ツイードと靴 | Room Style Store

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2025/12/01 11:30


今年の11月後半は暖かな日が続いたが12月は一気に寒くなるとのこと。寒気が早い段階で南下し日本海側では大雪に注意が必要だそうだ。いよいよツイードの季節到来…早速引っ張り出して準備を整えた。お気に入りの素材だけあってジャケットだけでも既成品から誂えまで何着も揃えている。

ツイードの魅力をAIに問うと「耐久性・保湿性・独特の風合い」に加えクラシックと上品さ併せ持つ汎用性があるとのこと。太く丈夫なウールで織られているため型崩れし難く、多色使いの糸による複雑な模様が生地に深みを与え着るほどに味わいが増す「育てる」楽しみがある…と説いている。

そこで今回はお気に入りのツイードジャケットに合う靴との組み合わせを考えてみようと思う。

※扉写真はビンテージツイードジャケット

(1) 85年製ブルックスブラザーズ
最初は1985年製のヘリンボーンツイードジャケット。世界最古の衣料品店ブルックスブラザーズのスペシャルオーダー品だ。手に持っているのは同じクブルックスが生みの親といわれるアンラインドペニーローファー。製造元のオールデンに日本の代理店が別注をかけたもの。

(2) 肉厚なコードバン
寸胴なサックスタイルで有名なブルックスだがこちらは別注品、胴の絞りも強く英国調のチェンジポケットが付いているのが写真からも分かる。一方手に持ったアンラインドのペニーローファーはタンの厚みからもブルックスブラザーズより上質と分かる。10周年記念に200足作られた中の1足だ。

(3) ブラックペニー
こちらは15周年記念に作られた黒のアンラインドペニーローファー。ヴァンラストのオリジナルと違いつま先が長めのトムラストを採用、よりドレッシーだ。肝心のツイードジャケットは英米ミックス調だが肩はアメトラの象徴、段差のないナチュラルショルダーに仕上がっている。

(4) ハンドソーン
つま先部分のハンドソーンモカ縫いは「時間と労力の掛かる作業であり、均一なステッチやラストに乗せるバランスなど細心の注意と技術が必要」と言われる。高度なスキルをもつ職人のみがなし得る「匠の技」という点ではエドワードグリーンのスキンステッチに匹敵する。

(5) 95年製ブルックスツイード
次は同じブルックスブラザーズから柔らかな手触りのシェットランドツイードを用いたナンバー1サックジャケットになる。タグにはブルックスツイードとあり織元に別注をかけた生地のようだ。手に持っているのはかつて蜜月関係にあったオールデン製のシガーコードバンブーツ。

(6) モディファイドラスト
手にした短靴は同じオールデンの外羽根セミブローグ。内振りシェイプは矯正靴に端を発するモディファイドラストによるもの。上のブーツと合わせてパリのアナトミカで購入した。オーナーのピエールフルニエ氏はビスポーク靴に勝る履き心地をこのモディファイドラストに見出したという。

(7) No.1サックスタイル
本来は寸胴なはずの三つボタン段返りだが1995年はニューヨークトラッド華やかなりし頃、ラルフローレンやポールスチュアートなど胴絞りの強いアングロスタイルが主流だったのだろうブルックスブラザーズでもダーツこそ取らないものの英国調のジャケットが店頭に並んでいた。

(8) 1980年代ポロラルフローレン
こちらはビンテージのポロラルフローレン。上襟と下襟の境目にあるゴージラインは長年「肩線と平行」に近かったが最近は下がってきている。80年代から90年代初めの製造らしく低めのゴージラインが新鮮に映る。打ち込みの厚いヘリンボーン生地は今時見られない逸品だ。

(9) ジャケットを替える
上の写真で着こんでいた襟付きベストはロンドンのテーラーにオーダーした3ピースから拝借したもの。単品で着ることも多いが本来のジャケットと合わせてみた。ツイードというとスコットランドが有名だがこちらはアイルランドのドネガルツイード。黄色や赤などのネップが独特の表情を見せる。

(10) 最近のポロラルフローレン
こちらは数シーズン前のポロラルフローレンから。ブラックウォッチ風タータンに黄色のオーバーペインが組み合わさったキャンベルタータンは衣類からスニーカーなどシーズン毎に様々なアイテムに用いていた。手に持っているのはカーフとピッグスキンのブーツ。

(11) ブーツを替える
手にしたのはカーフとハッチグレインのコンビブーツ。ルーマニアの名工サンクリスピンによるものだ。グレーフランネルのパンツと一緒に履きたくなる。とはいえこう暖冬傾向だとツイードジャケットもブーツもシーズン中に何回着られるだろうか。

(12) RRLに着替える
同じタータンツイードながらこちらは王道のブラックウォッチ、しかもツイードの顔とも言われる「ハリスツイード製」の生地を使用している。一見三つボタン段返りのアメトラ調ながら胴絞りのあるデザインは英国スパイスが効いたダブルアールエルのものだ。

(13) エプロンフロント
ブーツはジョンロブがボノーラに作らせた「エデリン」復刻版。つま先の長いスキンステッチや短いU字モカ、二重ステッチがコバを全周するノルウィージャン製法の凝った作りだ。写真を送って素材を決定、仮縫い靴を小包で送って貰いフィッティング後に完成させたコロナ禍ならではの遠隔ビスポーク品だ。

(14) グレーヘリンボーン
ツイードジャケット入門編ともいえるグレーヘリンボーンはモノトーンな着こなしが定番。シャツは白無地、靴は黒というのが「間違いのない」組み合わせだ。手にした靴は最新のタッセルローファー、ビスポーク靴のキング、ジョンロブそれも本家のロンドンロブだ。

(15) タッセルローファー
素材は既に流通しなくなって久しいデッドストックのカールフロイデンベルグ。特に黒は革に拘る靴マニアから常に熱い視線を浴び続けている素材だ。ジョンロブではまだストックがあるらしいので何足かオーダーするうちにリクエストしてみるのも良さそうだ。

(16) 黒の紐靴
一方こちらは同じ黒靴でも内羽根のドレッシーなタイプ。カールフロイデンベルグの後継と言われたワインハイマーの革を用いたパンチドキャップトゥだ。既に仕事でこうした黒の紐靴を履く必要はなくなっているがグレーのジャケットにはやはり黒靴が合うと実感する。

(17) サルト仕立てのツイード
英米のツイードものからここでイタリアのサルト仕立てを紹介。写真はフィレンツェの名店「リヴェラーノ」のツイードジャケットだ。同じツイードなのに芯地など副素材が違うのかカットが違うのか着心地は全然違う。手にした靴は同じ時期にフィレンツェのボノーラで誂えたもの。

(18) 外羽根ギリー
クリスマス後のフィレンツェでリヴェラーノを訪問、ジャケットを受け取りボノーラでオーダーしたこちらの靴は当初はスエードで注文していた。その後ローマに移動した大晦日に担当に電話、「コードバンに替えて」と急遽変更したことを思い出す。存在感は十分、秋冬ものに相応しい一足に仕上がっている。

(19) スプリットトゥ
こちらは上の外羽根ギリーと同じ木型で作られたスプリットトゥ。いわば兄弟靴だ。ボノーラは閉店して久しいがフィレンツェに店があったミレニアム当時、ビスポーク靴はルーマニアのサンクリスピンが請け負っていた。その時のマイラストは今サンクリスピンが所有している。

(20) ハンツマンのツイードスーツ
イタリアから仕立服の本場サビルロウへ…写真はハンツマンのツイード3ピース。同じ生地で作られたコンビブーツは度々紹介しているがジョージクレバリーに共布を持ち込んで依頼したものだ。デザインはクロケット&ジョーンズがブルックスブラザーズ向けに作ったものを参考にした。

(21) 格子ツイード
生地は白・水色・青の三色ラインと黄・橙・茶の三色ラインが格子になっている。おかげで格子の色を拾った着こなしが色々楽しめる。ハンツマンでは柄の重なりを意識して仕立てており一方のクレバリーも生地の向きがスーツと向きになるよう注意を払っておりどちらも職人技が満載だ。

(22) RRLのツイード3ピース
最後は番外編。RRLの3ピーススーツは軽いヘリンボーン生地とアンコン仕立てによってセーターのような着心地が特徴、ドレスシャツにネクタイよりもワークシャツにバンダナが絵になる。手にした靴は手縫いブーツの雄ホワイツのセミドレス。柔らかくてしなやかで頑丈な水牛の革を用いている。

ツイードは丈夫で野趣あふれる質感に加え耐久性もあり昔から防寒着として重宝されていた。1924年の英国エベレスト登頂隊ではツイードのジャケットやズボンを着用、当時最新だったそうだ。因みに頂上アタックに出発したマロリーとアンドリューは頂上に立ったか不明のまま消息を絶っている。

今のエベレスト遠征隊は合成繊維が主流、近場の日帰り登山でさえツイードのニッカボッカを履いた登山客は殆ど見かけないが幸いツイードは時代を越えた遺産、優れた機能性に加えファッションあるいはテキスタイルデザイナーによる継続的な取組もあって今もファッションの定番であり続けている。

残念なのは冬が短いこと…ツイードを着る為だけに北海道で長期滞在しても良いかな…なんて思うことがある。

By Jun@Room Style Store