ノーザンプトン再訪・前編 | Room Style Store

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2026/04/25 23:29

25年ぶりでノーザンプトンを訪れた。ミレニアム当時は毎年訪れていたのに随分ご無沙汰だ。いつの頃からか買い物旅行は卒業、旅そのものを楽しむようになっていたせいかもしれない。今回もスコットランド周遊を終えて後ろ髪を引かれつつロンドンに戻り、帰国前の軽い日帰り旅行のつもりでいた。

ところがいざノーザンプトン行きとなると血が騒ぐ。金曜日にロンドンに戻ったので土曜日の今日はクロケット&ジョーンズが開いている日だ。他のファクトリーを探したらエドワードグリーンもジョンロブも土曜日はお休みとのこと。開いているのはチャーチスぐらい…昔とはだいぶ勝手が違うようだ。

ならばクロケット&ジョーンズに的を絞って営業時間の確認。土曜日は9:30〜12:30までの3時間とあまり余裕はない。念のためホテルを早めに出発した。そこで今回はメインイベントである「スコットランドを巡る旅」の番外編「ノーザンプトン再訪」を前後編に分けて先行紹介しようと思う。

※扉写真は箱ごとホテルまで運んだ戦利品

(1) ホテルを出発
今回のロンドン滞在は一人なのでアパート滞在ではなくホテル連泊にした。選んだのはポートベローマーケットの最寄り駅ノッティングヒルゲイト駅近のホテル。ここの朝食が美味しいのなんの…セルフとはいえ今時珍しいフルイングリッシュブレックファストを堪能できる。

(2) ホテルの朝食
因みにこちらが初日の朝食…朝一でダイニングに入り好きなものを選んだところ。全部盛り付けたら皿からはみ出すほど種類がある。卵は調理中だったらしく後でスクランブルエッグが出てきた。たぶん昼食はパスしてファクトリーに居ると思うのでたっぷり朝食を取った。

(3) ユーストン駅の掲示板
ロンドンのユーストン駅から出発するノースウェスタン鉄道の出発案内板。ノーザンプトン行きは9時23分発だ。15分前に出発ホームが示されると乗客はぞろぞろホームに向かうことになる。切符はオンラインで買うとQRコードが送られてくるので機械にかざして構内に入る。

(4) 列車入線
こちらが新しい車両。流石に25年前と比べると快適で綺麗だ。初めて行った時は帰りの列車が途中で停まり車掌が乗客に無料でペッボトルの水を配るなんてアクシデントもあった。懐かしい思い出だが今も欧州の鉄道はアクシデントが多いらしい。今日は運休もなくオンタイムのようだ。

(5) ホンダF-1工場
途中日本のホンダがF-1の活動拠点であるファクトリーを車窓から発見。HRCはホンダレーシングコーポレーションの略、現在はアストンマーチンにパワーユニットを提供しているが今年序盤は苦しい戦いを強いられている。日本人としてはホンダを応援したい。

(6) ミルトンキーンズ
こちらがHRCの最寄駅ミルトンキーンズ。F-1のシリコンバレーとも言われかつてのパートナーでもあるレッドブルレーシングもファクトリーを持っている。ノーザンプトンに向かう間、列車から降りる人が一番多かったのもこの駅だった。F-1関係の人達だろうか。

(7) ノーザンプトン到着
こちらが改装されたノーザンプトンの駅。昔と違ってとても立派になっているのに驚いた。それにしても25年経つと随分変わるものだ。いつもならタクシーで直接向かうが今回は徒歩で30分かけてクロケット&ジョーンズ(以下クロケットと記す)の工場を目指した。

(8) 工場到着
ようやく着いたクロケットの工場入り口。昔はここの扉を開けて右側に小さなファクトリーショップがあったが今は右に進んで工場の脇から入るようだ。以前は靴好きの日本人を見かけたものだが今回アジア系は女性が一人のみ、あとは中東から靴を買いに来た客のようだ。

(9) ファクトリーショップ入口
こちらがファクトリーショップの入り口。ノーザンプトンで最も器用なシューメーカーといえばクロケット…何しろ名だたるブランドの靴を作り続けてきた実績がある。ビスポークシューメーカーの既成靴部門もそつなくこなす実力派。さてどんな靴が並んでいるか見ものだ。

(10) 天国への階段
この会談を上がると靴天国が待っている。レッドツェッペリンの「天国への階段」が頭の中で流れてきた。ファクトリーショップ全体の撮影はNGだが靴そのものの撮影はOKらしい。中には靴を撮影してはスマホで転送して離れた友人の靴を購入する人もいる。

(11) スエード靴の魅力
最初に目が行ったのは起毛素材の靴。様々なタイプのスエード靴が出ている。全てスナッフ、昔風に言うならタバコスエードだ。左のセミブローグはジョンロブっぽいし中央はポールセンスコーン似だし右端はジョージクレバリー風と如何にも器用なクロケットらしい。

(12) スエードのセミブローグ
中でも心惹かれたのがこちらのセミブローグ。ヒールカウンターにもパーフォレーションが入るビジーなタイプだ。履き心地もジョンロブの名ラスト8695に近い。「何を今さら?スエードのセミブローグならクレバリーで誂えただろう?」という天の声が聞こえてくる。

(13) チャッカブーツ
次にマイ定番のチャッカ。今回履いて来たポールセンスコーンの後継バージョンだ。「それだったら今履いているじゃないか…さらに買おうとしてるの?」という天の声がまたまた聞こえてくる。カーフと違い光を吸収するマットなスエード靴は何足あっても欲しくなる魅力がある。

(14) リッチモンド2
打って変わってこちらは夏の装いに最適なキャンバスとカーフのコンビローファー。ホワイトスエードのように気を使う必要がない分気楽に履けそうだ。イギリスのローファーは履き口が高く硬いのが難点だがこの靴はアンラインドなので履き心地は至って柔らかい。

(15) ウイングチップ
こちらは英国には珍しい黒の外羽根ウィングチップ。スコッチグレインにストームウェルト、ソールはゴツいビブラムソールとツイストが効いている。ひと時代前のトムブラウンxブラックフリースの靴のようだ。履き心地はペンブロークと同じ375ラスト、もちろんEウィズだ。

(16) ニューデザイン
こちらはクロケットでは珍しいホールカット。スコッチグレインで外鳩目にビブラムソールという変わり種。フォーマルなデザインにカントリーな素材とディテールを盛り込んだデザインはどこかのショップ別注か?と思い中敷きを確認するもクロケット…かなりトリッキーな靴だ。

(17) アメリカンな靴
こちらはアメリカンなウィングタッセルローファー。かつてのジョンストン&マーフィーを彷彿とさせる。ブラックカーフのように見えたがダークバーガンディにブラックを被せたようなパティーヌが珍しい。アメトラ好きな人がブレザールックに合わせると最高かもしれない。

(18) ブーツ①
アイラという名のこちらのブーツはDウィズというのが売り。クロケットを扱うトレーディングポストによればつま先のボリュームが抑えられ「アメリカのビンテージブーツを思わせる絶妙なバランス」だそうな。確かにワイドなラウンドのつま先から流れるようなラインが特徴だ。

(19) ブーツ②
こちらはクロケットの定番コニストン。日本人の足に合う375ラストを採用、ソールはグリップに優れスマートさを併せ持つダイナイトスタッドソールを装着している。アウトドアで真価を発揮するスコッチグレインレザーはやぶや小枝で傷が付いても目立たないのが嬉しい。

(20) ブーツ③
こちらがクロケットのブーツで唯一手書きサインの入る特別なモデル。名前はウェールズの山の名前から取ったスノードン、日本未入荷だ。ヴェルトショーン製法による高い防水性に加えアッパーも水に強いワックスハイドを採用。ベローズタンやコマンドソールなど真のアウトドア向け。

(21) 店内の様子
サイズ毎に並べられた靴だがデザインによってはサイズ違いがストックされている場合もある。ダメもとで聞いてみたがどれも原品限りという回答だった。尤もシーズン毎に並ぶ靴は入れ替えがあるらしい。ただコードバンなど希少な革を使ったモデルはまず出ない。

(22) 工場とお別れ
写真は白い扉の入り口から左側に回った工場の様子。読みにくいがクロケットジョーンズの文字が大理石の壁に刻まれている。レンガ造りの工場が数多く並ぶ一帯もよく見るともぬけの殻だったり操業を止めていたりする。土曜日だからなのか昼時とはいえ人の気配が感じられなかった。

(23) ハーレー好きの集まり
両手にバッグを抱え駅へと急ぐ途中、広場に大量のバイクを発見。英国のハーレー乗りによるミーティングらしい。新旧様々なハーレーに乗るライダーも老若男女、皆で盛り上がっている。アメリカとイギリスは最近仲が悪いがハーレー好きは関係ないらしい。

実はここノーザンプトンのクロケットを訪問した翌日、ロンドン郊外のアウトレットへ土産探しに行って驚いたことがある。ポールスミスやバーバリーにハケットなど英国ブランドでネクタイを買おうとしたらどこも取り扱っていないのだ。そういえば街のビジネスマンも誰一人ネクタイを締めてない。

どうやら英国では急速にスマートカジュアルが浸透しているようだ。誰もネクタイを買わないのなら店内の売り場ごと撤去してしまえ…ということらしい。AIに英国の現状を聞くと金融関係や弁護士などは依然としてネクタイが必要だが多くの業界ではノーネクタイへのシフトが進んでいると答えた。

更に突っ込んで「ネクタイの売り場がなくなるほどスマートカジュアルが進んでいるのなら革靴の売上も落ちているの?」と聞いたところ「伝統的な革底靴の需要は減少しスニーカーやハイブリッドな靴或いはローファーに取って変わられている」とのこと。日本と同じ状況が英国でも起きていたのだ。

革靴の需要が全くなくなることはないにしても「今後は特定のシチュエーションに相応しい靴が買われることになるのでは?」とAIに問いかけると「そのとおり、革靴が日常必需品であった時代は終わり今後はより専門的で高性能な靴やハイファッションのアイテムとして進化する」と回答してきた。

今までだったら持っていないタイプの靴を…という視点で選んで来たが「こんな場面で履きたいという具体的なイメージに合う靴を探した方が良い」というAIのアドバイスに従い試着した靴を戻して一旦白紙に…時間は既に12時を過ぎあと30分弱でショップも終了する。さてどんな靴を選ぼうか。

結果はノーザンプトン再訪後編でお伝えしようと思う。

By Jun@Room Style Store