名店再訪 | Room Style Store

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2021/11/27 09:55


円を描く31足の靴…共通しているのはどれもローファーということ。英語でLoaferと綴るが意味は「怠け者」。つまり「紐を結ぶのが面倒な怠け者が履く靴」という訳だ。似たような言葉で「足をスリップ+オンさせるだけの楽な靴」という意味のスリッポンもある。ローファーもスリッポンも同じ靴を指すが、靴好きはデザインを見て微妙に使い分けている。

はは〜ん今回のテーマはローファーか…と思いきや豈図らんや、主役は真ん中のソックスだ。足を覆う面積の少ないローファーは「ソックスの見え方」が気になるもの。秋冬用に暖かくて足元や装いを格上げするものを…とたどり着いたのがダイヤ柄の「アーガイルソックス」だった。以前も書いたがアメトラの雄ブルックスが世に広めたというのも琴線に響く。

そこで今回は素敵なアーガイルソックスが買える名店を中心にローファー+ソックス+パンツの足元コーデについて考えてみたい。


(1) 老舗で靴下を買う
菱形と格子が重なり合うアーガイルソックスは靴下売り場でも少数派。中々「これは」と思うものが見つからない。ところが先日、久しぶりに訪れた銀座のロイドフットウェアに探し求めていたアーガイルソックスを見つけてしまった。ロイドは英国靴の良さを日本に広めた老舗、昔から優良品を自社ネームで適価販売する名店だ。写真の英国製アーガイルソックスもショートとロング合わせて結局半ダースも買ってしまうほど品質の良さは折り紙付きだった…。


【グリーン系】
 (2) ミッドブラウンの靴と
ロイドのアーガイルソックスはメリノウール70%とナイロン30%の混紡。メリノ種は肌触りのよさと通気性、高い保温力があるため秋冬物のソックスには最適。更にナイロンを30%加えることで耐久性を高めている。ロイドの店員さんによると寒い季節でも足元が暖かくお薦めとのことだった。最初に選んだのがこちらのグリーン系。スコットランドの景色を思わせる深緑に惹かれてチョイスした。



(3) ドレスなら
のっけからチェックオンチェックの組み合わせだがよく見るとパンツとソックスはどちらもブラウンとグリーン、ベージュが共通色。平場において並べるよりも実際に履くともっと馴染んで見えるはず。靴はジョンロブパリの名靴Ashley。アンラインドでダイナイト(純正オクタゴン)ソールの柔らかな履き心地はコロナ後のリラクシングウェア志向にも合いそうだ。

(4) カジュアルなら
こちらは同じグリーン系のアーガイルソックスをカジュアルなチノパンと合わせたところ。プレーンなパンツと無地や小紋のソックスに慣れたらボーダーも良いがアーガイルはどうだろうか。深緑の地にベージュのダイヤ柄がチラリ見えるのが良い。オールグリーンの無地ソックスより断然お洒落に見えると思う。靴はラルフのコードバンローファー。こちらからは見えないがリボン部分にも緑があしらわれている。


【ブラウン系】
(5) カーフとスエードのローファー
続いて選んだのはブラウン系のアーガイル。ロイドでは何種類も用意しているので迷ってしまう。まずは自分の気に入った色から選んでいくのが王道か…。オレンジのダイヤ柄が「差し色」のこのソックス、チラリと見えるようヴァンプ短めのローファーに丈の短いパンツを合わせたい。靴は似た色同士の焦茶カーフローファーと逆に明るめの金茶スェードローファーを用意してみた。

(6) ドレスなら
パーフェクトな相性のサンドベージュウールパンツとブラウンアーガイルソックス。ロイドフットウェアでは製造元を一切出さないがソックスは英国の老舗パンセレラだろう。1足の値段が英国で£16.5(約2530円)だがロイドでもほぼ変わらぬ値段で販売している。昔から内外価格差の少なかったロイドフットウェアの面目躍如といったところか。靴はカーフ版ラルフbyクロケット。

(7) カジュアルなら
もともと男性のカジュアル靴といったら茶色が中心、そこに大抵一本は持っているであろうオイスターのチノパンを持ってきて焦げ茶のアーガイルソックスを合わせる。ここでもオレンジのダイヤ柄が良い味出してくれるはず。靴はJ.Mウェストンのルモック。こんな靴とソックスにパンツの組み合わせで晩秋の公園を散歩…落ち葉の散るベンチに腰掛けて焼き栗でも食べれば気分はパリか…。

【チャコール系】
(8) ブラックローファーで
アーガイルの中でも意外に多いのがグレー系。ロイドでもチャコール、ミッド(ミディアム)、ライトとグレー系だけで3パターンも展開している。まずは最も暗いチャコール系からチョイス。靴は当然黒のローファー(やスリッポン)になる。スーツに合わせることはないがブレザースタイルならアーガイルソックスは大いにありだろう。

(9) ドレスなら
定番グレンチェックにリザードのスリッポン。間を取り持つアーガイルソックスが良い仕事している。ボルドーとパープルのダイヤ柄を差し色にネクタイやチーフを合わせれば目立たぬお洒落の完成だ。靴は90年代のビンテージトリッカーズ。ロンドンはジャーミンStの本店で購入したもの。製造番号は80万番台なのでそろそろビンテージの仲間入りか…。


(10) カジュアルなら
オイスターのチノパンにブラックペニーローファー…如何にもアメトラの着こなしだ。個人的には茶のローファーを合わせたいところだが、こうしてみるとブラックも悪くない。ソックスの色を拾って上は黒のセーターにボルドーのダッフルなんてどうだろう。靴はオールデンのアンラインドペニー。肉厚のコードバンは見るからに革の良さが分かる。


【ライトグレー系】
(11) ライトブラウンのローファー
チャコールベースのアーガイルソックスの次は…と選んだのがライトグレー版。ミッドグレーとボルドーのダイヤ柄が差し色に入るパターンだ。こちらはロングタイプ。英国のパンセレラオンラインでは売っていないのでロイドの別注という事になる。パンセレラのホーズは評価も高い。それをアーガイルでも楽しめるなんて嬉しい選択。値段も3,520円と本国のロングソックスより価格を抑えている。


(12) ドレスなら
ミディアムグレーパンツにライトグレーのソックス。ベーシックな組み合わせだがアーガイルにするだけで足元がグンと引き立つ。見えるのはほんの一部なのに思いの外目立つのがソックスだとよく分かると思う。靴はフォスター&サンの誂えローファー。長めのヴァンプで甲のボルドーダイヤ柄が隠れてしまうのでカフなし丈短めのパンツを持ってきた。


(13) カジュアルなら
ペパーミントグリーンのコーデュロイパンツとライトグレーのアーガイルも相性がいい。しかもボルドーのダイヤ柄が良いアクセントになっている。靴は同じ誂えながらヴァンプは短くタンを長めにとったクレバリーのローファー。足入れがしやすく「スリッポン」と呼びたくなるのがクレバリーのローファー…アメリカの顧客を大勢保つだけのことはある。


【ボルドー系】
(14) ブリックカラー
ここで手持ちのパンセレラオリジナルのソックスを用意。確か80周年記念で販売された柄のものだ。現在はラインナップされていない。国内のショップを見るとパンセレラネームはオーバーザカフ(ショート)が3,850円。英国内では2,530円程度なのでかなりの価格差がある。近いうちに英国のオンラインショップにまとめてオーダーしようかと思案中…。靴はボルドーに近い赤みの強い靴を用意した。

(15) ドレスなら
ボルドーのアーガイルソックスとワイン色のハウンドトゥース、正にドンピシャの組み合わせではないか…。英国製のアーガイルソックスは色の配色が上手い。ほんのり派手だが基本は控えめ、どぎつさのない色の組み合わせはブリティッシュトラッドそのもの。靴はジョンロブパリのAshley。(3)と同じデザインだがこちらはブラッケンミスティカーフと呼ばれる赤みの強い革を使っている。

(16) カジュアルなら
カジュアルならオレンジの差し色ダイヤ柄に合わせてチノパンも同色をチョイス。こうして平場においても履いた時の感じがイメージできるが実際は互いにもっと馴染んで見える。靴は31年目の古参靴、JMウェストンのワニ革ローファーになる。レプタイルは春夏物のはずだがウェストンだけは一年中履けるようにシュークローゼットの前面に置いている。

(17) 実際の見え方
実際に履いてみたのが上の写真。予想以上にオレンジのダイヤ柄とパンツの色が呼応している。この場合ローファーのタン端からオレンジ色が少し見えるのが肝。ソックスの地の色ボルドーも靴とマッチして落ち着いた足元になっている。無地のシャツに無地のネクタイが意外と難しいように無地のパンツに無地のソックスも単調になりがち…アーガイルはそんな時頼りになる小物の筆頭だ。

【ミッドグレー系】
(18) ウイスキーコードバンと
せっかくチャコール、ライトときたのでミッドグレーのアーガイルも購入。グレー系=黒靴では面白くないので明るめの茶色、中でも人気のウィスキーコードバンにトライしてみた。ところで国内もののアーガイルソックスを検索するとコットンだがハリソンが1,540円で中々良い感じ。アーガイルソックスの発祥ブルックスのウールものはトルコ製で2,970円だがロイドより値が張る。

(19) ドレスなら
ブラウン系のドレスパンツにミディアムグレーのアーガイル。パープルとブルーの差し色ダイヤ柄はウイスキーコードバンの引き立て役、お陰で何気に足元が華やぐ。靴はクレバリーのビスポークタッセルスリッポン。オールデンでも見かけたことのないウィスキーコードバンのタッセルスリッポンが欲しくてオーダーしたものだ。

(20) カジュアルなら
夏だけでなく秋冬も重宝するのが白のコットンパンツ。ネイビーやグレーのセーターを羽織ってロイヤルタータンのマフラーでもすれば気分は早くもクリスマス。足元は暖色系の靴とパンツの間に寒色系のアーガイルソックスをインストールしてバランスを取る。イブの日はこんな格好で街に繰り出し賑やかに過ごしたいものだ。靴はボーウィン社のウイスキーシェルコードバンを使ったエドワードグリーンのバタフライローファー。

【モスグリーン系】
(21) 日仏競演
最後に選んだのがモスグリーン(うぐいす色)系のアーガイルソックス。こちらもロングでショートより10㎝ほど長い。如何にも秋らしい配色が英国ならでは…他にこんな色使いするソックスメーカーちょっとない。因みにロングは1足3,520円と2,860円のショートより700円ほど高いがロングにしかない配色もあるので気に入った色目があればロングを買うのもあり。靴は最近よく履く2足を用意した。

(22) ドレスなら
ネップ入りのドネガルツィードパンツ。写真では見えにくいが黄色や緑のネップがアーガイルの配色を上手く拾っている。全体的に落ち着いた組み合わせに見えるのもそのためだろう。この場合差し色はネイビーのダイヤ柄になる。上にネイビーのアランセーターでも着れば色合わせもバッチリ、お洒落度も上がろうというもの。靴は2010年のJMウェストン。15年経ってそろそろヒールの減りが目立って来た。


(23) カジュアルなら
最後はデニムで締めくくり。日本製サンドカラーのセルビッジデニムを使ったRRLによく似た色目のローファー…ソックスも両者をうまく繋いでいる。靴は最新のカジュアル靴、ローマのペルティコーネによるハッチグレインローファーだ。肉厚で頑丈なアッパーをアンラインドで仕上げたもの。履くうちにハーフサドルが良い具合に伸びてフィッティングも良好。

再訪したロイドフットウェアは昔と変わらず靴以外にもキャンバスとブライドルレザーのコンビバッグや仕事に便利な折り畳み傘など逸品揃いだった。特に以前は名門ピアレスに傘を注文していたそうだが今でも英国に発注し続けているとのこと。31年前に買ったロイドネーム(エドワードグリーン製)のドーバーを履いていったお陰で最新のドーバータイプ(クロケット製)を試着させてもらうこともできた。

残念ながら靴の購入には至らなかったが良質なソックスに出会えた喜びはひとしお。店員さんと話ができたのも嬉しい。思い返せばこの30年、青山店から始まり代官山のフットウェアやクロージング、銀座店や自身の海外駐在前など節目には必ず店を訪れて何かしら買っていたと思う。今回は5年ぶりだが久々の買い物を楽しんだ後「また来ます」と挨拶して店を後にした。さて次はいつ来ようか…。

By Jun@Room Style Store