2025/11/24 00:18

夏の北海道バイク旅以来、久々の国内旅に出かけた。目的は仙台で「焼肉」を味わうこと…といってもシティホテルに泊まるんじゃ味気ない。せっかくだから近場の温泉旅館に泊まろうと候補地をネットで検索、作並温泉は前回泊まったので県北の鳴子温泉に決めた。
実は大学時代にサークル仲間と鳴子温泉に泊まったことがある。和風旅館ゆえか温泉が混浴で驚いた…流石に今はそんなこともなかろうが懐かしい思い出だ。料金比較が面倒なので公式サイトが一番得な宿を予約、大人の休日倶楽部で新幹線を予約して当日を迎えた。
そこで今回は45年ぶりの鳴子温泉を紹介しようと思う。
※扉写真は東京駅発やまびこ号の入線
(1) やまびこに乗る

入線してきたのはやまびこ63号盛岡行き。速達料金が加算されるはやぶさは最高時速320㌖だがやまびこは275㌖とややのんびり。お陰で車内でくつろぐ時間もある。いつものように東京駅で駅弁を選んでお酒も購入…バイクや車旅だとこうはいかない。
(2) 横浜名物

アルコールは東京クラフト、おつまみに崎陽軒のシュウマイで乾杯する。知り合いにスーツはパニコ、靴はクレバリーの御仁がいる。彼曰く「歳を重ねると形に残らないものにお金を使うのが楽しい。」とのこと。日本各地の景色や食事など無形のものに価値を見出していたようだ。
(3) 定番の味

メインは前回も買った「焼き鯖寿司」。飲み物も日本酒に代えて「浦霞」の冷やを選んだ。アニキサスが心配な鯖は焼くのが一番安全だそうな。そんな焼き鯖寿司の発祥は福井県。特に小浜市は鯖の水揚げで有名な漁港だが温暖化の影響で最近は養殖にシフトしているそうだ。
(4) 箱の中身

鯖の半身を香ばしく焼き上げ、酢飯の上に甘酸っぱいガリを間に挟んで形を整えてある。よく見ると切れ目が入っていて思ったよりも食べやすい。因みに鯖の養殖には二種類あって海上養殖の生餌では寄生虫のリスクは避けられないが陸上養殖で人工餌の場合は問題ないそうだ。
(5) 古川駅到着

空いている新幹線に乗って車窓を眺めながらゆっくりランチを楽しむうちに古川に到着。ここからは陸羽東線に乗り換えだ。東京駅の新幹線乗り場は多くの人でごった返していたが古川駅はひっそりと静まり返っている。地方では人工減少が進んでいることが如実に分かる。
(6) 乗り換え

新幹線乗り場のコンコース、誰もいない空間に掲げられた横断幕が現実だ。地元大崎市は鳴子温泉など地域資源を活かしたまちづくりを進めているが昨年夏の大雨による被害で鳴子温泉から先は不通のまま…かつて迂回路として特急や急行が行き交った路線の再開が待たれる。
(7) 陸羽東線ホームへ

陸羽東線乗り場へ移動。旅行客はまばらだが時刻は間もなく午後4時…下校時刻と重なったようでホームは高校生で賑わっている。まるで通学列車のようだ。昔はもっと大勢だったに違いない。久々に地方に出て混雑する列車に乗った。思わぬところで元気を貰った。
(8) ディーゼルカー

陸羽東線を走るのはキハ110系、JR東日本が発足して初設計のディーゼルカーは今や古参車両だ。先頭まで行ってワンマン車両の様子を撮影。運賃表には終点新庄まで表示されている。沿線には中山平温泉、赤倉温泉、瀬見温泉などがあり一日も早い復旧が待たれる。
(9) 難しい読み名の駅

途中列車交換で停まった川渡温泉。「かわたび」温泉と読むそうだ。鳴子温泉郷の玄関口として有名、開湯1000年以上の歴史をもつ温泉地だそうな。共同浴場の他十一軒の温泉宿がある。どれもリーズナブルに泊まれる昔ながらの温泉宿といった感じか。
(10) 鳴子温泉駅到着

目下の終着駅、鳴子温泉駅に到着、皆温泉に泊まる客だろう。そそくさと改札口へ向かう。しばらく駅で待てば送迎バスが来るそうだが当方は宿まで歩くことにしたのでゆっくり駅の様子を見学。非電化駅なので空がよく見える。隣は先ほど来た古川駅方面の上り列車だ。
(11) 駅前

夕闇迫る駅前。学生時代に訪れた時のことは全く覚えていないが当時は鳴子駅と呼ばれていた。駅前の旅行案内所で紹介された宿に泊まるというまさに行き当たりばったりの旅だった。一部屋に布団を敷いてもらい男四人で寝る…サークル合宿のようで楽しかった思い出しかない。
(12) こけしのガードレール

鳴子といえばこけしで有名だが温泉街は人気が少なく店を閉じたままの土産店も多い。統計によると宿泊客は2007年からの12年間で34%も減少したという。伝統こけしの売り上げに影響を与えるだけでなくこけし職人の後継者不足等もあり前途は多難のようだ。
(13) 今宵の宿

今宵の宿は温泉地を見下ろす高台にある吉兆。鳴子温泉駅まで座りっぱなしだったこともあり急坂を歩いて登る。途中「鳴子小学校」があったが児童数不足により統廃合が進み今年3月末を持って閉校した。肝心の宿はグーグルの口コミで4.0、じゃらんでは4.3と中々のようだ。
(14) ロビー

広々としたロビー、インバウンドで賑わう観光地だとこうは行かない。運営は日本各地で宿泊施設を運営する共立リゾートは給食事業からスタートして学生や社員の寮を運営するドーミーを展開、廃止された福利厚生施設を再生するリゾート事業として発展してきたという。
(15) 温泉

温泉はカメラの持ち込み禁止なので宿の公式サイトより拝借、泊り客も少なくゆったり入れる。公式サイトによれば左上が「露店温泉」右上が「寝湯」、左下は「樽の湯」で右下が「内湯」とのこと。泉質は「アルカリ性高温泉」で源泉の温度は95℃もあるという。
(16) 夕食

こちらが夕食のメニュー。こちらも公式サイトの写真を拝借したが実際も「看板に偽りなし」の多彩なメニューだった。メインは仙台牛とタンのしゃぶしゃぶ…なんと焼くのが一番と思っていたタンをしゃぶしゃぶでいただくとは…未知の味との遭遇が旅を面白くする。
(17) 朝食

こちらは朝食のメニュー。実際はこの中から選んだのはプチパンケーキとフルーツにヨーグルトとコーヒーだった。「朝型」の食習慣は体内時計のリセットや代謝を整えるなどいいことづくめ、ただし朝食をしっかりとって夕食は軽めが基本だという。これが中々難しい。
(18) 仙台へ

翌朝少し早めにチェックアウト、再び鳴子温泉駅から陸羽東線に乗って古川駅に戻る。客も少なかろうと思いきや泊り客が集中したせいか出発時には満席だった。温泉街としては鳴子温泉駅まで陸羽東線が運行しているので送迎等も含め大いに助かっているようだ。
(19) アーケード

こちらは仙台のアーケード。七夕祭りで賑わう場所だ。クリスロードと呼ばれるがクリスさんが関係しているのではなくクリエイティブライフインショッピングの頭文字CLISが由来だそうな。因みに以前は「中央通り」と如何にもな名前だったとか。
(20) 仙台名物

実は今回の小旅行の目当ては前回いたく感激した焼肉屋の「仔虎」クリスロード店でランチをいただくこと。早速焼肉を味わう。仙台名物ということで奥がタン先で手前がタン元。同じ牛タンとは思えない味だ。今回もゆっくり個室でランチを楽しんだ。
(21) 極み肉重

炙りサーロインと牛刺しとユッケの3品を一度に味わえるのがこちら。いやこれが旨いのなんの。これだけを味わいにまた仙台に日帰り旅行したいくらいだ。因みに2022年10月版「宮城県の焼肉の名店」ランキングでは栄えある第1位に輝いている。
(22) 東京へ

すっかりモダンになった仙台駅へと歩いて戻る。地下には広大なショッピングセンターがあり、地元客から旅行客まで様々な用途に応えるべく多くの店舗が並んでいる。仙台の地酒や地ビール、定番の仙台かまぼこといったお土産を買うのはいつもここだ。
帰りの新幹線は「トレインデスク」と呼ばれるワーク&スタディ専用車を予約…モバイル端末で仕事や学習をしたい人向けの車両だそうだ。昔JR西日本の光レールスターに「サイレンスカー」なる車内放送が一切ない静かな列車もあったが不人気で廃止されたそうだ。
「トレインデスク」も同様で他の車両がほぼ満席状態なのにトレインデスク車両だけ席がかなり空いている。別に仕事も勉強もしないが今回も乗ってみた。駅チカで買ったビールで乾杯、仙台名物を味わっていると「間もなく大宮に到着します」のアナウンスが入った。
各地の温泉街は①人口減少②観光客減少③個人・家族旅行の拡大④温泉街の魅力喪失⑤施設の老朽化⑥マネジメント力不足が重なり衰退しているところが多い。特に団体客への甘えがあったと指摘しており、個人旅行需要に転換した観光地は今も生き残っているという。
では衰退とは真逆の賑わいを見せる温泉街とはどこなのだろう…ぜひ近いうちに訪れてみたい。
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