Levi'sの魅力 | Room Style Store

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2022/06/28 15:54


最近のビンテージカーやビンテージバイクの値段は凄まじいものがある。以前気になっていた車は値段が提示されないASK状態、ようやく一台探し当てたら750万円と瞬く間に3倍も値上がりしていた。さらに驚いたのが昔乗っていた国産車。40年前の新車価格のやはり3倍強、なんと560万円の売値だ。大事に乗り続ければよかったと後悔したものの後の祭りだった。

イタリアの至宝フェラーリ250GTO1962年製のオークション落札価格は54億円。当時の販売価格18000㌦(1ドル360円=64.8万円)を円で計算すると54億円÷64.8万円=8333倍もの値上がりだ。ところが2018年、日本国内で当時0.75㌦(75㌣)だった古いLevi'sが1000万円で売買された。当時の為替でドル計算すると90910㌦÷0.75㌦=121213倍もの値上がり。何とLevi'sの圧勝だ。

そこで今回はフェラーリを凌駕するLevi'sの魅力について少し掘り下げてみようと思う。


【最後のオールアメリカン501】
(1) ホワイトオーク501
2017年12月31日で閉鎖されたアメリカ最後のデニム工場ホワイトオーク産の耳付きデニムで仕上げた501。それまでLVCの専売だったアメリカ素材+アメリカ縫製をまさかのレギュラーモデルに拡大。しかも価格はLVCの6割程度というサプライズに速攻でオンラインショップからマイサイズを購入した。
※ブーツ:Bowery by RRL


(2) コーンデニム終了前後(その1)
手元に届いてあまりの良さに追加購入しようとしたら既にサイズ切れ、完売も早かった。その後ウェストベルト裏側にPREMIUMのタグ付MADE IN THE USA501が継続販売されたが、上の写真見ても分かるようにデニムの違いは歴然。プレミアムのタグが付くのは逆のような気がしたものだ。因みに工場はどちらも5115番。

(3) セルビッジの幅
セルビッジデニムの脇割部分は折り返すことが多いだけに気になるもの。アウトシームに出るセルビッジのアタリを気にして「幅が広すぎる」という意見も多い。因みに手持ちで比べると上から66前期、赤耳、ホワイトオーク501、プレミアム501の順に広くなる。特に最近の2本はかなり幅広だ。


(4) コーンデニム終了前後(その2)
同じ5115工場製ながらホワイトオーク501からプレミアム501に移行する際、細部を変更したらしい。なるほどヒップポケット端のダブルステッチ幅が違う。ポケット開口部もホワイトオーク501の方が広いし赤タブもスモールeからビッグEに替わっている。短期間にここまで変える理由は一体なんだったのだろう。


さてここからは年代順に…
【33501LVC】
1933年当時の501復刻版。
(5) タブなしヒップポケット
赤タブのなしの大きなヒップポケットが特徴。アーキュエイトステッチは一本針で縫われておりカモメの羽根のように急なカーブを描く。実際「カモメステッチ」とも呼ばれたらしく、エビスジーンズのカモメペイントのネタ元にもなっている。レザーパッチ下の白タグはアメリカ製のあかし、何ともそそられる。
ブーツ: Red Wing 8166


【参考資料:現行品37501】
後継のLVC1937年モデル(日本製)。1937年に廃止されたサスペンダーボタンは省かれ赤タブが付けられている。クロッチリベットは残るもののヒップポケット上端は打ち抜きリベットから隠しリベットに変更されるなどワークパンツ風味はやや薄れている。こうして少しずつ労働着から日常着へと変化したのだろう。

(6) リベット
ポケット上端に見える打ち抜きリベット。芯の脇から生地の糸がはみ出す素朴な作りを好むフェチもいるらしい。上部のシンチ留めやクロッチなど歴代501の中で最もリベットの多い33501、前後合わせてなんと13個ものリベットが顔を覗かせている。材質は当時と同じコッパー(銅)とのこと。

(7) クロッチリベット
デニムのフロント部分。クロッチリベットは1941年に廃止されたようだが、その理由は以前も書いたようにカウボーイが焚火で暖を取る際クロッチリベットが熱くなって火傷するとの苦情が来たためとか…熱伝導の良い銅製だっただけに余計熱くなるのも早かったに違いない。


(8) セルビッジ
33501の耳部分は手持ちのLVCの中でもかなり狭い。では古いモデルほど狭いのかと言えば後に出てくる1962年モデルの551ZXXの方が細かったりする。ようは系統性があったりなかったりという不確実性がLevi’sの魅力の一つ、古い方に新しいギャランティ、新しい方に古いギャランティがつくなんてよくあるらしい。


【参考資料】
44501LVC(日本製)…大戦モデルの復刻日本版
写真は1942年から1946年まで製造された日本製の44501大戦モデル。質素な作りのドーナツボタンやリベットなしのコインポケット、ヒップポケットのペンキによるステッチなどそれ以前ともそれ以後とも違う特別なディテールがマニアの心をくすぐるらしい。自分ももし買うなら大戦モデルをもう1本…なんて思ってしまう口だ。
※スニーカー:コンバース(アメリカ製)


【47501LVC】
1947年当時の501復刻版
(9) LVC47501 アメリカ製
一番人気とはいえ「実際はあんなに細くない」あるいは「12ozの生地を洗うと14oz」さらには「目立つレザーパッチ」と指摘も様々ある。だが自分など素直に復刻版が出ると嬉しいほう、密かにホワイトオークレガシーファンデーションの再生デニムでアメリカ製501が復刻しないか期待している。
ブーツ:Polo Ralph lauren by Alfread Sargent

(10) 大戦前後のシルエット比較
左の47501がW34で右の33501がW31。レングスは共にL34だがウェストが3インチも違うのにワタリや裾幅がほぼ同じ…やはり47501が細いのは本当のようだ。レングスについてはL32を選ぶと洗濯後にロールアップして履くことは難しそう。履き方に変化を付けたいならL32よりL34の方が無難だろう。

(11) 47501の特徴
47501のハングタグにはクラシックスリムと書かれているが1947年当時の501XXはもっと寸胴。一説には当時501を直してスリムにして履くのが流行っていたという説やサイズダウンしてキツめを履くのが流行ったなどの説も出てくる。ヒップポケットの隠しリベットは英語でConcealed back pocket rivetsと書くなんてことも分かってタグのチェックも面白い。


(12) レザーパッチの変化
上が33501で下が47501。大戦前後のレザーパッチを比較してみるとCopper Rivetedの表記がOriginal Rivettedに変更されている。どちらも復刻版だからリベットは同じかと思いきや表側は同じだが裏側はちゃんと作り分けている。LVCねぇ…という声もあるが中々どうして、忠実に再現すべく力が入っているではないか。

【1962-551LVC】
1962年当時の551ZXX復刻版。
(13) 初のプリシュランク
年代別で言うならばLVC55501をもってきたいところだが目下欠番中。年代は飛んで1962年の551ZXXモデルになる。当時は新開発のプリシュランクデニムを使用、こちらも当然のプリシュランクだから縮まないかと思いきやWで2~3㎝、Lは4~5㎝縮むそうな…。防縮加工済のコーンデニムは例によって12ozの生デニムがあると縮んで14ozになるそう。
ブーツ:Murdock by RRL

(14) 501のスリム版
サイズ表記W31-L34を平置きにしたところ。後の505の原型だそうだ。実寸W=80㎝/L=86㎝が洗濯後はW=78㎝/L=80㎝になる。W30の505とほぼ同じ寸法だった。リーバイス史によれば1962年頃に打ち抜きリベットから被せリベットに置き換わったようでこの551ZXX復刻版も被せタイプになっている。

(15) トップボタンや隠しリベット
復刻版551ZXX(下)と現行のプレミアム505(上)との比較。551ZXXのトップボタンは当時銅褐色だったようで通常の銀色タイプと印象が違う。ホップポケットはリベット裏側が見える隠しリベット。ポケットが閂止めに変更されたのが1966年頃ということで1962年モデルは隠しリベットありということになる。

(16) 紙パッチとオフセットのセンターループ
1954年頃から革パッチに替わって登場したのが紙パッチ。'Every Garment Guaranteed'の文字が入るギャラ入りパッチは1962頃までだそうで、復刻版551ZXXではギャラなしパッチを採用。オフセットセンターループは1962年頃までらしく、こちらは分かりやすい意匠として残したようだ。

【66前期1971~1972年製502】
(17) 501ジッパー版から502へ
ここでLVCから©1966表記のリアル66前期502に
バトンタッチ。Levi's初のジッパー搭載モデル501ZXX⇒551ZXX⇒505がスリムフィットの系譜だとすれば501ZXX⇒502はストレートフィットの系譜、90年代のビンテージジーンズブーム時は1967~73年までと製造期間が短くタマ数も少なかった502は密かに人気だったらしい。
ブーツ:Tony Lama

(18) コインポケットの違い
コインポケット裏を見ると1971年製のビッグEは耳付き、1972年製のスモールeでは耳なし。赤タブ表記の違いも含め、僅かな製造期間の違いで仕様変更が行われるところがLevi'sの面白いところ。目利きはたちどころにディテールの違いを見抜くだろうがLevi'sファン新参者としてはこうして一つ一つ調べるのが結構楽しい。


(19) アウトシームの脇割り処理
アウトシームの脇割り処理。丁度スレーキの下あたりで脇割りから片倒し縫いに変わる部分。写真右の1971年製は割合丁寧な仕事ぶりだが左の1972年製は相当な手抜き。トラウザーズのように丁寧な仕上げを求められていないワークウェアならでは、それにしてもアメリカ製品のアバウトさは中々のものだ。一時アメ車は故障が多いと言われたがさもありなん。

(20) 16番の刻印
トップボタン裏の刻印番号は16番。通称「16ボタン」ものは昔の素材を使用したり検品も独自だったりとイレギュラーな個体が多く、長年の謎だったらしい。ここで真相が判明、なんとミシシッピー州のBaldwyn Luckey Star社という会社がLevi'sから生産委託を受けて作っていたようで、直営工場ではない分融通の利く生産体制がイレギュラーものを連発したようだ。

【78501LVC】
1978年当時の501復刻版(66後期)
(21) 66後期モデル
再びLVCに戻って今度は78501LVC。写真は1970年代中頃~1980年頃までの1978年をモデルにした66後期LVCになる。14ozと重めのコーンデニムを採用、本物は天然インディゴから合成インディゴに変わった時期で、縦落ちせず全体的に色落ちすることから66後期以降はビンテージLevi’sには入らないというシビアな意見もある。
ブーツ:Red wing 877


(22) 66前期と66後期LVC
本物の66前期502と66後期モデル78501LVCを比べてみる。耳部分は66後期LVCの方がリアル66前期より狭い。一方裾のチェーンステッチは66後期LVCの方が断然綺麗、というかリアル66前期の方は雑過ぎる。赤耳部分の赤糸は66前期はうっすらピンクで66後期LVCは赤みが強い。

(23) 78501LVCと80年代赤耳

今度は78501LVCとリアル83年製501の比較写真。紙パッチにスタンプされたCARE INSTRUCTIONS INSIDE GARMENTの文字や501の字体は両方ともよく似ている。因みにCARE~~GARMENTSの部分だが1986年頃からは(耳なし脇割り仕様)最初から赤く印刷されたものになる。ビンテージリーバイスの境目をこの1986年かつ赤耳ありとする説もある。

【1983年製赤耳501】
(24) エルパソ工場製
ここからはビンテージ501にギリギリ入る83年赤耳。コーンミルズ社最終期のセルビッジデニムだがLVCのサラッとしたコーンデニムを見慣れた目には「これが未洗いの生デニムか?」と思うほど色目が薄く毛羽立っている。アメリカ買付のデッドものじゃなくてリーバイスストラウスジャパン正規輸入品という珍しいもの。
ブーツ:Red Wing 8877

(25) 紙パッチのティアオフタグ
紙パッチの右端に付く切り取り線とサイズが記入された部分、なんていうのか調べたらティアオフタグというらしい。そういえば最後に買った1996年のレギュラー501にもこのティアオフタグが付いていたっけ。150周年を迎えた2003年にアメリカ国内最後のバレンシア工場を閉じるまで米国製501には付いていたらしい。ライトオンのオンラインショップではバレンシア工場閉鎖直前の501米国製が売られている。


(26) リベット裏側の変化
1971年の502と83年の501のリベット内側(オス部)。1963年頃に銅からアルミニウムに変更されているので外見は同じように見えるが66モデルは円周にL.S.&CO-S.F.-の刻印が打たれたもの。80年代に入るとよく似ているが円周の縁にニ重線で縁取りされている。いつごろ変更されたのか…?このあたりを深掘りするマニアもきっといることだろう。


【参考資料】
①89年製501脇割仕様
写真は89年製501。自分にとってリアルなLevi'sはこの時代だ。ビンテージものじゃない普段使いの501だがその分気楽に履ける。それでも調べてみると写真の501なんてトップボタン裏が555のバレンシア工場製だし耳なし脇割りとはいえコーンミルズ社のデニムを使用している。ビンテージじゃないがちゃんとヒストリーがある。
スニーカー:コンバース(日本企画)

②96年製501ホワイト
こちらは更に年代が進んで96年製のホワイト501。インターネットが世界を変え始めていた90年代中頃、ネットスケープ経由でアメリカのショップを発見、メールオーダーしたものだ。カートやオンライン決済はなかったが手紙で注文。オーダーが通ったのかいつ届くのかさっぱり分からなかったがワクワク感があった。
スニーカー:コンバース(アメリカ企画)


思い返せば大学時代はジーンズばかり履いていたと思う。それでも根がアメトラ嗜好、履くならアメリカ製だろうとLeeの101zを選んでいた。社会人になってLevi'sを履き始めたが90年代のビンテージジーンズブームは蚊帳の外、気付けばブームは去り自分もジーンズから離れていった。

あれから30年、再び毎日ジーンズを履けるようになった今、昔のビンテージブームがふと頭をよぎる。幸い今はネットの時代、先駆者の貴重な情報に触れることも可能だ。ビンテージカーは無理かもしれないが二度と買えないと思っていた昔のLevi'sがここでポツポツと出始めている。

人は自分が最初に興味を持ったものに原点回帰するらしい。そういえば一番最初に興味をもったのはジーンズだったっけ。近いうちにLevi’sを一本買おうかな…

By Jun@Room Style Store