2025/01/25 21:04

初日は旭川を出発して層雲峡で一泊、二日目は雪の北見峠を越えて遠軽を訪問、更に天北峠を越えて名寄へと車を走らせた。iPhoneのマップによればその距離233㎞、所要時間は4時間13分とのこと。雪の峠道は緊張するがそれ以外は渋滞もなく信号すらない道をひた走ると予定時間より早く名寄へ到着した。
名寄ではビジネスホテルを予約。入替制だが大浴場を備えているのが予約の決め手だ。早速大風呂で疲れた体をほぐしビールで喉を潤す。翌日の運転を考えアルコールは程々に今後の予定を確認した。明日は最北端のまち稚内が目的地。ホテル名物朝バイキングは一番に済ませ早めに出発した方が良いだろう。
ということで今回は北海道をぐるりと回る旅の三回目、日本最北端へと車を走らせた様子を紹介しようと思う。
※扉写真は名寄駅
(1) 糠南駅へ

まずは秘境駅ランキング第7位の糠南駅へ向かう。昔友人と写真を撮りに来た頃は秘境駅なんて言葉はなく無意識に通過していたはず。だがもし彼が今も生きていたら「写真を撮りに行こう!」となっただろう。そんなことを思いながら車を走らせ到着。一日3本しかない稚内行の普通列車を出迎えた。
(2) 稚内を目指す列車

意外なことに一人の客が駅に降り立った。間もなくドアが閉まりエンジン音とともに列車は稚内へ…踏切が開くのを待って列車を撮影した。暫くすると辺りは元の静寂に包まれる。人が住む気配は全くないが降り立った人は秘境駅ツアーの最中らしい。2時間ほど一人で過ごして名寄に戻るそうだ。
(3) 抜海駅へ

続いて稚内に近い抜海駅を訪問。2025年3月に廃駅となる運命だ。前回も書いたが昔「急行利尻」で知り合った北大生の実家に厄介になったことがある。しかも翌日は観光案内付きで撮影地まで送って貰うなど大変世話になった。友人と二人、撮影後にここから札幌を目指し、帰路に着いた思い出の駅だ。
(4) 52年前の写真

写真は当時の風景だが今も殆ど変わらない。よくもこんな原野に線路を敷いたものだと感心してしまう。家や道はもとより線路以外人工物は一切なし、北海道開拓史を目の当たりにしているようだ。最寄りの抜海駅は1924年6月25日開業、昨年100周年を迎えたが101周年を待たず2025年3月で役目を終える。
(5) 記念乗車するご夫婦

降りしきる雨の中、抜海駅の待合室で稚内行を待つご夫婦と暫し歓談。特に奥様が鉄旅好きとのこと…間もなく到着した列車とともにお見送り。車両はキハ54の502、先ほど糠南駅で撮影した列車だ。北海道では車の方が列車より早い。きっとどこかで追い抜いたのだろう。間も無くこうした風景も見納めだ。
(6) 抜海駅からお見送り

雨樋を落ちるしずくが惜別の思いを募らせる。向かい側にもホームがあり昔は列車交換ができたが今やポイントは外され駅舎のあるホームしか使われていない。それでも廃駅が決まってから訪れる客が増えていると聞く。この日も生憎の天気だったが最期まで駅本来の役割を全うする抜海駅を後に稚内へと向かった。
(7) 稚内

こちらは稚内駅から伸びる線路の端。黄色い線路止めと共に日本最北端の線路と彫られた石碑が立っている。ガラス窓を大きく取ったモダンな駅舎は複合施設として公立図書館や飲食店が入りそれなりに人が多い。ただホームは片面で列車も一本しか停車できない。最北端の駅は思ったよりもずっと簡素な作りだ。
(8) 単線一面の駅

駅舎の反対側からホームを撮影。人口3万人を超える稚内市の駅としてはかなり寂しい。1984年に稚内〜名寄間の鉄道貨物が廃止されたことで沿線の主要駅は一気に縮小された。52年前に訪れた時はここ稚内と隣の南稚内の間に機関区があって機関車や貨物が所狭しと並んでいたことを思い出す。
(9) 記念撮影

やがて特急サロベツが入線、待合室で到着を待っていた乗客達が一斉に移動する。隣の複合施設から2階のデッキに出られるのでホームと乗客の様子を見ていると最北端の駅票と絡めて写真を撮ったり特急と一緒に自撮りしたり…日本最北端の駅は旅人にとって特別な思いを抱かせる魅力があるようだ。
(10) 間宮林蔵

稚内駅を離れて車を走らせ最北端の宗谷岬を目指す。列車で知り合った北大生が自家用車で連れて行ってくれたのがこの場所だ。昔と比べて綺麗に整備されたのだろうか随分と印象が違う。手前の銅像は間宮林蔵、1808年に江戸幕府の命を受け宗谷岬から船で渡り樺太を探検、島であることを発見した。
(11) 最北端の碑

こちらが日本最北端の石碑。晴れた日には43㎞先の樺太(サハリン)の島影が見えるという。日本人観光客は一人もおらず中国や韓国の観光客が思い思いに写真を撮っている。夏はバイク族で賑わうというが波頭の立つ海から吹き付ける寒風は間も無くやってくる冬の厳しさを物語っていた。
(12) 灯台

間宮林蔵の銅像の奥に見えるのが日本最北端の灯台。年に一度公開するらしい。それだけのために行くのも大変だがもっと凄いのはここ宗谷岬で新年のカウントダウンと初日の出を拝むセットイベントが毎年開催されているのだという。車はまだしもバイクで来てテント泊しながらご来光を拝むとか…。
(13) 最北端の温泉へ

稚内から南へ降って豊富温泉を目指す。日本最北の温泉郷があると聞いて予め宿を予約しておいた。石油や天然ガスと共に井戸から湧出してくるため油分を含んだ泉質とのこと。保温保湿効果が高いだけでなくタール成分が抗炎症作用を発揮すると書いてある。温泉宿は5〜6軒だが町民が憩う共同浴場もある。
(14) 共同浴場

こちらがふれあいセンター。朝は8時半から開館、翌朝出発する前に散歩していたら地元の人たちが風呂の支度をして並んで待っているのを見かけた。風呂がコミュニティの役割を果たしているような感じだ。料金は大人が510円と東京の銭湯550円とほぼ同額、効能を考えればお得感がある。
(15) 今宵の宿

今宵の宿は川島旅館。三つ星旅館とのことでネットから予約した。前日の名寄ではホテル付近に飲食店がなくセブンイレブンで買って済ませたので長閑な温泉地なら朝夕食付きが良いだろうと食事ありを選んでいる。チェックインしてまずは温泉へ…噂に違わず油分を含んだ温泉は独特の肌触りだ。
(16) メニュー

ビジネスプランを予約したので夕食にアルコールのサービス付き…日本酒やワインもあるが北海道に来たからにはサッポロビールを飲まないわけにはいかない。ビールを待つ間にダイニングを見回すと宿泊客が意外と多いようだ。季節外れの宿泊ゆえ客は自分一人かと思ったが道内の人にも人気の温泉宿らしい。
(17) サッポロビール

まずはサッポロクラシックを飲んでみる。恵庭市で製造され北海道でしか飲めないビールという触れ込み。麦芽100%にアロマホップだけを使う製法は他社のプレミアムビールと遜色ないが価格は抑えているという。そう聞くと飲まずにはいられない。注がれてきたグラスも専用と気分が上がる。
(18) 地ビール

ウェルカムドリンクの次は地ビールを注文。名前は「旅の始まりのビール」原材料は十勝産の大麦麦芽100%、しかも一つの大畑で獲れた大麦のみを使用するという日本では珍しいシングルモルトビールだそうな。まるでウイスキーのようだ…。説明を読んでいるとこりゃ飲まなあかん…という気持ちになる。
(19) 地元のジャガイモ

料理は地元の食材を使ったメニューが並ぶ。こちらはジャガイモのバジルバター炒め。翌日の朝食でも出てきたが川島旅館の自慢の一つが地元豊富町の牛乳を使った「とよとみフレーバーバター」だ。蒸した皮付きのじゃがいもにバターの味をたっぷり染み込ませたもの。ビールとの相性は抜群、食も進む。
(20) メイン料理

こちらが料理のメイン、若鶏のグリル。道産の若鶏に様々なハーブを使用した味付けはアジアンテイスト、エスニックな感じだ。シンガポールに三年ほど暮らしていた頃のことを思い出してしまう。そういえばコリアンダー(パクチー)は駐在員の間で好き嫌いが分かれる食べ物の一つだった。
(21) 寝室

ここでもシングルでツインの部屋を利用。部屋は温水パネルヒーターによる暖房が心地よい。じわりじわりと暖まってくる。安全性が高く空気を汚さず音も静か…と三拍子揃っている。各部屋に水回りを配置するコストを考えたのだろうか部屋にはトイレがないので共用トイレを利用することになる。
実はせっかくだからと宗谷岬から宿まで敢えて裏道を運転。広大な農地や牧場を縫うように進むとこれぞ北海道という景色を堪能した。ただあまりにも対向車とすれ違わないので次第に「本当にこの道で合っているの?」と不安になってくる。ようやく浜頓別から来る道と合流、とよとみ温泉の看板が見えた。
その浜頓別だが52年前に友人と訪れた時はまだ天北線が走っていた。だがJR移管後2年で廃止されている。ラムサール条約に指定されたクッチャロ湖を観光資源として活かせぬまま過疎化が進むなど地元の危機感は強い。鉄路の廃止が沿線の活力を奪い更なる人口減少を招いたのでは…という声さえ聞こえてくる。
多くの課題を抱えながら、それでいて北海道の魅力は尽きない。明日は再び宗谷本線を南下して旭川を通過、一気に美瑛を目指す。旅もそろそろ終盤だ。
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