2026/06/27 07:37

前回はインヴァネスの西にあるビューリーで念願の「ヘビーツィードを本場スコットランドで注文する」夢を叶えた部分がハイライト…その後宿泊地のザ・ボート&カントリーインで友人と祝杯を挙げデザートも堪能したところまでを紹介したと思う。
宿にチェックインすると早くも友人は散策に出るという。せっかくなので目の前にある保存鉄道の駅を一緒に訪れることにした。駅名はボートオブガーテン。廃線になった鉄道をボランティアの手で運営しているストラススペイ鉄道の中間駅とのこと。
明日の列車は既に完売…せめて撮影でもと思っていたら翌朝まさかの当日券を友人がゲット。チェックアウトを遅らせて貰い慌てて駅に向かった。そこで今回は予定外の保存鉄道乗車を中心に旅の終盤に向けて一気に南下する様子を紹介しようと思う。
※扉写真は宿の前にあるボートオブガーテン駅の景観
(1) ザ・ボート&カントリーインの朝食

先ずはトースターにパンを入れてトースト、クロワッサンも一緒に入れるとサクサクになる。相変わらず自分はコーヒーだが有人は紅茶をオーダー。チラリとティーポットにミルクポットが写っている。今日はイチゴとマーマレードのジャムをチョイス。
(2) 盛り沢山のプレート

運ばれてきたプレートはこれぞスコティッシュブレックファースト。丸い輪切り状の黒い食べ物がスコットランド名物の「ハギス」だ。羊の内蔵をオート麦や玉ねぎ、スパイスなどと一緒にに辻の胃袋に詰めてゆでたもの。独特の味は好みの分かれるところだ。
(3) ヨーグルト

ヨーロッパを旅すると朝食のヨーグルトは写真のような甘いタイプがお決まり…糖分0のヨーグルトをすくってジャムを好みでかけるスタイルには中々出会えない。連日運転で運動不足ゆえせめて糖質カットを…と思ったが既にパンやらジャムやらいただいているので後の祭りか…。
(4) 友人がゲットした当日券

ボートオブガーテン駅から次のブルームヒル駅までの往復切符を跨線橋から撮影。下のホームには乗客が集まっている。友人が駅員に「スマホで切符を買おうしたらソールドアウトだった。」と話したら「当日券あるよ」と教えてくれたのだとか。コミュニケーションは大切だと思った。
(5) 列車到着

ようやく列車が到着。鉄道発祥の国、英国ではこうしたボランティアにより運営されている保存鉄道が100以上あるという。しかも日本のように集客の見込める週末と祝日運転ではなく一定期間を除いて毎日運行しているという。撮り鉄としては混雑せずに撮影できるのが有難い。
(6) 先頭の機関車

早速先頭の機関車を見学しに行ってみる。46464号機は元々ロンドンミッドランド&スコティッシュ鉄道の所属だったものが2020年にストラススペイ鉄道に譲渡され修復を終えて2024年に動態復活したばかりとのこと。ピカピカに磨き上げられた車体がまぶしいほどだ。
(7) 給水中

給水を担当するスタッフ。とても嬉しそうだ。元々鉄道マンだったのかもしれない。保存鉄道の課題はこうした高度な専門技術を有するベテラン勢が高齢化で現場を退かなければならない点にあるという。運転・保守や修繕など技術継承が途絶える危険性が指摘されている。
(8) 優雅なティー付きの席

往復3時間以上あるのでゆったりティーを楽しむ席も用意されている。深紅のテーブルクロスに白いティーカップとソーサーが絵になる。出発までベンチで日向ぼっこのお二人も写真に華を添えてくれた。確かにこの日は4月だというのに気温が15℃前後…肌寒かった。
(9) 最後尾からみた列車

最後尾の窓を開けて撮影。カーブなので機関車が良く見える。それにしても客車が随分連結されている。試しに車内を移動したら優雅にお茶を楽しむ席だけではなく個室まである。日本のSL牽引観光列車と違ってとにかくのんびりとして優雅な感じだ。
(10) 逆向きの復路

終点のブルームヒルで機関車は一旦切り離されると今までの最後尾に連結。逆向き運転でボートオブガーテン駅に戻ることになる。このストラススペイ鉄道、由来はストラス=ゆるやかな 、スペイ=スペイ川を組み合わせたもの。文字通り緩やかな流れのスペイ川に沿って線路が続く。
(11) スコットランド最古のミル

午後は友人がツアーに予約していたミルを見学。名前はノッカンドー・ウールミル、230年以上にわたってスペイ川渓谷沿いに存在するスコットランド最古の毛織物工場なのだ。2000年代に老朽化した施設を10年かけて修復し2012年に再オープンしたとのこと。
(12) 古い機織り機

こちらがドブクロス織機だろうか、古いものを大切にする気質はイングランドもスコットランドも同じ、調べたところヴィクトリア時代の1890年代に導入されたもので力強い稼働音が特徴だとか。残念ながらこの日は稼働していなかったが良いものを見させてもらった。
(13) アザミの実?

ドラムの隙間に並べられたのはアザミの実ではなくチーゼル=和名オニナベナの実だという。このとげの間を通ることで布やニットの表面が起毛されて毛足を作るようだ。なぜ金属を使わないの?と聞かれるそうで「限界を超えるととげが折れて生地を傷付けない」が答えとのこと。
(14) 動力源

昔は写真のように敷地内のノッカンドー・バーンという小川から水を引いて水車を回しそれを動力として紡績や機織りを行っていた。電気が引かれたのは1949年というから230年という長い歴史の中で動力が近代化されたのはごく最近ということになる。
(15) チャールズ皇太子の訪問

写真は2012年に修復を終えて再稼働した際、チャールズ皇太子(当時)が訪問した時の様子。頭をかがめて狭い通路をくぐるその上にはマインドユアヘッド=頭に気を付けての赤いサインが掲げられている。YERは英語のユアでHEIDはヘッドのスコットランド発音文字。
(16) 赤いサインの現在の様子

こちらがチャールズ皇太子がくぐった時の写真と同じ場所になる。ミルのエントランスに当たる部分。ふと茶室に入る時の躙り口(読み方:にじりぐち=小さな入口)を思い出した。チャールズ皇太子と同じく頭を下げて屈み、ミルに出入りすることで自然と謙虚な気持ちになる。
(17) お土産のツィードキャップ

ラッセルツィードと呼ばれる生地で作ったキャップ。英国にはベースボールを作るメーカーは1社だけとのことでここに様々なファクトリーがオーダーを入れるのだとか。因みにビューリーのキャンベルズでオーダーしたキャップもここに注文するそうだ。
(18) カードゥ蒸留所

続いて訪れたのが1824年にスペイサイドで設立されたカードゥ蒸留所。名前の由来はゲール語の黒い岩、華やかでフルーティ、甘く滑らかな味わいは1893年に買収されたジョニーウォーカーのベースとなるキーモルトを作り続けているとのこと。
(19) ティータイム

この日もランチをパスしてティータイムでブレイク。何しろ朝からごちそうなのが英国流、どこかで軽めにしないと流石に胃が疲れてくる。オーダーしたのはマフィンとカプチーノ。昔と違い今や世界中どこへ行ってもカプチーノを飲めるのだからつくづく良い時代になったものだ。
(20) フォーコーナーズ

銅像は創設者のジョンカミングと妻のヘレン。ヘレンはキッチンの窓から密造酒を販売していたが税務職員が近づくと旗を振って警告し蒸留所を守り抜いたという。足元の十字はフォーコーナーズと呼ばれジョニーウォーカーを構成する4つの蒸留所の位置を指している。
(21) 今宵の宿

今日も昨日とよく似た名前の宿ボート・インに到着。アボインという小さな町を流れるディー川沿いにある。昔から川の多いスコットランドでは渡し舟が重要な役割を担っており船着き場には旅人の為の宿泊所やパブが設けられたのがボート・インという名の宿が多い理由らしい。
(22) 部屋の様子

今日もツインベッドの広い部屋を独り占め。友人の気遣いに感謝だ。部屋に入ってくつろぎながらクッキーやお湯を沸かしてインスタントティー入れて飲むうちに運転の疲れがほぐれてくる。例によってスマホで夕食時間をやり取りしてレセプションで待ち合わせた。
(23) 今宵のディナー

今宵はスコッチハンバーガーに初トライ。友人はスターターに今日のスープを頼み付け合わせはブレッドを選んだつもりが元々付いていたブレッドに加えて山盛りのパンが出てきて大笑い…肝心のバーガーは中々美味しい。ケチャップではなくグレイビーソースを頼んで正解だった。
(24) 今日のルート

今宵の宿があるアボインは地理的にハイランドに属しているがかなりロウランドに近い。他の都市、例えばアバディーンやダンディー、スターリングもエジンバラも全てロウランドに属する。明日はこのロウランドを南に突っ切ってイングランドとの国境「ボーダーズ」を目指す。
旅もそろそろ終盤。今までイングランドでいえばドーバーに面した南のセブンシスターズからブライトン、ウィンザーやバース、コッツウォルズから湖水地方を回った。ウェールズも車で縦断したことがある。どこも素敵だが魅力という点ではスコットランドが一番かもしれない。
その理由をAIに聞いてみたところ①壮大でドラマチックな自然景観②石畳の旧市街や古城③バグパイプの音色やウィスキーの蒸留所④独自のケルト文化などが色濃く残っておりイングランドの牧歌的でのどかな風景とは一味違った感動を与えてくれるのが大きいと回答してきた。
何よりスコットランドはイングランドよりも物価が安い。レストランやパブでの食事にしても二割から六割ほど安く楽しめるという報告もある。スコットランドはイングランドの七割程しか所得がなく経済格差があるとはいえ物価面を考慮すると生活の質は何とも言えなさそうだ。
特に我々旅行者にとってはスコットランドの食事がリーズナブルというのは有難い。サーモンや貝類、世界的に有名なスコットランド産ビーフなど優れた食材の宝庫であり、素材の味をシンプルに活かした力強く素朴なファームフードを提供する店が多く日本人の口にもよく合う。
この旅が終わればロンドンに3泊して帰国。だがスコットランドにいるとロンドン滞在をもっと短くすれば良かったなと後悔する自分がいる。18世紀の英文学者サミュエルジョンソンが「ロンドンには人生が与え得る全てのものが存在している」という境地にはなれそうもない。
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