2025/07/06 09:21

百聞は一見にしかず。前回のブログでも伝えたがサフィールのミラーグロスに感動、追加でブラックを買った。ネット上では「無色一缶でOK」らしいが色なしワックスはキィウィのパレードグロスや同じサフィール調合のウエストン専用をブログでも紹介済み、敢えて黒を選んだ…と書いたと思う。
元々ミラーグロスは名前のとおりミラー即ち鏡面磨きに特化したワックスだ。AI曰くハイシャインと呼ばれるつま先を鏡のように光らせることで見栄えが良くなるのに加え雨をある程度防いだり小傷からつま先を保護したりといった効果もあるとのこと。キャップトウの靴に施すのが基本のようだ。
そこで今回はお盆前の恒例「革靴点検」に合わせて黒靴のハイシャインに挑戦してみようと思う。
※扉写真はハイシャインを終えた黒靴
【ビスポーク】
《パンチドキャップトウ》
(1) シュープリーム

数ある黒靴から最初に選んだのはシンプルなキャップトウから…以前ならば鏡面磨きと書いたが今回はハイシャインで統一してみる。まずはコロニル1909黒で全体のケアから始める。保湿・保油に加え補色効果もあるので履き皺のは多めに塗っておく。よく伸びるが乾くのも早いので手早い作業がコツだ。
(2) ミラーグロス

続けてミラーグロスの登場、缶裏にはブラックとあるが布に取っても殆ど色は付かない。アマゾンでは「部分傷の補修に効果がある」と紹介しているので多少は補色効果もあるのだろう。塗り始めると程なくワックスが伸びなくなって指先に抵抗を感じる。それが次のステップ水拭き開始の合図だ。
(3) ハイシャイン①

ハイシャイン完了。綺麗に景色が映り込んでいる。光り具合を手持ちのワックスで比較するとミラーグロス>パレードグロス>ウエストン専用の順だろうか。元々キャップトウの靴に施すのが始まりだったハイシャイン、室内では気付かないが太陽光の差し込む出窓に置くとその効果が一目瞭然だ。
《サイドエラスティック》
(4) 補色

次はキャップトウメダリオン、ジャーマンカーフのクレバリー1足目を用意した。靴全体に1909を塗って乾拭きするとアッパーに黒さが戻って来る。このクリームは以前ディアマンテという名で販売していたとのこと。同じドイツ生まれのクリームらしくジャーマンカーフを引き立ててくれる。
(5) ハイシャイン②

ハイシャイン完了。メダリオンがあるせいか目立たないが滑らかな表面に景色がしっかり映り込んでいる。むしろアッパー全体が黒光りしているのでつま先との区別がつき難いかもしれない。1998年の注文から既に27年が経過した年代物の靴もハイシャインのおかげで新品と見紛うようになった。
《タッセルローファー》
(6) 履き下ろす前のケア

今度はローファーに挑戦。AIは「履き下ろす前につま先をハイシャインで保護することは靴を長持ちさせる上で有効な手段」と指摘している。ハイシャインの範囲は「キャップトウのように境目がはっきりしない場合は軽く指で押して先芯が入っている部分」を確かめながら磨くのが正解のようだ。
(7) ハイシャイン③

カジュアルなローファーにハイシャインは良くない…とはAIの見立て。本来ドレスシューズの為の磨き方なのだそうな。じゃあ「黒靴ならば良いの?」と質問すると「色が黒なら問題なし」とのお墨付きを貰った。上手に磨けたが暑い夏に黒靴はちと厳しい。涼しくなったらブレザーと合わせようと思う。
《スプリットトウ》
(8) グレインレザー

次もハイシャインの不向きなシボ革靴を用意。しかも25年もののスプリットトウダービーだ。まずは栄養クリームだがついつい多く塗りがち…「片足でコーヒー豆一粒くらいが適量」とリーガル公式サイトは進言している。クリームを塗ったらブラッシングしてから次の鏡面磨きへとステップアップ。
(9) 地道な作業

地道にミラーグロスを塗っては水拭きを繰り返した様子。ワックス膜を重ねてシボ革の凹みが埋まるとようやく光り始める。1990年初上陸したハケットの店長が当時「ロンドンでは黒靴のつま先を光らせるのが流行っている」ことや「水を数滴垂らして磨くと光る」ことをと教えてくれたことをふと思い出した。
(10) ハイシャイン④

ハイシャインの済んだエプロンダービー。AIはハイシャインのメリットに美観向上を挙げている。曰く「靴に高級感とドレッシーな印象を与える」らしい。黒とはいえ外羽根の靴にドレッシーとはオーバーだが25年ものに相応しい「手入れの行き届いた靴」といった雰囲気は出ているようだ。
《フルブローグ》
(11) アデレイド

スプリットトウの次はフルブローグにトライ。サイドウォールにもメダリオン入るのコテコテモデルをサンクリスピンではスコティッシュブローグと呼んでいる。以前パレードグロスで磨いているので下地はOK、早速ハイシャインを施していく。やはり下地の効果は抜群、みるみる光ってきた。
(12) ハイシャイン⑤

スコティッシュブローグのハイシャイン終了。鏡のように磨かれたつま先にアザミの花の飾り穴が浮かんで見える。ハイシャインの効果を英語で尋ねるとAIも英語で「ポジティブインプレッション」という言葉を交えて回答してきた。良く磨かれた靴は周囲に肯定的な印象をもたらすということらしい。
(13) ストロングタイプ

同じフルブローグでもこちらは正統派、革が二重に重なる王道のストロングタイプだ。ジョージクレバリーでオーダーした10足目になる。一冬越してやや乾燥気味なのでまずは栄養クリームでケア。黒さが戻ってきたところでつま先部分にも塗って下地を整えたらお次はハイシャインの工程だ。
(14) ワックスがけ

実はこのクレバリー、今までパレードグロスでハイシャインに挑戦してきたが上手くいかなかった靴の一つだ。既に下地は十分なので今回はミラーグロスでの初リベンジとなる。布にワックスを取って円を描くように指先を動かしていく。親子穴も忘れずなぞりつつ乾いてきたら水を数滴含ませ拭き取り開始…。
(15)ハイシャイン⑥

ハイシャインを終えた靴を出窓に置いて確かめてみる。いやこれほど光るとは…ミラーグロスの効果に改めて驚かされた。アマゾンで4.5の高い評価を得るのも納得のシューケア用品だ。「ノミで削ぎ落とした」と形容されるクレバリーのチゼルトウも映り込んだ景色の歪みでシェイプがよく分かる。
《プレーントウ》
(16) メダリオン

ハイシャインもいよいよ佳境。今度はメダリオンの入ったプレーントウに挑んでみた。キャップトウのように境目がないので履き皺が付いている部分より前を目安にミラーグロスを塗っていく。この靴もハイシャインに挑戦した靴なので下地は万全、あとはミラーグロスで光らせるだけだ。
(17) ハイシャイン⑦

ハイシャインを終えたところ。履き皺より前を磨いているのが分かると思う。つま先を斜めに浅くカンナ掛けしたようなトウシェイプはソフトチゼルトウと呼ばれるもの。ジョンロブパリやフォスター&サンのスクエアトウはこのタイプだ。クレバリーのチゼルトウはそれだけ独特ということだろう。
《クラシコイタリア》
(18) セミブローグアデレイド

英国靴をひととおり終えたら今度はイタリアの誂え靴にトライ。選んだのはメッシーナのセミブローグ。当主のメッシーナ親方は「フレンチカーフ」と言っていたので恐らくデュプイのボックスカーフだろう。カールフロイデンベルグに負けない上質な革らしい。確かにコロニルだけでもよく光る。
(19) 下地の上に重ね塗り

この靴も以前ハイシャインにチャレンジ済。今回は更なる輝きを求めてミラーグロスを上塗りみしてみる。因みに布は処分した綿Tシャツを適当に切ったもの。ネットを見ればハイシャイン用のクロスが何種類も売られているが靴磨きはDIYが信条、元肌着で靴にも優しいであろう布を愛用している。
(20) ハイシャイン⑧

ハイシャインを終えたメッシーナ。パレードグロスより表面の光り具合が違う。つま先の雰囲気が変わるだけでこうも靴全体の印象が違ってくるとは…前回バーガンディの靴で試したハイシャインがあまりにも楽しくて黒靴にも手を出してしまった。このままだと次は茶色の靴にハイシャインを試してしまいそうだ。
【既成靴】
(22) チャーチス

最後にせっかくなので既成靴にもトライしてみた。選んだのは30年前の1995年、ニューヨークのブティックで買ったチャーチスのディプロマット。73番ラストの旧チャーチスに当たる。かなり古いのでクラックが入り始めているが手入れしつつ履けなくなるまで愛用するのが靴好きの心意気、試さぬ手はない。
(23) ハイシャイン⑨

チャーチスもハイシャインで見事に変身。何やら右足のクラックもチャールズ国王のパッチを当てた黒靴に思えてくる。英国靴の産地ノーザンプトンで最大の規模を誇るメーカーながら人気はどちらかというと控えめなチャーチスだがロンドン定宿の主人が一推しするだけあって確かに黒靴の格好良さは格別だ。
(24) つま先の輝き

鏡面磨きを終えた黒靴。こうしてみると境界のはっきりとしているキャップトウが一番見栄えが良いことがよく分かる。似た靴ばかり持っていると家人には言われるが実はデザインは全て異なっている。尤もオックスフォードとバルモラルの違いやメダリオンの違いに気付いてくれるのは靴好きだけだが…。
ところでベルルッティ当主マダムオルガの名言「靴を磨きなさい、そして自分を磨きなさい」の意味するところをAIに聞くと次のような答えが返ってきた。「靴は単なる履き物ではなく持ち主のセンスや人柄を表す鏡であり、丁寧に手入れされた靴は持ち主の品格を物語る」という考え方とのこと。
1988年パリで買ったJMウエストンが初の本格革靴だった。当時靴磨きは自分で行うのが当たり前、「コバが手入れされていない靴やつま先が減った靴、何より綺麗に磨かれていない靴を見るだけでその人となりが分かる。」という接客業のプロの人の話を聞いて靴の手入れに気を配ったものだ。
昔から靴の手入れは身だしなみの基本と言われる。マダムオルガの説く「自分の靴は自分で磨く」ではないが無心になって靴を磨きながら有意義な週末を過ごした。
By Jun@Room Style Store