お気に入りのコート | Room Style Store

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2022/10/23 15:19


同じようなものを幾つも買うのはもったいない。どうせならまだ持っていないものをと思いきや似たようなものをいくつも買う人が意外に多いという。元来「集める」という行為や「集めたい」という気持ちは人間の本能と近いらしい。色が違う、素材が違うと言い訳しながらいつの間にか似たものが増えてしまう、よくある話だ。

所謂コレクター癖(収集癖)は女性より男性に多いようで①狩猟本能や②優位性の示威が指摘されるがマイナビウーマンでは③限定品に弱い④こだわりがある⑤世界観がある⑥突き詰める⑦寂しがり屋⑧断捨離が苦手といった特徴が挙げられている。全て当てはまる訳ではないが中には「確かに言えているかも…」というものもある。

週末の衣替えでよく似たダッフルコートを3着も発見。色は違うがどうせならまだ持っていないトレンチコートやカバートコートにすれば良かったのに…とも思う。さりとて後悔してるか?と問われれば後悔しないのもコレクターの特徴とか。そこで今回は件のダッフルコートを中心にコレクター度セルフチェックをしようと思う。

【バーバリーで買う】
(1) 襟付きダッフルコート
初の本格派ダッフルコートは英国の名門バーバリー。海外駐在時に買って既に25年、旧タグものだけに最近のスラっとしたやつよりずんぐりむっくりだが今も立派に現役だ。レザーのストラップが当たる部分は身頃が擦れているがそれも味わいのうち、処分する気にはなれない。コレクターの特徴⑧断捨離が苦手とは正にこのことか。

(2) デタッチャブルフード
着脱可能なフードと襟付きの外観。襟があるとスーツの上に着た時様になる。一方フードの方は外すことは殆どないがあると嬉しい機能だ。有名どころではエルメスのダッフルも襟付きだったし何年か前グローバーオール(Gloverall)のオンラインでも見かけた。残念ながら最近はフード一体型ばかり…ひょっとしてこれが③限定ものに弱いということか…。

(3) グレーの着こなし
グレーを中心としたコーディネートは暗い配色になりがちな冬の装いを明るく見せる効果があるそうな。有名どころはブルネロクチネリだがコツは①白と黒をアクセントに取り入れる②グレーのグラデーションを意識する③差し色を入れると良いとのこと。バーバリーのチェックならさしずめ格子の中の赤が差し色か…。

【参考資料①】
ブルネロクチネリのグレーコーデ
ブルネロクチネリ氏本人のグレーコーデ。クチネリといえば今や同系色のレイヤードルックがすっかり定着しているようで、昨年の秋冬コレクションでも度々登場している。微妙な濃淡をつけたベージュ系のレイヤードなんて見るからに暖かそう…。元々カシミヤで有名なクチネリだけに如何にもリッチな雰囲気が伝わってくる。

(4) グレートンプソン
写真のネクタイは「おぉバーバリーチェックのネクタイ…しかもスコットランド製」と思って手に取るとストラスムーアというメーカーの名前が。バーバリーそっくりだが由緒正しいタータンらしい。調べてみるとトンプソン卿のためにデザインされたらしく「グレートンプソン」という名だそうな。ひとつひとつ⑥突き詰めるのもコレクターの習性だとか…。

(5) 洒落たカーディガン
トラッドマンはグレー好き、それを知ってかアメトラの総本山ブルックスブラザーズはグレー使いが上手い。写真のカーディガンは前身頃が千鳥格子で肘当てが共柄の凝ったもの。一方隣のフラットキャップ(ハンチング)もグレーのツイードに差し色の赤(白)格子入り、NYトラッドのポールスチュアートならでは。グレーの珍しいものに手を出すのも③限定ものに弱い証拠か…。

【参考資料②】
アップグレードしたグレーカーディガン
こちらは更にアップグレードしたグレーカーディガン。ブルックスの全アイテムの中で「オフィスカジュアル」部門アワードの逸品だとか。スコットランドのHAWICK社製カシミヤ100%の肌触りはソフトで滑らか。ショールカラーの襟とシャツ式の袖付けはジャケット代わりにもなる。値段もジャケット並みだが①狩猟本能よろしくカートに入れていた。

(6) ブルックスのBDシャツ
襟付きのダッフルといえば確かNYのブルックスブラザーズ本店で見かけた英国製のダッフルコートも襟付きだったはず。違いはブルックスの方がジッパー付きの身頃で前身頃をしっかり閉じる機能が付いていたところ。そんなことを考えていたら白シャツも90年代のブルックス特製ロイヤルオックスBDを引っ張り出していた。

(7) ブラック&バーガンディー
ブラックのパンツとバーガンディの靴は「No」と説くサイト(Bespoke Unit)もある。一方Style forumでは"Burgundy shoes with a black trouser?"の質問に対して”Favorite Combo”という声も多い。バーバリーチェックの差し色は赤、それを靴に持ってくるならバーガンディしかない。勿論自分も賛成派だ。ただこれを果たして自分の⑤世界観があると解釈すべきか…。

(8) LWBを履く
バーガンディのLWB(ロングウィングブルッチャー)と黒パンツのコンボ。最近はバリーラスト以外にミリタリーやモディファイドなどラスト違いが豊富らしい。アッパーやソール、アイレットに加えてラストも変えて差別化を図るショップ別注…中にはLWBの全ラスト制覇という強者もいるがきっと立派なコレクター道を進んでいるのだろう。

【参考資料③】
バーバリーの小物
90年代の日本で大人気だったバーバリーチェック、安室奈美恵の影響から女子高校生の冬の巻物で大ブレイクしたのが懐かしい。丁度海外に駐在していた頃のこと、3色店頭に並ぶや否やカシミヤ版を全色一気買いした。その後もバーバリーチェックのネクタイが出るととりあえず買ってみたり…これが①狩猟本能ということだろう。

【オールドイングランドで買う】
(9) オペラ座界隈のランドマーク
海外勤務中にロブパリで注文した関係で帰国後はフランスに行く機会が増えた。しかもロブパリに続きコルテでも靴を注文したのでロブパリとコルテにほど近いオールドイングランドは憩いの場にぴったりだった。店内は余計なセールストークもなく快適だったが地下の靴売り場の店員は別…靴好きの彼と靴談義をしたものだ。

(10) インバーティアもの
英国製なのにオールドイングランドでしか買えない色遣いに惹かれて買った2着目のダッフルコート。正に③限定品に弱いという特徴にあてはまる。肉厚で柔らかな生地は有名なムーアブルック社製、エルメスも使う優れものだ。縫製は傘下のインバーティアが担当、ところがムーアブルック社は90年代に倒産しインバーティアも消滅したという。

(11) 上身頃の留めボタン
ではいったい1990年代末に買ったこのコートはムーアブルックのデッドもの?インバーティアも消滅したのなら製造はどこが?…と謎は多い。コレクターは④こだわりがあるらしく興味をもつとのめり込みやすいとか。肝心の着心地はトグルで留めるだけでは身頃の収まりが悪いので写真のように留めボタンが付いていると重宝する。

(12) インナー
倒産後ムーアブルック社のヘリンボーン生地は幻の素材になったが2013年にジョシュアエリスによって復刻されたと聞く。復活後の生地といつか比べてみたい。せっかくパリのオールドイングランドで買ったダッフルならフレンチアイビーで…とも思うが用意したシャツやベストにパンツはどれもアメカジ寄り、同じテイストのものを集めるのは⑤世界観があるに該当するらしい。

【参考資料④】
オールドイングランドでの買い物
オールドイングランドのニットや靴、ジャケットやコートなど多くは店名のとおり英国製が多かった。それでも数少ないフランス製だったので記念にと一本購入したのが上のネクタイ。ネクタイの下のニットはスコットランド製のカシミヤ100%丸首セーター。フレンチブルーの色目が気に入って買ったもの。


(13) シャツとベスト
シャツはシップス別注のギットマンブラザーズBDシャツ。フェアアイルベストはポロラルフローレン。柄もの同士の組み合わせも同系色だと結構上手く行くものだ。因みに目下ドル高が進みアメリカ製品は軒並み価格が高騰しているが、それでも写真のギットマンやアイクべーハーはルイジボレッリよりリーズナブルだ。

(14) ベルト周り
厚い革ベルトはハケットで購入したもの。以前も紹介したがブライドルレザーを使った英国製だ。当初はロウ成分が白い粉のように表面に浮き出ていたが最近は出きったのか枯れたように表面に小皺が出ている。補油をと思うものの油分は何がいいか、そもそもベルトにクリーム塗ってパンツに滲まないか…悩みどころだ。

(15) ドーバー
オールドイングランドといえばエドワードグリーンの靴が有名。2000年代にコルテの帰りに立ち寄った頃はジョージクレバリーの既成靴(クロケット製)も扱っていたと思う。(9)でもふれた靴売り場の青年はかなりの靴好き、写真のドーバーを見て彼は「ポールセン&スコーンのドーバーですね…」と良く分かっているのに驚いた。

(16) ドーバーを履く
今となっては数少ないヒュームドオークタンのドーバー。ビームスが扱っていたポールセン&スコーンか青山と代官山のロイドフットウェアでしか買えなかったものだ。当時は「これ以上履き心地が良い革靴なんてないだろう」と思い込んでいた。同じ靴好きの仕事仲間を誘って青山のロイドに連れて行き、強力にプッシュしたことが懐かしい。


【参考資料⑤】
フランス繋がり
せっかくなのでフレンチアイビーらしく靴はJ.M.ウェストンで…180ローファーが定番とはいえゆったりとしたダッフルコートにはハントダービーの方が良さそうだ。手縫いノルウィージャン製法の既成靴では最高峰のハントダービーが我が家に来たのが2019年、初ローファー購入が1988年だから31年経っていることになる。これが⑥突き詰める性分ということか…。

【ラルフローレンで買う】
(17) 米国製のダッフルコート
こちらはオークションで落札したポロラルフローレンのダッフルコート。グレーにグレープと続いて3着目はグリーン、殆ど色ち買いに等しい。90年代のアメリカ製ダッフルは写真のような無地以外にもブラックウォッチや大柄チェックものもあって、少し前までebayあたりでも見かけたのに最近のビンテージウェアブームのせいか一気に出物が減っている。


(18) フェアアイル柄
コートに合わせてブーツとキャップ以外全てポロアイテムで組んだベリーラルフな着こなし。因みに同じメーカーなりブランドのアイテムで揃えるのは④こだわりがあるのか⑤世界観があるのか⑥突き詰めるのか…いったいどれだろう。ところでこのコートの色目だが「深みがあって良い色ですね」と仕事仲間に評判が良い。流石はラルフだ。

(19) 緑好きはカントリー志向
コートに合わせてグリーンのベルトを…ふと見回すと手持ちのツイードやフェアアイル柄にレップタイやポケットスクエアなどなど…グリーンのアイテムが多いことに気付く。色による性格判断を読むとグリーン好きは「都会よりも田舎で過ごす方が性に合う」らしい。こじつけか?とも思うが信州で過ごす機会が増えたことを考えると当たっているかも…。

(20) Made in USA
ラルフローレンの古着でも値段が高騰しているアメリカ製…ポロカントリーのアメリカ製だと2000㌦、写真と同じダッフルコートでブラックウォッチ柄だと500㌦もする。もはやビンテージものといえるアメリカ製のラルフ。なぜアメリカ製に④こだわりがあるのか…と考えるとやっぱり1975年発刊のMade in USAカタログの影響だろうか。

(21) フェアアイルカーディガン
こちらは旧タグの手編みフェアアイルカーディガン。コットンにカシミアを加えた薄手のカーディガンはジャケットの下に着ても様になる。最近下北沢に次々と古着屋がオープンしたそうだが既に古着ブームはピーク、今後はビンテージものだと言われている。単に古いだけでなく現在は手に入らない素材やデザイン、数の少なさや保存状態の良さが鍵らしい。

(22) RRL×コーンデニム
写真は廃業したホワイトオーク工場のコーンデニムを使ったオールアメリカンメイドのRRL。ビンテージの定義に「その当時しか生産されておらず復元が難しいもの」がある。後継W.O.L.F(ホワイトオークレガシーファンデーション) が立ち上がった今、コーンデニムの価値はより高まるだろう。衣は勿論、食や住における素材への④こだわりがある人は結構多いのでは…。

【参考資料⑥】
RRLデニムの魅力
一昔前のストーンウォッシュものと違って最近のユーズド加工はよく出来ている。ポケット付近の擦れやヒゲにハチノスなどリアルな加工もお手のものだ。一番上のデニムには大小11ヵ所もリペア加工が施されている。リペア加工は高い技術が必要なだけに穴の数だけコスト増になるらしい。かくして1本6~7万円するデニムが出来上がるという訳だ。

(23) ブーツ
厚手のボーダー柄コットンウールソックスとクロケット&ジョーンズの傑作ブーツCHUKKAの組み合わせ。因みにチャッカブーツを履く時のパンツの丈はブーツの上端にパンツの裾が来るかちょっと届かないくらい…というのがポイント。デニムだとそうはいかないのでロールアップしてソックスをチラ見せするのがコツらしい。

(25) CHUKKAの履き心地
ソックスが見えるか見えないかくらいにロールアップして履いた図。ライニングなしの柔らかなアッパーが足に吸い付く…前も書いたが既にこの靴を色違いで2足確保している時点で①狩猟本能むき出しだが同じクロケットでもライニング有りと無しでは雲泥の差があるだけにこればかりは仕方ない…。

さて、今回は新旧お気に入りのダッフルコートを中心に断捨離せずに使えるかどうか…タンスの肥やしにならず満遍なく使いこなせるかどうか…などあれこれ考えながら自身のコレクター度をセルフチェックしてみた。結果は全8項目のチェックポイントの内①狩猟本能③限定品に弱い④こだわりがある⑤世界観がある⑥突き詰める⑧断捨離が苦手の6項目に当てはまった。

結果はコレクター度75%…どうやらギリギリ中級レベルにとどまったようだ。これが上級レベルだと実例として❶未開封ものが山のようにある❷色違いはコンプリート❸ロゴ違いはコンプリートなど特有の行動がみられるらしい。特に❷の「色違いはコンプリート…」なんて項目にはドキッとしてしまう。なお上級の上に廃人レベルもあるらしいが幸いなことに該当せず…。

そういえばコレクターを卒業する方法に部屋の大掃除というものがあった。たまたま今日は掃除の日…まずは断捨離にチャレンジしてみようと思う。

By Jun@Room Style Store