New Arrival(新着品)から… | Room Style Store

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2021/11/08 08:12


緊急事態宣言解除後の人々の消費行動に関するアンケート結果を見ていたら買いたいものとして「家や車」といった大物を上げる人が特に多かったという。コロナ感染予防意識が高まったこともあり、健康で快適な生活にかかわる「健康器具や家具・寝具」が次に続き、「旅行チケットやキャンプ・アウトドア用品」に使いたいという声が上がったそうだ。

アンケートの回答に衣類品が出てこないので調べたらデパートの売り上げは改善したものの伸びは一ケタ台。消費回復には程遠いらしい。コロナ過にあっても善戦していたユニクロは3か月連続のマイナスと苦戦している。巣ごもりを終えて「着心地が良くて気分が上がり、これを着て出かけたい」と思う服を探したが売り場になかったという客の感想も気にかかる。

パンデミックを経てより質の高い服を探し始めているとの声もある。そこで今回は新着アイテムを中心に良質な服について考えてみたい。

【RRLのジャケット①】
(1) ブラックウォッチの上着
昔からRRLは琴線に触れるアイテムが見つかるブランド…到着したばかりのジャケットを早速試し着してみた。RRLの丸襟シャツに黒のビンテージタイを合わせて上着を羽織る…胸ポケットは仕付け糸が残っているのでチーフは断念。素材や柄合わせ、縫製やディテールへの拘りなど凝った一着だと直ぐに分かる。今自分にとって「買いたい」服が見つかるブランドといったらRRLくらいだろうか。


(2) ハリスツイード
素材はハリスツィード、素朴な生地感がRRLらしい。きっと新品より着込んで皺が刻まれた方がもっと格好良いに違いない。ミリタリータータンに分類され、アメリカやカナダの軍隊も自前のタータンを持っているがシンプルな配色のブラックウォッチはいつの時代も一番人気だとか。名前の由来も軍隊用らしく「黒っぽい(Black)タータンを纏ったWatch(見張り番)の意味」だそうだ。


(3) 英米伊合作
アメリカのブランドがスコットランドの生地でイタリアのファクトリーに作らせたグローバルなジャケット。ゴージは同じイタリアのタリアトーレやチルコロよりもグッと低く肩線に対してハの字を切るデザイン。ファクトリーに細かく指示を出したに違いない。ビンテージ感溢れるイタリー製のジャケットなんてRRL以外じゃまず見当たらない。


(4) 袖先
袖先は開き見せだが切羽があるのでテイラーで直せば本開きにすることも可能だ。その場合は①肩から詰めて飾りのボタンホールにメスを入れる、ただし袖と身頃の柄合わせが必要。または②袖先から詰めつつ余り布で切羽を足してボタンホールを新設する、ただし既存のボタンホールの糸を外すため跡が残る可能性がある。このどちらかを選択することになる。


(5) ライニング
ライニングは身頃がコットンとビスコース(レーヨン)の混紡で袖裏はキュプラ。イタリアのテイラードはレーヨンの身頃にキュプラの袖が多いが敢えてコットンを裏地に混ぜたのは昔のアルパカライニングのイメージを出したかったのか或いはハリのあるツィード生地に合わせたのか。着る際は襟後ろが抜けないよう第一ボタンを閉じて前に引く動作が必要だ。


(6) ウェルトシームの幅
ラペル端のウェルトシームは7㎜がアイビースタイルの基本…らしいがRRLでは5㎜を採用。たった2㎜の違いだけどラペルがシャープに見える。因みにブルックスブラザーズのアメリカ製(サウスウィック)ブレザーは7㎜、同じラルフでも80年代のジャケットは7㎜だったが、NYのロウィングブレザーアメリカ製ジャケットは5㎜…時代に合わせてミリ単位で変えるところなど並々ならぬこだわりを感じる。


【RRLのジャケット②】
(7) ホームスパンの上着
こちらは黒白のソルト&ペッパーに茶系のネップが入り、グレージュのような優しい色合いのホームスパンツィード。試着して直ぐに分かる肩のライン。肩パッドは少なめで袖山がなく肩線がストンと袖に向かって落ちるナチュラルショルダーはアメトラのアイコン。NYトラッドと呼ばれた80年代のラルフローレンが拘ってたポイントだ。

(8)  新旧比較
左が新入荷のRRLで右が80年代のラルフローレン。ゴージの下がり具合(ハの字)はほぼ同じだが位置はRRLでは肩線に近付けている。40年以上の開きがあるのに両者ともナチュラルショルダーなのが泣かせる。RRLの魅力は単なる古着のリメイクではなく往時の雰囲気を残しつつ今の時代にフィットする形に仕上げるところ…ラルフローレン氏本人が着たいビンテージ服を再現したという強い趣味性がヒシヒシと感じられる。

(9) ネップの入り具合
比較的軽めのホームスパンは柔らかな手触りとしなやかな生地感が特徴…ハリスツイードのシャリ感や硬さとは真逆だ。確か自分の父親もそうだったが日本では市中のテーラーに初めてツイードスーツをお願いするとホームスパンを薦められることが多い。仕立てやすい生地なのだろう。

(12) ラペル周辺
ラペルのステッチはウェルトシームではなくミシンステッチをコバに寄せた作り。すっきりとシャープなラペルに仕上がっている。裏地は背抜き(ハーフライニング)仕様で着心地は軽い。背中心はパイピング処理が施され丁寧な仕事ぶりが伺える。背抜きは手抜きにあらず、総裏(フルライニング)より手間がかかっている証拠だ。


(13) 片玉縁のポケット
身頃のポケットは珍しい片玉縁。昔のオーバーコートやジャケットなどに見られた仕様のようだ。フラップ上に玉縁がないので見た目がすっきりする。有名どころではチャーチルのオーバーコート姿やチャーチル繋がりということでグローバーオールによる復刻リーファージャケット(Pコート)のチャーチルモデルが片玉縁仕上げになっている。


【RRLのビンテージ5ポケッツ】
(14) RRLのワイドレッグデニム
お次はユーズド加工が効いてるジーンズ…。3月のウォールストリートジャーナルに「パンデミック(による巣ごもりに伴う体重増加)の影響でより快適なワイドレッグジーンズが戻ってきている」という記事が載っていた。また雑誌ELLEのウェブ版4月号ではThe Skinny Jean is deadと刺激的な見出しが載ったりマリークレールでは7月にワイドレッグジーンズの特集を組んだりと男女問わずワイドなジーンズの人気が戻ってきているようだ。


(15) スニーカーと合わせる
早速到着したばかりのワイドレッグジーンズを試着。股上は深めでワタリは広くそのまま裾までストレートなスタイルはかつてのバギーパンツを連想させる。驚くのはそのフィット感、あまりのストレスフリーさに今までのジーンズが如何に窮屈だったか思い知らされた。これは暫く嵌りそうな気がする。こんなに楽なジーンズに合う靴といえばスニーカー…綺麗めカラーのアディダスと合わせてみた。


(16) 外羽根靴との相性
このところリジットデニムを買っては履いて伸ばして育ててみようと修行中だった。ところがエイジング加工で一気に着古した感じのデニムは正にゲームチェンジャー…履いたままソファに寝転がってリラックスできるし、無骨な外羽根の革靴を履いても様になる存在感にやられっぱなしだ。暫くワタリの太いジーンズに嵌りそうな気がする。
Shoes : Crockett & Jones
Socks : Pantherella


(17) 内羽根と合わせる
ものはついでにと今度は内羽根のフルブローグと合わせてみた。カーフじゃお洒落過ぎるがスェードだと違和感なし。上に肘当てのついたツィードジャケットでも羽織れば立派なカントリースタイルになる。RRLではビンテージ5ポケッツと命名してシーズンごとに出している。今まで限定リジットばかりに目が向いていたがワイドレッグものも要チェックか…。
Shoes : Church's Fairfield

(18) セルビッジ
このところメキシコ製や中国製が増えたRRLだがこちらはアメリカ製。生地は日本の岡山産セルビッジデニムを使い東(USA)と西(JAPAN)の合作ということでEAST-WESTという名でシリーズ化している。ホワイトオークの閉鎖でアメリカ製のセルビッジデニムがない今、日本のデニムはテラソンやRRLなどアメリカ製のジーンズには欠かせない素材となっているようだ。

(19) 名作フェアフィールド
(17)の写真で紹介したチャーチズのフェアフィールド。1990年に購入以来31年目を迎えた古参靴だ。本来はラスト81でクレープソールが標準のフェアフィールドだが、経年変化でクレープソールがベタつきごみが付着して黒ずんでいた。秋の訪れに合わせて馴染みの靴修理屋で相談、オールソールで生まれ変わって戻ってきたところだ。

(20) セレクトショップ別注
このフェアフィールド、購入先はビームスF…まだ明治通りから細い路地を奥に入りビルの1階に店を構えていた頃のもの。ご覧のとおりチャーチズに別注をかけて名ラストの73番で作らせるなど流石のセレクションだった。因みに73番ラストはセミスクエア、名靴チェットウィンドやディプロマットに採用されていたラストでプラダ傘下後は後継の173番になっている。

(21) ソール交換
オールソールの際、同じクレープソールという選択肢もあったが敢えてダイナイトかリッジウェイで再検討…ダイナイトのサイズ展開が飛び飛びで突起が上手くソールに乗らないとの連絡が入り、結局リッジウェイに落ち着いた。完成後の姿が上の写真、履き心地は硬くなったがコバ周りがすっきりして見栄えがぐっと良くなった。


【ポロのクラブマフラー】
(22) 紫と緑と黄
新着品の最後は派手なマフラー…紫と補色にある黄色は互いにきつい間柄…そこに黄色と相性の良い緑を加えて3色にすると一気に調和がとれる。左上のレップタイを見れば分かるがプレッピーなトリコロールの定番だ。さらにマフラーは素材が凝っている。天然素材と思いきやポリカーボネートを50%加えた新素材だ。サスティナブルな製品づくりの一環とも考えられる。

(23) ブレザーと合わせる
首へのあたりは良好、アクリルマフラーのようにチクチクしない。調べてみたらポリカーボネート素材は触感、撥水性、撥油性に優れ、良好な染色性が得られるとのこと。マフラーの発色の良さも頷ける。リサイクルポリカーボネートの原料は廃プラスチック…持続可能な社会に向けた姿勢を示す意味でもこうした新素材を使うことがこれからもっと増えるのだろう。


日曜日の銀座は歩行者天国が戻り馴染みのレストランは予約なしの客が列を作って待つ盛況ぶり。自粛が解けて飲食店は盛況だが立ち寄ったブティックやデパートは日曜日の割には人が少なかった。ウィズコロナに舵を切った国々では「リベンジ消費」が話題だが日本では物価の上昇や国際物流の混乱、原油価格の高騰など先行き不安からかリハビリ消費にとどまるという声もある。消費者がより賢い買い物をしているからでは…と説く経済評論家もいた。

そんな中期間限定でオープンしているラルフローレン銀座にも立ち寄ってみた。1階のカフェは人気で空席待ちの人がいる一方で2階のブティックは客も少なくゆったりと買い物ができる。まるで昔の銀座店のイメージだ。商品は厳正され趣味の良いものが多く、ネイビーのポロコートなど食指が動くものも多い。店員と話していたら週明けに一旦クローズして模様替えを行いRRLの商品を一部展開するとのこと。スタッフの間でもRRLの質の高さは注目の的のようだ。

帰り際に銀座のロイドフットウェアに顔を出したら客でにぎわっていた。数軒先のトレーディングポストも入店制限をするほど…靴屋が賑わうのも久しぶりではないだろうか。残念なことに靴を買うには至らなかったが一足3520円の良質なウールソックスを買って気分よく銀座を後にした。

By Jun@RoomStyleStore