Brooks Brothersの復活 | Room Style Store

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2025/01/18 08:50


WHOにより新型コロナウィルスのパンデミックが宣言された2020年3月11日、感染者数・死亡者数が一桁多い米国では急速な経済の悪化が報告されていたが7月8日にはなんと世界最古の紳士服販売店ブルックスブラザーズが経営破綻してしまう。創業200周年を祝ったばかりの老舗の悲報を当時の各メディアは速報で伝えた。

読売新聞は「ブルックスブラザーズ日本法人は融資を受けておらず米国法人が破綻しても在庫は充分で影響はない」と報じている。もっとも米国内の自社工場全てが閉鎖されたため日本の在庫も米国製から日本製へ順次変更された。8月30日には歴史ある青山店が閉店になるなど一つの時代が終わったような気になったものだ。

NY三大ブランドのポロやポールスチュアートと異なり自社工場を持っていたためか期せずして経営破綻したブルックスブラザーズだが再建は早かった。とはいえ直後の商品構成はやや上質なファストファッション…魅力を感じられずむしろ興味はブルックス傘下を離れ再建を果たしたガーランドシャツメーカーに移っていた。

ところが再建を託されたケンオオハシ社長の下、米ブルックスブラザーズは僅か二年で黒字化を達成してしまったという。どうやら知らぬ間に次々と売れ筋の商品を投入したらしい。暫く訪れていなかったが昨年末に米国サイトを覗いたら創業200周年エキジビションで見たアーカイブからの復刻品が並んでいるのに驚いた。

年末の高揚感もあってお目当てをカートに入れて決済を終えるまでの早かったこと…ということで今回は届いたばかりのブルックスブラザーズ米国からの直輸入もの、しかも久々のアメリカ製品を紹介しようと思う。

※扉写真は購入品の付属タグ

(1) 国際小包の到着
商品をオンラインで購入したのが12月30日。配送会社のDHLからは配達時間の指定や関税の支払いなど頻繁にショートメッセージが送られてくる。昔と違って配達前に関税の支払いを済ませておかないと配達されないらしい。商品到着は1月8日の夜。アメリカからは僅か9日で届いたことになる。

(2) 開梱の儀
米国のブルックスブラザーズでネットショッピングしていた10年前から49.99㌦の送料は変わらず。日本からは円安もあって送料は実質5割り増しだが物価高のアメリカで送料を据え置くのも容易ではないだろう。配送車はオレンジボディに赤文字のDHLではなく夜間指定のためか佐川急便が代行していた。

(3) ガーメントケース付き
箱を開けて最初に見えるのがガーメントケース。憎い演出だ。商品は下にありますよ…ということか。このガーメントケース、広げてみると国内のアパレルメーカーと同様上着を二つに畳んで持ち運べるタイプのようだ。届いたばかりの服を馴染みのリフォーム店に持っていくのに早速使えそうだ。

(4) ネイビーブレザー
購入したのはまたもやネイビーブレザー。英国のテイラーでダブルの8ボタンと6ボタンを注文したばかりなのに今度はシングルだ。実はブルックスの破綻以後アメトラが恋しくてJ.プレスを狙っていたが定価販売のみ。ところが久々に覗いたブルックスで限定セールなのを知って鞍替えしてしまった。

(5) I 型ブレザー
ハンガー付きで入っていたブレザーはウェルトシームのラペルやパッチ&フラップポケットがアイビーど真ん中の作り。ちらりと見える背抜き仕上げも高温多湿な日本にぴったりの作りだ。生地は通気性や耐久性に優れた平織りのホップサック。ダークな色合いながらクリスピーな感触が涼し気な印象を与える。

(6) 平場置き(前面)
英国仕立だ、いやクラシコイタリアだと本場のテーラーを極めるのも悪くないが自分にとって服の基本といえばVANとメンズクラブ。①胴絞りのない寸胴なシルエットや②ナチュラルショルダー、③段返りの3ツ釦に④袖の二つ釦など昔教わったディテールがてんこ盛りなのを見てつい口元が緩む。

(7) 平場置き(背面)
こちらはバックスタイル。センターフックベントが堪らなくそそる。欲を言えば背中心もウェルトシームだと更に雰囲気が出るのだが…それにしてもウエスト部分のくびれのないこと。万人にフィットする既製紳士服を世界で一番最初に販売したブルックスならではのレガシーともいえるスタイルだ。

(8) プライス
プライスは998㌦。日本円で157,650円だがブルックスジャパンの値付けは198,000円とやや割高だ。サイズもアメリカでは38Rが標準だが日本ではショートな38Sが標準という違いがある。巷ではヒップが半分出るショート丈の上着が未だに主流だがあれは若者が着てこそ似合うもの。オールド世代はジャスト丈を選びたい。

(9) ピンズ
フラワーホールに付く星条旗のピンはアメリカ製の証しだ。因みにトランプ次期大統領も付けている。そのトランプ氏はイタリアのブリオーニ、退任するバイデン氏はラルフローレンがお気に入りらしい。歴代大統領が着たというブルックスブラザーズ、はたして次に着るのはどんな大統領だろうか。

(10) 金ボタン
ブレザーの肝ともいえる金ボタン。アメリカ製ブレザーボタンで有名なウォーターバリー社製のものだ。艶消しの表面にブランドのシンボル「ゴールデンフリース」が型取られている。かぶせと呼ばれる足つきの土台にドーム型の蓋を被せたボタンは通常のフラットなタイプよりボリュームがある。

【アウトフィット】
(11) BB#1ストライプ
ブレザーの名は"1818 No.1 Sack Blazer"。No.1といえば三本ストライプのBB#1レップタイを思い出すトラッドマンも多いだろう。写真のネクタイが正にBB#1ストライプ。アメリカのレップタイは通常右下がりだが親会社が英国のマークス&スペンサーだった頃のネクタイにはこんな珍品もある。

(12) 袖口
袖口は飾りボタン穴のない簡素な仕上がり。所謂「開き見せ」と呼ばれるタイプだ。ただし切羽部分が長く取られているので本切羽の本開きにすることもできる。既製紳士服を世界で最初に販売したブルックスブラザーズが簡単な直しで万人がすぐ着られる服を発案した様子が見てとれる。

(13) ヘリテージスタイル
再生にむけて就任したクリエイティブディレクターのマイケルバスティアンは自身ビンテージのブルックスブラザーズを愛用するアメトラ好きらしい。アーカイブから色々復刻させているようだ。このブレザーもブルックスのレガシーといえるサックスタイルをリファインさせたものといえよう。

(14) パターンオンパターン
昔のアイビー着こなしルールだったらNGなBB#1ストライプ同士の組み合わせ。どちらも昔のブルックス製、我が家のちょっとしたアーカイブものだ。1979年にブルックスが日本に上陸した時はスーツは高嶺の花、アメリカ製のBDシャツやせいぜいネクタイを買って満足していたことを思い出す。

(15) お台場仕上げ
生地を継ぎ足していない本物のお台場仕上げ。一着作るのに生地を余分に使うので既製服としては贅沢な仕上げだ。今回の復刻ブレザーはライニングがNo.1ストライプという凝ったもの。シャツとネクタイに裏地と同じ柄がバッティングすると外からは見えないとはいえ少々目がチカチカする。

(16) 着こなし
ブレザーと相性良しのチノパンはバリーブリッケン。BDシャツはブルックスの破綻後独自に再建したガーランドでレップタイがポロラルフローレン。残念ながらネクタイだけはイタリー製だがあとはオールアメリカンで組んでみた。後は靴をオールデン、鞄をオールドコーチかグルカあたりで締めくくりたい。

(17) 日米比較①
今度は日米公式サイトの比較から。まず目につくのが胸ポケットの違い。日本はトラッドな箱ポケットなのに対してアメリカはアイビー調の3パッチポケット。日本サイトの説明によれば縫製はヒッキーフリーマン、スーパー110sのホップサック生地はアメリカで唯一残るアメリカンウーレンカンパニー製とのこと。

(18) 日米比較②
バックスタイルは日米どちらもセンターフックベントを採用。トムブラウンがディレクターを務めていたブラックフリースのブレザーはヒップが半分出るショート丈だったが今回はジャスト丈に戻しているようだ。公式サイト内では日本がアイビースタイル、アメリカがヘリテージスタイルと解説している。

(19)  日米比較③
最後に日米インナータグの比較…日本ではトラディショナルの文字が入るがアメリカはサックブレザーと表記されている。経営破綻によって本国とは異なる独自製品が増えた日本のブルックスブラザーズ。とはいえ今回の日米共同企画ブレザーはディテールにこだわる日本のアメトラ愛好家も納得の出来映えだろう。

(20) 納品書
定価998ドルの40%オフで598.80㌦。送料49.99㌦を加えた648.79㌦をカードで決済して106,273円、更にDHLへの関税支払額12,780円を加えると総額119,053円となった。日本の定価は198,000円だから差額は78,947円…恐らく日本ではブレザーはセールにならないはずだからお買い得な年末セールだったことになる。

WEB版「WWD」の記事によれば多くの候補者の中からマイケルバスティアンがクリエイティブディレクターに選ばれた理由は「アメリカントラッドが得意」だったからとのこと。更に「新規顧客の開拓を主眼に置かず既存の顧客を大切にする戦略」をとったことで再建後早々と黒字化を達成した結果に繋がっているようだ。

商売には1:5の法則というのがあって「既存の顧客維持に対して新規顧客の獲得には5倍のコストがかかる」とか。実は青山店を閉店して表参道に店舗を移した日本のブルックスブラザーズだが再び青山の跡地に新青山店を開店する計画があると聞く。創業の地に戻ることで足が遠のいた既存の顧客も戻ってくるに違いない。

米国でも日本でも復活の狼煙を上げたブルックスブラザーズは要注目だ。

By Jun@Room Style Store