しなの鉄道の旅(後編) | Room Style Store

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2024/06/08 08:31


前回は東京から在来線と新幹線を乗り継いで軽井沢に到着、人気の観光列車「ろくもん」に乗ってフルコースのランチと車窓からの眺めを楽しんだ様子を書いたが今回はその続編になる。まずはしなの鉄道長野駅の改札を出て記念切符を手に地上階へ向かう。流石は県庁所在地のある長野市、コンコースも広くて立派だ。

同じ長野県に山小屋を構えながら長野市は初めてというお上りさんだったが案内板の「善光寺口」に従って地上階を目指す。今や各地でインバウンド客を見かけるが東京や京都・大阪と違って周囲を見回しても外国人旅行者をそれほど見かけない。新幹線こそ走ってないが空港のある松本を中心に白馬方面が人気らしい。

そこで今回は初めての長野市内と近場の観光地を巡る旅を紹介してみたい

※扉写真は長野駅コンコースと記念切符

(1) 長野駅前
観光列車ろくもんの長野着が12時37分。丁度ランチ時らしく駅前のロータリーは人影もまばら、出歩く人も少ない。地方に来ると都内と違って「人が少ないな…」と思う。新幹線が停車するターミナル駅の長野でさえそう感じる。東京一極集中が話題になっているが上手く分散できないのか…と思う。

(2) 観光案内板
案内板を見ると長野市内の見どころといえばやはり善光寺。近場には戸隠や松代、川中島といった観光スポットがあるがいずれも車で20~30分ほどかかる。レンタカーを借りて回るのも悪くないが市内には駐車場が少ないという情報もある。周囲には名勝地もあるので見学したら移動して郊外に宿をとる客も多そうだ。

【善光寺詣り】
(3) 仁王門
参道を進むと最初に見えるのが仁王門。左右に立つ仁王像は向かって左(西側)が口を開いた阿形(あぎょう)像で右側(東側)が口を閉じた吽形(うんぎょう)像。一般と違い善光寺は左右逆に置かれているとのこと。阿形は物事の始まりを吽形は物事の終わりを意味し、二体揃って「あうん」の呼吸で寺を守るのだそうな。

(4) 山門
続いて現れるのがどっしりとして優美な山門。二層の入母屋造りは二階から(拝観料あり)参道や本堂に境内を見渡せる。江戸時代中期建築で重要文化財に指定されている。善光寺と書かれた額は畳三畳分もあり三文字の中に5羽の鳩と牛の顔が隠れているという。なるほど額をじっと見つめる参拝客が多かったのもそのせいだったか。

(5) 本堂
ようやく善光寺の本堂に到着。こちらは国宝で1707年に再建されたもの。東日本最大級の木造建築で衆生の煩悩の数といわれる百八本の柱で作られているそうだ。写真でも分かるが本堂に掛けられた白い幕に見られる「立葵」の御紋は善光寺を開いた御開山本田家の家紋であり寺紋でもあるとのこと。

(6) 経蔵
本堂の西側に位置する1759年に完成した経本の収蔵庫。中央に八角形の回転式輪蔵があり経本が納められている。腕木を回して一回転させると中の経本を読んだのと同じ功徳が得られるとのこと。土曜日にもかかわらず京都の寺社仏閣のような混雑さがなくゆったり見学できるのが嬉しい。

(7) スイーツタイム
境内を見学したら参道を下って長野駅に戻る。緩やかな下り坂の参道は両側に土産物屋やスイーツの店が並ぶ。浅草寺の仲見世通りよりも広いし空いているのでゆっくり見て回れる。その中の一軒、信州里の菓工房さんでソフトクリームにチャレンジ。小布施の栗とくれば試さない手はない。

(8) 西の門よしのや
仲見世から車道に出たら真っ直ぐ駅に向かわず右手の西之門町へ進んで酒蔵「西之門よしのや」を訪問。創業は1637年、300余年にわたり酒や味噌を作り続けてきているそうだ。現在は16代目が杜氏とともに新たな歴史を築いている。近くに無料駐車場もあり観光客が気軽に立ち寄れるようになっている。

(9) 入り口
入口からして何とも風情があるではないか。如何にも写真映えしそう。奥にはレセプションがあり日本酒や梅酒、みそなどの販売コーナーもある。奥には酒蔵もあるので一通り見学してから売り場に戻ることにした。所々ベンチもあって一休みしながら周囲を眺めていると300年の時の重みを感じる。

(10) 販売所
販売所前の「店内で試飲・試食できます」の看板が嬉しい。立ち寄る人も結構いるらしく中は盛況だ。車で来た人には申し訳ないが思う存分試飲させて貰った。不思議なものであれこれ試すうちについ「何か買わなきゃ…」という気になる。それに四国旅行以来、日本酒に凝っているせいか利き酒にも力が入る。

(11) 日本酒
酒の値段を分ける50や40、35などの数字…少ないほど値段が高くなる。これは原料の玄米から雑味の元となる表層部をどれだけ削ったのか歩合で表したもの。50とは50%の精米歩合を意味し、大吟醸を名乗れる。これが60%以下だと「吟醸」となる。因みに試飲した酒はどれも米と麹だけで作った純米酒で精米歩合が50%以下の大吟醸を名乗っていた。

(12) 梅酒
日本酒と並んで目玉商品がこちらの梅酒。大吟醸並みの値段だが梅の香りが際立つ絶品…量販店で売っている梅酒の倍近い3,200円の値付けも伊達じゃない。最近は食事付きの和風旅館に泊まると食前酒に梅酒が出てくることも多い。自宅でも美味しい梅酒を冷やして最初の一杯にすると食が華やぐ。

(13) 戸倉駅へ
善光寺をひととおり見学して仲見世で寛ぎ、酒蔵で買い物したら宿を予約した戸倉駅まで再びしなの鉄道に乗る。長野市内にもホテルがあるが周辺の温泉宿に心惹かれてしまう。先頭車両から前方を撮影。まもなく戸倉駅に到着するところだ。先ほど乗った観光列車ろくもんと違って各駅停車の旅も悪くない。

(14) 上山田ホテル
こちらが今宵の宿、戸倉上山田温泉の上山田ホテルだ。政府登録国際観光旅館と書かれた看板からも老舗の風格が漂う。湯元とあるだけに温泉は源泉かけ流し、宿泊客の評価も上々で期待も高まる。このあたりは開湯120年を超え湯量は豊富、善光寺詣りの精進落としの湯として名高いとのこと。

(15) 大浴場
誰もいない大浴場、かけ流しの音を聞きながら一人で大風呂を独占できる幸せよ…。大風呂だけでなく館内にはステンドグラスがほどよく配置されていてレトロな雰囲気を感じさせる。老舗らしく施設は新しくないが清潔で心地よい。服や靴などの誂えで長年海外旅行が中心だったが最近は国内旅行が楽しい。

(16) お品書き
夕食のお品書き。昨夏パリで味わったムニュ・デギュスタシオンを思い出す。ネットで関連記事をリンクしたが、曰く「70年代にフランス人シェフたちは日本を旅行し新たな世界を発見、小皿が連続して出てくる懐石料理の形式にヒントを得てムニュ・デギュスタシオンを広めていった」そうだ。因みにフランス料理も日本料理も世界無形文化遺産に選ばれている。

(17) 大雪渓
今宵の日本酒は信州を代表する「大雪渓」。長野県北安曇郡池田町の蔵元から熱を加えずに出荷された「生酒」はフレッシュで爽やか、キレもよく和食だけでなく洋食や中華など様々な料理に合うそうな。ここ数年信州の田舎暮らしも板についたのか地元信州産と聞くと「おおっ」となってしまう。

(18) メイン料理
お品書きによると「すき焼き杏風味鍋」は長野県産の牛を杏とリンゴ果汁で風味を付けている…とのこと。ワインも良いかな…と思ったが日本酒×ワインのように醸造酒同士のちゃんぽんは良くないらしい。異なる酵母で発行したアルコールが混ざると肝臓への負担が増すとかで今宵は日本酒で通すことにした。

(19) 朝風呂
朝早く起きて今度は露天風呂へ…案の定誰もおらず再び源泉かけ流しの湯を独り占め。単純硫黄泉で肌に優しい「美肌の湯」だそうだ。如何にも温泉らしい匂いと柔らかさがある。昨日の大浴場もよかったが個人的にはこれくらいのサイズ感が良い。星空を眺めていたらいつの間にか空が白んできた。

(20) 朝食
さて、老舗旅館の作る洋風の朝食や如何に。地元のパン屋から直送の焼き立てパン2種類のバーガーとコーヒーで朝をスタート。コーヒー派としては一番しっくりくる。因みに日本ではコーヒー派が圧倒的で紅茶派はわずか5.5%だそうだ。では紅茶派の代表は?というと英国と思いきや10ポイント以上も上回るインドが紅茶派の筆頭だとか。

(21) 早朝の温泉街
上山田ホテルのすぐ横は昔懐かしの温泉街。飲み屋が軒を連ねていて夜には妖しい雰囲気を漂わせる場所だ。夜の街に繰り出すこともなく寝入ってしまったがここはかつて全国有数の歓楽街、バブル景気の昭和時代は「人にぶつからずに歩けないほど」賑わったそうだ。詳しい話が東洋経済に載っていたのでリンクを貼っておく。

(22) 軽井沢へ
昨日の出発点、軽井沢を目指して再び戸倉駅からしなの鉄道に乗る。上山田ホテルの送迎バスは9時が始発だったがそれより前の電車に乗りたい旨を伝えると臨時の送迎バスを出してくれた。無理な注文に応えてくれたホテルスタッフの配慮と素晴らしさはネット経由の宿泊アンケートでしっかり伝えようと思う。

(23) 新幹線に乗換
軽井沢に10時少し前に到着、せっかくなので開店と同時にショッピングプラザをひととおり回ったが日曜日にもかかわらず集客力の高いポロラルフローレンのファクトリーストアが一時的にクローズドらしく期待外れ…フードコートでランチを済ませ何も買わずに軽井沢を後に新幹線で帰路についた。

(24) 荻野屋の新顔
せっかく横川~軽井沢間を通過するのだから名物「おぎのや」の釜めしを買って乗ろうと思ったら「峠の釜めしおにぎり」を発見。しかも数量限定と書かれている。さらに安曇野産のコシヒカリを使用とある…限定ものに弱いのでどちらも購入、帰りの新幹線で味わっているうちに東京に着いてしまった。

思い返せば新幹線の食堂車が廃止されたのが2000年。今では車内販売もなくなり東北新幹線には自販機さえもない。多くの人が予め購入して乗車するためだとか…その一方車窓と食事を楽しめるレストラン列車は盛況だ。日本には駅弁文化もある。実は「列車に乗って景色を見ながら食事をするのが好き」という人はかなり多いという調査結果もある。

では観光列車をはじめ様々なツアーで長野市に来た旅行客はその後どうしているのか?市の調査では年間600万人もの観光客が善光寺を訪れるにもかかわらず①善光寺を訪れた後あと多くの人が市外に移動している②観光客の満足度は「まあ満足」が多く感動が薄い③市内を周遊せず滞在時間も短いという結果だったと公式ホームページに載せている。

報告書では長野市に来た旅行客を振り向かせるべく「見る」を中心とした観光地から歩いて、食べて飲んで、泊まって人とふれあい「感動」してもらえる観光地を目指したい…と結んでいる。ならば近いうちに再訪してまずは「食べて飲んで」みようと思う。

By Jun@Room Style Sotre