2025/04/22 01:35

ブログ「かわとこもの」の記事を読むとお洒落な人は平均13足の靴を持っているそうだ。最低でもカジュアルに3足、フォーマルに2足あると便利だと伝えていた。とはいえ仕事の職種や環境、ライフスタイルや趣味との兼ね合いなど身の回りの状況や年齢によって履く靴、履きたい靴は次第に変わってくるはず。
アイビー世代だけに米国製の靴は今なお食指が動く。スーツを盛んに着ていた頃は英国製の靴に全振りしたこともある。最近は田舎暮らし用のブーツに凝っていた。こうして足数が増えると「履くつもりで買った」のに出番のない靴に気付く。2対6対2の法則ではないが確かに2割は殆ど履いていないではないか。
そこで今回は2割の靴をせっせと履くべく「2025年履きたい靴(既成編)」を選んで紹介しようと思う。
※扉写真は履く機会の少ない靴(既成編)
【1985年もの】
(1) リーガルロイヤルインペリアル

普段履いていない靴を古い順に並べると最初に来るのがこのリーガル。金色のロゴは新品のようだが実は最古級。四十年が経過している。アッパーとインソール以外全交換に加えヒールやタン裏に新しいライニングを貼っている。リペアよりフルレストアに近い感じだ。出来栄えに満足して履かないのは要改善だ。
(2) 着用例

元々フラノのネイビーブレザーを想定して購入した経緯がある。合わせるスラックスも同じ素材のライトグレーを用意、クリムゾンレッドのペイズリーソックスとペアリングしてみた。因みにこの深紅色は米国を代表するハーバード大学のスクールカラーだ。同系色のネクタイを締めれば自然に首元と足元がリンクする。
【1990年もの】
(3) ロイドフットウェア

英国靴に目覚めた1990年、今はなきロイドフットウェア青山店で購入した靴。短期間に五足も買った思い出の店だ。当時世界最高と謳われたエドワードグリーン製マスターロイド、その中でも写真のUチップは別格だった。随分前にモカ縫いが切れたままだが今ならリペア店も充実しているはず…今年はせっせと履こう。
(4) 着用例

ノルウィージャンと呼ばれるこの手の靴は元々狩猟用。そう考えると本来は10月15日から翌年の4月15日までがベストシーズンになろうか。つま先に向かって厚みの増すハーフミッドソールは確かに秋冬素材と相性が良い。柄物フランネルパンツはクリーム色の格子がキーカラー。靴とソックスを上手く繋いでいる。
【1992年もの】
(5) J.M.ウェストン

J.M.ウェストンの180シグネチャーローファー。黒の次に買ったマロンは既に33年もの。手入れをするうちに茶色が濃くなっていた。同じウェストンでも日頃クロコやアリゲーターを履く機会が多いせいか不遇を託っている。鏡面磨きを施してイメージチェンジ完了。週末は早速履いて銀座にでも行こうと思う。
(6) 着用例

ウェストンのシグネチャーローファーといえば靴好きは大抵1足は持っているはず。通年履ける万能靴とはいえ夏場は流石に暑い。梅雨入りの六月から九月末までは避けた方が無難か。アメトラなマドラスパンツはバリーブリッケン、フレンチアイビーのウェストンローファーとはかなりの相性良しだ。
【1992年もの】
(7) エドワードグリーン

上のウェストンローファーと同じ1992年製。バーリントンアーケードの直営店でセール価格だったウインダミアを購入。カントリーカーフのアッパーは見た目よりずっと柔らかい。ただシンプルな外羽根プレーントウは手持ちのオールデンやボノーラと重なるのか意外と履くチャンスが巡ってこない。
(8) 着用例

見た目から秋冬然としているこの靴…半年間は屋根裏保管となる靴の筆頭だ。シングルソールなのがせめてもの救いとはいえ夏物の涼しげなスラックスとはやはり相性が今一つ。地厚なウールそれも紡毛系が合う。如何にもラルフローレン風なブラウンの千鳥格子と緑のソックスで足元を組んでみた。
【1992年】
(9) チャーチス

こちらも正月明けのロンドンはチャーチブティックで購入。ゲージで測定後サイズ8のGウィズを勧められたがレングスを上げてFウィズに変更。スマートな黒靴が欲しかった時期だ。ラストは73番、ライニング前半はキャンバス仕様でアッパーと同色の黒インソックに三都市刻印と90年代前半の特徴が表れている。
(10) 着用例

ネイビースーツに黒の紐靴。一見すると重たそうに感じるが正統派の着こなしだ。昼時のジャーミンStを少し入ったパブを覗くとネイビースーツに黒靴を履いたビジネスマンがパブランチを楽む姿を拝見できる。チャーチブティックに靴を買いに来た紳士のパープルソックスを参考にしてみた。
【1998年もの】
(11) シルバノラッタンジ

海外駐在を終えた1998年に渡欧、ローマのシルバノラッタンジブティックで購入した外羽根セミブローグがこちら。手縫い既成靴という靴好きの心をくすぐるイタリアの新手にまんまと嵌ってしまった。一時はイタリアのサルト仕立てものに合わせていたが英国仕立てが増えると履く機会が減っている。
(12) 着用例

クラシックなイタリア靴にはイタリアのスラックスが相性良し。パンツ専業ブランドのロータ(ROTA)らしい絶妙な茶の濃淡は英国ものにはない色気を感じる。通常ソックスは①靴に合わせるか②スラックスに合わせるかに加えて③差し色を選ぶの三種類。難易度の高い「差し色」に選んだのはコーギーのグリーンソックス。
【2000年もの】
(13) ジョンロブパリ

靴関連の掲示板で知り合ったゲストのFさんと訪れたロブパリのノーザンプトンファクトリー。目に留まったのがこのシャンボードだった。随分履いたがエドワードグリーンのようにモカステッチの糸切れを起こさないのは流石だ。リネンジャケットと合わせたいところだが半袖ばかりでは靴の出番もなかなか来ない。
(14) 着用例

同じノルウィージャン、しかもエドワードグリーンと瓜二つながらベージュに近いアルディラ色のアッパーや生成り色の出し縫いは意外と春夏向き。コットンパンツとの相性も悪くない。ブルックスブラザーズのタータンパンツは綿素材。黄色の格子がつなぎ役となってクリーム色のソックスと靴をリンクしている。
【2010年もの】
(15) ジョンロブ

ロンドンのジョンロブパリブティックにメールオーダーしたパリジャンスエードのフィリップⅡ。ウィンザー公に憧れてネイビーやグレーフランネルのチョークストライプスーツと合わせるつもりで購入した。因みにウィンザー公がスエードの靴と合わせたのはネイビーのチョークストライプらしい。
(16) 着用例

黒(またはうんと濃いグレー)のチョークストライプスーツにスエードの靴…週末にショッピングやランチ、あるいはディナーを楽しむならウィンザー公をお手本にするのも悪くない。因みにスエードは通年履ける素材と言われる。確かにローファーならばOKかもしれないが紐靴となると秋冬が似合いそうだ。
【2015年もの】
(17) オールデン

オールデンマディソンで購入、ボストン在住の親戚にキャリーして貰い手にした一足。日本からメールオーダーを受け付けるオールデンショップも出てきたが円安のご時世では中々注文する気も起きない。先日アメリカ製のアイテムが復活中のブルックス青山店を訪問、店員さんに靴を褒めていただいた。
(18) 着用例

オールデンの外羽根ダブルソールは重厚な外観が特徴。やはり秋冬向きだと思う。特に衣類が軽薄短小になる夏場は足元だけが重くて暑苦しい印象になろう。がっしりとした靴にはツイードそれもヘリンボーンのスラックスが好相性。メルトンのカーコートやダッフルコートを合わせてみたくなる。
【2018年もの】
(19) クロケットジョーンズ

英国のタンナーJ.FJベーカーが開発したロシアンカーフ素材の限定シューズはクロケットジョーンズ製。到着後に箱を開けた途端植物鞣しの匂いが強烈だったことを思い出す。ストームウェルトにリッジウェイソールのタフな仕様は正にカントリーシューズ。間違っても夏に履いてはいけない。
(20) 着用例

実は匂いもさることながらこの靴かなり重たい。ソールはウェルト、革中底、ゴムの三層構造。ヒールも合わせれば五層…食べ応えのあるミルフィーユのようだ。これだけヘビーだと合わせるスラックスも冬ものと割り切った方が良い。マスタードイエローのコーデュロイにセーターを着てバブアー姿を思い浮かべた。
(21) 2025年履きたい既成靴

実は60足の既成靴から選んだ「今年履きたい靴10足」のうち6足が英国製…英国靴好きとしては忸怩たる思いがある。更に気になるのが10足中8足が秋冬用の靴ということ。亜熱帯と言われる最近の日本。革靴の出番が秋冬に集中することで履かない靴の割合も増えたと考えられる。
今まで革靴といえばグッドイヤーの重厚なイメージがあったが繊研新聞社によれば「輸入統計を見るとこの10年で伝統的な作りの革靴から革製スニーカーへと日本の消費者の選択が完全に切り替わったことが見て取れる」とのこと。コロナ禍で40%近く落ち込んだ靴の輸入は2022年に回復したが主力だった伝統的な革靴は半分近くに縮小している。
さらに資料を読むと2012年には革靴の半分の輸入実績だった革製スニーカーがコロナ明けの2022年には革靴に倍以上の差を付けていることも判明。働き方改革の一環としてスニーカー出社を認める企業が増えていることも後押し効果となっているようだ。更に女性のパンプス問題提起など「職場と靴」との関係が変革期を迎えていることが分かる。
因みにAIは「伝統的な革靴」の需要減少を指摘しつつもなくなることはないと回答している。将来への展望としてしてはウェルト靴のような①伝統技術の継承や②本格革靴の存在意義を再確認し③未来に繋げることが重要と提言している。こうして手持ちの本格革靴を履いて街に出かけたり人と会ったりブログで紹介したりするのにも意義がありそうだ。
By Jun@Room Style Store