2026/10/19 13:52

最近はエシカルな視点から使用を避ける動きもあるが昔から珍重されてきたのが鰐革だ。鰐革を使用した革製品は時計ベルトのような小物から靴やバッグ、鰐革のジャケットやコートまである。その魅力を改めてAIに問いかけてみたところ次のような答えが返ってきた。
主な魅力として①模様の美しさ②牛革の十倍ある強度③美しく変わる経年変化④希少性の4点を挙げていた。古くから皮革の宝石として根強い人気を誇り、四角い模様の竹斑から丸い模様の丸斑へグラデーションのように変化する配列は芸術的な美しさと讃えられている。
かくいう自分も一時鰐革の魅力に嵌ったことがある。流石にバッグやジャケット類には手を出さなかったが小物やベルト、靴に夢中になっていた頃が懐かしい。そこで今回はマイ鰐革靴の歴史を時系列で記録しておこうと思う。
※写真は手持ちの鰐革靴
【番外編】
〜 1991年3月 〜

鰐革靴遍歴を遡ると今は人手に渡ったこの靴を最初に書き記す必要がある。1991年3月、ロンドンのエドワードグリーン店舗を訪れて片隅にあるセールのローファーを購入した。モンペリエという名のこの靴はカーフを既に持っていたが珍しさから購入した初の鰐革靴だった。
(1) 1995年1月

1995年1月、ニューヨークのJMウェストン初売りに参加。海外買い物歴の中で断トツ一位のお買い得だった。今や90万円越えのローファーが8万円でしかも希少な天然クロコダイル…つくづく昔は良かった。写真は当時ウェストン青山の店長だった吉賀さん推奨デニムとのコンボ。
デニム:RRL
バッグ:ポロラルフローレン
(2) JMウェストンへの思い

元々JMウェストンは自分にとって初の本格紳士靴、強い思いれがある。1988年にパリで買った黒のローファーは今も現役だ。加えてこの時はニューヨークにいる高揚感から一番高い靴を選んだ。靴ブームの到来はまだ先のことだったが日本からの買物客が自分以外にも一人いた。
(3) 2004年9月

その後海外駐在時にジョンロブ・パリで初ビスポークを経験。帰国後はロンドンの誂え靴屋に出入りし始めた。素材はカーフが中心だったがある時クレバリーのトランクショウで鰐革を勧められたことから怒涛の注文ラッシュが始まる。写真はその記念すべき1足目。
トラウザーズ:ポールスチュアート
ソックス:パンセレラ
バッグ:ルイヴィトンポーター(廃番)
(4) プレーンなつま先

鰐革の模様が小から大へ変わる様こそ素材の持ち味。お勧めのプレーンなつま先とクレバリーらしいサイドエラスティックを合体させた。ミシシッピー産のアリゲーターをイタリアで鞣した光沢のある素材は迫力満点、完成品を見た友人が「クレバリー凄いわ」と呟いたことを思い出す。
(5) 2005年10月

1足目で味をしめたのかここから連続して鰐革のオーダーが続く。2足目は初回と同じサイドエラスティックの派生系、レイジーマンで黒の鰐革を指定した。写真は千鳥格子のパンツに黒バッグとコンボを組んだ図。鰐革といえど黒靴だとパンツはグレーかブラックが鉄板だろう。
スーツ:ディヴィス&サン
バッグ:エルメス
(6) レイジーマン

この靴が通常のサイドエラスティックと違うのは甲部分に靴紐を模した細革が五本縫い付けられているところ。しかもその細革の下には内羽根が閉じたかのようなステッチが縦に入っている。紐靴を履くのが面倒な怠けものの靴ということでレイジーマンという名前が付いたそうだ。
(7) 2006年9月

ようやく革見本にマットな鰐革が加わったのでラッタンジばりのアランチャ=オレンジでプレーントウを注文。1年後にデリバリーされた。当時クレバリーとセットで来日していたファーラン&ハーヴィーで誂えたトラウザーズにエルメスのバッグとコンボを組んでいる。
トラウザーズ:ファーラン&ハーヴィー
バッグ:エルメス
(8) イタリア鞣し

イタリア鞣しの鰐革はマットなのに独特の色気がある。AIによれば①芯まで染み込ませる独自のオイル技術②イタリアらしい色彩感覚③天然成分による鞣しの3点にあるらしい。他にはグリーンやブルーなど際どい色もあったが派手な色目はこの靴のみ…最初で最後のオーダーだった。
(9) 2006年9月

鰐革で初スリッポン…内張りを見ると2006年9月とある。何と上のオレンジ色のプレーントウと一緒の注文ではないか。そういえば当時一緒に出入りしていた友人のオーダーに触発されて自分も同じ型を追加注文していたんだっけ。写真はピンストライプのスーツと合わせた図。
スーツ:G.セミナーラ
バッグ:ルイヴィトン(廃番)
(10) ストラップローファー

当時はまだローファー専用のラストがなかったのだろう、クレバリーでは紐靴用のラストをやや短くしてこの靴を完成させたようだ。この頃からクレバリーのサンプルも一気に増えてきた。写真は故ジョージクレバリーの甥であるアンソニークレバリーのサンプルから引用した。
(11) 2007年9月

2足同時の受け取り後も1年毎のルーティンは変わらず。飽きることなくオーダーし続けたものだと思う。ここでつま先は初の切り返し有り、色はオールデンでお馴染みのバーガンディを選んだ。パンツはブレザーと一緒にオーダーしたもの。クリースが綺麗に落ちるのは流石だ。
パンツ:ファーラン&ハーヴィー
バッグ:ピール
(12) プレーンキャップトゥ

今までプレーンなつま先と比べてキャップを被せた分ノーズがやや長くなったようだ。クレバリーの中では一番バランスの良い内羽根靴だと思う。この後翌2008年は空白になっている。恐らくリーマンショックか何かでトランクショウが開催されなかったのではないだろうか。
(13) 2009年3月

2009年に再開された?受注会で初の外羽根靴をプレーンなつま先でオーダー。甥のアンソニークレバリーの顧客だった故バロン・デ・レデの靴をクレバリーが引き取ったことでこうした魅力的なサンプルが一気に増えた。写真はクラシコ系パンツと英国製トートバッグとのコンボ。
トラウザーズ:ザネーラ
バッグ:ポールスチュアート
(14) Hi-Loモデル

ジョンロブでいうHi-Loモデル。その名のとおり甲の高い人から低い人までデザインの自由度が効く設計だそうな。最初に注文した頃よりマットな鰐革の見本が増えたので2006年にオーダーしたストラップローファーと同じチェスナッツを今度は光沢なしで注文した。
(15) 2010年2月

2010年2月、人生初のローファーを注文。再採寸して専用の木型を削るので受け取りは1年後と言われた。アンソニークレバリー作のフルサドルローファーを鰐革で注文。この写真は素足風ソックスではなく裸足で履いている。クロップ丈のデニムとブライドルトートでコンボを結成。
デニム:ポロラルフローレン
バッグ:万双ブライドルトート
(16) 初ローファー

この靴はクレバリー全30足の中で最も完成度が高い。足馴染みもデザインも素材も全てがパーフェクトだ。革靴は同じサイズでも一足毎に履き心地が違う。これが手縫い注文靴なら尚更だ。当時は紐靴ばかり注文していたがもっとローファーを増やせば良かったと今になって思う。
(17) 2010年9月

同じ2010年の秋に来日した際、初ローファーの仮縫いを終えてその出来栄えに感動、その場で次のローファーをオーダーしていた。違いはハーフサドルにしているところ。1年後に受け取ったこの靴も前作のフルサドルに負けず劣らず極上の履き心地だった。
パンツ : ビームス
バッグ : ルイヴィトン
ソックス:パンセレラ
(18) ハーフサドル

マットな革を選んでもクレバリー側で気を利かせてポリッシュするのか仕上がりがピカピカになってしまう。仮縫い時に「完成したら艶を出さないよう」にと念入りにリクエストした。当時既にJMウェストンでも鰐革素材はマットなものになっており、控えめが好まれていた。
(19) 2011年10月

ハーフサドルローファーを受け取って次はタッセルスリッポンにトライ。バロン・デ・レデの靴からヒントを貰った。タッセルも同じ鰐革で作られており手縫い靴らしいきめの細かさを感じる。甲のU字部分はロールモカなのでアッパーは贅沢にも左右それぞれ1枚の鰐革で作られている。
パンツ:バリーブリッケン
バッグ:万双ブライドルトート
(20) タッセルローファー

アンソニークレバリーがバロン・デ・レデのために誂えた靴はどれも素晴らしい。鰐革見本も数が増え、ホテルのトランクショウでも他の顧客の仮縫い靴に鰐革がちらほら見られるようになっていた。一方でアニマルウェルフェアの考え方も台頭しつつあり潮時は近づいていた。
(21) 2012年3月

記念すべき誂え鰐革靴10足目。今までと雰囲気が違うのはつま先が違うため。長らく続いたスクエアトゥからラウンドトゥへ好みが変わった最初期の作品だ。バーガンディのマットアリゲーターローファーはJMウェストンお勧めの履き古しデニムとコンボを組んでいる。
デニム:RRL
バッグ:ポロラルフローレン
(22) ラウンドトウ

ラウンドトゥのローファーとしては初のオーダーだったがスクエアトゥのつま先だけ短くしたのかかなりタイトなフィット感だ。中々馴染まず半ば諦めていたがこの特集で最近履いてびっくり。いつの間にかジャストフィットするようになっていた。足も歳を重ねると縮むらしい。
(23) 2013年8月

2012年3月に注文した10足目で打ち止めにしたはずがなんと翌夏の家族旅行で来たついでにパリのウェストンで再び鰐革のローファーを買ってしまった。素材は天然クロコダイルから養殖のアリゲーターに代わっていたがオーラは相変わらず…デニムとのコンボも定番となってしまった。
デニム : RRL
バッグ : ポロラルフローレン
(24) キングローファー再び

既成靴で常に鰐革靴を揃えているのはJMウェストンくらいだろう。一時同じパリのジョンロブもクロコダイルの靴を扱っていたが今は扱いを止めている。その点JMウェストンは長年販売し続けてきたブランドとしての矜持があろのだろう、今もラインナップに揺るぎはないのが嬉しい。
ところで鰐革というとジェーンバーキンの名を冠したエルメスのバッグを思い出す。何と当の本人から養殖鰐の残酷な殺処分を見て国際基準に即した環境に改善されるまでクロコバーキンの名を外すよう申し入れがあったそうだ。その後和解に至り今は名前の使用中止も撤回されたようだ。
エルメス中でも高級なバーキンクロコを富の象徴とみなして(外的動機)手に入れるタイプもいれば革ベルトや靴など(決して安くはないが)鰐革のもつ純粋な美しさや製品に仕上げる職人のクラフトマンシップに心酔して(内的動機)アートとして日頃身に付けたいと思うタイプもいる。
今回手持ちの鰐革靴を年代毎にまとめて注文記をブログにまとめるうち鰐革への思いが沸々と蘇るのを感じる。次にパリに立ち寄ったらJMウェストンに立ち寄るのだろう。そして鰐革のローファーを買ってしまいそうだ。
By Jun@Room Sgtyle Store
