第1期 VS 第2期 | Room Style Store

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2022/06/06 08:55


1993年にスタートしたRRLはビンテージ加工を駆使して古着のような新品を売り出すことで業界の度肝を抜いたという。日本でも翌年には商品展開がスタートしたが海外駐在で日本を離れてしまい、買い物のチャンスはあまりにも短かった。とはいえ神様はいるもの…駐在先にRRLのインショップがオープン。毎週末には立ち寄ってはあれこれ買ったことを思い出す。懐かしくも良き日々だった。

時は流れて帰任直前の1998年、RRLがClosing(閉店)すると聞き、二度と手に入るまいと買い込んだが2001年まさかの再スタートに肩透かしを食らった。それでも素材や縫製、作り込みは前作以上。タグも継承するなど新作は期待を裏切らないものだった。雑誌Free&Easy(既に廃刊)がRRL特集で初期RRLを第1期、復活後を第2期と提唱すると古着市場では第1期ものから順次人気が高まっていった。

Room Style Storeでも売れ行き好調の第1期RRLだが、最近は高品質の第2期RRLへのアクセスも増えてきている。そこで今回は数多のファッションブランドを尻目に唯一無二の存在を誇るRRLの第1期と第2期を比べながらその魅力を探ってみたい。

新旧履き比べ
ショップの在庫も第1期ものが減って第2期のものが着実に増えてきている。新旧比較ということで左に新(第2期)を、右に旧(第1期)のボトムスを3本ずつ用意してみた。平場に並べてみただけで新RRLは凝ったディテールなのが分かる。一方旧RRLはデザインはオーセンティックながら入念なユーズド加工が目を引く。

《第一弾:春夏もの比べ》
まずは春夏ものから…第2期(左)はミリタリー調のパンツ。リベットのような前開きボタンやドローストリングが目を引く。裾や両脇のパッカリングも中々の雰囲気だ。一方第1期(右)からはワイドレッグのリネンパンツ。繰り返し洗濯をしたような風合いは思わず手に取って触りたくなる。

~ 第2期から~
(1)  リバーシブルパンツ
新RRLの方は一粒で二度美味しいリバーシブル仕様。しかもカモ柄は定番のウッドランド系じゃなくてタイガーパターン。デザインチームの気合を感じる出来だ。ポケットは左右両方あるかと思いきや片方はステッチという「だまし絵」風。リアルな軍パンと違い適度に細身なシルエットは着回しが効く。

(2) ボタンフライの構造
ジップフライでリバーシブルにするのは構造的に難しそうだがなるほどスナップボタンの凸凹を上手く使って前開き部分をすっきり見せている。手に取って履けば分かるが作りの巧みさに感心してしまう。これだけ凝ったパンツはRRL以外まず見かけないのではないだろうか…。これならば値段が高いのも納得できる。

(3) 履いてみる
まずはカーキ無地の方からチャレンジ。バーガンディのオールデンは黒ならばさしずめミリタリーサービスシューズといった感じか。外羽根のプレーントゥなら更に雰囲気が出るかもしれない。裾の内側に見えるドローストリングスが「チノパンとは違う…」とさりげなく主張している。

(4) 裏返して履いてみる
さて、今度はひっくり返してカモ柄にチャレンジ。ブーツやレースアップなど色々試したが一番しっくり来たのがキャンバス地のハイカット。当ブログ「ハンドメイドスニーカー」で紹介したアメリカはノースキャロライナのOPI WAYの受注生産品だ。実際に軍放出のキャンバス地で作ったスニーカーだけあって相性の良さは完璧。

~第1期から~
(5) 涼しげな素材感(旧)
一方こちらは第1期のリネンパンツ。爽やかなブルーの色目やサラッとした生地感は暑い季節にこそ相応しい。今時のパンツと違って90年代パンツは深い股上が特徴、腰パン世代にはかえって新鮮かもしれない。サイズタグのMADE IN USAに三ツ星の旧RRLタグが付いたアイテムは古着市場でも特に人気筋だ。

(6) 履いてみる(その1)
まずはショートソックスを間に挟んでカヌーモックを素足風に履く。ネイティブやミリタリー、ワークウェアやビンテージテイラードものの印象が強いRRLだがハワイアンシャツなどリゾートものも中々の出来栄え。ワイキキとはいかないがリネンパンツで湘南ビーチにでも繰り出したい。

(7) 履いてみる(その2)
こちらはキャンバスデッキシューズ。ブルーのリネンパンツに真っ白なスニーカーは如何にもの組み合わせだ。オリジナルはトップサイダーだがこちらはUA別注品。おろしたての白さもちょっと履けばたちまち汚れが付きがちだが、そんな時は通常のブラシ洗い後にお酢入りの水に浸してから水洗いをすると真っ白に戻る。

《第ニ弾:秋冬もの比べ》
第二弾は秋冬もの比べ。第2期のRRLからはウール&コットンカーゴ。目立たないが膝に裏地が貼られたダブルニー仕様のワークパンツ。一方第1期のRRLは定番の細畝コーデュロイ5ポケット。比べるとコーデュロイの方が3インチウェストが大きいもののシルエットはほぼ変わらず当時としては珍しい細身のストレートだ。

①第2期から
(8) ミリタリーカーゴ(新)
第2期RRLは「上質な素材」がポイント。素材表示を見るとウール/コットンにアクリルを少量加えている。アクリル混紡の特徴は保温性と耐久性の向上。そういえばこのパンツ、真冬でもかなり暖かいしタフな生地らしいごわつき感もある。着古した感じを出すには丈夫な生地からという感じか…。

(9) 履いてみる(その1)
仕事で黒靴を履く機会はないが、黒のブーツは意外とよく履く。写真はRRLの名作Bowrey(バワリー)。捨て寸が短くつま先の盛り上がったブーツは一見小さそうだが履いてみると魔法の靴かと思うほど快適。秘密はオブリーク気味のラストにあるようだ。製造はチャーチス傘下のチーニー、サイズ表記が手書きなのも心憎い。

【参考資料】
Bowery Boots
黒のスコッチグレインアッパーにブラス仕様の外鳩目&フックが目を引くバワリー。残念ながら茶色Verのバワリーはアッパーに合わせた地味な茶色の外鳩目やフックが付いているようだ。ストームウェルトに粗めの出し縫いステッチはタフなブーツならでは。ソールもコマンドか?と思いきや足に優しいダイナイト装着だった。

(10) 履いてみる(その2)
こちらは同じ黒でも艶消しのレッドウィングの2955ブラックスミス。盛り上がったつま先はバブルトゥとも呼ばれるそうで「言い得て妙」だと感心。よく似た茶芯の黒革モデルもあるがこちらはざらついた感じのある純ブラックレザー。太めの平紐は撚れずにきっちり結んでこそ格好よく見える。

~第1期から~
(10) コーデュロイの5ポケット(旧)
90年代の製品とはいえかなりハードな古着加工が特徴。ヘムは一部綻びているしヒゲの出ている部分もコーデュロイ特有の毛並みが擦れてなくなっている。リアルな古着が好きな人も思わず間違えそうな出来栄えだ。作り込みや素材感では第2期に軍配が上がるがビンテージ加工では第1期の方が勝っていると思う。

(11) バックポケットのステッチ
ポロダンガリーズ時代のバックポケットと第1期RRLのバックポケット比較。どちらも同じデザインのステッチが当てがわれている。ポロウェスタン⇒ポロダンガリーズ⇒ポロカントリー⇒第1期RRL⇒第2期RRLと続く流れの中で昔のデザインをアーカイブから引っ張り出しては繰り返し使うのがラルフ流。

(12) 履いてみる
スリムなコーデュロイにピッタリの黒モックトゥ。こちらは1996年購入のアイリッシュセッター黒♯8179。当時大ブレイクした靴だ。たまたま海外の取扱店で発見、すぐさま買って翌日店を再訪したら「日本人が全部買って行った…」とびっくりしたように話していた。以前も書いたが90年代はエアマックスなど靴が大ヒットを飛ばした時代だった。

(13) 靴を替える
こちらはポロネームのブーツ。RRLとテイストが近いので相性もいい。何度か登場しているアルフレッドサージェント別注のブーツだが、残念なことに会社清算という形で廃業してしまった。ジョージクレバリーが買い取ったという話もあったがクレバリーの新しいRTW(既成靴)を見ていないので詳細は分からない。

【参考資料】
コマンドソール
コンバットブーツをイメージさせるダブルストラップ付のシャフト。ソールも耐久性に優れ防滑性も高いコマンドソールを装着している。本格的なストームウェルトや傷に強いバケッタレザーなど如何にも頑丈そうな面構えはRRLのブーツをも上回る。クロケットやチーニーに負けない両靴を作っていただけにコロナによる廃業が悔やまれる。

《第三弾:ワークパンツ比べ》
最終章はワークパンツ比べ。第2期からはカーゴタイプ、第1期からはペインタータイプが登場。ワークウェアだけに両者ともにワタリが広くハイウェストな作りになっている。第2期は異素材との組み合わせやドローストリングス、第1期は肉厚なコットンダックやリベット付のポケットなどどちらもアピールポイントは十分だ。


~第2期から~
(13) ダブルニー再び
第2期のRRLは初期のオーバーサイズ感を見直し細かな作り込みで復活。価格も跳ね上がったがそれに見合うルックスを兼ね備えている。こちらも股下から裾までのダブルニー。フィルソンのダブルハンティングにも負けないスペックだ。カーゴポケットやウォッチポケット、サイドアジャスターにサスペンダーボタンまで付いたフル装備。

(14) 履いてみる
まずは撤退したBNY新宿で購入したタンカーブーツを久々に履いてみる。アメリカ本国ものは半貼りコマンドが主流だが、長時間履くならクレープソールがいい。カーゴパンツの方はコットンピケ素材にナイロンクロスの二重仕立てのせいか洗い立てのデニムのようにパリッとした履き心地が新鮮だ。

(15) 靴を替える
次はカーキと相性抜群のオロラセット。レッドウィングも最初はモックトゥに惹かれるが次第にプレーントゥの魅力に目覚めると赤い羽根運動よろしくレッドウィング複数所有が始まる。英国のビスポークもイタリアの色気靴も良いがアメリカンワークブーツは格別だ。チペワやホワイツ、ウエスコやウルヴァリン…どれも一度は試してみたい。

【参考資料】
新旧比較
第2期と第1期のパンツシルエット比較。レングスは異なるが両者とも寸法はあまり変わらない。本来は①動きやすく②頑丈で③耐久性があって④安価なものがワークパンツの特徴だが、第2期のRRLは安価とは真逆の高価格が着手を選ぶ。その点第1期は値段も手ごろで①~④まで全てを備えている。

~第1期から~
(16) 三つ星タグ
こちらは第1期のワークパンツ。コロナの影響もあって最近のRRLはリジットなデニムやコットンダック素材からよりコンフォートな素材にシフトしているようだ。フィルソンやカーハートあるいはL.L.Beanのように機能性を高めたウェアを参考にしつつもファッションブランドのRRLらしいラインナップかもしれない。

(17) 履いてみる

RRLと好相性のアメリカンブーツ、お次はオールデン製造のブルックスブラザーズ別注品だ。ラルフローレンはリオスオブメルセデスやソログッド、ランコートにアレンエドモンズとアメリカ国内のメーカー何社ともコラボしているのに未だオールデンとは手を組んでいない。納期など色々な問題があるのだろうか…。

(18) Brooks Brothers × AldenとAlden純正の比較
上がオールデン純正、下がブルックスブラザーズ別注。違いはヒールカウンターのステッチの有無とラストの違いのみ。オールデンはミリタリーラストでブルックスはバリーラストを使用している。因みにブルックス版は84,400円でオールデンが107,800円と23,400円もオールデンの方が高い。

(19) 靴を替える

足下の最後を飾るのはレッドウィング。用意した限定品#8877オロラセットモックトゥブーツはレッドウィングでは一番シャフトの長い8インチ。フックなしの10アイレットは紐を結ぶのが大変だがフックを後付けするのをためらう格好良さがある。履けば見えないとはいえブーツとワークパンツの相性は最高だ。

(20) レッドウィング対決
第2期と第1期の履き比べがいつの間にかレッドウィング対決になりそうな図。レッドウィングではどちらも定番モデルだが決め手はトップスで…ドローコードでウェストを絞ったマウンテンパーカにはすらっとしたプレーントゥが、ボリュームのあるダブルマッキノウクルーザーならつま先の盛り上がったモックトゥといった感じか。


RRLの母体であるラルフローレン社の買収話がアメリカのメディアから流されたのが今年の2022年2月。気になっていたが単なる噂話に終わりそうだ。メイン商品が中価格帯のラルフローレンとラグジュアリー主体のLVMHでは利益率の違いが大きく効果はないとの見立てだった。取り敢えずRRLが安泰なのが何よりの朗報。


肝心の業績だが2022年の3月期はパンデミック前の業績を上回ったラルフローレン社。ロイターのレポートでは製品の値上げでも高所得者層の購買力は変わらなく輸送費や製品コストの上昇により今後さらに値上げする可能性を指摘している。実は現行品にとどまらずビンテージ物や古着も日々どんどん値上げしている。


良いなと密かに狙っていた古いラルフのツィードジャケットも物価高と円安で一気に値上がりした。今こそ「欲しい時が買い時」の金言が心に刺さる。


By Jun@Room Style Store