夏の足元アップデート:前篇 | Room Style Store

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2022/06/14 12:35



ついこの前、3年ぶりの花見を楽しんだばかりなのに春はあっという間に去って夏がすぐそこまで来ている。知らなかったが関東地方は6月6日に梅雨入りしていたそうだ。気になる長期予報を見たら「雨量は平年並み。変わりやすい天候や突然のゲリラ豪雨などお出かけ前の天気チェックを欠かさず。」とのこと。週明け月曜の本日、東京は傘マークの時間帯なし、先高気温は28℃と夏日になりそうだ。

昔なら「雨が降らないなら革底の靴を…」なんて思ったけど今や「カジュアルエブリデー」の時代。レザーソールより快適なラバーやクレープが心地よい。これじゃドレス靴の出番が減るのも当然か。SNSの靴愛好家は磨き込んだ内羽根や貫録の付いた外羽根、中にはブーツ姿の強者もいる。ドレスコードがなくなったら皆どんな靴を履くのだろう?…と思いつつ気が付いたらスニーカーを手にしていた。

そこで今回「夏の足元アップデート」と題して厚い夏を乗り切る「靴+パンツ」の組み合わせを2回に分けて考えてみようと思う。

【夏のボトムス】
IVY世代は「夏のボトムス」というとシアサッカーやコードレーンを思い浮かべるがドレス寄り過ぎて気が引ける。カジュアルエブリデーなら「クリースなし」が気分だ。となると裾はダブルじゃなくてタタキ仕上げ、シルエットはやや太めのミリタリー調…と早速検索開始。ヒットしたのは「ど真ん中の」のミリタリーチノbyバリーブリッケンだった。
上:ミリタリーチノ(新作)
下:マドラスパンツ(前作)

(1) ミリタリーチノ
バリーブリッケン自体は既に存在しないが、日本側からのリクエストで80~90年代のデザインを復刻させたミリタリーチノが「夏の足元アップデート」調達品第1弾。9~10ozのコットンツイルを使用、ドレストラウザーズ同様丁寧なパイピング処理を施して仕上げたパンツはワタリや裾幅、股下など全てが絶妙なサイズ感。カーキを買うと色違いのオリーブも欲しくなる出来栄えだ。


(2) シップスで買う
このミリタリーチノ、上野のヤヨイや三軒茶屋のセプティズでも扱っているが近場のシップスで購入。ファクトリーはNYCマンハッタン東側、イーストリバーの対岸ブルックリンに工場を構えるHertling USAのようだ。アメリカに多いパンツ専業メーカーの一つ。同じアメリカのセレクトショップDann Clothingを覗くと他にもCORBINやDUCK HEADにBILLS KHAKIなど色々出てくる。

【参考資料①】
Hertlingのウェブサイト
こちらは今回のバリーブリッケン別注ミリタリーチノを請け負ったハートリングの自社ウェブサイト。メニューを見るとトラウザーズとチノーズ、それにショーツがラインナップされている。いつか機会があったら直接オーダーしてみたい。特にドレスタイプのチノパンはプレーンフロントのみという潔いラインナップが堪らない。

【参考資料②】
こちらはコービンの自社ウェブサイト。サイトの作りをみるとオンラインショップという感じではない。IDとPWを入力して別ページに進み注文するのだろうか。In-Stockのページを見るとウールからチノクロス、フォーマル用まで生地は豊富。その中から選んでMTOするのかもしれない…。パンツ専業メーカーとのことだがDann Clothingではテイラードものを扱っている。


(3) SHIPS別注の前作
こちらは数シーズン前のバリーブリッケン。GTH(Go To Hell)一直線の派手なマドラスはゴルフパンツか?…と見紛う向きもあるが履き心地は快適で通気性は抜群、履く楽しさがある。この週末NYから届く「夏の足元アップデート」の参考にした。作りはミリタリーチノよりもトラウザーズに近い。ほんのりクリースを付けている。

(4) 比べてみる
裾までゆとりを持たせつつ徐々に細くなるミリタリーチノ(左)。股下75.5㎝に裾幅21.5㎝とジャストサイズで補正なしのまま購入。一方前作のマドラスパンツ(右)はミリタリーパンツより若干細身のアイビーテーパード。インコテックスなどクラシコ調のパンツよりゆとりのあるデザインはアメリカンな靴が合う。

(5) バックポケット
バリーブリッケンの特徴、ヒップ両側に付くフラップポケット。しかもどちらもボタン留めのないタイプ。マドラスパンツ(下)のほうは片玉縁の仕上げ。履くうちにフラップがめくれがちなのがやや難点だ。一方のミリタリーチノ(上)は生地の厚さもあるのだろうが両玉縁にしてフラップの上がりを防いでいる。

(6) ウォッチポケット
パンツの右フロントにはどちらもウォッチポケット(懐中時計用)が切られている。プリーツのないプレーンなフロントには程よいアクセントだ。ミリタリーチノ(上)は両玉縁仕上げでかなり目立つがマドラスパンツは片玉縁仕上げで控えめしかもかなり小さい。懐中時計を持っていないのに「小さ過ぎないか…」と気になってしまう。


【夏の足元用新規参入靴】
夏の足元アップデート用に新たに調達したのがアンチスキッドソールのデッキシューズとヴァルカナイズド製法のキャンバスデッキシューズ。何をいまさらとも思うが昔取った杵柄、最近はスタイリッシュなビスポーク靴よりこうした懐かしい靴に心惹かれるのだから仕方ない。しかも一見普通に見えて蘊蓄を語れる2足だ。


《デッキモカシン編》
(7) アメリカ製に拘る
何年ぶりだろうか、デッキシューズを新調するなんて。1足か2足買えば履きつぶすまで買い替えないタイプの靴だけに前回買った時のことを思い出すと何と1995年まで遡ることになる。Made in U.S.A. catalogの影響を受けた世代としては次に買うのもアメリカ製とは思っていたが、ランコートやクオッディなど身近に買えると分かるとつい後回しにしていた。

(8) 元祖を買う
デッキシューズの元祖といえばSPERRY TOP-SIDER。学生時代ネイビーの国産デッキシューズを履いていたら「それトップサイダー?」と聞かれたことを思い出す。その知人はバチュークロスのハンティングワールドなどブランド品持ちのボンボンだった。その時「よしいつかはトップサイダーを…」と思い続けて幾年月、やっと念願が叶ったという訳だ。

(9) 歴代デッキシューズ
全てアメリカ製。左端が最も古くて90年にワシントンDCのポロショップで購入。右端が前回95年シンガポールで購入のセバゴ「ドックサイド」。作りは最新のトップサイダー(中)が一番小さい。元々海辺や湖畔、川遊びなど「濡れては履く」を繰り返したせいで傷み具合はかなりのもの。それでもまだ履けそうなので近々ソール交換に挑戦予定。

(10) Made in Maine, USA
ハンドモカシンの聖地メイン州で作られている証が刻印された中敷。ブログの過去記事でも触れたがMade in Maine, USAと記すのがメイン州に残る靴メーカーの矜持なのだろう。靴の外観だけではどのファクトリーか区別がつかないほど各社の実力は伯仲しているが、BrewerのHighland Shoe Companyが請け負っているようだ。

(11) ソール
最新のトップサイダーのソール。かつては軍専用のボートシューズを納入していたスペリー社ではセーフティソールと名付けたようだ。形状は今のセバゴ「ドックサイド」のソールに近いもの。写真のようなソールは1980年発刊の「オフィシャルプレッピーハンドブック」に登場。「カミソリの薄さの波状パターンが濡れたデッキで威力を発揮する」と書かれている。

(12) 履いてみる(その1)
ここでようやく足元コーデに到達。バリーブリッケンのマドラスパンツと合わせてみた図。パンツ購入時から薄茶のデッキシューズを想定していたのでようやく実現した組み合わせになる。そのうち素足で履いてしまうと思うがまだ足に馴染んでいないので靴擦れ防止にベリーショートソックスを履いている。

(13) 履いてみる(その2)
下ろしたての靴は気分が良いもの。ソックスは毎年改良が進むユニクロのベリーショート。以前はなるべく見えないように甲下まで履き口を下げていたが、靴の中で脱げてしまうことが多いせいか最新版では甲の上まで深く覆うデザインに変更されている。写真でも2アイレット付近の履き口からソックスが見えている。次回買うなら肌色が良さそうだ。


《キャンバスデッキ編》
(14) 夏色キャンバス
ブログ「スニーカー見学」を読むとオフィシャルプレッピーハンドブックには「プレッピーかどうか最初に足元を見られます。間違った靴を履いているとその時点で終わりです…」というくだりがあるらしい。さらに続けて「プレッピーのための正しい靴10型」の紹介。何とスペリートップサイダーからはレザーデッキシューズと(写真の)キャンバスオックスフォードの2足が選ばれている。

(15) 初めて購入したブランド
それほどプレッピースタイルに欠かせなかったキャンバスオックスフォードだが選んだのはトップサイダーではなく初のブランド、アナトミカのWAKOUWA(ワクワ)。トップサイダーにはない発色の良さに惹かれたが、アナトミカならではのラストへの拘りがあるのも気になる。色はゴールドやオレンジ、ブルーが目を引くがまずはオレンジを購入。

(16) 足に優しいラスト
アナトミカのオーナーがスペリーファンだったためにアナトミカル(解剖学に基づいた)なスニーカーを目指して完成させたのがワクワとのこと。なんでもアメリカ陸軍のサービスシューズに採用されたマンソンラストを参考に3年間改良を重ねた木型で作ったらしい。写真を見てもオブリークなトウが良く分かる。

(17) サイズ感
ハーフサイズ大きめを買うべしとのアドバイスどおり購入。同じ9.5ながら左端のトップサイダーはワンサイズ小さい。一方右端のユナイテッドアローズは10.0と大きめだがワクワは更に少し大きい…。捨て寸は多くなるが革のように伸縮しないキャンバス素材の靴だときついのはすぐ足に来る。外反母趾を防ぐシェイプのワクワに夢中になるリピーターが出るのも分かる。

【参考資料③】
ラルフローレンソックスの広告
キャンバスオックスフォードとラグソックスの鉄板コンビ。日本で流行ったルーズソックスを彷彿とさせる履き方はご存じラルフローレンの広告だ。厚手のコットン糸をざっくりと編んだ独特の風合いはアウトドアソックスとして最適。それにしてもソックス一つにこんなムードのある広告を打つラルフローレンの姿勢はさすがだ。


(18) ラルフのラグソックス

90年代のアメリカ製コットンラグソックス。ラルフローレンのソックスは全てアメリカ国外(日本を含む)にシフトしたが90年代まではアメカジスタイルにピッタリのアメリカ製ラグソックスが並んでいた。そういえば96年春、夜明けとともにオーストラリアのエアーズロックに登った時もティンバーランドに合わせてラルフのラグソックスを履いていたっけ。

【参考資料④】
RLキャンバスオックスフォード
オフィシャルプレッピーハンドブックによれば「11足の正しい靴」にも入るトップサイダーのキャンバスオックスフォード。1980年発刊のこの本の影響だろうか、80年代のラルフローレンのカタログにはこのヨットスニーカーが幾度となく出てくる。青と黄色という2色の縁取りが他のキャンバスオックスフォードにはないラルフのアイコン…再販してほしい靴の筆頭だ。
※因みにオフィシャルプレッピーハンドブック中の11型の正しい靴とは…
1. BassのWeejuns(ウィージャン)
2. L.L.Beanのラバーシューズ
3. Brooks Brothersのタッセルローファー
4. GUCCIのビットローファー
5. ホワイトバックス
6. L.L.Beanのキャンプモック
7. Sperry Top-Siderのデッキシューズ
8. Sperry Top-Siderのキャンバスニーカー
9. Tretornのテニスシューズ
10. Wingtip Blucher…ウィングチップ
11. Opela Pumps…オペラパンプス
だそうだ…。

(19) WAKOUWAを履く(その1)

ミリタリーチノとのコンビ。こちらも最初からオレンジのスニーカーを想定していたので相性は文句なし。甲高ゆえサイズアップしても内羽根が開き気味なのは致し方ない。オブリークトウらしく履き心地は快適、しかも発色の良さと縁取りされたボルドーのラインがそそる。何色か揃えてカラフルな夏の足元アップデートにしたくなるほどだ。

(20) WAKOUWAを履く(その2)
純粋なミリタリーパンツほど幅広ではないが程よいワタリから裾までストレートに落ちるラインはスリムはパンツに飽きていたのですこぶる新鮮に映る。甲にふんわりとクッションを描いて落ちるパンツのレングスも絶妙、久々に定価(ポイントを使ったが…)で買って正解のミリタリーチノだった。

夏の足元アップグレード第1弾はバリーブリッケンにトップサイダーとワクワの3点。パンツはSHIPS実店舗で購入。BEAMSプラスと並んで頼りになる店だ。一方アメリカ製のデッキシューズは大手靴販売チェーン店の、キャンバスシューズも取扱店のオンライン店舗から購入。ウィズコロナになってもオンラインショッピングによる買い物が優勢だ。

海外旅行も少しずつ復調傾向にあるが、アメリカでは銃の乱射事件が頻発。欧州はウクライナでの戦闘が様々な影響を及ぼしている。まだ暫くは現地購入よりオンラインで手に入れる方が賢い選択かもしれない。円安真っ最中とはいえ夏の足元アップデート第2弾としてアメリカのショップに発注した品物が今UPS経由で現在日本に輸送中とのこと。

近いうちに夏のパンツと靴の組み合わせ後編をまとめてみようと思っている。

By Jun@Room Style Store