2025/10/05 08:52

前回の北海道バイク旅は音威子府駅の黒蕎麦を紹介したところまでだったがいよいよ旅も折り返し。それにしても9月末までの金土日という限定営業なのに連日行列ができる駅そば店はそうざらにない。「復活」と聞いて千客万来だという。人口減少に抗う音威子府村にとっても嬉しいのではないだろうか。
音威子府の村長さんも「こんなに人が来ることはあまりない」と驚いていたようだ。村のチャレンジショップ制度を活用しての出店だけに行政の長として手応えを感じたのではと思う。9月末で営業を終え準備期間を経たのち10月に再開。12月まで期間限定で営業を継続すると北海道新聞が報じていた。
賑わいを見せる音威子府駅を後に今回は留萌から富良野までの様子を紹介してみたい。
※ 写真は途中立ち寄った天塩中川駅
【参考資料①】
留萌へのルート

アイフォンのマップでルート確認すると音威子府を出発して天塩中川駅へ北上、休憩後は一旦戻って西へ向かうルートが示されている。長く続く海沿いが有名なオロロンライン、北海道を走るライダー達に人気の国道232号だ。この日は生憎の天気だったがバイク乗りとしてはどんな景色かと期待してしまう。
(1) 天塩中川駅

途中激しい雨に遭遇。右手に見える茶色の濁流を見て天塩川が氾濫しないかと気になってしまう。それでも天塩中川駅に着く頃には雨も上がり路面も乾き始めた。北海道の天気はとても変わりやすい。因みに天塩中川駅はこの日最初で最後の休憩地。特急が停まる無人駅だ。気軽に立ち寄れる交流スペースが用意されている。
(3) 手入れの行き届いた駅前

綺麗な駅前の花壇。中川町婦人会の皆さんのおもてなしだろうか…駅前には誰ひとりいないがそこかしこに地元の人たちの心遣いを感じる。扉写真の大きなサインボード「元気発信」は前町長さん考案のキャッチフレーズとのこと。地域ぐるみで町を盛り上げようという意気込みが伝わってくる。
(4) 時刻表

時刻表を見ると列車は上下6本ずつ、うち3本は特急列車だ。学生の通学に合わせ各駅停車は朝昼夜に1本ずつしかない。現在中川町では「宗谷本線に乗ってお得に旅に出よう」キャンペーンを実施、助成金で稚内〜旭川の特急券が10円になるという。特急が停まる恩恵を生かそうという試みが功を奏するか…。
(5) ホームを望む

ドアの先はホーム。特急が停まるだけに向かい側にもホームがある。しかも端から端までかなり長いのにゴミ一つ落ちていない。因みに2023年の一日平均利用者は4.8人。美深や名寄の高校へ通う学生が主な利用者だろうか…本数は少ないが車を運転できない学生にとって鉄道は唯一の手段なのだ。
(6) 趣のある駅舎

平屋作りに軒下や木製の柱、板目張りの外壁はこれぞ木造駅舎といった外観だ。国鉄時代末期にコスト削減からこうした木造駅舎を取り壊して余った車掌車を置くだけのダルマ駅が誕生した。天塩中川駅は解体を免れた希少な存在、JR北海道に代わって中川町が管理がするようになるとさらに魅力が増している。
(7) 名寄行き

せっかくなので昼間の各駅停車を出迎えることにした。長いホームの先端に停車した一両編成の名寄行き。昼の時間帯唯一の列車だが降りる人は0人、駅にはエンジン音だけが響いている。赤い帯の気動車はJR発足後の車両が大半の北海道で数少ない国鉄時代の車両、旧車は鉄道の世界でも人気なようだ。
(8) 流れる時

駅の事務室は交流室に生まれ変わり大きな机といすが並んでいた。月に数日はカフェも出店するらしい。なるほどカウンターが設置されているのも頷ける。時刻は間も無く午後1時、雨も止んだのでレインウェア仕舞い日本海へ向かう。お世話になったお礼にと少し早いが中川町のGSで満タンにした。
(9) オロロンライン

雨上がりのオロロンラインは気分も爽快、稚内を目指して北上するライダーと何台もすれ違った。昔は二輪同士の合図はピースサインだったが今は「ヤエ―」といって手を振ることが多い。英語のYEAH(イエ~!)がスペルミスでYAEH(ヤエ~)になったとか。道が楽しいと自然と挨拶したくなる。
(10) 神居岩温泉

無事留萌市内の神居岩温泉に到着。施設はここ一軒のみだが日帰り温泉可能とあってひっきりなしに地元ナンバーの車がやってくる。フロントで対応してくれた女性がオーナー。ご実父から事業を受け継ぎ9名の従業員と一緒に接客に当たっているが後継者不在のため事業継承者を探している最中だという。
(11) ホテルの朝食

温泉に浸ってゆったり気分で快眠、翌朝はこれぞ日本の朝食…といった料理が並んだ。地鶏のTKGがお薦めらしいが連日バイクに乗るだけで運動不足、お代わりは遠慮して身支度を整えた。今日は早い時間帯に富良野に着く。バイクを置いて街を散策しよう。無事後継者が見つかることを祈りつつ宿を後にした。
【参考資料②】
富良野へのルート

神居岩を出発する前にルートを確認。途中「明日萌駅」に立ち寄りジェットコースターの路を通って富良野まで2時間強のルートだ。実際は給油が加わるのでもう少し複雑になる。ガソリンタンクの大きなバイクなら給油なしで一日中走れようがフォーティエイトはタンクが小さい分小まめなGS立ち寄りが必須だ。
(12) 明日萌駅

最初の立ち寄り処、明日萌(あしもい)駅。木造のように見えるが映画のセットなので実際は鉄筋だという。NHK朝の連続ドラマ「すずらん」の舞台になった架空の駅で実際は「恵比島駅」だった。だった、と書いたのは数年前に廃線となったためだ。現在は地元沼田町が観光資源として管理している。
(13) 恵比島駅

こちらがJR北海道が管理していた本物の恵比島駅。丸屋根の外観から分かるように車掌車を改造したダルマ駅だ。ドラマの撮影にあたって明日萌駅と違和感がないようNHKの美術スタッフがカモフラージュしている。国鉄時代は立派な木造駅舎が建っていたがJR発足前に取り壊されたらしい。
(14) ドラマのロケセット

2枚の写真どちらにもダルマ駅が写っている。鉄骨が良く分かる写真だがこれを木造家屋に見せるのが美術スタッフの腕の見せ所。セット建設時から地元で話題となりドラマ撮影に合わせてSL列車も走るなど地元は大いに賑わったそうだ。全国から多くの観光客が駆け付けたと沼田町役場の担当者が話していた。
(15) 恵比島駅の看板

ドラマ撮影後は廃線となるまで架空の「明日萌駅」ではなく実際の「えびしま」駅の看板を掲げていたようだ。ラッチ(改札口)が如何にも使い込んだように見えるが「エイジング」の技が施されている。鉄骨はボードで囲まれ木目調のテープを貼って汚しを加え木柱に見せるなど工夫の跡が垣間見える。
(16) 駅前に残る旅館

こちらも映画のセットかと思いきや昔の旅館だという。案内してくれた沼田町役場の阿部さんの住まいだそうで広過ぎるゆえ一部だけ利用しているとか。「虫が多くて大変」と苦労話をされていた。因みに阿部さんは来年廃線となる深川~石狩沼田間(留萌本線)の終点石狩沼田駅の嘱託駅員もされている。
(17) 廃線跡

明日萌駅(恵比島駅)から少し戻ったところにあった踏切跡から線路を写してみた。2023年の留萌~石狩沼田の廃線から2年が過ぎたがまだ当時のままだ。来年の「石狩沼田~深川間の廃止後に撤去するのでは…」とのこと。東京に住んでいるとピンとこないが北海道では毎年のように廃線、廃駅が行われている。
(18) ジェットコースターの路

次に向かったのが「ジェットコースターの路」と呼ばれる道路。2005年放送の倉本聰脚本「優しい時間」のロケ地として放送後に名所となったとのこと。上富良野の八景の一つだそうな。あいにくの天気だったがアップダウンを繰り返す直線は確かにジェットコースターのようで見晴らしも気分も良い。
(19) 富良野駅

先ほどまでの雨が嘘のように日が差し始めた富良野駅。早速バイクを置いてチェックインまでの間に町を散策してみた。北海道有数の観光地と聞いたが思ったより静かだ。軽井沢のような人混みを想像したが昼時とあって人影もまばら。北海道では札幌と旭川に人口が集中しており他は全て過疎が進んでいると聞く。
(20) ランチ①

ランチは富良野で有名なオムカレー「唯我独尊」の斜め前にあるブーズバーガーにお邪魔した。北海道に来てから温泉宿が続き食事も和風中心だったので洋食が恋しくなる。写真はベーコンチーズバーガー、付け合わせはフライドポテトだ。美深に続いてビールとハンバーガーを堪能…それにしても旨い。
(21) ランチ②

こちらはチリチーズバーガー、スパイシーなチリビーンズがアクセントになっている。付け合わせはコールスローに変更、ビールは北海道でしか飲めない「サッポロクラシック」を注文した。バンズが美味しいな…と思ったら毎朝店で焼き上げる自家製だそうだ。パティも肉汁の溢れるつなぎなしの100%牛肉。
(22) 富良野の宿

宿は近代的なビルのラビスタ富良野。なんだかビジネスホテルのようだが「天然温泉紫雲の湯」の看板に誘われてしまう。外から見ても分かるように最上階が温泉、露天風呂から富良野の景色が満喫できるとのこと。それに食事がイタリアンというのも良い。和食続きの洋風のあとの洋風コース料理に期待が高まる。
今回は道東を訪れなかったがかつて北海道有数の温泉地だった「川湯温泉」は全盛期に20軒あった宿が6軒に減っている。一時期は巨大ホテルの廃墟が景観を損ねると敬遠されがちだったが解体が完了、温泉街にも活気が戻りつつある。星野リゾートも2028年に温泉旅館を新規オープンすることが決まったという。
一方で北海道有数の登別温泉は外国人客の増加で入浴マナーが問題になり日本人客の足が遠のいているという。京都然り富士登山然り…そういえば去年層雲峡に泊まった時もアジアからの観光客が脱衣場はおろか浴室まで土足で上がり慌てて静止したことを思い出した。登別温泉の入浴マナー違反も大いにあり得る話だ。
オーバーツーリズム問題が深刻さを増す中、外国人旅行客の訪れない場所を敢えて旅する日本人旅行者の実態が明らかになっている。オーバーツーリズムの恩恵を受けられない観光地にとっても朗報だという。食事も宿泊もインバウンド価格の京都より「静かな日本の田舎を旅行したい」という声が出るのも当然だろう。
次のバイク旅はどんな田舎を巡ろうか…そんなことを考えながら富良野の町を散策した。
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