2026/07/11 14:07

アメリカはコネチカット州のザ・シューマート訪問記を挟んで前回のスコットランド周遊記は小さな町アボインの宿ボート・インで夕食を楽しんだ様子まで紹介した。ふと今回の旅の初日にアバフェルディでランチした際カフェの若い店員が「この夏日本に旅行に行く」と嬉しそうに話かけてきたのを思い出した。
今スコットランドを含む英国では日本旅行の人気が記録的な上昇を見せているらしい。渡航前に基礎的な日本語を学ぶ人が急増しているほどだという。英有力旅行誌の読者投票では日本が世界で最も魅力的な国の第1位に選ばれた。円安に加え安全で清潔な環境、豊かな伝統と食文化が大きな魅力だと伝えている。
2023年の英仏旅行ではパンデミック疲れやウクライナ戦争の影響でどこかぎすぎすしていたが今回のスコットランド旅行ではどこでも歓待してくれる雰囲気を感じる。日本外交が世界と積極的に関わる姿勢を明確にしているだけでなくスポーツや文化の交流によって相互理解が深まっていることもありそうだ。
ともあれ今回の旅行もいよいよ終盤、そこで今回はイングランドとの国境沿い、ボーダーズを目指して南下する様子を紹介しようと思う。
※写真はボートインの朝食会場に置かれたロイヤルワラントのジャム瓶
(1) 朝食会場

開始時間より少し前に会場入りして暖炉の側に座る。4月も半ばだというのにスコットランドの朝はかなり冷え込んでいる。調べてみたらハイランドの4月の平均気温は最高で10℃前後、最低は2℃前後とのこと。朝晩は氷点下近くまで下がることもあるらしい…どうりで肌寒いはずだ。
(2) ジャムとトースト

フルスコティッシュブレックファストはパンが選べるらしい。たまにはモーニングロールやバノックとも思うがついついイングリッシュブレッド=山型食パンをお願いしてしまう。毎日食べるうちに熱々のトーストとバター&ジャムが病みつきになってしまう。
(3) プレート

一方こちらはメインのプレート。ソーセージかベーコンかサーモンから一品選ぶ。一方卵料理はフライドエッグかスクランブルエッグかボイルドエッグから一品、付け合わせは共通で定番のブラックプディングと餅のようなポテトスコーンに焼きトマトやビーンズも欠かさず付いてくる。
(4) 宿の看板

朝食後少し時間があるので宿を撮影。Ensyiteと看板にあるがその意味は専用のバスルームが付いた部屋のこと。多くはシャワーとトイレだがエジンバラの宿だけは唯一バスタブがあってお湯に浸かって疲れを癒したことを思い出した。マナーハウスなど古い屋敷を改造したホテルに多いそうだ。
(5) ディー川①

こちらがディー川。川沿いの美しい谷はロイヤルディーサイドと呼ばれフライフィッシング愛好家の憧れなのだそうな。因みにスコットランドの3大河川はこのディー川とスペイ川にテイ川…スペイ川はスペイサイドのウィスキー蒸留所で知られテイ川はスコットランド最長の川とのこと。
(6) ディー川②

手付かずの自然が残っているように見えるディー川。だが近年は夏場の流量減少や水温上昇が深刻な問題となっておりサケの生息に致命的な水温に達することもあるそうだ。また農地開発や土地改良で川と周囲の湿地帯が切り離されスポンジ機能を果たさなくなっているという指摘もある。
(7) 王室御用達の店

小さな田舎にあるグロッサリーショップもよく見たらロイヤルワラントホルダーというから驚いてしまう。ここアボインはバルモラル城に近いこともありイギリス王室へ地元の信頼できる老舗店として日常的に物資を納めていたことから1974年にワラントを獲得したそうだ。
(8) 酒屋で見つけた古酒

たまたま入った酒屋で見つけた古いウィスキー。様々な原酒を買って独自に瓶詰めするインディペンデントボトラーのゴードンマクファイルが1987年産マッカランの原酒を寝かせ2004年に瓶詰めしたもの。この年代のスパニッシュオークシェリー樽は質が高いので熟成されたウィスキーもより奥深いそうだ。
(9) この日の行程

アボインを後にエジンバラとグラスゴーの間にあるフォルカーク(=ファルカーク)を通過。ここは上を流れるユニオン運河と下を流れるフォースアンドクライド運河の高低差24mを回転式ボートリフトで船ごとぐるりと上下に運ぶフォルカークホイールがある。時間があれば見に行きた買ったが断念。
(10) コーヒーブレイク

途中の小さな町でガソリンを給油したついでにコーヒーブレイク。ブラックベリー入りのケーキとカフェアメリカーノを注文。最初席がなかったが予約まで時間がある席に座らせてくれた。しかも他のお客が帰った席をさっと掃除してそちらに席を移してくれる気遣い…スコットランドのおもてなしも中々のものだ。
(11) 連泊する宿

こちらが今宵の宿トラクエア―アームズホテル。インナーリーセン村にある18世紀築の伝統的イン(=宿屋)スタイルの3つ星ホテルになる。徒歩でツィード川を散策できる立地に加えハイキングやサイクリングに釣りの拠点として人気がある。宿にパブが併設されているのが特徴だ。
(12) 宿泊部屋

こちらが宿泊部屋。ボーダーズに近いこともあって伝統的なスコットランドスタイルよりイングランド風モダンテイストの部屋だ。今回の旅で初めて連泊することになる。明後日の朝はLNERでロンドンに戻るので始発駅のエジンバラに近い方が良いだろうという友人の配慮だ。
(13) 地ビール

早めに宿に着いたので地ビールで乾杯。銘柄はエジンバラから電車で約1時間、ツィードバンク駅から徒歩5分の場所にあるテンペストブルーイングだそうな。ペールエールとスタウトとIPAからIPAを注文。友人はハーフパイントで自分はパイントがお決まりになっている。
(14) スターター

今日は友人に合わせて自分もスターターを注文。スコティッシュサーモンも食べ納めかもしれないので二人一緒にオーダー。アボガドのピューレに乗ったサーモンとオニオンを一緒にいただく。シンプルだがこれが実に美味しい。スコットランドのレストラン良い。実に良いじゃないか…。
(15) メインディッシュ

メインはスコティッシュビーフステーキ。ソースはいつものグレイビーソース。和牛ステーキより噛み応えがあるが味はしっかりしかも脂身が少ないので胃にもたれない。因みに友人はフィッシュ&チップスを注文。レギュラーと迷ってラージを頼んだら超ビッグで二人とも笑いが止まらなかった。
(16) 朝食

翌朝は軽めの朝食とコーンフレーク(シュガーレス)にミルク…あとはヨーグルトで軽くと思ったが今日も一日しっかり出かけてあちこち回るらしい。昼食を抜くつもりでがっつり食べることにした。そろそろフルスコティッシュブレックファストが運ばれてくる頃だ…。
(17) プレート

すっかり見慣れたてんこ盛りのプレート。今日はベーコン以外にソーセージ、それにマッシュルームも乗っている。黒い輪切りのブラックプディングと茶色のハギス、ハッシュポテトやタティースコーンも付いてくるので全部食べたら相当なカロリーのはずだ。
(18) ホーウィック訪問

きょうは日帰りで近隣のホーウィックを訪問。世界最高のカシミヤとツィードの産地として有名だったホーウィックには今なおジョンストンズオブエルギンやシャネル傘下のバリーにウィリアムロッキーといったニットブランドに加えツィード発祥の地で唯一残るラバットミル社が工場を構えている。
(19) ホーウィック

雨上がりで濁っているが市内を流れるチェビオット川の写真。ツィード好きなら聞いたことがあるチェビオットツィードの語源となった川だ。この地域で飼育されているチェビオット種の羊から採れるウールは弾力性がありしっかりとしたハリや光沢感があるのが特徴とのこと。
(20) 絵になる風景

ホーウィックの小高い丘からチェビオット川を挟んで対岸の洋館を撮影。マップで確認するとマンスフィールドハウスホテルのようだ。19世紀の実業家の個人邸宅を1960年代ホテルに改装したもの。一度泊まってみたいが一泊6万円。なんと滞在中のホテルの3泊分の料金になる。
この日訪れたホーウィックは1771年、地元の商人が手動の靴下編み機を持ち込んだことから急速に発展。その後1800年代になるとニット産業の中心地へと変貌を遂げた。当時原毛の洗浄や仕上げ洗い用に軟水のチェビオット川が欠かせなかったため昔の工場が今も川に沿って残っている。
1980年代になると中国を中心とするファストファッション向け低価格カシミヤが市場を席巻。ホーウィックに工場を持ちスコットランドを代表するカシミアブランドであったプリングルオブスコットランドやバランタインにピータースコットは価格競争の影響に敗れ次々と姿を消していった。
AIに「スコットランドのカシミヤ製品と中国のカシミヤ製品とでは品質に差があるか?」と問うてみた。すると「①原毛の選定基準②紡績・起毛技術③水質において大きな品質差がある」とのこと。それが「❶肌触り❷暖かさ❸製品の寿命」において明確な違いとなって現れると指摘している。
とはいえかつては「安かろう悪かろう」と言われたファストファッションも高い技術力と圧倒的な低価格を両立している。伝統的なモノづくり企業にとって生き残るには「ラグジュアリー」に特化したり絶対的な「ニッチ」市場を確立したりといったポジショニングのシフトが求められるそうだ。
ホーウィックには有名ブランドの看板が付いたままの廃工場がある。中には看板もなく窓ガラスの割れた古い廃工場もあった。ただ追うものと追われるものはどこかで立場が入れ替わる。最近ではベトナムやインドの製造業の追い上げで中国が仕事を奪われるという構造変化が起きているそうだ。
チェビオット川沿いを歩きながら「栄枯盛衰」という言葉が浮かんだ。
By Jun@Room Style Store
