2025/03/10 10:21

ヘビアイ(注1)好きの定番ブーツといえばレッドウィング。メンクラで紹介されていつかは欲しいと思っていた本格ブーツだった。当時は高くて買えないのでリーガルを履いていたがお金に余裕ができた頃には舶来靴ブームにどっぷり浸かり後回しのまま。1995年にようやくアイリッシュセッター875でデビューを果たした。2足目は大ヒット作となった黒セッター8179をなんと海外の駐在先で購入。
(注1:ヘビーデューティーアイビーの略)
翌日店を再訪したら既に完売…店主曰く「日本人が来て全部買って行った」そうだ。バイヤーの嗅覚には恐れ入る。当時ナイキのエアマックスと共に靴が流行った数少ない例だろう。その後短靴の8103を経て今回紹介する8166へと続く。新参者の8166だったがプレーンなつま先が気に入って田舎暮らしから軽井沢の廃線巡りや先日の北海道旅行などよく履いた。お陰でソールもすっかり減っている。
そこで今回は北海道旅行を終えて修理に出したレッドウィング8166のビフォー&アフターを紹介しようと思う。
※写真はレストア後のレッドウィング8166
(1) 8166参入前

レッドウイングとしては2足目の黒セッター8179がこちら。8166が我が家に来るまで最もよく履いていたブーツだ。音楽関係者のカスタマイズがきっかけで製品化され話題沸騰、更にキムタクやパフィーが愛用したことで一気に火が付いた。当時海外に駐在していたので詳しくは分からないが偽物も数多く出回ったそうだ。
(2) 8166の登場

2008年になってようやく我が家に来た8166。主に信州の山小屋で履いていたせいかつま先の汚れや履き皺などエイジングが予想以上に進んでいる。ところがソールはほぼ新品…なぜって理由は地面を見れば一目瞭然だ。松の葉に覆われた地面は柔らかく庭仕事をしても殆どソールは減らなかった。
(3) 2020年代①

月日は流れて田舎暮らしも数シーズンが経過。新参者だった8166も流石につま先が減り始めている。一方足馴染みはまだまだ…紐を一番上まで締めると踝に靴擦れが起きることもあった。因みに右手に持っている薪はストーブの焚き付け用。夏の間に冬支度を済ませるのが田舎暮らしに欠かせない作業だ。
(4) 2021年秋

更に1年が経過したが上の写真よりソールが白く見えるのは汚れを落としたため。色々試したが「ジッポーオイル」が一番効果的だった。レッドウィングを街中でお洒落に履くならソールは小奇麗な方が良い。ただし何回もライターオイルで汚れを落としてソールに影響はないのか…一抹の不安がある。
(5) 2023年冬

年末の降雪が残る信州の山小屋で迎えた2023年正月。綺麗だったソールも買い出しや薪運びに精を出すとみるみる汚れてしまう。さらにこの年の5月には横川~軽井沢間の線路跡11㌖ウォークツアーに8166で参加。コンクリートの枕木を伝って歩いたおかげでヒールが一気に擦り減ってしまった。
(6) 2024年秋

更に1年後…冬将軍の来る前の2024年11月に北海道を旅行した時の8166の様子。一番足に馴染んでいるブーツということで選んだがかかとの減りが歩行に影響するのかバランスが悪い。それに予想していたとはいえ11月下旬の降雪にソールの溝が減った8166で結構危ない。帰ったらレストアが必要だと痛感した。
(7) 2025年1月

2025年を迎えてレストアに出す前の点検…靴の外側から見るとヒールの片減りが著しい。自分でもガニ股気味と自覚していたがこれほど減っているとは…それにつま先はさほど減っていないものの底を触っても昔のような弾力がない。一方アッパーは傷こそ多いがくるぶしのアタリは良好で足馴染みも文句なしだ。
(8) かかとの減り①

今度は靴の内側同士を重ねて点検するとヒールの減りは殆どなし。どうやら単なるガニ股だけでなく歩き方に「問題あり」のようだ。解決策は①つま先を正面に向けて歩く②着地させる時はかかと→足裏→足親指の付け根の順を意識せよとのこと。歩き方を今更変えるのは大変だがトライしてみるか…。
(9) かかとの減り②

外側の減りはかなりのものだがウェルトまでは達していない。これならアウトソールの交換だけでなんとかなりそうだ。つま先からかかとまで一体成型のトラクショントレッドソール(正しい呼び方)は全交換しかないと思っていたがネットで「①ヒール部分をカットして②同じ素材を貼り合わせて③整形する」ヒール交換も可能だと知った。
(10) 硬化したソール

つま先部分の様子。ソールの先端がひび割れてる。加水分解こそないがこうした「ひび」に加え経年変化でソールの返りが悪くなるとも聞く。もしアウトソールを交換するとしたら①純正品にするか②社外品で良しとするか…因みに純製だと修理店は限られるらしい。結局馴染みの靴修理店にお願いすることにした。
(11) ソール全体の様子

これがソール全体の様子。修理店の店主に見せたら「まだパターンが残っているのでこのまま履いてもOKですが履き心地は悪くなるかもしれません」と控えめながら修理を勧める。履き心地も問題だが自分としては見栄えも気になる。山小屋履きなら構わないが街中で片減りしたヒールでは気恥ずかしい。
(12) アウトサイド

ヒールとつま先以外にも靴のアウトサイドが片減りしていた。やはり縁部分は剥離しかけている。考えてみれば2008年購入、既に16年が経過しているのだから結構長持ちした方かもしれない。修理店の店主は手間のかかるソール全交換ではなく「ヒール部分のみの交換」を勧めてくれた。
(13) 製造年月

因みに製造年月はタンの裏側に縫い付けられたタグに記されている。右下の07/08がそれだ。2008年の7月に製造されたことを示している。ついでにインソールの状態も確認…ぶ厚い本革の中底は足型が付くこともなくタフなまま。なんでも同じレッドウィングでもエンジニアブーツはインソールが合成素材らしい。
(14) 修理例①

こちらが修理店が勧めてくれた修理例。写真は靴修理の老舗ユニオンワークスさんからお借りしている。色の違いが明らかなのが気にはなるとはいえアウトソール全体を替えるより簡易なのだろう。因みにユニオンワークスさんではレッドウィング純正に近いパターンの素材で修理を行っているようだ。
(15) 修理例②

こちらもユニオンワークスさんの修理例。ヒール部分をカットして新しいパーツと張り合わせた様子が分かる。色の違いは元々のソールが変色したためもあろう。これと同じ修理を依頼していたが後日修理店から電話があり「ヒール部分をカットしたらソールがポロポロと剥がれてくる。そっくり交換の方が良いかもしれない」とのこと。迷わず「全交換で」とお願いした。
《ビフォー&アフター》
さてここからは修理前と後の様子を比較してみようと思う。
(16) 靴の外側

ソール交換前後の比較。アウトソールを丸ごと交換することで見栄えが一気に良くなった。矢印はウェルトとアウトソールの間に挟んだミッドソール。今回はミッドソールを交換していないが新品のアウトソールと調和している。コバを機械で磨く際にミッドソールも古い層が削られて綺麗になったようだ。
(17) 靴のかかと

後から見た時に格好悪く見えるヒールの片減り。もし革靴だったらここまで減るほど(ビフォー)履くだろうか…。決して高価な靴である必要はないが仕事の場において靴は「信頼に値するか」「仕事ができるか」のバロメーターとして見られているそうな。どいうせなら週末に履くワークブーツにも気を使いたいものだ。
(18) ソールのパターン

レッドウィングの純正からビブラムのユニットソールに交換した。その名のとおりつま先から踵まで一体型(ユニット)なのでヒールが減った場合でも丸ごと交換というのが本来の方法だ。費用は13000円に消費税だったが純正パーツを用いると持ち込む店が限られる上に16,500円とやや割高になる。
(19) つま先

ひび割れたつま先と綺麗になったつま先を比べると修理に出す価値が実感できると思う。なにしろ靴のつま先は人と向かい合うとき最初に相手の目に飛び込んでくる部分。目線を下にやった時、相手が古ぼけたつま先(ビフォー)と修理したつま先(アフター)とでは印象もがらりと変わるに違いない。
(20) 修理後の8166

不思議なもので綺麗になって戻ってくると早速履きたくなってしまう。アッパーはつま先の色落ちや様々な傷に加えて深い履き皺も目立つがソール交換で「愛用靴」に見えてくる。もしミッドソールまですり減るほど履いたままの状態だった単なる「古靴」になってしまうだろう。「履き込んだ」と「履き古した」の違いは大きい。
(21) オロラセット

レッドウィングといえばチェスナッツ色のオロレガシーが定番だがお気に入りは写真のオロラセット。修理を終えた8166の隣に並ぶのは更に新入りの8㌅モックトウ8877。2018年に代理店だった「みどり安全」がレッドウィングに別注した日本企画ものとのこと。その後復刻話がないまま廃番となったらしい。
今回修理を行った8166をはじめ定番の875や冒頭で紹介した8179に8㌅の8877など手持ちのレッドウィングに共通しているのはどれもトラクショントレッドソールを装着しているということ。本来は狩猟用のブーツとして獲物に近づく際、足音が立たないようにするためソールとして開発されたらしい。そんな薀蓄も大好きだが何より履き心地が良い。
反面、トラクショントレッドソールは都会で履くことを想定していないので都会のアスファルトやコンクリートの地面を歩いているとすぐにヒールが減ってしまう。ネットで調べると「なぜレッドウィングの靴底はすぐ減ってしまうのか…」という声が多い。トウスプリングを大きく取ってはいるがソールの屈曲性が弱いためか外側が減りやすいようだ。
そもそもなぜ都会でアウトドア用品を使うのか…という問いに対して①使い勝手が良いから②快適であるからなど答えは様々だったが共通点は「機能的である」ということのようだ。確かに小雨くらいなら傘を差さずに60/40クロスのマウンテンパーカの方が機能的だし寒波に見舞われた都会ではカシミヤのロングコートよりダウンジャケットが有難い。
ともあれ次の週末は修理を終えたレッドウィング8166でも履いて新宿御苑に梅でも見に行こうか…そんな気分になっている。
By Jun@Room Style Store