日米スニーカー対決(米国) | Room Style Store

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2024/06/22 08:29


スニーカーの元祖はアメリカ…と思いきや流石は紳士靴のスタンダードを築いた英国、1876年既にゴム底靴を発表、これがスニーカーの元祖という説が有力なようだ。ただ当時のアッパーは革製、馴染みのあるキャンバス地にゴム底のアメリカンなスニーカーは1916年のケッズや1917年のコンバース登場まで待つことになる。

発売後東海岸ではプロケッズが、西海岸ではコンバースが人気を博したことから1970年代の日本参入時は東のケッズ、西のコンバースと紹介されたそうな。因みに「スニーカー」という語を始めて用いたのはケッズとされているが靴底が柔らかな靴を履いて教師に忍び寄る子供をスニーカーと称したのが始まりとする説もある。

残念ながらケッズもコンバースもとうの昔に国外生産へシフトしたがそのアメリカで2019年からローカルメイドにこだわりクラシックスニーカーを展開するOpie Wayが新作を発表した。そこで早速注文、今回は出来立てほやほやの1足を紹介しようと思う。

※写真は届いたばかりのUPS国際宅配便

(1) 箱開けの儀
2月27日に注文。UPSの履歴から集荷が5月6日に完了しているので靴の発送まで約70日、10週かかったことになる。通常は6~8週間で靴が完成するはずだが今回はMTOによるワンオフものゆえ日数を要したようだ。アメリカから日本到着まで10日、配達まで2日を加えて5月18日に到着。注文してから81日目のことだった。

【参考資料①】
〜課税の内訳〜
個人使用ならば価格51,459円の0.6掛けで30,875円が課税価格。布靴は税率8%だから①30,875×0.08≒2,400円が関税②消費税は課税価格と関税を足して税率7.8%を掛けた(30,875+2,400)×0.078≒2,500円。③地方消費税は消費税2,500円×22/78≒700円。価格と送料9,200円に①~③の合計5,600円で総額66,259円…ニューバランスUS製よりグッとお高い。

(2) 中箱取り出し
中箱を取り出すとOpie Wayのロゴが印刷された箱が出てきた。ブランド名はオーナーである夫妻の子供OpheliaとWaylandの名から取っている。詳細は当ブログ過去記事に載っているので参考にしてほしい。大量生産・大量消費のスニーカーとは真逆のハンドメイド、スローファッションを具現化している。

(3) 更なる箱開け
中箱を開けてご対面。MTO(オーダーメイド)ゆえサンプルなし。未知の仕上がりにワクワクする。圧着ソールが主流のスニーカーだがOpie Wayではオパンケ縫いで仕上げているのでリソールが可能。張替1回で12,900円、張替+インソール交換で15,800円、永久張替で32,000円の3段階から好みのプログラムを選べる。

(4) デニムのシューバッグ
デニムバッグに入ったスニーカーの登場。Opie Wayの魅力は部材も縫製も「地産地消」がキーワード。革は一部イタリア製だがホーウィンのクロムエクセルを多用している。前回のプレオーダー品はビンテージのミリタリーツイル地で作ったハイカットだったがカーハートのダック生地を使ったこともある。

(5) 別注ローカット
出てきたのはシューバッグと同じインディゴデニムを用いたスニーカーだ。数年前からOpie Wayではデニムスニーカーを少量生産していたがここで満を持してインディゴブルーを2型続けて発表した。最近は真夏の短パン以外ほぼ毎日デニム。スニーカーもデニムがあれば…と思っていたところだった。

【参考資料②】
〜オリジナルのハイカット〜
こちらがOpie Wayが今回発表したインディゴデニムスニーカー。ご覧のとおりオリジナルはハイカットだが脱ぎ履きを考えてメールで直談判…ローカットで作れないか?と聞いたところOKということでMTO成立。早速インボイスが届き支払いを済ませた。ワンオフということでハイカットと値段は同じだった。

【参考資料③】
〜ハイカット着用〜
こちらはOpie Wayのウェブサイトから写真を拝借。こうしてみるとハイカットも格好良い。アメリカ本国ではハイカットの方が人気のようだ。アメリカの生活習慣なら靴を脱ぎ履きする機会も少ないはず、アイレットが10穴も並ぶハイカットだがいったん履いてしまえばローカットと変わらないのかも知れない。

(6) ハトメの数
さてこちらローカット版のアイレット数はというとコンバースと同じ7個。Opie Wayはサイズの刻みが1インチずつなので写真でも分かるようにアメリカ製にしては幅にゆとりのある木型を使っている。コンバースがハーフサイズ上の9.5を買うのに対してこちらはジャストサイズの9を選んだ。

(7) コンプリメントカード
納品書の下にはWe hope you like this pair.「この靴が気に入ることをを願っています」と書かれている。マイクロブランドらしい細やかな配慮がある。一方で着実にステップアップしているらしく小さなファクトリーから徐々に規模を広げ、ここで満を持してグッドイヤーのワークブーツを作り始めたようだ。

(8) つま先とサイドの当て革
つま先の白い部分はイタリアで鞣された革を装着。靴の顔ともいえる部分だけに小さな面積とはいえレザーパーツを使うと一気にハンサム顔になる。側面の当て革はコンバースでは80年代まで見られた当て布に相当する部分。ビンテージスニーカーの意匠をレザーパーツで巧みに再現するなど抜かりはない。

(9) サイドバンド
第5アイレット部分にはアッパーが広がり過ぎないよう共布のバンドで補強している。元祖コンバースの素っ気ない作りと違って履き心地や見栄えも考えたアッパーのデザインだ。ハンドメイドスニーカーらしい手間暇が随所にみられる。よく見ると共布バンド部分はジーンズ同様イエローステッチが効いている。

(10) インソール
ナイキ傘下のコンバースCT70や日本のみ展開されるコンバースリアクトなど今時のキャンバススニーカーはローテク顔のアッパーにハイテクなインソールで履き心地をフォローしている。Opie Wayでは自国のOrthoLite社インソールを採用、ニューバランスなど世界的なブランドが採用する一流サプライヤーだ。

(11) リソールを可能にする縫製
コンバースには見られないアッパーとソールを縫いわせるステッチ。この一手間のおかげでリソールが可能になる。革靴でいうならストームウェルトのような感じか。手前の一体型ソール上端のチェンネル(溝)にステッチが出ているのが分かると思う。アッパーの状態によるが数回はリソールできそうだ。

(12) タン裏
MADE IN AMERICA IN SMALL BATCHESは「少量生産のアメリカ製」の意、公式サイトを見ると分かるが少量生産ゆえか「売り切れ」の靴も多く、今回紹介したデニム版(ハイカット)もメンズは在庫なしのようだ。作り手の思いが詰まったWEAR WITH PRIDEの一言がアメカジ好きの心にグッとくる。

(13) カウンターライニング
踵は靴の中でも力の掛かる部分。カウンターライニングと呼ばれる部分にはスエードを使用。足への当たりは柔らかく滑りにくい素材のおかげか踵も抜けにくい。大量生産のスニーカーでは見られない細かなパーツ一つ一つを組み上げている様子がうかがえる。因みに写真の靴紐も地元ノースキャロライナ産だそうだ。

(14) アンダーかオーバーか
さて、シューレースの結び方をアンダーラップ(左)とオーバーラップ(右)のどちらにするか。アンダーラップは緩みやすいのが難点だが着脱しやすいのが利点。ハイカットのスニーカー向きだ。一方オーバーラップは緩みにくいので足をホールドしてくれる。靴が少し小さいと感じた時にお勧めとのこと。

(15) 特別仕様のデニム
実はこのスニーカーの最大の売りはアッパーのデニム生地。2017年アメリカ最後のシャトル織り機によるセルビッジデニムを生産していたホワイトオーク工場の閉鎖後、残る機械を一部用いて新たに織られたデニムなのだ。ジーンズ好きの琴線を揺らすホワイトオーク産デニムのDNAを受け継いだ素材に胸が熱くなる。

(16) W.O.L.Fとは
ホワイトオーク工場の遺産を受け継いだ財団W.O.L.F。White Oak Lagacy Foundationの頭文字をとったものだが2021年に非営利繊維製造部門プロキシミティマニュファクチャリングカンパニー(Proximity MFG Co)を設立した。従業員の再雇用や労働者の育成、デニム生産や設備の保存を通じて地域社会の振興に寄与している。

【参考資料②】
〜PROXIMITYとは〜
古い織り機を使ったデニム製造風景。Proximityを検索するとアメリカ製デニムの名門テラソンやOpie Wayなどパートナー企業にデニム生地を少量供給している。因みにOpie Wayのあるノースキャロライナのアシュビルとホワイトオークのあったグリーンズボロとは高速で2時間半、地産地消ならではの至近距離だ。

(17) こだわりのキャップ
こちらはプロキシミティのセルビッジデニムを使ったキャップ。裏返すと赤耳が内側を取り囲むように現れる。思わずそそられる光景だ。既に完売、次の生産は予定されてない。RRLでは今季もデニムキャップを展開しているがどうせならメイドインUSAで由緒ある素材を使ったこんなキャップを出してくれないだろうか…。

(18) セルビッジ
一緒に付属していたシューバッグの先端に見られる耳。赤いラインがないので見落としがちだが確かにセルビッジデニムだと分かる。アッパーを隅々まで眺めたが全てキャンバスの裏地が張られているのでセルビッジの耳は見つからず。とはいえ公式サイトや(7)の納品書には誇らしげに「セルビッジスニーカー」と記されている。

(19) 前作と並べる
写真は1足目のミリタリーツイル地を用いたハイカット(左)と今回MTOしたセルビッジデニムのローカット(右)を並べたところ。ラストや基本的なデザインは変わらず。アッパーと縫い合わせる一体成型のカップソールも共通している。一方後発のローカットは両サイドに当て革が配されるなど進化している様子が窺える。

(20) 履いてみる
ノーショウソックスの上から早速履いてみる。勿論履いているジーンズはホワイトオークのセルビッジデニムを使ったもの。レジェンドとレガシーの共演だ。せっかくアメリカ製にこだわったスニーカー、ならばとシルバーアクセサリーやインディアンジュエリーもアメリカンブランドで揃えてみた。

Thank you for supporting slow fashion and US manufacturing! You are helping us keep this trade alive. 注文後に届いたメッセージだ。「スローファッションとアメリカのものづくりを支えてくれてありがとう。私たちの仕事を活気づける力になってます」といった感じだろうか。多くの製造業がアメリカを離れて久しいが、一時代を築いたMade in USAを若い世代が復活させようとする姿に共感を覚える。

スローファッションは「消費者が必要なものを厳選して長く愛用する取組を指し、リサイクル可能な原料を用いる等環境に優しい」点が特徴。サステナブルファッションと共通しているが流行に左右されないタイムレスなデザイン、上質な作り、リペアを施しながら大切にすることを目指している。ハンドメイドで底の張替が効くスニーカーも謳い文句ではなくこうした考えに基づいたものといえよう。

スローファッションの元となったスローフードは1980年代のイタリアで広まったムーブメント。土地の伝統食や文化を大切にしようとする運動や「地産地消」の考え方がスローファッションにも影響を与えている。同じ郷土であるノースキャロライナのホワイトオーク工場に注目するのもアメリカ国内製造にOpie Wayがこだわるのも「ローカルメイド」即ち自分の住む地域や国を大切にする表れなのだ。

決して安くはないが「流行に左右されず高品質で修理しながら長く履ける」Opie Wayのスニーカーには哲学がある。

By Jun@Room Style Store