ワークパンツ | Room Style Store

Blog

2021/12/22 13:01


ワークマンのヒットに象徴されるように頑丈で耐久性があり、使い勝手も良くコスパの良いワークウェアが人気のようだ。中でも動きやすいゆったりとした作りに丈夫な素材を用いた機能的なワークパンツは仕事着や作業着としてだけでなくラフなスタイルを好むストリートファッションの定番として愛用されている。

一口にワークパンツといってもデニムやカーゴ、ペインターやチノパンなど種類は色々、素材もウールやコットンの天然素材からポリエステルなど合成繊維を加えて丈夫で皺になりにくいなど付加価値を高めたものまで様々ある。スキニーまで行き着いた細身のパンツとは真逆のワイドレッグはパンツ業界のトレンドのようだ

そこで今回は新旧お気に入りのワークパンツを信州に持ち込んで実際に使いながら気がついたことを書いていこうと思う。

【マッキノーフィールドパンツ】
(1) ウールカーゴ

最初に紹介するのはフィルソンを代表する名作マッキノークルーザージャケットと同じ24ozの肉厚なウール生地を使ったカーゴ。素材は自然な撥水性と耐久性のある地厚なバージンウール。履くとすぐに分かるその保温力は東京ではオーバースペックだろう。何しろ24ozといえばおよそ680g、秋冬用ウールパンツ2本分だ。それを重ね履きしたと思えばその暖かさも想像が付くと思う。

(2) フィルソンTOKYO再訪
フィルソンの魅力は機能性と質の高さ…Might as well have the best「どうせ持つなら最上のものを」という創業者の言葉が実感できる。今回のフィールドパンツも米国内での価格が395㌦=45,000円のところ日本国内価格も43,000円とほぼ同額。内外価格差がないのに驚いた。ワークパンツとしては値が張るが寒さの厳しい信州用にとフィルソン東京を再訪、ずっしりと重いパンツを持ち帰った。

(3) Made in USA
フィルソンも海外生産品が主流だが一方でマッキノーシリーズやニット、ダッフルバッグなどはMade in USAを継続している。1897年、ゴールドラッシュで賑わう極寒の地にアウトドアクロージング店として設立され、信頼を得て今日に至るヒストリーがこのフィールドパンツにも込められている。ライニングなしの作りだが地厚なバージンウールは足肌に優しく快適でロングジョン(股引)を必要としない。


(4) サスペンダーボタン
ドレスパンツでは内側に配されるサスペンダーボタンだがフィルソンはワークパンツらしく外付け。しかもジーンズのタックボタンよろしく金属製というところが心憎い。インもアウトもシームは頑丈なダブルステッチ、一方でカーゴポケットはシルエットを崩さぬよう敢えてマチを付けていない。ワークウェアとしてのスペックとデザインを両立するなどマッキノーシリーズに相応しい逸品だ。

(5) ブーツを替える
バッファローチェックのアウターは同じフィルソンのウールパッカーコート。赤黒チェックに合わせてブーツも黒にチェンジ。短靴ならばレッドウイングのワークオックスフォードやポストマンシューズも合いそうだ。フィルソン東京で試着した際「ダブルで仕上げるお客様もいる」と聞いたがシングルのたたき仕上げがすっきりして見栄えが良い。ワンクッションにしたのは裾から外気が入るのを防ぐため。
Boots : RedWing Black Smith
Shirt : Polo Ralph Lauren

【コットンダックパンツ】
(6) GUNG HO
次はコットンダックのパンツGUNG HO(ガンホー)。Made in USAに拘った「アールズアパレル社」のファクトリーブランドだそうで「Comforot,Style,Durability,Quality, Long Wearing and Easy Care」を満たす製品づくりを進めているとか…。写真は「ベイカーパンツ」と呼ばれるもの。軽めのコットンダックは馴染みやすく頑丈、棘のある薪を運ぶのに使うなど早速フィールドワークに愛用している。

(7) アメリカ製
アールズアパレル社は軍もののサプライヤーとしての出自がある為かこのベイカーパンツも堅牢な作りがミリタリーの香りをほのかに漂わせる。それでもカーゴパンツにしないところがポイント。さりげなくバックポケットのフラップにGUNG HOとMADE IN USA入りのタグを縫い込むあたりは中々の演出だ。生地は軽いので寒い朝などはアンダーパンツ=ロングジョン(股引) を履くと良いかもしれない。


(8) ポケット
ベイカーパンツというからパン職人用かと思いきや軍隊における野戦用のカーゴパンツに対する作業用のパンツが出自とのこと。アメリカではユーティリティ(実用的な)パンツ或いはファティーグ(作業)パンツと呼ばれるそうな。ちらりと見えるバックポケットも含め前後全てのポケットが別布を縫い合わせるパッチ式というのがポイント…生産性や耐久性を考えてのことらしく如何にも軍モノつながりらしい。


(9) コマンドソールのブーツ
この日は前日まで降った雪が溶けて落ち葉は湿った状態。短靴では心もとないのでブーツでの作業と相成った。水たまりや雪の残る庭ではグッドイヤー以上にストームウェルトが安心できる。都会では気にならないことも顕著な違いになって現れるのが田舎暮らし。機能あってのデザインを実感することが何かと多い。
Boots : Alfred Sargent

【ツイードのワークパンツ】
(10) バックルバック
こちらは打って変わって英国調のツィードパンツ。尾錠に外付けボタンの付いた仕様になぜか惹かれてちょくちょく手を出している。ドレスパンツとは違う朴訥としたワークパンツの雰囲気にピッタリの仕様だ。実はブレイシーズのレザーエンド(革の持ち出し)は結構くせもので古くなると寒さで千切れてしまう。保革油などで小まめに手入れすればよいのだろうがそこまで気が回らず…。

(11) ブレイシーズ
写真のブレイシーズは由緒正しき英国製。英国ものといえばアルバートサーストンが有名だがこちらはどこで購入したか分からない無名のもの。それでも本体部分が地厚なワイン色のウールフェルトなど実用本位なところが気に入っている。ドレス用のブレイシーズはシルク素材の柄物やプリントもの、或いはストライプなど派手だがこちらは正にワーク専用…何とも潔い。

(12) オイルドコート
英国調のアウターといえばバブアーに代表されるオイルドコート。防水性と保温性を持たせたワックスコットンは独特のにおいと触感が敬遠されがちだったが徐々に日本でも愛用者が増え、匂いのないオイルが使われるなど改良もあってすっかり市民権を得たようだ。こちらはウール+コットンの裏地を貼ったマルベリーのもの。革のパッチやトリムが付くなどお洒落度が高い。


(13) 英国製のブーツ
ここまで英国調に拘ったら締めの足元も英国ブーツで…。久々のトリッカーズはバイクでも愛用しているので左足にシフトペダルの跡が付いている。ストームウェルト+ダイナイトソールのスペックは正に田舎向け。雨でも雪でもどんどん履いて汚れたらブラシで落とし、布で水拭きしたらあとは乾かすだけ。時おりクリームを塗るだけ20年経っても写真のようにすこぶる健在だ。

【ビンテージパンツ】
(14) ストライプ
こちらはワークパンツながらドレス寄り。少々野暮ったいストライプがビンテージの雰囲気を高めている。足元はJFJベーカー社のロシアングレインを使った外羽根靴。一文字のステッチが飾りで入るクロケット製のプレーントゥだ。秋冬の足元はタフなコマンドやダイナイト、リッジウェイやレッドウイングなどのトラクショントレッドソールが主流になってくる。

(15)  シンチバック
尾錠にサスペンダーボタン(アメリカ製のパンツに合わせて呼び名を変えている)の付いたワークパンツに心惹かれるのはIVYから服飾に興味を持ったからだと思う。昔はVANの尾錠付きコットンパンツに憧れたが買いそびれたままアメトラやブリトラに移行したため今になって気になるのだろう。サスペンダーはビンテージのラルフローレン。かれこれ25年も前のものになる。


(16) プレーンフロント
(10)の英国調フォワードプリーツ付きに対する米国風プレーンフロントのワークパンツ。実際はどちらもポロラルフローレンの製品だがディテールやテイストも含め見事に作り分けている。ベルト部分の赤い刺繡やポケット縁の補強用ステッチなど細部の仕上がりも抜かりはない。アングロアメリカンからネイティブ、デザイナーズやビンテージまでラルフローレンの世界観は広い。


(17) ダブルマッキノー
ラルフローレンのパンツに合わせてTシャツの上にRRLのデニムシャツを着こんでダブルマッキノーを羽織る。赤黒に緑を加えたチェックがお洒落なクルーザーはポロスポーツマン。脇を固める大判のマフラーはトラディショナルウェザーウェア、グローブはビスポークのチェスタージェフェリーズ、ソックスはパンセレラと靴も含め英国製で揃えている。

【ダブルアールエル】
(18) セラーペ
写真はRRLのミリタリー調カーゴパンツ。カーキの色目やウール+コットン+アクリルの3者混素材が織りなすタフな素材感がサープラスの雰囲気を上手く引き出している。Tシャツの上に羽織ったセラーペ柄のシャツは40年代のニューメキシコ、ブランケットラグをモチーフにしたもの。一見派手な多色使いながら使い勝手の良いシャツだ。


(19) ブラックスミス
ブーツはレッドウィングのブラックスミス。日中は農場や作業場で履き夜は外出用に黒のドレスブーツをという発想から作られたそうな。名前のブラックスミスとは「鍛冶職人」を指すそうで、熱い炎から足や足首を守り夏の地面や冬の雪面から足を守る耐久性と品のあるスタイリングを兼ね備えたブーツを目指したとのこと。

(20) サイドアジャスター
RRLらしく両脇にウェストを調節できるサイドアジャスターを用意。しかも太いベルトループの内側というこだわりが琴線に響く。カーゴポケットはベローズ(蛇腹折り)に加えインバーテッドプリーツ仕様と見かけ以上にスペースがある。両脇ポケットがないデザインに戸惑うがフラップの上から手を入れるとカーゴポケット自体がパッチポケットの役目を果たしているという実に凝った作りだ。

(21) RRLでコーデを組む
RRLはワークやサープラス、ネイティブにモーターサイクルなど様々なカテゴリーに分かれるが、テイストの違うアイテム同士を組み合わせても上手く収まるのが特徴。ネイティブ調のシャツにシングルライダース、ボトムスはサープラス調なんてそう上手くいかないはずなのにラルフローレンのフィルターを通すと色合いや素材、ボタンやディテールなどが絶妙にリンクしていることに気付く。

コロナ過でリモートワークが普及しスーツなどビジネスウェアの売上は激減しているという。ところが調べてみると主力のスーツは1992年の売上高7750億円をピークに約20年間で5500億円も売上が落ち、70%減という結果が出ている。コロナが収束してもスーツ類の売上回復は難しいとの声がある中、売り場の面積の多くを占めるスーツやジャケット、コートや小物の代わりに一体何を置けば良いというのか…。

一方で実店舗を持たずECのみで広告も出さずセールしない。販路を拡大せず「健康な消費」を目指して前年度比200%の売上高を誇るショップが東洋経済誌に紹介されていた。商品単価は高めで「万人受けする」どころか「着づらい」と感じる時さえある。それでも原価率50%を超えるモノづくりと「定価で購入する熱量の高い顧客を大切にする」姿勢が98%の在庫消化率を生み出している。

フィルソンTOKYOで買い求めたマッキノーフィールドパンツも万人受けしないだろうし都会では暖かすぎて滅多に履けない。それでもグレーは既に完売、カーキもじわじわと売れていくのだろう。久々に定価でものを買った気がするが満足度は高かった。クリスマスが過ぎれば街はセール一色、その中で末永く着られるサスティナブルな商品は一体どこにあるのか…年末の買い物を楽しんでみようと思う。

By Jun@Room Style store