RRL限定品の現在地 | Room Style Store

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2025/07/13 18:09


リミテッドプロダクションランという名のRRL限定品に注目し始めて7年が過ぎた。1993年の創業時から単発で限定品をリリースしていたが2018年頃から毎年リミテッドエディションが発売されるようになると「次はどんなものが出てくるか」楽しみでいつの間にか毎シーズン買うのが恒例になっている。

特に2018年~2020年頃は限定200本或いは400本と生産数が具体的に記されており購買意欲をそそられたものだ。素材は勿論シルエットや縫製からフラッシャーの絵柄までデザインチームのこだわりを感じるとともに毎シーズン手を緩めることなく繰り出す限定品の数々にRRLの底力を見た気がした。

今回はそんなRRL限定品の変化を辿ってみようと思う。

※写真は旧リミテッドプロダクションラン

(1) 数量限定品
限定ものに弱い性格を見抜いたような「エディションオブ200」や「エディションオブ400」の小さな文字。元々RRLを扱うブティックは多くないが「全世界で200本限定て本当か?」とも思った。ただ当時都内では原宿以外に有楽町や新宿、池袋や玉川でもRRLを扱っていたが限定品は原宿店のみだった。

(2) 2018年~2021年
上の写真はRRLがLee101Zへのオマージュを込めて限定生産したもの。2018年版13.6オンス左綾織りは限定数表記なしだが2020年版13.5オンス右綾織りは200本の限定。一方下の写真はどちらも14オンスで同じ右綾織りの限定200本。ただし上は綿/ヘンプで下は綿/麻混紡…生地が違っていた。

(3) 2022年以降
2022年以降のリミテッドプロダクションラン。この頃から限定数表記がなくなり、インディゴデニム以外にカラーバリエーションを広げ始めたのが良く分かる。それでも1993年のブランド創設以来続いてきたアメリカ製の限定生産デニムはリミテッドプロダクションランに引き継がれていた。

(4) ビンテージ5ポケット①
2022年春夏限定品。リーバイスビンテージクロージングのお株を奪うかのような大戦モデルはグリーンキャストの日本産デニムによるリバイバル品となる。本家リーバイスのS501同様シュリンクトウフィットを採用、大戦モデルのお約束ペンキステッチのバックポケットもRRL流の解釈で再現されている。

(5) ドーナツボタンとスレーキ
月桂樹のボタンや簡素なドーナツボタンなど大戦モデルならではのディテールをチェック…窪みが錆びたような加工が効いている。物資不足から余剰な生地で作られたというスレーキに目を移すと如何にも大戦中といった雰囲気のオリーブドラブヘリンボーン…本家リーバイスのビンテージクロージングにも負けていない。

(6) リラックスフィット
RRLのデニムパンツ中一番ワタリの広いビンテージ5ポケット、商品説明によれば深い股上とストレートレッグで仕上げたラルフローレンの商品中最もリラックスしたシルエットだそうな。これだけワイドだと結構難しいのが靴選び…ダブルソールのオールデンや編み上げブーツが似合いそうだ。

(7) ビンテージ5ポケット②
2022年秋冬ものは再びビンテージ5ポケットを採用。白いネップ入り日本製11.25オンスのデニムはかなり薄い。厚手のリジットデニムとはかけ離れた印象に思わず「これ秋冬ものですか?」と店員さんに聞いたほど。サンフォライズド加工済だが店員さん曰く「結構縮みます」…とのこと。試しにもう一本買って試した記事はこちら

(8) バックルバック
アイビー風に言えば尾錠、シンチバックの付いたデザインはジーンズがワークウェアだった時代を彷彿とさせるビンテージな味付けだ。ウェスト調節の機能はないが働く男の後ろ姿っぽくて気に入っている。しかも嬉しいことにサスペンダーボタン付き…ワークシャツと合わせてサスペンダーで吊ってみたくなるではないか。

(9) 日本製赤耳
ネップデニムはレッドキャストと呼ばれるもの。インディゴ染料が酸化することで赤みがかった色合いになる一方、最初に紹介した大戦モデルはグリーンキャストと呼ばれるもの。こちらはインディゴ染料が還元されることで緑がかった色合いになる。ふと高校で習った酸化・還元反応を思い出した。

(10) スリムフィット①
こちらも2022年秋冬もの。単品ではなくリミテッドエディションを複数出すとは思いもせず買いそびれたが後でデパートのインショップで購入。同じ限定品でも本店エクスクルーシヴとそうでないものとに分かれていたようだ。フラッシャーを見ると12.5ozと決してヘビーではなのにかなり硬い感じがする。

(11) オリーブ×ブロンズ
商品説明によればオリーブカラーの縦糸とブロンズカラーの横糸で織り上げた日本製の生地はサンフォライズド加工により縮みを最小化しているとのこと。既にジャパンデニムというブランド名で世界に発信されているのでAIに「日本製デニムの世界シェアはどれくらい」と聞いたが「市場の複雑さと非公開情報から不明」とのこと。

(12) タイトフィット
太ももから膝下にかけて絞られたシルエットはとにかく細い。流行りのリラックスシルエットに慣れてしまったのかもしれない。2010年代にイタリアのヤコブコーエンが美脚デニムを出したころは大流行だったスリムフィット、ファッションは繰り返すというからそのうちまた流行るに違いない。

(13) スリムフィット②
2023年春夏は2022年秋冬に続いてのスリムフィット…しかもアイビー好きには嬉しい生成りでの再登場だ。60年代のアイビーは「ジーンズは白」がお約束だった。ネクタイブランド「フェアファックス」創始者、慶伊道彦さんも当時ブルージーンズはNGでホワイトジーンズはOKだったと話されていたっけ。

(14) セルビッジ
旧式の力織機で織られた耳付デニムは希少性や高品質といったキーワードで語られることが多いが、AIは「折り返して見せることでデニムのお洒落なアクセントになる」と人気の理由を教えてくれた。写真は白耳のままでステッチなしだが「赤いステッチが入った赤耳」が特に好まれると補足説明も加えていた。

(15) ビンテージ5ポケット③
こちらも2023年春夏ものの限定品。ビンテージ5ポケットもこれで三度目の登場。ストリート系でも人気のワイドデニム…RRLでも例外ではなさそうだ。とはいえ春夏ものなのに濃藍色で15ozのヘビーデニムは重すぎる気もする。ひょっとして前年の秋冬ものが納期遅れで春夏にずれ込んだか…。

(16) ダブルインディゴ染め
裾をめくってみると裏もダークなインディゴ…通常は三本の白い横糸に一本のインディゴ糸を縦に織り込むのがデニム生地。表は青いが裏を捲ると白いのが特徴だがこちらは何と三本の横糸も一本の縦糸も全てインディゴ糸を使用。その結果表も裏も藍色でデニム特有のざっくりとした生地になるという訳だ。

(17) ループステッチ
最も股上の深いビンテージ5ポケットはウエストバンドから股の付根まで急なカーブを描くライズが特徴。ウエストとヒップの差が大きい立体的なパターンなのが分かると思う。ヒップが大きい自分にとって履きやすいのが嬉しい。バックポケットには1990年代の第一期から続くループステッチの意匠が付く。

(18) ストレートフィット
こちらは2023年秋冬もの。それまでリラックスフィットが三回、スリムフィットが二回登場したので満を持してフレッシュな印象のストレートレッグ限定品を投入したようだ。シンチバックにサスペンダーボタンの付いたワークウェア風な味付けはLeeの131カウボーイモデルをオマージュしたもの。

(19) シルエット
ワイドなビンテージ5ポケットとスリムフィット続いていたので久々に見るストレートレッグが新鮮だ。通常とは反対の左側に付く革パッチとその下のバックポケットにも当て革が付くダブルレザーパッチや右側の黒タグ、センターのシンチバックにサスペンダーボタンなどディテールてんこ盛りのバックスタイルが良い。

(20) 日本産デニム
フラッシャーにはオリーブツイルデニムとあるが、どちらかというとくすんだカーキ色に見える。生地は13ozの日本製セルビッジデニム、ワンウォッシュかけた仕上がりだ。サイズは珍しく31-32とレングス長めだが売れ行きが良かったせいでいつものレングス30が売り切れだったため…。

(21) スリムフィット③
リラックスフィット、スリムフィット、ストレートの三役を繰り出してリミテッドエディション。さて2024年春夏ものは…と楽しみにしていたら今度は何と2018年発売のLee101z風ハイスリムを復刻してきた。流石にヘアオンハイドの革ラベルではないがRRLとは思えないビビットなブルーが異彩を放つ。

(22) 片耳
60年代のLeeといえばアウトシームの片耳仕上げが特徴。ディテールに拘るだけあってRRLでもそのあたりはきっちりと再現されている。デニムはもとよりトラウザーズやチノパンなど殆どのボトムスがボタンフライ仕上げになっているRRLだが101zに倣って珍しく前開きがジッパー仕上げになっている。

(23) ビンテージ5ポケット④
2024年秋冬ものの限定本命がこちらのビンテージ5ポケット。これで2022年以降四度目の登場になる。ほぼ毎年リリースされている勘定だ。前回のダブルインディゴと異なり今回はシンチバックが付いたワークウェアな味付けがなされている。同じものを二度続けて出さないのは流石だ。

(24) グリーン×オリーブデニム再び
生地は2022年秋冬限定品と同じオリーブデニムを採用。グリーンの縦糸とブロンズの横糸で織った玉虫色の12.4oz日本製セルビッジデニムはかなりゴワゴワした印象だったが今回はワンウォッシュをかけたものを採用しているようで手触りは別物、リラックスフィットと相まって履き心地は良好だ。

(25) デニムジャケットの登場
2025年春夏のリミテッドプロダクションランはデニムジャケットが登場。凝った作りだがメイドインUSAではなくなっていた。フラッシャーはデニムブランド「ヘッドライト」へのオマージュを形にした2021年限定デニムと同じだが生地は別物、詳しくは近いうちに当ブログで紹介しようと思う。

とうとうと言おうか遂にと言おうかRRLの限定品にもアメリカ国外生産品が並ぶようになった。80~90年代、当時のメンズクラブに「ラルフローレン社では株主にアメリカ製品とNIES製品を比較させたところ品質が変わらない」ことから海外生産にシフトしている現状が掲載されていたことを思い出した。

そこでニューバランス996を例に「アメリカ製とベトナム製は同じ品質か」と問うと「共に品質基準は満たしているがアメリカ製はプレミアム素材と職人技によって一般的により高品質である」とAIは答えている。RRL限定品もプレミアム素材とアメリカ国内の縫製技術を駆使して作られてきたはずなのだが。

ジーンズの起源はアメリカにある。もし日本製501とアメリカ製501が両方並んでいたら価格差を承知で間違いなくアメリカ製を選ぶと思う。そういう性分なのだ。夏のセールが終われば2025年秋冬ものが程なく入荷する。果たして限定品はアメリカ製か否か。RRLを卒業するかどうかの鍵を握っている。

By Jun@Room Style Store