2023/09/16 06:27

コロナ禍の最中にメールで靴を2足注文したのが2020年の夏、その後コロナが開けて東京でフィッティング、踵の微調整をお願いしたのが2022年暮れ。修正を終えた2足は注文主の来店を待ち続けようやく2023年のこの夏、セントジェームスのジョンロブでラストメーカーのティームと共に再会、最終チェックを迎えた。
納品まで3年、店を訪れるのは4年ぶりだが雰囲気はすっかり変わっていた。メインのショーケースこそ不動だが雑然としていたワークショップは棚やキャビネットが置かれてスッキリしている。コロナ禍で一時クローズした際に心機一転を図ったのだろう。地下へ通ずる階段はレディスのサンプル靴が綺麗に並んでいた。
そこで今回は4年ぶりのジョンロブ再訪を紹介してみたい。
※扉写真はジョンロブの店頭
(1) ディスプレイ

アフターコロナを反映してかショーウィンドウもイメージチェンジ。白のプレーントウダービーが季節感を演出する。自分なら夏の足元といえばアメリカンな「ホワイトバックスにブリックソール」が思い浮かぶが英国最古の老舗ジョンロブは「ホワイトリザードにベヴェルドウェスト」とあくまでエレガントだ。
(2) ギリーサンプル

一方隣のウィンドウはクラシックなギリー。革紐で結ぶのも中々良い。昔はタン有りの方が汎用性が高くて好みだったが今ならタンなしが気分だ。今回注文したギリーはタンの代わりにキルトを付けて汎用性を高めたがもっと若かったら黒のカールフロイデンベルグでタンなしギリーを頼んでいるかもしれない。
(3) フィッテング(その①)

踵の微調整を終えたギリーを履いてみる。パリのアナトミカでモディファイドラストの靴を履いてから足の感覚が肥えたのか履き心地の悪い靴は足がむずむずする。さっそく試着するとノーストレスが心地よい。タンなしギリーはスリッポン以上、羽根やタンに圧迫されない甲の解放感は病みつきになりそうだ。
(4) フィッテング(その②)

つま先のラウンド具合は正にジョンロブ。ツイードスーツにアーガイルソックスとギリーを履いて晩秋のパリを訪れてみたい。焼き栗の香り漂うパリの街を散歩しながらエルメス店内のロブパリを訪問…ロブ本家渾身のギリーシューズを見たらロブパリの職人はなんて言うか…そんなことを想像するのも楽しい。
(5) フィッテング(その③)

フィッティングを終えて靴を脱ぐ前にティームが記念に写真を撮ってくれた。このあともう1足の黒タッセルスリッポンを試着したが踵が抜け気味なので再度作り直すことになった。「カールフロイデンベルグの黒革が…」とも思うが王室御用達のジョンロブに妥協なし。納品は来年だろう。
(6) 店内の様子(その1)

入口すぐのショーケースにあった靴のサンプルはどこへやら、代わりに小物が並ぶ。エルメスやヴィトンなどフランス勢が人気の革財布だがジョンロブ製や如何に?…と公式ページで調べると価格は64,000円とお手頃、ただし小銭入れのないタイプなのでコインケースを別途揃える必要がある。
(7) 店内の様子(その2)

手前のショーケース下段の雑然とした様に目が行く。ひょっとして入口近くのサンプル靴を移動したのか…。3年前の訪問時とはそこかしこに違いが表れている。90年代は「入り辛い」雰囲気を漂わせていたがここ10年でオンラインショップやインスタグラム開設などジョンロブも随分変わったと思う。
(8) サンプルブーツ①

ブーツメーカーならではのサンプルブーツ。中央の茶白コンビは公式HPによればBriar Bootsというらしい。ダブルバックルのデザインにキャンバスとタンレザーのコンビが格好いい。これを自分の好きな革で注文したらなんて思ってしまう。ただし軽く100万円超えのブーツになりそうだが…。
(9) サンプルブーツ②

こちらもブーツのサンプル。ラストメーカーのティームは「ブーツを頼むのはどう?」と誘ってくる。もう短靴は十分過ぎると知っているのだろう。とはいえブーツも今回アナトミカで1足買い足している。「ロングブーツで乗馬」に憧れるが実際はレッドウィングでバイクが分相応か…。
(10) サンプルブーツ③

心惹かれたのが中央の黒ブーツ。バックル付きはハンティング用か…チェンジペダル用の当て革を付けてライディングブーツにしたら格好良さそうだ。そうなるとバイクもビンテージのトライアンフあたりが欲しくなってくる。新潟の「なとりや」が扱っていたトリッカーズのバイクブーツが思い浮かぶ。
(11) 有名人の木型

こちらは「著名人」の木型。店の奥にある階段を降りてワークショップ内にあるケースに並べられている。誰でも見られるという訳にはいかない。顧客をワークショップに案内する機会が増えたので整えたのだろう。中には「プリンセス」の文字が見える木型も飾られている。王室御用達のジョンロブならでは。
(12) 新旧ラスト比較(その1)

上が1足目で下が2&3足目のラスト。1足目は靴両横のエッジが立っているのが分かると思う。ビスポーク靴はラスト製作に一番時間が掛かるもの。最初の1足目は赤字で何足か注文して労力に見合うと聞く。それでもジョンロブは2足目で新たに木型を作るなど英国最古の注文靴屋の矜持をみせる。
(13) 新しいラスト(その2)

ラストは角ばったところがなく全て曲面で構成されている。つま先はスマートラウンドながらチゼル気味か…。このラストで作られた実物を見ると"Last must come first."の意味がよく分かる。格好良い靴はやはりラストが肝なのだ。木型職人はテイラーでいえばマスターカッターのような存在か。
(14) 木型倉庫

(15) サンプルシューズ①

(16) サンプルシューズ②

(17) フィラー

(18) 完成した靴

(19) ジャーミンストリートを歩く①

(20) ジャーミンストリートを歩く②

(21) 名車再生

ケンジントン界隈で見かけたランドローバーのシリーズ1。錆びたような車体はラッピングか。シャシーやリーフスプリングなど下回りはレストア済みのようだ。外見は古びていても中身は新車同様というのが売れ筋とか。ロンドンではマクラーレンなど超高級スポーツカーも見るがこちらの方が断然格好良い。
(22) 駅チカ日本食屋

革小物など一部既製品を扱うとはいえジョンロブは今も注文靴一本。同業他社が既成靴を扱うのに比べて客層は限られよう。それでもサビルロウのヘンリープールと共に何代にも渡ってファミリービジネスを守る数少ない老舗だ。創業は共にヴィクトリア朝時代。イギリスが最も栄え、世界をリードした時代だ。
靴は誂えるものだった時代から既製靴の時代に変わってもジョンロブには世代から世代へと受け継がれるレガシーがある。ジョージクレバリーのようにスクェアトウといった分かり易いアイコンはないが店を訪問したり完成した靴を履いたりするたびに「ああこれぞジョンロブ」という気持ちが湧き起こるのだ。
By Jun@Room Style Store