福島応援旅(前編) | Room Style Store

Blog

2024/07/07 10:02



2011年の東日本大震災による風評被害で観光客入込数が大幅に減少した福島県。その後キャンペーンの効果もあり回復しつつあったが2020年のコロナ禍で再び厳しい状況におかれた。県内一の規模を誇る福島市ではようやく2022年に過去最高を記録、2023年は更に前年を上回る観光客入込数となり明るい兆しが見えている。インバウンド客も昨年は過去最多の2019年を超えたそうだ。

それでも東京都は被災地応援ツアーを企画、今年も福島の旅を割引する取組を実施している。観光振興と地域経済の復興を支援する目的で取扱旅行事業者は限られているものの宿泊は二泊まで、日帰り旅行でも割引が適用される。ならば訪問先の応援を兼ねて福島一泊旅行を計画…残念ながら予約先が取扱業者でなかったためか割引にならなかったが土日を利用して福島に出かけた。

そこで今回は30年ぶりに鉄道で訪れた福島応援旅の様子を紹介してみたい。

※扉写真はずらり並んだ酒樽

(1) E5系初乗車
県庁所在地のある福島までは東北新幹線を利用。予約サイトで発券を「モバイルかプリントか」選ぶ画面ではプリントアウトを選択した。なにせ国鉄時代からの鉄旅好き、スマホで画面を出すより切符がしっくりくる。写真は入線してきたE5系。前回乗った2階建てE4系に替わる新型車両だ。

(2) 行き先表示
掲示板の先発「はやぶさ」は大宮から仙台までノンストップなので次発「やまびこ」を待っているところ。前方の自由席乗り場は行列だが指定席を取っておいたので気楽だ。昔は割安な周遊券の旅ばかり、急行の自由席までしか乗れなかったせいか特急の指定席やグリーン車への憧れがある。

(3) キャリーケースなし
前席のフックに荷物を掛けると直ぐに列車が出発。昔だったら席に荷物を置いてからホームに出てあれこれ買い物できたのにと思う。自分も含め乗客は予め駅ナカで買って列車に乗り込んでいる。因みに身支度は今回もリュック一つ。やけに少ないとも思うが前回の四国旅行で実証済み。

(4) 車内ランチ
さて東京駅で購入したランチは、というと「若廣TOKYOの焼き鯖すし」と日本酒の「作Zラベル」。弁当の方は若狭名物とのこ。若狭といえば「ぐじのすし」が有名だがせっかくなのでお初を…油の乗った鯖と酢飯の間の甘いはじかみ(しょうが)が絶妙。一方Zラベルは4.2/5と高評価どおり爽やかでキレが良い。

(5) 郡山で下車
一時間ほどで郡山に到着、磐越西線に乗り換える。福島県の中で一番認知されている観光地といえば何といっても「会津エリア」だ。県内ではリピーター率が一番高いそうで自分も会津に来るのは4回目…そのうち鉄旅が二回目で車とバイクが一回ずつ…札幌、京都、福岡に次ぐリピート率だ。

(6) 会津若松へ
郡山駅では新幹線に接続する列車が待機していた。前回乗ったのはなんと1974年の夏、当時はクリーム色とあずき色のいかにも国鉄顔の電車(455系)だったが今回はステンレス車体に前面FRPの車両(E721系)に乗車。車内はボックスシートとロングシートがあり発車ベルが鳴る頃は満席に近い状態だった。

【参考資料】
1974年の会津若松
間もなく無煙化(蒸気機関車の廃止)されるという1974年夏の会津若松駅。特急電車や気動車、電気機関車に混ざって会津線や只見線、日中線用のC11形蒸気機関車の姿が当たり前のように構内を行き来していた。記録によればこの年の10月31日に全廃されたとあるのでこの写真からわずか3か月後のことだ。

(7) 喜多方到着
会津観光の中心、会津若松駅で新津行に乗り換え。車内は電車のモーター音からディーゼルカーのエンジン音に変わり一気にローカル線らしくなる。15分ほどで目的地の喜多方駅に到着。切符を渡して改札を出る。レンガ造りの蔵を模したファサードは2005年にリニューアルしたらしい。

(8) 今宵の宿
送迎バスで向かう今宵の宿は「一流の田舎」を掲げる熱塩温泉「山形屋」。二流の都会づくりをやめて一流の田舎を目指したとある町長さんのネーミングに由来している。訪れる人たちに地元への愛情や誇りを強要することなく、田舎の良さを味わってもらおうという気持ちが込められたものだ。

(9) ウェルカムドリンク
ラウンジのウェルカムドリンクは酒処会津ならではの日本酒、しかもセルフという潔さが良い。ノンアルコール類もあるが宿泊客はせっかくだからと日本酒に挑戦していた。前回の戸倉上山田温泉同様ここ山形屋もアンケート評価がある。このラウンジも含め宿泊客の様々な声が反映されている。

(10) 名人戦対局会場
山形屋では過去に将棋の名人戦が行われたようだ。それを記念してコーナーが設けられていた。最近ニュースで藤井聡太八冠が敗れたと話題になったが現会長の羽生善治さんが対戦した時の第2局投了図を撮影。将棋の名人戦をサポートする旅館ならば配慮も行き届いているに違いない。

(11) 日中線記念館へ
宿について温泉に入ったら近所を散歩。唯一の幹線道路沿いを歩く。右に曲がるとかつて喜多方から熱塩まで日中線が通っていた駅舎が記念館になっているらしい。熱塩加納村だった一帯は人口が1/3に減少、今は喜多方市の特例区となっている。宿を出てから結構歩いているが全く人に出会わない。

(12) 駅舎跡
日中線の終点熱塩駅の今の姿。当時は珍しい洋風の駅舎だったが廃止前は荒れていたそうだ。地元の人達の尽力で以前より綺麗に保たれている。喜多方から4駅の盲腸線ゆえか1957年には全駅無人化となり1974年に訪れた時は一日3本しか走っていなかった。朝一で熱塩駅を往復したことを思い出す。

(13) ホーム跡
かつて線路が敷かれていた地面は芝に覆われている。遠くで芝刈り機を操る人に遭遇、旅館を出てから初めての人の姿だ。1984年の廃線から今年でちょうど40年、現役時代の記憶も曖昧になりがちだが当時は鉄道ファンを含め朝早いにもかかわらず結構な人達が乗っていたと思う。この先には転車台の跡もあった。

(14) 駅名標
駅名板に明かりが燈る夕暮れ、日中走らない日中線は朝に一往復、夕方に二往復列車が走っていた。夕方の駅はきっとこんな感じだったのだろう。古い客車と貨車を従えた蒸気機関車がバック運転で熱塩に到着。車掌がポイントを切り替え機関車を先頭に誘導、本来の向きに戻って喜多方へ出発していった。

(15) 改札口
鉄ストーブが良い味を出している駅の待合室。ホームに出る前の柵がまた良い。ラッチと呼ばれる中央のコの字型部分に駅員が立って切符を回収したり切符に鋏を入れたりする姿は都内の駅でも普通に見られた光景だったが時は流れて今やタッチ式。改札業務を見たことのない世代も多いに違いない。

(16) 保存車両①
記念館に置かれている保存車両。喜多方市が管理運営しているそうだが状態が良い。多分塗装し直して間もない感じだ。本当は蒸気機関車を展示したかったそうだが車両がなく除雪車を置いたとか…年間降水量の半分が雪の会津地方、最深積雪が5~6㍍の熱塩にはピッタリかもしれない。

(17) 保存車両②
こちらは日中線を訪れた1974年当時も使っていたであろう客車。各地で静態保存されている60系客車の中の1台。外観は色褪せているが中を見学できる。最近はレトロ列車がブームだがこうした昔の客車が足りないとのこと。ビンテージな服には使い込まれた飴色の革靴が合うようなものか。

(18) タイムスリップ
中の様子。正にこんな感じの客車に揺られて北海道まで鈍行列車で旅したことがある。何回乗り継いだか分からないが青函連絡船に乗って函館に着いた時は24時間くらい経っていたはずだ。誰も乗らない列車の中、板張りの背もたれがきつくて青いシートに横になって寝そべったことを思い出す。

(19) 夕食
宿に戻ってお楽しみの夕食。「創作料理」が自慢の宿だけあって地元の食材に一工夫加えた料理が次々と出てくる。春はアスパラが旬だそうだ。晩酌は地元喜多方の弥右衛門。福島の酒米「夢の香」を60%まで精米した純米辛口で普段飲みとして地元で愛されているとのこと(大和川酒造HPより)。

(20) 温泉
開湯600年の歴史を誇る熱塩温泉は泉温は68℃~72℃と熱く、泉質は名前のとおり塩分が強い。別名「子宝の湯」と呼ばれ、山形屋さんの入る手前には子育て地蔵尊があり、子宝に授かった人がお礼参りする姿が見られるそうだ。温泉街は目下宿泊した「山形屋」さん一軒のみの営業とやや寂しい。

(21) 身支度
翌朝に露天風呂を堪能。合計3回も温泉に入って気分爽快、身支度を済ませる。クッションの効いたコンバースのCT70が今回も旅のお供、革靴履いて欧州を長旅したのが信じられないほどのスニーカー党だ。せめてのお洒落心とキャップはエルメス、送迎バスの時間まで朝の散歩に出かけた。

福島県の観光客入込状況を公式サイトで確認すると熱塩温泉の令和2年はコロナ禍もあり令和元年からマイナス40.7%の減少だった。コロナ過が終息した2年後の令和4年は入込数が対前年比プラス22.9%の15,476名となったが、それでもコロナ前の平成元年が27,604名だったのに比べると57%近く減少している。

2023年の2月までは今回お世話になった「山形屋」さんの奥に「旅館ふじや」さんが営業していたが残念なことに閉業したとのこと。喜多方から近い会津若松市の東山温泉や芦ノ牧温泉でも廃業した施設が少なくないようだ。普段都内で過ごしていると気付かないが人口減も重なってか地方の収縮を肌で感じる。

インバウンド客でオーバーツーリズムが問題になる観光地がある一方、旅行客の減少に苦慮する観光地も少なくない。この後30年来贔屓の店が気になるので訪れみようと思う。続きは後編で紹介したい。

By Jun@Room Style Store