ワイドパンツ | Room Style Store

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2021/11/21 20:41


2022年メンズ春夏コレクションの傾向を見ていたらワイドパンツは既に定着済みらしい。前々回のブログでワイドレッグデニムに「ハマりそう」と書いたばかりなのに「えっ今頃?」…と言われそうだ。考えてみればこの10年パンツのシルエットはテーパードからスリムさらにスキニーへと細さを極め限界に達していた。となると今度は逆に振れるのも当然か…。


ワイドパンツの定着で2プリーツのフロントやセンタークリースといったディテールも復刻中。90年代ファッションの再来か?と思っていたらズバリ2022年春夏コレクションは90年代が主役だとか。当時をリアルに過ごした身としてはその時の衣類が結構残っている。新たに服を買うよりサスティナブルな世の中に相応しく昔の服でコーデを組むのも悪くない。

そこで今回は90年代の古着を中心にワイドパンツについて書いてみようと思う。


【90年代のワークパンツ】
(1) ペインターパンツ
ジーンズにツールポケットやループが付いたペインターパンツは塗装職人の仕事着。ゆったりしたシルエットやハードワークに耐えられる縫製と素材が特徴だ。ワイドパンツが人気の今、リーやカーハートなど昔から馴染みのあるワーク系パンツが注目されるのも納得。カジュアルショップで見かけることも多い。そういえば馴染みのジーンズショップにも置いてあったと思う。
Boots : Red Wing 875


(2) RRL第1期(1996年もの)
トップバッターは1996年製RRLのペインターパンツ。第1期ものでアメリカ製の貴重な1本だ。お約束のツールポケットはあるがループを省いたのはデザインを重視するRRLらしい。入念なウォッシュ加工はリアルビンテージと見間違えるほど。それにしても90年代のボトムスはかなりワイドだ…。

【コットンダック素材】
(3) ペインターパンツ再び
次もペインターパンツ。デニムよりもヘビーなコットンダックに履き心地もさぞハードかと思いきやRRLらしい絶妙なエイジング加工で裾のアタリやサイドシームのパッカリング、肌触りの良い生地感が味わえる。このところジーンズばかりだったのでこうしたワーク系のパンツが新鮮だ。
Boots : Red Wing 8166

(4) RRL(1997年もの)
「ビッグシルエット流行から5年…そろそろぴったりフィットへ」と仕掛けてもコロナ過で一度ワイドな服の快適さを知った消費者は中々ボディコンに戻らないとか…。肝心のペインターパンツだが前開き下の鋲がやけに目立つ。クロッチリベットと呼ばれミシンによる閂止めが難しかった時代の名残りだが、第1期RRLならではの仕様、第2期では見られないディテールだ。


(5) 5ポケット
お次はコットンダックの5ポケット。生地は隣のトートと同じ平織だが、打ち込みが厚くバッグやテントに使われるものをキャンバス、パンツやアウターなど薄手の生地をダックと分けているようだ。比較的軽めのダック生地らしく馴染むのも早い。洗うと毛羽立つ生地表はデニムとは違うエイジングが味わえる。正面からでは分かりにくいがこの5ポケットはかなり極太だ…。
Shoes : Red Wing 8103

(6) ポロダンガリー
今も見かけるポロダンガリーの革パッチ。だがこちらは1990年代初期のメイドインUSAもの。当時はラルフもブルックスもアメリカ製品を多く扱っていた。ポールスチュアートでギットマン製のシャツを見つけては喜んで買ったこともある。渋谷から原宿を歩いてはフィールドラインやラブラドル、後にポートオブローレンスに立ち寄り一点ものを手に入れたことが懐かしい。

【チノパン】
(7) ビッグチノ
90年代にラルフローレンが仕掛けたビッグコレクションがリバイバルしていたのを最近知った。当時はビッグオックス(BD)やビッグポロ、ビッグチノなどオーバーサイズのアイテムが次々にリリースされ一気にブームを作ったと思う。写真はそんな時代の超ワイドなチノパン。センタークリースが流行りとのことで急遽アイロンワークにチャレンジ。
Shoes : Brooks Brothers(by Alden) 


(8) ポロチノ(1996年もの)
右ヒップポケット上のタグがポロチノ(ビッグチノ)のアイコン。ブルックスやポールスチュアートのチノパンが入荷したてのパリッとした雰囲気だったのとは反対にポロのチノパンはRRL同様最初から着古したようなウォッシュ加工がなされていた。オイスターやカーキ、ネイビーと色違いで何本も買ったはずだが最後まで残ったのがこの1本になる。

(9) インタック
ゆったりとヒダがとられた2インタック(和製英語:フォワードプリーテッドが正式)のパンツ。ワイドなシルエットをウェストで一気に絞るのに欠かせないディテールだ…。ラルフをはじめNYトラッド派は英国流のインタックだったがゼニアなどイタリーものは必ずアウトタック。当時も今もアウトタックにはなぜか馴染めない。

(10) ビームスプラスの復刻
ビームス+ではRRLや復刻版ラルフローレンのビッグチノなど「おおっ…」と思うようなアイテムを別注している。写真を拝借して昔のビッグチノと復刻版を比べてみたがシルエットは殆ど同じ、流石はこだわりのビームスだ。違いといえば両脇のポケットがスラントかバーティカルか、写真では隠れてしまっているがフラップ付ウォッチポケットの有無くらいだろうか。


(11) オックスフォードバグス
30年代の英国発オックスフォードバグス(バギーパンツに近い)を彷彿とさせる超ワイドなポロチノ。本物のバグスは裾幅30㎝というから靴が隠れる程だがこちらは25㎝、それでも上に何を合わせるか迷うほどたっぷりとしたシルエットだ。プリーツ付きはクリースがお約束、きちんとプレスして「一本筋が通った」パンツを履くと写真写りも良い。
Shoes : Ralph Lauren(Marlow)

(12) ディテール
お約束の2インタック。ベルトループがなくサイドにエクステンション(アジャスター)が付くドレスタイプのパンツだ。エクストラボタン(サスペンダー用)が6つ入っていてサスペンダーで吊って履くことができる(多分その方が正解だろう)。生地は毛羽立ちが特徴のピーチスキンが珍しく縫製は当時のデフォルト、アメリカ製。

(13) パッチワークチノ
打って変わってこちらは最近のリラックスフィットチノ。入念なパッチワークが施されワイドなシルエットとはいえ裾幅は21㎝と節度をわきまえている。このチノパン、実は現地価格で245㌦という破格値で、最初「買う人いるのか…」と思ったがいざ手に入れて履いてみると存在感がある。ラルフローレンの推奨コーデよろしくツィードジャケットの下に合わせたい。


(14) 50周年記念
昨年コロナ過で15%の人員削減を発表したラルフローレンも3年前の2018年には50周年を祝い、驚きの商品を次々と発表していた。このパッチワークチノも手縫いパッチや入念なウォッシュ加工でクオリティは高い。最近本国のオンラインサイトへのアクセスが遮断されたが、アメリカのオンラインショップ見ると着こなし例が載っていて大いに参考になっただけに残念だ。

【ワイドレッグデニム】
(15) クラシック5ポケット
いよいよワイドレッグなジーンズへ…最初に紹介するのが第1期のRRLジーンズ。当時原宿クエストにラルフローレン原宿店があった頃、地下にあったRRLコーナーで買ったものだ。セルビッジありとなしの2種類あってセールを待って赤耳タイプを買ったことを覚えている。ワタリは太くて寸胴なシルエットは今に近いが、大きな違いは今よりも股上が深いところ。


(16) 第1期RRL(1996年もの)
コインポケットの裏も耳付きと凝った作りのRRLビンテージ。裾がシングルステッチなのは意外だが直し専門店でチェーンステッチに替えようと思っている。トップボタン下から延びるVステッチはリーバイスの501XXやビッグEのディテール、当時は耳付きだけで満足していたがRRLのデザインチームはビンテージデニムに詳しかったに違いない。


(17) ビンテージ5ポケット
こちらは2018年と最近のジーンズ。裾幅は23㎝と90年代のワークパンツよりも一段と太い。当時レディスでワイドレッグパンツが流行り始めた頃だがRRLでは幅広ジーンズを既にラインナップしていた。もっともRRLはどのアイテムも生産数が少なくこのデニムも価格が68,000円と最上級。リミテッドエディションのリジットジーンズより値の張る上等な1本だった。

(18) ビンテージ5ポケット
11.5ozの軽いデニム+エイジング加工でソフトに仕上げたワイドレッグデニム。RRLではビンテージ5ポケットと呼んでダメージ加工やヒゲ、縦落ちなど綺麗に再現している。細部まで手抜きのない作りやオリジナリティにも感心するが、RRLでは以前から日本製のデニムに対するリスペクトが感じられるのも嬉しい。


(19) 新入荷のジーンズ
前々回のブログ「最近買ったもの」で紹介したワイドレッグのデニム。昨年秋冬ものだろうか…あまりの快適さにビッグシルエットのパンツばかり履くきっかけとなった1本だ。せっかくなのでRRLのブーツを履いて再登場と相成った。チーニー特製のバワリーブーツ(生産終了)の後ろに見えるのは同じくRRLのネイティブブランケット製バッグ。同じブランドでまとめると雰囲気も一段とアップする。
Boots : Bowery Boots

(20) RRL(2020年もの)
RRLのEAST-WESTデニムについて書かれたペーパー(ポケット上)を見るとどうやらテネシー(東)州で取れた丈夫で強い綿(が特徴らしい)を日本の岡山(西)に送り、セルビッジデニムに織りあげた後アメリカで縫製したジーンズということになるようだ。何やら企画から製品化までかなりの手間がかかっているようにも思える…。


(21) シルエットの比較
同じビンテージ5ポケット(サイズは1インチ違うがレングスは一緒)で比べてみるとワタリは2020年の方が広く裾幅はほぼ一緒。縦落ちの雰囲気もよく似ているし前開き部分のヒゲはどちらも同じ場所に出るよう加工されている。生地は2018年製が11.5ozで2020年が12.5oz。恐らくS/S(春夏もの)とF/W(秋冬もの)の違いだろう。

久々のワイドパンツは「何を上に羽織るか」が思案どころ。まずは①ジャストフィットなパーカやスエットが基本②インディゴブルーのワイドデニムならネイビーのアランセーターなど同系色でまとめるのも悪くないライダースジャケットや④英国調ジャケットにオックスフォードバグスも面白い。

元々リラックス感のあるワイドパンツ、決め手の靴はブーツも良いが楽なスニーカーが気分。ということで最近は革靴よりもスニーカーに興味津々。そういえば今回のコロナ過で衣類の売り上げが振るわない中、売り上げが30%も伸びたのが高価格帯のスニーカーだったとか。どうやら考えることは皆同じようだ…。

Jun@Room Style Store