2024/10/14 02:20

1967年設立のポロラルフローレンが50周年を迎えたのは2018年。遡ること2015年に創業者のラルフローレン氏は後任のステファンラーソンにCEO(最高経営責任者)のバトンを託した。だが僅か1年強でラーソン氏は会社を去ることになる。会長兼最高クリエイティブ責任者に留まっていたラルフ氏と折り合いが付かないことが多々あったようだ。
当時減収減益続きだったラルフローレン社はラルフ氏本人を中心に再建計画を発表。だが企業経営を一族以外に委ねられなかったことから証券各社は軒並み株の格付けを下げたという。そんな市場の予想を覆すかのように膨大なアーカイブを元にリファインしたデザインで欧州アジアを中心に業績を回復、2018年には50周年を華々しく祝った。
そこで今回は50年を迎えたポロを振り返りつつPrecious Roomに追加する商品をセレクトしようと思う。
※扉写真は50周年限定アイテム
【レザージャケット】
(1) 2019F/Wコレクション

最初は2019年秋冬もののハイブリッドボマージャケット。オンラインショップRoomで問い合わせの多い商品だ。50周年で勢いに乗った翌年はコロナで世界が一変する2020年を前に狂い咲きとも思える盛り上がりだった。こちらは価格が50万円越えでタマ数も少なく限定品といえるスペックで他の製品を圧倒していた。
(2) ディテール①

シアリング(シープスキン)の前身頃と合成素材(ナイロン)の後身頃を縫い合わせたボマージャケット。商品名にハイブリッドが付くのもそれが理由だ。背中のナイロン部分にはポリエステルの中綿が入っており防寒機能は十分。当時ショップの担当者は「これで中綿をダウンにしたらオーバースペックかも…」と話すほど保温力は抜群だった。
(3) ディテール②

両袖にはリアルなワッペンではなく手書きと見紛うほどよくできたプリントが入っている。前身頃の星条旗は別布を縫い付けてありアイスフォールを登るクライマーのイラストはアーカイブからの流用。背中の大型ワッペンや両前ポケットのワッペン重ね縫いを含め各部に装飾が施されている。
【参考資料①】

こちらがアイスフォールを登るクライマーのイラストの元ネタ。かつてRoomで扱っていたワークシャツの背面に描かれていたものだ。アメリカ製で地厚なコトンダックの逸品だった。ダンガリーやポロウェスタン、ポロカントリーからRRL、ポロスポーツやポロジーンズカンパニーまでアーカイブはお宝の山に違いない。
(4) ebay検索

限定品に近いこともあってebayでもヤフオクでも出品されたことは一度しかなかったと思う。幸い現在ebayで出品されているがサイズは同じMで中古にもかかわらず売値は4,295㌦だ。アメリカの物価上昇率の高さは日本と比べようもないほど。果たして買い手が付くのか…時々チェックしてみたい。
(5) 製品タグ

製品タグを見るとシェル前面と両袖は羊革、フードと背面はナイロン。背中の中綿はポリエステルと書かれている。ストラップなど付属パーツは牛革、サスティナブルを意識していたラルフローレン社らしくフードのファーはリアルからフェイクに変更されている。上質な羊革といえばインドが有名だがこちらも納得のインド製だ。
(6) 2019年秋冬ものから…

上のハイブリッドボマージャケットと同じ2019年秋冬もののライダースジャケット。元は真っ黒だったが茶芯だけに着込むと写真のように地色が出て貫録が付く。丁度この年アランフラッサーが「ラルフローレン:彼自身のファッションとは?」のタイトルで本を出版。再びメインストリームに戻ってきたラルフならではのクオリティだった。
【50周年企画品】
(7) アワードジャケット

こちらは2018年NYセントラルパークのベセスダテラスで行われた50周年秋冬コレクションで登場したバーシティジャケット。日本ではスタジャンと呼ばれるメルトンの身頃とレザーの両袖が合体されたハイブリッドジャンパーだ。大きなアルファベットのワッペンが付いていることからレターマンジャケットとも呼ばれる。
(8) ディテール①

50周年にタイガーを用いたのは中国市場を意識してだろう。中国で虎は生命の象徴であり魔除けや家内安全、金運上昇を願う縁起物。80年代から既に中国(香港)に製造を委託していたが2012年オリンピック衣装が中国製だったため議会で紛糾。2014年ソチオリンピックではアメリカ製にする…と発表して話題になったものだ。
(9) ディテール②

牛革製の袖筒に長いリブ袖が合体した先端は折り返して着るようになっている。前身頃のハンドウォーマー(ポケット)は袖と同じレザー素材の両玉縁。2019年のハイブリッドボマー同様両袖や両胸部分など各部にパッチや落書きが入る。ポロのバーシティジャケットの中で最も凝った作りと言える。
(10) ディテール③

両袖の折り返しリブと同じく襟部分もへちま襟を折り返すタイプ。折り返した衿と袖先を伸ばせば防寒機能も高そうだ。身頃はウール/ポリエステルの地厚なもの、牛革の袖は裏地がポリエステルなので意外と袖を通しやすい。胴裏は綿100%のフリース仕上げなのでスウェットのように肌触りが良い。
(11) ランウェイ

ランウェイに登場した時の着こなし。ヘリンボーンツイードのベストとラウンドカラーのクレリックシャツにカラーバーを使ってネクタイのノットを持ち上げたスタイルはラルフローレンの十八番だ。RRLのダメージデニムにコードバンのプレーントウ(クロケット製)を合わせるのがまた格好良い。
(12) ebay検索

2018年当時のアメリカ国内定価は598㌦(89,200円)だったが2024年の今、ebayでは650㌦(96,950円)で出品されている。ここ数年アメリカの大幅な物価上昇を考えると妥当な値段かもしれない。因みに日本での当時の価格は税込みで130,900円、ヤフオクで傷や汚れあり78,001円、メルカリでは出品がない。
(13) ebay復刻版

こちらは2018年モデルから両袖のワッペン(パッチ)や落書き(グラフィック)を外した簡易版。2019年に発売されたものだが追加で商品を投入したことから売れ行きが良かったのだろう。ただしPのレターもよく見ると簡易版では素っ気ない作りになっている。こうして見ると2018年版の仕上がりが秀逸なことが分かる。
(14) パッチカーディガン

こちらも2018年ランウェイで登場したスウェット素材のカーディガン。ファッションショーというとゴージャスな商品ばかり出てくると思いがちだがカジュアルものも多数登場している。恐らくランウェイに登場した中では最もリーズナブルな価格だと思う。ラルフ流にラウンドカラーにタイバーを挟んでディンプルを持ち上げてみた。
(15) ディテール①

ダートマスグリーンとクリムゾンレッドのスウェット素材を背中で縫い合わせたカラーブロックデザインが面白い。ラルフローレンのデザインチームはカラーブロックが得意なようで2018年以降も毎年ラインナップに加えている。2024年秋冬ものを「カラーブロック」で検索するとなんと32アイテムが見つかった。
(16) ディテール②

左右で色が違うだけでなく左がスリット式のポケットなのに対して右はパッチポケットで仕上げるなどアシンメトリーなデザインが特徴。両袖や身頃に付くパッチに加え刺繍も入りへちま襟にはイエローのストライプが二本入るなどデザイン画をそのまま製品化したような作りが他のブランドとは一線を画す。
(17) ランウェイ

ランウェイに登場した時の写真。ラウンドカラーのストライプシャツにクレストタイ、小ぶりなディンプルを持ち上げるタイバーは勿論カーディガンの下に着た千鳥格子の襟付きベストがちらりと見えるのも重ね着が得意なラルフ流。一風変わったサドルシューズを合わせているところにも目が向く。
(18) 復刻POLO HI-TEC

1993年にハイテクなアウターとして登場したポロHI TEC。ポロスポーツの中でも究極のパフォーマンスウェアの位置づけだったが2018年の50周年に合わせて復刻させている。メンズGQでは「90年代より機能性に優れたハイテク素材が採用されており、ポロラルフローレンの歴史に裏打ちされた最新テックウェア」と評している。
(17) ディテール①

肩から袖にかけてオリーブとネイビーの切り返しが入るデザイン。パーツを別々に用意して接合するため縫い目から水が浸入しないよう縫い目にテープを圧着している。マッキントッシュのゴム引きコートと同じ手法だ。ファッションウェアとしては勿論スポーツギアとしても引けを取らないを性能を発揮する。
(19) ディテール②

ハイテックと謳うだけあって素材は合成繊維100%。フード裏のフリース部分のみナイロン、後は全てポリエステルで出来ている。93年当時のハイテックコートはポリウレタンが一部で使われており経年変化による加水分解が起こりやむなく廃棄したがポリエステルは対加水分解性が高く軽くて丈夫、熱にも強い優れものだという。
(20) ランウェイ

2018年のランウェイに登場したハイテックジャケット。オレンジとブルーのカラーブロックはランウェイに相応しいビビットな配色だがオンラインショップでは上に紹介したオリーブとネイビーの方が売れ筋だったようだ。フランネルパンツとフェアアイルニットというローテクなアイテムと組み合わせるのがラルフ流。
外部CEOであるラーソンの就任時、既にファストファッションがNYに出店しておりラルフローレンは「高すぎる」と言われたという。確かに2016年頃のラルフは商品に全く魅力がなく「いよいよ卒業か…」と思ったものだ。現状を憂いたミスターローレンは再び陣頭指揮を執るも「正社員8%リストラや米国内50店舗閉鎖」など状況は厳しく2017年にはNY5番街の基幹店も閉鎖へと追い込まれた。
だが2018年の50周年に向けて準備を進め記念ショーを成功裏に導くと状況は一変。英国の名誉勲章を受章し2019年には早くも増収増益へと回復を遂げている。2020年のコロナウィルス感染拡大で再び15%の人員整理を行うも店舗は撤退しないと明言、ブルックスブラザーズの経営破綻とは対照的に幾度も倒産の危機を乗り越え今年84歳を迎えたミスターローレンはエンパイヤを守り抜いたようだ。
次なる節目は2043年の75周年、どんな製品が出てくるか…見てみたいものだ。
By Jun@Room Style Store