永世定番スラックス秋冬編 | Room Style Store

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2021/10/17 11:09



最近の若い人達はお洒落が上手だ。数多の情報から自分に似合う服を選んでいるようで頼もしい。自分が若い頃はメンズクラブ(以下メンクラ)が唯一の情報源、「最初に揃えるべきは…」「長く愛用できる〜を…」なんて書かれれていればせっせと揃えたものだ。語り口は「〜すべし」から次第に定番やベーシックという言葉に変わったがバイブルと信徒のような関係だったと思う。

確かに昔のブレザーは今も現役、そのブレザーを買う時も「合わせるスラックスの基本はグレー」という教えに従い一押しのチャコールを買っては制服代わりに毎日履いていた。後年ロンドンのサビルロウでブレザーとスラックスを注文、カッターから「チャコールのスラックスが一番…」と勧められた時、改めてメンクラの正しさを知って我が事のように嬉しかったことを思い出す。

残念ながら当時のスラックスは膝が抜けてしまったりサイズが合わなくなったりして処分したが、ジャケットスタイルに欠かせないスラックスに注目して今回はメンクラ風に「揃えるべきスラックスは…」といった切り口で永世定番スラックス編をまとめてみようと思う。


【#69 ツイード】
(1) ホップサック
定番のスラックスといえばまずはツィード…。寒い季節限定のアイテムだがツィードの際立つ存在感をスラックスでも楽しめる喜びを味わわない手はない。写真はドニゴールツィードのスラックス。打ち込みは厚くヘビーオンスのデニムのような趣さえある。オイルドコートやメルトンのカーコート、インバーアランのようなざっくりした手編みニットと合わせると無類の相性の良さを発揮する。
Tweed trousers : Polo Ralph Lauren Vintage


(2) ボリュームのあるスラックス
外付けブレイシーズボタンや尾錠付の古風なディテールは90年代アメリカ製のポロ。地厚なホップサックツィードながらフロントはフォワードの2プリーツ仕様だったり裏地は裾まで伸びる総裏仕立てだったりとファクトリー泣かせの仕様が特徴。これだけ凝ったスラックスにはソールが厚くて逞しい外羽根が似合う。
Shoes : Foster & Son


(3) ツイードのバラエティ
一口にツィードのスラックスといっても生地も色目も豊富、同じドニゴールツィードでもモード風な黒白のペッパー&ソルトから写真のような茶系まで色々ある。ツィードの入門生地として名高いハリスツィードのヘリンボーンもスラックスで楽しむにはもってこいの素材。写真の下に写るヘリンボーンのスラックスはスーツの組下だが単体としても着まわせる。


【#70 タータン柄】
(4) ブラックウォッチ
ツィードと並んでスコットランドを代表するタータンチェック。中でもブラックウォッチはブレザーから写真のようなスラックス、シャツやセーター、マフラーやキャップ、はてはサスペンダーやバッグからパジャマまで様々なアイテムに使われている。最も使われているタータンチェックの一つだろう。スラックスとしてもぜひ押さえておくべき定番中の定番か…。
Trousers : Polo Ralph Lauren


(5) ハウスタータン
こちらはスチュアートタータンのスラックス。本来は真っ赤なロイヤルスチュアートタータンが思い浮かぶかもしれないが、こちらはグレーを基調とした控えめな柄。それでもブラックウォッチより柄の大きさや配色など目を引く。ジャケットスタイルならネイビーやブラックだろうか。個人的には無地のセーターを羽織り上にネイビーのPコートを羽織ることが多い。
Trousers : Red Fleece

(6) スコッチスタイル
スコットランドを代表するブラックウォッチタータンに合わせて靴もスコティッシュなギリーシューズはどうだろう。(4)の写真ではよく見えないがアーガイルのソックスを合わせている。考えてみればタータンもアーガイルもギリーも全てスコットランドと縁のあるアイテム。合わないはずもなかろう。エジンバラのミリタリータトゥーを参観した時のバグパイプの音色をふと思い出した。
Shoes : Marlow by Crockett Jones


(7) シンプルな靴
一方遠くからでも目立つスチュアートタータンのスラックスは穴飾り満載の外羽根ウィングチップだとビジー過ぎる。逆に大人し目の内羽根パンチドキャップトゥを合わせてみた。スラックス+ソックス+靴の組み合わせはそれぞれのデザイン(柄)や色に加えて全体のバランスなど意識しながら組み合わせるのが意外と難しくも楽しかったりする。
Shoes : Foster & Son



【#71 グレンチェック】
(8) グレーの定番色
いよいよ定番中の定番スラックス登場。グレー無地の次に揃えるべきアイテムとして毎シーズンラインナップされているグレンチェック。既にスーツの組下で持っている場合は事足りているかもしれない。定番アイテムだけあって似合う靴も内羽根から外羽根まで、ローファーやタッセルはてはブーツまでよりどりみどり。合わせるソックスも無難なグレーから差し色までOKと着こなしの幅が一気に広がる。


(9) グレインレザーの靴
黒のシボ革靴はNY出身のデザイナー"トムブラウン"が自身のコレクションやブルックスブラザーズの上級ブランド、ブラックフリースでコレクションに採用してから一気にポピュラーになった。写真の黒靴はジョージクレバリーの誂えだが2000年の4月に注文している。トムブラウンのデビューが2001年だからほぼ同じ時期に黒のシボ革靴に注目していたことになる。
Shoes : George Cleverley


【#72 千鳥格子】
(10) ブラウンの千鳥格子
グレンチェックに続く定番柄のスラックスといえばハウンドトゥース。日本では千鳥格子と呼ばれる伝統的な柄で高校の制服として採用されるなどなじみが深い。ここでもグレーのハウンドトゥースが基本だがあれもこれもグレーじゃつまらない。そこでラルフ推奨のブラウン系千鳥格子を定番にするとソックスはグレーから解放され靴も茶系の靴が合わせやすくなって良いことづくめ。
Trousers : Ralph Lauren


(11) コードバンギリー
キャメルとダークブラウンの千鳥格子に合わせたキャラメル色のギリー。ホーウィン社の純正シェルコードバンでオーダーしたもの。丁度オールデンのレアカラーコードバン靴が流行り始めた頃、どうせならとフィレンツェのボノーラでビスポーク。その後ローマのマリーニでもオーダーしている。ひょっとしてイタリア人はカバッロ(馬革)が好きなのかもしれない。
Trousers : Polo Ralph Lauren
Shoes : BNORA(by Saint Crispin's)


(12) ワイン色の千鳥格子
同じハウンドトゥースでもワイン色だと印象が変わる。せっかくなので無難な無地ソックスから難易度の高いアーガイル柄にチェンジしてみた。いざ合う柄をと探せども中々見つからずストックの中からパンセレラのソックスを発見。値は張るが素材といい色といいさすがは英国の老舗だけのことはある。コーギーと並んで英国を代表するパンセレラのソックスは買いだと思った。
Trousers : Paul Stuart
Shoes : Edward Green

(13) バラエティ
千鳥格子もグレンチェック同様黒と白(遠目にはグレー)が定番と言われているもののやはりスーツの組下で持っている場合も多い。そこで写真のようなワイン系(一番下)やブラウン系(真ん中)に加えて2色以上の格子が交互に繰り返されるガンクラブチェック(一番上)も千鳥格子の仲間として定番に加えてはどうだろうか。地味なガンクラブチェックは白黒の千鳥格子より却って目立たないかもしれない。


【#73 格子柄】
(14) ラージチェック
日本の紅葉を思わせる格子柄のスラックスはイタリアのロータ。英米ブランドからは中々出ない色味だろう。そんなイタリアンのスラックスにも英国製のアーガイルソックスはピタリと収まる。実はこのソックスは英国製ながらブルックスブラザーズの購入品。なんでもアーガイルの発祥はスコットランドながらソックスに用いて広めたのはブルックスブラザーズが元祖だそうだ。
Shoes : Silvano Lattanzi

(15) スモールチェック
柄の小さいものはチェック、大きいものはプラッドと呼ぶそうでグレンチェックも大柄はグレンプラッドと言うとか…。写真のスモールチェックスラックスは今やトータルブランドのブルネロクチネリ初期の1本。クチネリがニットの次に手掛けたのがスラックスだったのが興味深い。当時はティメオというブランド名だったがそれを知る人は少ないはず。色目も柄も縫製もクチネリらしく高品質だ。
Shoes : Poulsen & Skone


(16)  イタリアのスラックス
秋冬物のスラックスはイタリアンブランドが本命、写真下のロータはパンツ専業メーカーだけあって持ち出しや裏地の処理などサルトリア仕込みのクラシックなスタイルが売りだ。一方上のブルネロクチネリはジッパーに付けられているレザーチップがエルメスを彷彿とさせるなど高級感がある。他にもインコテックスなど定番スラックスにイタリアンブランドは欠かせない。

【#74 無地のスラックス】
(17) ウーステッド
いよいよ真打、無地のスラックスは茶系のミルドウーステッドから。フラノと同じ紡毛素材だがコシが強いのが特徴。写真のインコテックスはクリースが綺麗に落ちるのが特徴。まだイタリアに工場があった頃から贔屓にしているブランドだがポルトガル製になってからもクオリティは変わらず新しくスラックスが欲しいな…と思ったら大抵チェックしている。
Trousers : Incotex


(18) イタリアの名靴
インコテックスはオールデンからグリーン、ウェストンまでどんな靴とも合う。もしイタリアの既成靴なら?と聞かれたらシルバノラッタンジだろうか。写真はビスポーク同様ハンドソーンで仕上げたイタリアンクラシックな外羽根。アヒルの嘴のような幅広なスクエアトゥが特徴だ。履き心地は硬くソールは頑丈、英国靴のように簡単に沈み込まないが丈夫で長持ちするあたりメンクラの教えのとおりだ。

(19) 定番グレー無地
最後に来たのが定番グレー無地のスラックス。本当ならチャコールからミディアム、ライトまで1本ずつ定番品に加えたい。写真はミディアムグレー、生地はカノニコのウールギャバジンでハリとコシが強い分クリースが付きにくい。縫製は何とジーンズメーカーのヤコブコーエン、スラックスといいつつもデザインはジーンズ風5ポケットという変わり種だ。

(20) 飾りの多い靴
必須アイテムのグレースラックスに穴飾り満載のフルブローグはどうだろう。シンプルなストレートチップも良いが個人的には穴飾り推奨派だ。テーラードジーンズとして有名なヤコブコーエンはデニム愛好者からはソフト過ぎると言われがちだがイタリアの柔らかなジャケットにはヘビーなジーンズよりソフトなデニムが合う。ソフトにはソフトでという事だろうか。
Shoes : George Cleverley


さて今回新たに永世定番にラインナップされたスラックスは①無地②格子柄③千鳥格子④グレンチェック⑤タータンチェック⑥ツィードの6種類。これだけあればブレザーやジャケットからニットやアウターまで着こなしの殆どをカバーできそうだ。これが春夏物になればトロピカルやフレスコといった素材違い、柄物でいえばマドラスやストライプだろうか。

一方スラックスからカジュアルパンツに範囲を広げるとデニムやチノクロス、コットンダックやコーデュロイにモールスキンといった素材違いに加えスリムからストレート、ブーツカットなどデザインの違いもある。カジュアル中心の生活となった今、スラックスより定番品に加えたいカジュアルパンツの方がたくさんありそうだ。

とはいえ永世定番にリストアップされたアイテムも既に76/100と残り¼を切った。スーツやシャツ、ニットやネクタイなど小物を考えれば厳選すべきだろう。幸い昔メンクラが「男が揃えるべきアイテム…」といった特集を組んでいたことを思い出した。久々に昔のメンクラを読もうか…そんな気になっている。


By Jun@Room Style Store