コートのレストア | Room Style Store

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2024/10/21 08:48


プレシャスルームの開店に合わせてコートを充実をすべく在庫をチェック、新たに3点を追加することにした。スーツと違い着る季節が短いウールコートは保管する期間が長いためかケアが疎かになりがち。小まめなブラッシングや日陰干しに防虫シートの定期交換を心掛ければよいのについ忘れて虫に食われてしまうことがある。

しかも虫は上質な生地好き。カシミアは特に危ない。次はウール100%だがウール&ナイロンは虫に食われにくいとか。これはナイロン繊維が衣類害虫の餌に不向きゆえ。細かな汚れから虫食いが始まるので冬の終わりにクリーニングに出せばとも思うがクリーニング自体に防虫効果はなく防虫加工を追加で施す必要があるそうだ。

ということで今回は虫食いの補修を中心にウールコートのレストアを紹介しようと思う。

【ダッフルコート】
(1) ポロラルフローレン
こちらはポロラルフローレンのダッフルコート。地厚なメルトンの一重仕立てはネイビーやグレーと無難な色が多い中、如何にもラルフローレンらしい洒落た色目だ。製造はアメリカ製、恐らく90年代の物だろう。英国のグローバーオールだとウールナイロン混紡を見かけるがこちらはウール100%だ。

(2) ダークグリーン
コートを隅々までチェック。虫食いの有無を調べてみたが痕跡なし。ただ「メルトンは虫に食われやすい」らしい。丁度取り換え時期が来たので天気のいい日に陰干ししてからコート用の防虫シートを交換した、その際上から3列目のトグル留めループ端が解れかけているのを発見。

(3) レストア箇所
矢印の先が補修した部分。トグルを留める際一番力の掛かる部分だけに外れかるのも致し方なし。ただ既製品は縫製が甘いことも多い。ボタンの解れなどは皆経験しているはず。ミシンでしっかり補強すべくママのリフォームに持ち込んだ。工賃は550円だがこれで末永く愛用できるだろう。

(4) アメリカ製の証
青タグ下のMADE IN U.S.A.の文字。ファブリックは国産とインポートものを使用しているようだ。下のケアタグを見るとウール100%のシェルに対してレインフォースメント(補強材)は全てコットンとある。一重仕立てのどこに補強があるのか?と思いきやコートを捲るとコットンの地厚な補強テープが見える。

(5) 縫製
写真がその補強テープ。力の掛かるトグル留め部分や頻繁に手を出し入れするポケット上部など。これだけ作りがしっかりとしたアメリカ製のダッフルなんて今じゃ中々見つからない。試しにポロショップを覗いたらウールツイルのダッフルが30万越えで中国製。昔は良かったなとしみじみ思う。

(7) フード部分
フード部分に付いたスナップボタンは飾りかと思いきや蛇腹状に折り畳むためらしい。試しに片側だけボタンを留めてみたが両方を留めると背中でフードがぴたりと口を閉じるので収まりが良い。補強テープが縫われているのでスナップボタンを頻繁に留めても大丈夫そうだ。実によく出来ている。

(8) 実際の色目
中々実際の色目に近い写真を撮れないもの。中でも一番近いものを掲載してみた。ダークグリーンの色合いは他のブランドにはないもの。因みに楽天で今期の英国製ダッフルを検索するとグローバーオールはネイビーとブラックにキャメル、アメリカ製のショットはネイビーにオリーブと今一つだった。

【大掛かりなレストア】
(8) バーバリー
最も大掛かりなレストアを施したのがこちらのバーバリー。シングルチェスターコートだが1995年のクリスマス商戦でハロッズが一推した商品だった。生地はカシミア100%で英国製、丁度海外駐在時だったのでメールオーダーにて購入。既に30年が経過し立派なビンテージものだが現地で虫に食われたようだ。

(9) デニムとのコンビ
写真はレストア後の撮影。ドレッシーでゴージャスなカシミアのロングコートはどう着崩すかがポイント。ポロの広告を参考にジージャンを合わせるとあら不思議…バッチリ合う。選んだのはリーバイスの1953年モデル507XX。今は日本製だがコーンデニムを用いた希少なアメリカ製だ。

(10) 首元
まず気になった首元の虫食い。上は補修前で下が補修後の写真。かけはぎは日本固有の技法、海外駐在時には直す術もなかったがここでようやく手を付けた。関西ではかけつぎとも呼ばれる根気のいる仕事は一か所1.5㎝の正方形で2000円〜と手間賃も高額だが今回は馴染みのクリーニング店経由で依頼した。

(11) 身頃
左は補修後で右が補修前。こちら側で補習場所にしつけ糸で印をつけてから出している。虫食い穴が小さくて補修不可の場合はブラッシングで回復させると良いそうだ。この後衣類用のブラシで毛並みを整えるとすっかり綺麗になった。車のレストア同様元のボディを活かせる部分は敢えて手を入れてない。

(12) 追加補修
念入りにチェックしたつもりだったがかけはぎ業者さんの方で新たに見つけた虫食い部分には青い糸が付けられていた。既にレストア済みなので補修前との比較写真を載せられないのが残念。虫食い跡が全く分からないのは流石だ。それにしてもプロの目は鋭い。素人が見落としても本職は見逃さないのだ。

(13) 綺麗な袖口
コートに限らず衣類の袖口は汚れやすいがレストア後は新品同様。元々着用歴も殆どないので袖の直しも入れていない。今後長きに渡って着用できるだろう。バーバリーUKのサイトでは僅か5%カシミア混の同型ウールコートが今季35万円、しかも中国製だ。昔の製品が上質だったことが良く分かる。

(14) 90年代の名品
カシミア100%のタグとバーバリーお約束の旧タグ。より高級なラインであるプローサムブランドが1998年に発表されたが2017年には展開を終え最近は業績が低迷。最大市場である中国の景気減速が原因だがブランドの魅力回復は依然厳しいと報道されていた。昔のバーバリーが古着店で人気なのは皮肉だ。

(15) サイズタグ
サイズタグは38Rだが昔の製品らしくゆとりがある。当時のカタログは処分したが確か下にタートルネックのセーターを合わせていたはず。日本より関税が低かった海外駐在時はハロッズやハケット、チャーチズやエドワードグリーンといった英国ブランドを盛んに個人輸入したものだ。

(16) チェスターバリーか?
コートの襟や比翼仕立て部分に走る星コバステッチ。手縫いに見えるがAMFステッチかもしれない。スーツだけではなくコートなど厚手の生地でもAMFステッチはOKらしい。ライバルのアクアスキュータムがチェスターバリー製のチェスターフィールドコートだっただけにファクトリーが気になる。

【ダッフルコート】
(17) オールドイングランド
お次はまたもやダッフル。こちらはパリのオールドイングランドが毎年ラインナップしていた英国製の逸品だ。当時エルメスやオールドイングランドのダッフルコートはムーアブルックのヘリンボーン生地を使用していたが不況で倒産。旧式の織機をジョシュアエリスが買い取り後に復活させている。

(19) フレンチアイビー
コートは英国製。シャツ(アイクベーハー)とセーター(ポールスチュアート)は米国もの。なのに合わせるとフレンチアイビーなのがオールドイングランド流のエスプリ。日本で復活したオールドイングランドも最初は英国製だったが今季は生地がジョシュアエリスではなくマラリウス製で縫製は日本とのこと。

(20) ニット素材か?
このダッフルコートもウール100%と上質なため虫食いが見つかった。写真でも分かるが右フラップの端に大きく開いている。バーバリーのカシミアコートと一緒に修理に出したがニット素材…とのことで戻ってきた。ネットでニット素材のかけはぎを扱う店を検索、探し当てて予約を入れた。

(21) リペア工房へ
訪れたのは自宅から近いお直し専門店。名前は「服飾工房ソーカラーファクトリー」。店主によればアパレル関係を中心にB to Bビジネスに長らく関わってきたそうだ。その経験を元に2020年からは個人客も受けているとのこと。プロからの依頼をこなしつつ磨き上げた知識と技術は信頼できそうだ。

(22) 店内
生地は「ニットではないだろう」とのこと。かけはぎの場合「起毛されている表面に段差ができるかもしれない」ので「生地をはめ込むやり方とかけはぎのどちらが良いか職人と相談して仕上げる」ことになった。料金は前払いで納期は約一ヶ月。出来上がり次第当ブログで紹介しようと思う。

古着を扱うようになって感じるのは「昔の服は品質が良かった」ということ。その理由をAIに尋ねると①昔の服は手縫いや手織りが中心で職人による細やかな作業が服の品質を高めていた…との答えが帰ってきた。また②時間をかけて織られた生地など上質な素材が使われていたのも大きな理由だそうだ。

有名な話としてアパレル販売員から「売っている僕らが言うのもなんだけれど服の質はどんどん落ちてきている。だから昔の服を捨てない方がいい」とアドバイスされたことをX(旧Twitter)にアップ、話題になったこともある。高品質なエルメスでさえ20世紀の製品は今よりしっかりしてたという声も多い。

一度手放したら二度と戻ってこない。そう考えると「断捨離のすすめ」に従うだけじゃだめだ…と思う。

By Jun@Room Style Store