食器に拘る(後編) | Room Style Store

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2022/07/30 09:48


前編は新居への引っ越しを機会に揃えはじめたラルフローレンのテーブルウェアを紹介したが、食器に興味を持ったのはそれ以前の海外勤務がきっかけだった。離日前に現地からは「住居は家具・家電完備。必要なものは食器や寝具、後は日本から持ち込む家電用変圧器を…」とのことで取り急ぎ最低限を用意して箱に詰め船便で送った。

現地入りしてホテルからレジデンスに移ると日本からの船便は既に到着済み。荷解きして一つ一つ棚に並べ、不足分は現地調達しようと午後には街へ繰り出した。残念ながらラルフローレンホームのブティックはなかったがデパートには有名ブランドの食器や寝具、変圧器まである。「これなら日本から送る必要なかったな…」と後悔した。

現地で最初のクリスマス…件のデパートでなんとギフトバウチャー1等に当選。日本からの客や現地の知人など人を招く機会の多い海外勤務、せっかくならとティーポット、シュガー、クリーマーを購入したのが食器への拘り第一歩だった。そこで今回は当時を振り返りつつ後編をまとめてみたい。

※扉は各地で揃えたプレート類

【ウェッジウッド】
① バウチャーで買い物をする
受け取ったバウチャーを持って品揃えの豊富なウェッジウッドの売り場へ…ティーポット、シュガー、クリーマーの3点セットに追加でティーカップやソーサーも購入した。後日プレートも順次買い揃えたのでデパート側は"A small gift brings often a great reward."(損して得取れ)"だったろうし自分にはwin-win relationship"だった。

② ハミングバード
購入したのはハチドリが描かれたハミングバードシリーズ。カップは形を見るとすぐに分かるティー専用だ。薄造りで浅く外に広がる形状は①光が入りやすく紅茶の色を楽しめる②カップの縁が唇にフィットして味を感じやすい③香りが広がりやすいとのこと。目安は直径9~10㎝だが紅茶の本場英国のウェッジウッドは10.5㎝と一回り大きい。

③ ユーランダーパウダー
帰任後、ロンドンに行く機会が増えると身近な食器ブランドということでピカデリーアーケードの端にあったウェッジウッドを訪れた。食器に興味がなかった頃は素通りしていたのに変われば変わるものだ。お目当ては金彩をふんだんに施したユーランダーシリーズ。値も張るが美しさも格別。靴や服をビスポークするついでにまとめ買いして手持ちで帰国した。

④ シリアルボウル
英国の朝食に欠かせないシリアル。有名どころは王室御用達のお墨付きのシリアル、Weetabix(ウィータビックス)だろうか。ネットでも買えるがオリジナルの他ハニーやチョコレート、フルーツナッツなど色々あるらしい。自分は国産派だが、最近は近所のスーパーでもシリアルコーナーがあって充実しているのに驚いた。

⑥ 友有り遠方より来たる
旧友を迎える時は地元のブラッセリー自慢のシフォンケーキとコーヒーでおもてなし。アロマ機能付きドリップコーヒーメーカーで入れたコーヒーは少し濃い目だが中々の香り…。こんな時こそお気に入りの器が役に立つ。シフォンケーキはスポンジケーキよりもソフトで柔らかい。どうやって作るのか調べたら植物油を使用しているためとか…。

⑦ レモンかメロンか
シフォンケーキはアメリカ生まれだが南蛮由来のカステラが日本で独自に進化したようにシフォンケーキも日本ならではのバリエーションを楽しめる。夏らしいレモン(奥)とメロン(手前)のシフォンケーキ。試してみたらどちらもほんのり果物の味と香りが口に広がる。それにしてもよくこんなに柔らかく焼けるものだ。

⑧ ルビー&ブルー
ユーランダーシリーズはもともと3色あってルビーとブルーそれにターコイズがラインナップされていた。ルビーが気に入って集めるうちにブルーも一緒に揃えるようになり、ならばターコイズも…と思っていた矢先に在庫切れ。かわりにウェッジウッドが作るラルフローレンのテーブルウェアを集めはじめたので3色コンプリートは幻に終わった。

⑨ ストークオントレント
靴好きにとってノーザンプトンは英国紳士靴メーカーの集う聖地、同じように食器好きにとってストークオントレントはウェッジウッドやロイヤルドルトン、ミントン、バーレイ、スポードなど窯業の聖地らしい。しかもノーザンプトン行きと同じユーストンから電車が出ていて片道一時間半。ノーザンプトンとセットで一泊二日の旅も悪くない。

【参考資料】
スポード
こちらはストークオントレントの古参スポードのブルーイタリアンからデミタス&ソーサー。1816年誕生という現存するテーブルウェアの中で最も古いシリーズの一つだ。伊万里焼によく似た縁取りにイタリアの風景を組み合わせた絵柄は日本人に馴染みの藍色が特徴。小さなデミタス&ソーサーだけを集めるコレクターもいるとのこと。

【リチャードジノリ】
① イタリアンフルーツ
靴や服を誂える関係でロンドン・パリ・ミラノに加えてフィレンツェにも足繁く通った。同じフィレンツェ創業のリチャードジノリに顔を出すのも自然な流れ、一番人気のイタリアンフルーツを少しずつ買い足しては機内持ち込みで帰国したものだ。残念ながらリチャードジノリは2013年に破産、グッチの子会社として2020年「ジノリ1735」と名前を変更、イタリアンフルーツも廃番となってしまった。

② コーヒーポット
リチャードジノリの代表作といえば「イタリアンフルーツ」。中でも特に珍しいのが写真のコーヒーポット。ネットで調べてもティーポットばかりでまず見かけない。実はこれも海外駐在時に手に入れたもの。馴染のデパートでセール初日の1点だけあったものだ。後でイタリアンフルーツのセットを買い揃えるようになったのは言うまでもない…。

③ フィレンツェ
リチャードジノリは1735年創業。写真のイタリアンフルーツは創業後初期に誕生した歴史あるシリーズらしい。とはいえミレニアムの頃から足繁く通っていたにもかかわらず、フィレンツェのジノリ本店はいつ行っても客がいることは滅多になく不思議に思ったものだ。その後ジノリが「倒産した…」と聞いた時は「ああ、やっぱり」というのが正直な気持ちだった。

④ デミタス&ソーサー
せっかくなのでエスプレッソを。ヨドバシにネスプレッソのカプセルを買いに行ったら取り扱いを止めたとのこと。代わりに互換性があり同じネスレが作っているスターバックスのカプセルを勧められた。試しにエスプレッソ用のブロンドロースト(黄色)とルンゴ用のパイクプレイスローストの2セット(ソーサー後ろ)を購入。スタバの味≒ネスプレッソか。

⑤ コーヒータイム
イタリアンフルーツは同じ皿やカップでも絵柄が違うらしい。なんでも転写に加えて職人の手書きもあるので違いを見つけるのが楽しいそうだ。もともと1760年頃トスカーナ地方の貴族のディナー用に作られたイタリアンフルーツ、250年が過ぎた今はだれもがランチやティータイムに楽しめる。

⑥ モンブラン
コーヒータイムのお供はモンブラン…栗きんとんから作った黄色いタイプは日本式。元祖イタリアのそれは生クリームで山をかたどった文字どおり白い山(モンテビアンコ)だそうだ。その後フランスでマロングラッセをペースト状にしたものを使ったモンブランが考案された。写真は残念ながらイタリア式ではなくフランス式になる。

⑦ ルクレチア
こちらはルクレチアという名のプレート&ディッシュセット。一見違う柄のようでセットになっている。ミラノからフィレンツェ日帰りというハードスケジュールの中ジノリ本店で購入したものだ。柄はノーブルなれどもっぱらパスタ料理を入れてお気楽に使っている。風の谷のナウシカに出てくる王蟲(オウム)のような形はニョッキ。ジャガイモで作ったパスタとのこと。

【絵皿を土産に持ち帰る】
① フランス製の絵皿とハワイ土産
最近は旅行先で気に入った絵皿を土産に買って帰ることも多い。写真下はフランスのブルターニュ地方を回った時の絵皿。イタリアとは違う絵柄だが数枚なら衣類の間に挟めば割れずに持ち帰れる。クルーズで立ち寄った知人から頼まれた店で土産を探すついでに自分用にと買ったものだ。一方の写真上はハワイで買ったラルフローレンのテーブルウェアからインペリアルガーデンのケーキ皿。

② ガレットブルトンヌ
ブルターニュ地方の代表的なお菓子といえばガレットブルトンヌ。英仏海峡に面したブルターニュ地方は英国との結びつきが強い。イギリスのショートブレッドが持ち込まれるとブルターニュ地方の名産バターをふんだんに使ったブルターニュ風(ブルトンヌ)焼き菓子が誕生したようだ。サクサクした味わいはイギリスのウォーカーズにも似た感じだが確かにバターのコクが感じられる。

【BVLGARI】
① ドルチェデコ
こちらはブルガリのコーヒーカップ&ソーサー、名前はドルチェデコ「おもちゃのお菓子」という意味だそうでカップ自体がケーキを模したものになっている。ふんだんに金彩を施したデザインはブルガリならでは…。1884年ローマ創業のブルガリは宝飾店がスタート、現在はLVMHの傘下にある。2023年には東京にブルガリホテルズ&リゾーツを建設予定らしい。

② ローゼンタール
ブルガリのドルチェデコ、イタリアのブランドだがバックスタンプを見ると窯元はドイツのローゼンタールに依頼している。ドイツといえばマイセン地方で作られれる磁器が有名だが、1879年創業のローゼンタールもドイツの名窯、多くの有名食器ブランドがアジア生産にシフトする中ドイツ生産にこだわっているという。


【イタリアの絵皿】
① ポンテベッキオ近くの食器屋にて
フィレンツェといえばリチャードジノリと共によく立ち寄ったのがベッキオ橋近くの食器屋。一点毎に絵柄の違う飾り皿が気に入ってまとめ買いしては日本へ宅配便で送ってもらった。何しろ陶器は割れやすい。店専用のパッキングに保険も掛けたので皿自体の値段よりぐんと割高になったが旅の思い出としては最高だ。

② 飾り用の紐通し穴
最初から飾り用に紐を通す穴の開いている絵皿。地元のトラットリアやリストランテの店内に飾られている絵皿を見ると、自分の家に飾りたくなってしまう。もちろん皿本来の使い方をするのも良い。鮮やかな色目の皿はなんといってもイタリア料理を盛り付けると器も料理も引き立つ。

③ 皿の役割
下ごしらえなしにすぐできるクイックパスタを試しに盛り付けてみたところ。イタリアンな皿に盛り付けると、昔乗り換え列車を待つ間、ボローニャの駅中食堂で食したボロネーゼを思い出してしまった。本場もののパルミジャーノをすりおろして上からふりかけ、良く冷えた白ワインをお供に気分は上々、器も料理のうちというが皿の役割を実感する。



④ 小皿
こちらは同じ食器屋から仕入れた小皿。夏のお供ビールに合うイタリア風の小料理といえば…ニンニクとバジルが食欲をそそるトマトのブルスケッタ。美味しいバゲットとトマトにニンニク、バジルとオリーブオイル、それに塩・胡椒があれば簡単にできるので作ってみた。トマトの水気でパンがしなるのでバゲットを薄く切りすぎないのがコツとか。

【RRLのマグシリーズ】
最近のお気に入り
最近凝っているのがRRLのマグカップ。毎シーズン違う絵柄で発売されるマグカップは信州の山小屋で使うのが如何にも似合う。表面がひび割れたような模様が浮き出たストーンウェアは炻器(せっき)とも呼ばれ丈夫で耐水性も高いのが特徴。ラギットなイメージのRRLらしい仕上がりになっている。

前編と後編の2回にわたって紹介したテーブルウェアだが、ある雑誌を読んでいたら「料理が一番映えるのはなんといっても白無地」だそうだ。では白の次は…というとなんと「黒の器がお勧め」とのこと。黒は和洋どちらの料理とも相性が良く、最近は黒のスレート皿も人気だとか。そういえば黒の器は大皿がある程度…あと揃えるとしたら黒かな…なんて思ってしまう。

あとはブルー無地や白地にブルーの模様が描かれたものは安定の使いやすさがあるし、グリーンやイエローといった食材に近い色目も料理が映えるようだ。最後にカトラリーやグラス、箸や箸置きなど脇役にも心を配るとお洒落な食卓になると雑誌は結んでいる。なるほど良い靴がスーツを引き立てるようなものか。いや中々どうしてテーブルセッティングは実に奥深い。

By Jun@Room Style Store