2023/03/29 01:03

1枚のTシャツを製品化するまでに2,720ℓもの水を使い、淡水の生物多様性への影響など環境負荷が高いコットン。一方ウール素材は100%天然で再生可能かつ生物分解も可能なサステナブル素材として「世界最古のエコ繊維」と称されている。消費エネルギーで比較するとポリエステルより18%少なく水の使用量はコットンより70%も少ない。
ウール製品の中でも耐久性が高く、長きにわたって着られるものといえばツイードに勝るものはないだろう。親子3代に渡って着続けられるくらいだから100年はゆうに持つに違いない。他のウール製品、例えばセーターなどと違って毛玉ができにくかったり未脱脂のウールを使用することで雨をはじいたりとそのタフさで服好きを魅了する。
そこで今回は来冬に備えて補充したアイテムを中心にツイード愛を語ろうと思う。
【地厚なウールパンツ】

ツイードというとジャケットやコートを思い浮かべるが元は漁師の作業着、秋冬物のパンツ素材にも最適なはず。ところが昨年からツイードが流行中で2023年も引き続きトレンドな割にはどのショップを見ても置いていない。タフでヘビーな雰囲気はもはや前時代の遺物のようなものなのか…。
(1) ヘリンボーンツイード

ようやく見つけた定番ヘリンボーンのツイードパンツ…ハリスツイード特有のゴワゴワ感やチクチク感は敬遠されがちなのか手に取って見る人も少ない。何しろこのパンツ、裏地が膝下まで覆っている。肌触りを考慮してだろうが脱ぐ時は慌ててはいけない。一気に脱ぐと踵に裏地が引っ掛かって破いてしまうからだ…。
(2) ボタンフライ

ボタンフライとプリーツなしのプレーンフロントはチノパンの素材違い風。写真を見ても分かるが紺色のしっかりとした裏地が膝下までパンツの内側を覆っている。簡素な作りの既製パンツが多い中かなりの手間に違いない。そう考えるとショップを色々回ったのにツイードパンツが見つからなかったのも納得だ。
【参考資料①】
ハリスツイード

こちらはハリスツイードを扱うショップサイトから…。ごく定番の黒白ヘリンボーンだが重さは313~366gmsと中々のもの。パンツ単体でも結構重い。アウターヘブリディーズ諸島で織られたハリスツイードは唯一商標登録されている生地。「島の織り手の自宅にて全て手作業で織られたもの」という厳しい定義があるそうな…。
(3) パンツのシルエット

ヘリンボーンツイードのパンツ。プレーンフロントのシルエットはアイビーの基本だがクリースなしのシルエットはワークパンツやミリタリーチノに近い。裾は最初からタタキ仕上げでサスペンダーボタン付き。ベルトを締めるのも良いが黒のブーツに合わせてタブが黒いサスペンダーで吊ってみた。
(4) 履いてみる

実際に履いた図。元々漁師の仕事着に用いられたツイード素材。パンツに仕立ててもドレッシーな内羽根靴よりゴツい外羽根靴やブーツの方がしっくりとくる。よく聞く「素材感を合わせる」…に従えば起毛感の強いハリスツイードには同じ黒革でもスムースレザーよりグレインレザーの方がベターか…。
(5) シェットランドツイード

お次はツイードパンツ2本目。ソフトなシェットランドツイードを使用している。原産地シェットランド諸島の羊は小型(ノルウェー山岳種)でアルパカに近い柔らかな羊毛が特徴。フェアアイルなどニット製品にも使われるそうな。なるほどセーター素材に使われるくらいだからツイードにしても柔らかいのは当然か…。
(6) ツイードの色彩

こちらも膝下まで裏地付きの丁寧な作り。生地を見ると赤や紫、黄や緑、水色など何色もの糸が複雑に入り組んでいる。ツイード生地の色彩はスコットランドの自然そのものだとか…紫はヒースだろうが赤は赤砂岩?黄色はハリエニシダ?そんなことを考えてたらスコットランドの風景が頭に浮かんできた。
【参考資料①】

こちらはシェットランドツイードを扱うW.Billのサイトから。390gms/12~13ozだからパンツとしては1本目のハリスツイードより重い。それでも「スポンジのよう」と例えられるだけあって手触りは柔らかくツイードだと思わない客もいるだろう。個人的にはクリースの効いたドレスパンツが苦手なので柔らかいのは大歓迎…。
(7) ソフトな履き心地

履いた印象も1本目のハリスツイードよりテレッとしている。なんだか昔のジョルジョアルマーニのようだ。因みに2023秋冬物をチェックしたらアルマーニは今もクリースなしのパンツを発表していてなんだか嬉しい。どちらもスコットランドつながりということでツイードに相応しいギリーを合わせてみた。
(8) 履いてみる

上の写真ではダブルソールのギリーだったが更にヘビーソールなJ.M.ウェストンのハントにチェンジ。キジの模様入りコーギーのソックスで繋いでみた。ドレープ感たっぷりのパンツと硬派な靴が何とも対照的だ。軽量で保温力の高いシェットランドツイードはイタリアのサルトでも人気の生地だとか。
(9) 大柄ヘリンボーン

さて次はツイードパンツの3本目。こちらは同じヘリンボーンながらより大柄、コートにも使えそうな生地だ。地が厚いせいでくっきりと出ないがクリースも入っている。デザインはドレッシーなフォワードの2プリーツが目を引く昔懐かし80年代NYトラッドスタイル。最近プリーツ付きのパンツもかなり出回ってきた。
(10) フォワードかリバースか…

サビルロウのテーラーでスーツを作ると組下のパンツはプリーツ1つでも2つでも指定しない限り写真のようなフォワード仕上げが標準。逆にイタリアのサルトは念を押して「プリーツはフォワードで…」と要望しない限り間違いなくリバースで仕上げてくる。好みの問題だろうが自分は断然フォワード派だ。
【参考資料③】

どこの生地か不明だがオンラインのバンチから想像するにポーター&ハーディングのハリスツイード、それも450gms/15~16ozあたりか。手にした瞬間じわっと重さを感じる。裏地は前面が膝下まであれどヒップ周辺はなし…それでも3本の中では一番重い。ツイード好きは重い生地を有難がる傾向がある…。
(11) シルエット

ドレッシーな2プリーツと素朴なツイード素材という相反する組み合わせ。ともすると野暮ったくなりがちだが写真のように見事な美脚パンツに仕上げている。流石はイタリア、昔も今もドレスパンツを作らせたら当代随一だ。最近はイタリア製品を意識して買うこともないが気が付くとMade in Italyは健在だ。
(12) ウォッチポケット

トラウザーズの右側にはフラップ&ボタンの小さなポケットが…別名フォブポケット、因みにフォブ(fob)とは術策、策略或いはごまかすが転じて懐中時計隠しの意味を持つとか。せっかくフォブポケットの付いたパンツを履くならパテックの懐中時計くらい欲しいな…と最近思い始めたところだ。
(13) ツイードベスト

パンツの次はツイードベスト。こちらはハリスツイード協会のタグ付き。オリーブ系のヘリンボーンに赤茶色と黄土色の格子柄が入っている。グローブをしたままの手がすっぽりと入る大ぶりのポケットは「ジャケットの下に着る」オッドベストではなく「アウター代わりに着る」タイプだろう。
(14) フェアアイル柄と…

アウター代わりベストを羽織るならフェアアイル柄のタートルネックが最適。どちらもスコットランド繋がりで間違いない。ついでにフランネルのワークシャツやオックス地のタータンシャツ、デニムに太いベルトやバッファローチェックの帽子と揃えていったらいつの間にかアメリカンスタイルになってしまった。
(15) リバーシブル

このツイードベスト「やけに肉厚だな…中綿でも入っているのか」と思っていたら何とリバーシブル!買ってから気付いた。ひっくり返してみたらこれが中々イケてる。先日上野の中田商店で買い物して以来ミリタリー色にビビッと反応しがち…近いうちに上野へ行くとして中田商店は必見だろう。
(16) ハリスツイード

ハリスツイード協会のお墨付きタグ。中央の球体とマルチーズクロス(マルタ十字)のデザインは英国王(又は女王)が国会を開催する時に持つ宝珠(十字聖球)が元になっている。このマークに土星のような輪を付けて自身のブランドタグに採用したのがヴィヴィアンウェストウッドだとか。
(17) タータンツイード

さて今回のツイード愛を語る最後のアイテムがタータンツイードのジャケット。年に数回しか着る機会がないジャケットなのについ手を出してしまった。一見ブラックウォッチのようだが黄色の大きな格子が入るのが特徴。調べてみたところキャンベルタータンの派生形のようにも見える。
(18) 3パッチポケットの3ツ釦段返り

大柄とはいえ落ち着いた配色が特徴。ショートサイズのせいかトムブラウン以来続くヒップが見えるほど着丈が短いのがよけい気になる。一方で絞りの効いたウェストやチュラルショルダーはラルフローレンらしさ全開だ。袖は開き見せの4つボタンだが昔と違って本開きの本切羽にすることもできる。
(19) ネクタイを替える

日経スタイルによればVゾーンは①一柄二無地というルールがあるとのこと。他にも②着こなしは3色までというのもある。長い間ラルフローレンのカタログや広告を見なれたせいか①も②も殺風景に思えて仕方ない。柄×柄や多色使いのコツはメインの柄に使われている色が入った柄を加えていくのがコツとのこと。
(20) 脇役

タータンジャケットに合わせるネクタイもまたタータン…クラン(氏族)タータン同士の柄合わせは少々気が引けるが誰でも身に付けられるユニバーサルタータンや企業が登録したコーポレートタータン(ハウスチェック)ならば気軽に柄もの合わせを楽しめる。左と中はハウスチェック、右はドレスゴードン似のユニバーサルタータン。
例年より早い満開の桜もここ数日の雨でだいぶ散った。間もなく4月、春本番だ。ただでさえ温暖化で一年の半分は亜熱帯に属する日本。今更冬物、それも寒い時期にしか出番のないツイードものを買い足すなんて…とも思ったが「息の長いアイテム」を選ぶのがエコな買い物の極意、非エコの服は売れない時代が到来すると日経Xトレンドでは分析している。
その日経Xトレンドでは「今後サステナブルな素材が主流になればファストファッションの時代が終わる」とも書いている。ユニクロの会長が「サステナブルは全てに優先する」と危機感をもっている様子も紹介していた。市場に出た衣類の65%が再利用されず焼却・埋め立てられる現状とファストファッションの普及は相関関係があるとみなしているようだ。
さらにVOGUE JAPANではウールニットも「着られる期間」の長い薄手がよりエコだと指摘している。ツイードも軽い生地の方がエコなはず…900gmsのキーパーツイードで上着をなんて思ったけど止めた方が良さそうだ。
By Jun@Room Style Store