バーガンディの靴 | Room Style Store

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2025/06/28 17:37



以前から気になっていたので「ロンドンの金融街・シティでは黒靴しか履かないというのは本当か?」とAIに聞いてみた。すると「かつて黒い靴しか履かないという厳格な規則があったがもはやそうではない。一部伝統主義者の間ではまだ続くものの茶色の靴は広く受け入れられている」とのこと。

しからば「黒靴以外にビジネで履ける靴の色は?」と質問すると「ダークブラウンやバーガンディが候補に上がる」そうだ。ミディアムブラウンやライトブラウンはあまりビジネス向きではなく寧ろバーガンディーの方が汎用性があるらしい。スーツとの相性を具体的に解説していたのが印象に残る。

そこで今回はバーガンディの靴をケアしながら色々と考察してみようと思う。

※扉写真はケア用品の新顔サフィールのミラーグロス

【ビスポーク編】
〜ジョージクレバリー〜
(1) 紐を外す

夏を前に恒例の紐外しケア、まずはジョージクレバリーから。かなり赤身の強いバーガンディだ。昔ビームスで扱っていたクロケット&ジョーンズ製のアデレイドが気に入っていつかビスポークしようと思っていたモデルだ。人と違う靴を…とつま先にイニシャルを入れたがそんな我儘にグラスゴーシニアもよく付き合ってくれた。

(2) デリケートクリームを塗布
せっかく紐を外したのでアッパーの隅々まで栄養補給。夏は暑さで水分も栄養分も抜けがち、盛夏が来る前のケアが大切だ。保革といえばデリケートクリーム。我が家にはサフィールとモウブレイがあるがAIによれば「サフィールは油分が多くモウブレイは水分が多め」とのこと。そこで今回はモウブレイをチョイス。

(3)  つま先と踵
次にカラー8ワックスをつま先と踵に塗る。小傷を先に補色しておくと次のステップ「鏡面磨き」で光らせやすいからだ。因みにつま先を光らせる効用は「靴全体が引き締まって見える」だけでなく「手入れが行き届いた印象を相手に与える」といった仕事上の効果も期待できるからとAIが教えてくれた。

(4) ミラーグロスを塗布

ここでミラーグロスの登場。あまりに光るので靴磨き選手権では使用禁止となったとか。保革や栄養効果はないので予めビーズワックスなどで下地を整えた後、少量を薄く伸ばして使うのがお勧めとのこと。ミラーグロスの使い方をネットで検索すると「つま先と踵部分のみ」の使用が推奨されていた。

(5) フィニッシュ
時間をかけて仕上げたジョージクレバリーのアデレイド。こうしてみると靴を受け取った時の喜びが蘇る。バーガンディは「伝統的な黒や茶の靴に代わって洗練された着こなしと新たな個性をもたらす」そうだ。ネイビーやブラックにチャコール、ライトグレーやタンのスーツまで守備範囲は広い。

〜ボノーラ〜
(6) アデレイド再び
次はボノーラのバーガンディアデレイド。せめてつま先をウイングチップにすれば良かったのにクレバリーと全く同じキャップトウでオーダーするとは…よほどこのデザインが好きだったらしい。調べたら同時期にミラノのメッシーナや日本のスピーゴラ、その後サンクリスピンでもオーダーしていた。

(7) 履き皺のケア
まずはジョイント部分の履き皺が入る部分にデリケートクリームを塗りこんでいく。写真でも分かると思うがアッパーはミュージアムカーフのような色ムラがある。スタッフによればベルルッティやフォスター&サン同様、一度ブリーチしてヌメ革状にしてからクリームやワックスで仕上げたそうだ。

(8) カラー8再び
キャップの小傷にワックスを塗って傷を目立たなくしているところ。縁の◯:◯部分も丁寧に下処理すると後で仕上がりが違う。ところで靴磨きの効用は第一に「無心になれる」ことだが他にもリラックス効果や集中力アップ、自己肯定感や自己満足感の向上、持ち物への愛着と様々ある。どうりで気分良く作業が捗ったはずだ。

(9) ミラーグロスの出番
再びミラーグロスの登場。ここではつま先だけでなく踵も光らせている。下の写真では隣の靴と比べてつま先が早速光り始めている様子がよく分かる。塗り始めはよく伸びるが暫くすると滑りが悪くなる。そこで冷水に布を湿らせ磨くとみるみる光っていく。これを数回繰り返せば鏡面磨きの完成だ。

(10) フィニッシュ
イタリアのフィレンツェに僅かな期間存在したボノーラ。幅の広いスクエアトウはクラシックなイタリアンシューズのアイコンだ。因みに写真のような内羽根部分にたて琴状の切り返しがある靴をアデレイドと呼ぶようになった経緯はジョンロブパリが既成靴に世界各国の都市名を付けたことに端を発すると思われる。

〜フォスター&サン〜
(11) 皺対策
バーガンディに属するオックスブラッドのカーフで作ったフォスター&サンの外羽根靴。エプロン部分に皺がよりやすいので先ずはデリケートクリームでシワ改善にチャレンジ。スクエアなつま先に丸みのあるエプロンが絶妙だ。パターンを引いた人(フォスター時代の松田笑子さん)のセンスが光る。

(12) タンの手入れ
せっかくなので普段手の届かないタンや羽根部分の内側にもデリケートクリームを塗っておく。内羽根靴と違って手が入りやすいのが有難い。パープルのライニングはビスポーク仕様、インソックの刻印もヘンリーマックスウェルを指定した。こうして磨いているとオーダー時のやり取りが懐かしく思い出される。

(13) ミラーグロスの登場
オックスブラッドということでカラー8ワックスは使用せずミラーグロスの出番。因みにミラーグロスはバーガンディ以外に無色や黒、濃茶に薄茶とカラーバリエーションが豊富だ。補色成分はないと言われるが無色以外はうっすらと色が入っているので何らかの効果を期待したい。ちょうど片足だけ鏡面磨きを終えたところ。

(14) 太陽光の下
つま先部分が艶かしいエプロンダービー。しかしこんなに簡単に光るとは。一缶3300円と決して安くはないが同じサフィールの調合によるJMウエストンのポリッシュが4620円であることを考えるとミラーグロスの割安感が光る。しかもウエストンのポリッシュより光るとなれば買わない手はない。

【レディメイド】
さてここからはバーガンディの既成靴。昔はエドワードグリーンやジョンロブにJMウエストンなど揃えていたが今はオールデンのみ…
(15) アナトミカ別注
先ずはアナトミカオールデンから。お馴染みAIによれば「履き下ろす前に鏡面磨きを施すことでつま先を保護することができる」のでお勧めとのこと。ただコードバンは水に弱いため鏡面磨きの際は通常よりも「水分少なめ」を心掛けるのがポイントだとか…写真のように指先の冷水を一滴付けて伸ばすといい塩梅だ。

(16) 仕上がり①
穴飾りの多いキャップを鏡面磨きするのは気を使う。布に含ませた水分が多すぎると穴の断面が水を吸って膨れてくるからだ。サフィール公式では下地作りにコードバン専用のクリームを塗ると良いとのこと。同じサフィールやコロンバンから出ている。ものは試し…次回都心で買い物する時に買ってみよう。

(17) ロングウイングブルッチャー
お次はオールデンの定番、ロングウイングブルッチャーの鏡面磨きにチャレンジ。元々光沢があるので鏡面磨きを施してもさほど目立たないと思っていたがミラーグロスはそれを上回る輝きが期待できそうだ。因みにつま先は革にテンションがかかる部分。プレーントウやチャッカブーツのような一枚革の方がより光る。

(18) 仕上がり②
鏡面磨きをしたのはウイングチップ部分のみだがベネチアンクリームでケアしたばかりのせいかヴァンプ部分もテカテカしている。因みにこの靴は履く前に「シワ入れの儀」を行なってる。太い棒で甲を押さえながら靴を思い切り屈曲させるやつだ。その甲斐あってか左右の皺が良い具合に揃っている。

(19) プレーントウブルッチャー
オールデンのコードバン靴が何型もラインナップされていた1990年代のブルックスブラザーズ。メールオーダーで手に入れたプレーントウはメタルの外鳩目や通常のウェルトなどブルックスブラザーズだけの別注仕様だ。シンプルなつま先にミラーグロスを塗っては磨いてを三回繰り返して完成。

(20) 仕上がり③
紐を通して窓際に置いてみる。室内だとそれほど光って見えないが太陽の下では印象がガラリと変わる。その理由は室内灯より太陽光の方がより強く、様々な角度から光が当たるので光沢がより際立つからだとか。特に晴れた日の直射日光の下では鏡面磨きの効果が最大限発揮されるとはAIの説明。

(21) チャッカブーツ
こちらは1997年オールデンオブカーメルから取り寄せたもの。まだネットスケープがOSとして搭載されていたパソコンから注文したものだ。先ほどのプレーントウと同じバリーラストのつま先ということでピカピカに仕上がるのを期待…水分を適度に含んだ布でミラーグロスを塗っては磨いていく。

(22) 仕上がり④
ピカピカというよりビカビカに光っているつま先がミラーグロスの実力を物語る。そういえば鏡面磨きをパリのウェストンでは「グラッサージュ」と呼んでいたと思う。本来はケーキやムースの表面に艶のある光沢を出すためのコーティングを指すそうだ。なるほどシューワックスでコーティングすると考えれば納得だ。

(23) アンラインドペニー
写真はブルックスエクスクルーシヴのオールデンペニーローファー。アンラインド仕様とはいえ接着芯が入っているつま先にミラーグロスを塗布。アンラインドだけにシューツリーを入れておかないとふにゃふにゃになってしまう。プレーントウより複雑なつま先に果たして鏡面磨きは上手くいくのか…

(24) 仕上がり⑤
流石はミラーグロス、雨で濡れたせいかささくれ状態だったつま先も鏡面磨きで買った時より光っている。試しにこの靴を履いて靴屋にでも立ち寄ったら仕事ではないが「手入れの行き届いた靴を履かれていますね〜」と話が弾みそうだ。秋になって革靴のシーズンが戻って来たら早速履いてみたい。

(25) タンカーブーツ
オールデン最後はタンカーブーツ。今はなき新宿のバーニーズニューヨークで試着、聞き慣れないミリタリーラストとクレープソールの組み合わせが気に入って即買いしたものだ。まだ8万円代で買えた時代だけに年季は十分、傷だらけのつま先はローファーよりさらに光りにくそうだがミラーグロスの実力や如何に…。

(26) 仕上がり⑥
結果はまたしてもミラーグロスの実力を遺憾なく発揮して終了。6足のオールデンはどれも満足のいく仕上がり、今までだったら時間をかけてチャレンジしても光らずにがっかりしたことだろう。ところが今回は楽してあっという間に鏡面磨きが終了。面白いほど上手く仕上がるのでミラーグロスの黒も追加購入してしまった。

(27) バーガンディの靴
ケアを終えた手持ちのバーガンディシューズ大集合。赤と紫が混ざったバーガンディは他にもボルドーやワインレッドなどいくつもの色目がある。写真を見ても赤みの強い色から紫に近い色まで範囲は広い。因みにJIS慣用色名ではワインレッドとバーガンディとボルドーは別の色として設定されているとのこと。

2024〜2025秋冬のトレンドカラーとして注目されていたバーガンディ。特に靴は様々なファッションと合わせやすやすいのが特徴でクラシックなスーツはもとよりデニムやチノといったカジュアルな服装との相性も良く目下のトレンドとのこと。秋冬だけでなく春夏のショーツスタイルとも合うそうだ。

AIに「なぜバーガンディが旬なのか?」と聞くと①汎用性の高さを第一に挙げていたが②特にダークバーガンディは飽きのこない色目であることや③エレガントで洗練された色合いであり④黒や茶に代わる色として注目を集めていると指摘していた。少しずつ紳士革靴の世界にも新風が吹き始めているようだ。

せっかくミラーグロスで磨いたバーガンディの靴、まだ夏も来ていないのに秋口になって履くのが今から楽しみで仕方ない。

By Jun@Room Style Store