戻ってくるに違いない。

By Jun@Room Style Store