2026/07/19 06:57

スコットランド周遊最後の訪問地となったホーウィックの様子を簡単に紹介したのが前回。その後公式インスタグラムのコメントからいくつかコメントをいただいた。カシミヤと言えばスコットランドが思い浮かぶ世代にとって名だたるメーカーの消失は寝耳に水だったようだ。
たしかプリングルオブスコットランドは初めて袖を通したカシミヤセーターだったし叔母のカシミヤアンサンブルをロンドンのバランタインで買ったことも懐かしい。当店にはビンテージのバーバリーxマックジョージのWネームカシミヤジャンパーもラインナップされている。
そこで今回はかつてカシミヤの聖地だったホーウィックの今の様子を紹介しようと思う。
※扉写真はラバットミルのファクトリーショップ
(1) 紡績工場跡地①

チェビオット川沿いの廃工場群。高い煙突は工場の動力に蒸気機関を使うために燃やした石炭の煙を高く逃すため。ホーウィックに紡績工場が集積し始めた1800年頃は産業革命の真っ最中、ワットが発明した蒸気機関による水力から火力への動力転換がこうした景観に繋がる。
(2) 紡績工場跡地②

GLEBEMILLの看板が残るこちらの廃工場周辺はホーウィックの産業の中心だったようだ。ここは1877年の創業。後にプリングルオブスコットランドに売却され1962年にはエリザベス女王も訪問している。産業構造の変換により廃業、現在は手付かずの状態となっている。
(3) ジョンストンズのショップ

一方、チェビオット川の対岸にはジョンストンズオブエルギンが工場を構えている。元々ハイランドのエルギンに拠点のあるジョンストンズが1980年にここホーウィックに進出したそうだ。写真は工場見学受付の入口。リテールショップとカフェが併設されている。
(4) コーヒーブレイク

せっかくなのでジョンストンズのカフェで休憩。当方またもやコーヒーを頼むも友人は正統派のティーをオーダーしていた。グレーズがかかっているのはレモンケーキ。食べようとフォークで一口大に切った際、写真を撮っていないことに気付き慌てて元に戻したところ。
(5) 店内の様子

入口右手がカフェで写真左手がリテールストア。半額セールもあり気に入ったものが有れば買うつもりでいたが暖冬気味の日本を想像するとセーターを買うモードに入らず断念。そもそもコートやニットなしで着られるツイードジャケットをオーダーしたことを忘れていた。
(6) 手袋用の手形

ニットの手袋用金型。スチーム管に取り付けられていて完成した手袋を湿らせてこの手形に被せスチームと乾燥を経て指をまっすぐに整え出荷したそうな。グローブフォーマーと呼んでいるとか…買い物はしなかったが歴史を感じさせるディスプレイがところどころにあって飽きない。
(7) ディスティラリー訪問

こちらは新進気鋭のウィスキー蒸留所。その名もザ・ボーダーズディスティラリー。看板商品のシングルモルトリリースに向けて熟成中だ。ボーダーズに位置するこの一帯は過去180年間ウィスキー不足に悩まされてきており、古い工場を改修して2018年竣工したばかり。
(8) ピータースコットの廃工場

こちらはピータースコットの看板が残ったままの工場。閉鎖されているようで調べたところ2016年8月に創業停止となったようだ。カシミヤやキャメルヘアの製品で有名だった同社の古着はビンテージ品として人気があるとのこと。こうしたレンガ造りの工場が至る所にある。
(9) プリングルオブスコットランドの店

2000年香港資本になるも2008年にホーウィックの自社工場を閉鎖してイタリアに生産を移管したという。2023年には再び英国資本に返り咲き形を変えてブランドは継続中らしい。創業の地ゆえかアウトレットを構えているが商品はもはやスコットランド製ではない。
(10) ウィリアムロッキーの工場

こちらは今も残る数少ないニットメーカーのウィリアムロッキー。1874年創業というからホーウィックの栄枯盛衰を見てきた数少ないブランドだ。カシミヤ製品だけでなくラムズウールのニットでも定評がある。今日まで続いて来たのは企業努力の賜物だろう。
(11) ツィード工場跡地利用

チェビオットデールミルの看板がある工場跡地。1877年建造のツイードミルの建物にウィリアムロッキーのリテールストアが入っている。廃工場が並ぶノーザンプトンと似ているがホーウィックの方が穏やかに感じられるのはスコットランドという土地柄だからか…。
(12) ウィリアムロッキー店内

ウィリアムロッキーのリテールストアの中から外を撮影。日本における輸入代理店が存在しないウィリアムロッキーを国内で購入するならセプティズやヤヨイといった各ショップが独自に買い付けている。ウィンドウディスプレイされているのは4プライのカシミヤショールカラーカーディガン。
(13) 懐かしのパンセレラ

外国のリテールストアの面白いところは他社の製品でも置くところ。イングランドのレスターに本拠地を置くパンセレラのソックスを初めてUKでみかけた。他にもドイツのファルケを扱っているようだ。因みに下段のウィリアムロッキー純正カシミアソックスは日本で一足30,800円もする。
(14) ラバットミル訪問

ウィリアムロッキーのリテールストアを出て少し戻ったところにあるのがラバットミル。ホーウィックに唯一残るツイードミルとのこと。日本でも正規輸入元から独自に仕入れたツイード生地で仕立ててくれるテーラーは結構多いようだ。せっかくなのでショップを訪問した。
(15) ミルショップ

1868年創業のラバットミル社はエステートツイードの伝統を現代に受け継ぐ名門。自然の中に溶け込むブラウンやグリーンが特徴。コート向けのヘリテイジは900㌘/㍍の目付け。キーパーズツイードとして名高い。またジャケット用のエトリックも640㌘/㍍のハイスペックだ。
(16) ツイードのベア

こちらはお土産のツイードファブリックで作られたテディベア。一点物のハンドメイドでタグには作者の名前も書いてある。多分スエード部分はアルカンタラを使っているのだろう。テディベア好きには食指が動く逸品か…せっかくなのに値段を確かめなかったのが残念。
(17) 土産物売り場

ブランケットやハットにキャップなどツイード好きには堪らない土産物がずらりと並ぶ。壁に掛けてあるキャップから気に入った生地のキャップを土産物としてチョイス。タグを見るとしっかりメイドインイングランドと書かれている。中国製と思っていたがこれは今時珍しい。
(18) 生地見本

生地見本を見るのも楽しいが下にあるロール状やシート束の端切れを見るのが楽しい。お気に入りの生地で眼鏡ケースを手作りしたくなってしまう。生地見本を見ていたらスタッフが出てきて「ここで買うのも良いけどネットで買えるよ」と教えてくれた。
(19) ひざ掛け

さりげなくケント公が2017年同工場を訪問した際の記念プレートが飾られている。ラックには鮮やかな色目の大判ひざ掛けが並んでいた。一見派手に思えるが実はどれもスコットランドの自然からインスピレーションを受けた色目、スコットランドを旅すると馴染んでくる。
(20) 毛布

こちらはアンゴラとリネンの毛布。ソファカバーやベッドスプレッドとして使われるものだそうな。左がアンゴラ素材で右がリネン素材…ツイード好きとしてはラバット社というと直ぐにエステートツイードが思い浮かぶが店内を見て回ると実は色々な素材を扱う織元だと気付く。
(21) 純正ツイードキャップ

こちらがお土産用に購入したラバット社純正ツイードキャップ。何しろツイード生地は今いるボーダーズを流れるツイード川流域で織られたのが起源。Jプレスのサイトによればホーウィックはツイードジャケット発祥の地とある。実にヒストリックな場所に来たものだ。
(22) ラバット純正ネクタイ

写真のタイはメイドインイングランド。需要が半減した英国では珍しい。尤も日本も流通が80%減という。AI曰くネイビーとシルバーにブラックでネクタイは事足りるらしい。必需品から嗜好品へ…ネクタイの未来について友人とあれこれ語りながら帰路についた。
帰りのルートを調べると滞在先のトラクエアーアームスホテル付近にトラクエアーハウスホテルがあって間違えやすい。尤もこちらは王室ロッジ改装の格式ある四つ星のホテル。さぞお高いかと調べたら一泊260£と意外にもリーズナブル。次は是非泊まってみたい。
因みにロンドンで格式高いホテルといえばリッツになろうか。なんと一泊1,800£というから我々の泊まった宿の7倍強だ。極端な例だがイングランドでも特に物価の高いロンドと比べて如何にスコットランドの物価が抑えられていて過ごしやすいかが良く分かる。
もちろん旅行者にとってスコットランドの魅力は宿泊費や滞在費が抑えられるだけではない…某旅行会社の案内を読むと「劇的な自然美と景観」や「食事の美味しさ」を挙げていた。なるほど旅の三大醍醐味は景色と食事と体験というからあとは経験ということになる。
その点もスコットランドは抜かりない。サーモンフィッシングや蒸留所巡り、大自然のハイキングや保存鉄道めぐり、ミリタリータトゥーなどのパフォーマンスアート、一般的ではないが自分のようにツィードミルを訪ねて生地を買ってテーラー訪問だって立派な体験だ。
日本のインバウンドはリピーターの段階に入ったという。今回の旅で既に5回目、どうやら自分にとってスコットランドはリピートする対象になったようだ。
By Jun @Room Style Store
