ローカル鉄道を訪ねて | Room Style Store

Blog

2022/10/31 06:24


千葉県のいすみ鉄道と小湊鐡道は共に首都圏から最も近いローカル線として注目を集めている。旧国鉄の"木原線"を引き継いだ第三セクター運営のいすみ鉄道は外房線の大原が起点。一方京成電鉄子会社の小湊鐡道は内房線の五井駅を起点としている。両鉄道は内陸の上総中野駅で接続、乗り継げば房総半島の横断も可能だ。どちらも非電化路線で旧型ディーゼルカーが運行するなど共通点が多い。

いすみ鉄道の沿線住民は約3万人。10万人以上でないと経営は難しく鉄道本来の役目が成立しない地域にあって当時ブームになりつつあったローカル線の旅に着目し、いすみ鉄道に乗りに来ることを目的とする「観光鉄道」を目指したという。一方の小湊鐡道も人口減少で事業環境が厳しい中、トロッコ列車の運行や駅前に自然を取り戻す「逆開発」で乗降者の回復を目指していると紹介されていた。

住民が「駅舎の壁を塗り替え」に精を出すいすみ鉄道と「藪の手入れや菜の花の種まきを自ら行う」小湊鐵道、どちらも地元との協力が欠かせない。「鉄道も100年経てばその土地の一部となり得る」と語る経営トップの言葉を確かめるべくまずは今回小湊鐡道を訪問することにした。

※写真は小湊鐡道の養老渓谷駅

(1) 月崎駅に着く
夜明け前に出発、レインボーブリッジで朝焼けを見ながらアクアラインで一気に木更津東へ…。高速を降りて適度なワインディングロードを走ると間もなく最初の目的地月崎駅に到着。手入れの行き届いた駅母屋とプラットホームは登録有形文化財に指定されている。2019年開業当初に近い形でリニューアルしたばかり。とても綺麗だった。

(2) 森ラジオステーション
近くには苔むしたような不思議な建物がある。「森ラジオステーション」という名前だそうで、元は鉄道保線員の詰所だったものを2014年開催の国際芸術祭にアートとして出品したとある。今も当時の姿のままで残されており、苔や山野草の絡まる建物と木立の織りなす光景はインスタ映えすると人気のスポットらしい。

(3) 月崎駅の時刻表
小港鉄道は全線単線、月崎駅では平日でも1~2時間に1本という運行状況だ。よく見ると平日の9時台には全く列車が走っていない。TVでもローカル線やローカルバスの旅が放映されているが、実際訪れると本数の少なさに改めて驚く。そういえば昔、福島県の会津地方に昼間は列車の走らない日中線という支線があって、わざわざ乗りに行ったことを思い出した…。

(4) 下り始発列車の入線
駅前にはヤマザキショップがあって硬券切符(入場券)が買える。休日はローカル線の旅を味わう人が記念にと切符を求めて立ち寄るらしい。残念ながら営業時間前だったので店横の自動販売機でホットコーヒーを買って暖を取った。と間もなく踏切の警報機が鳴り始め、駅のホームで待つことしばし…6時36分発上総中野行下り始発列車の到着だ。

(5) 始発列車を見送る
上総中野行の始発列車を見送った図。女性の車掌は乗降客がいないのを確認し、出発の合図を送るなど颯爽とした仕事ぶり。小湊鉄道の駅は無人が多く、駅で改札を兼ねて切符の回収を行うのも車掌の仕事だ。そういえば都心から御殿場のアウトレットに行くなら御殿場線を使うと同じような光景に出会える。タッチ&ゴーの時代になんともレトロで良い。

(6) 愛車の燃費
今回はハーレーのフォーティーエイトで訪問。満タンで7.9ℓと容量が少ないピーナツタンクだが格好良さと引き換えとあらば致し方ない。一応燃費は20㎞/とまずまずだが100㎞過ぎると心もとなくなる。「早めの給油」が鉄則…とこの日も早朝高速を降りてすぐのガソリンスタンドに寄ったら「営業は7時からです…」と言われた。セルフ24時間営業の都内とは勝手が違う…。

【参考資料①】
シートとバックレスト
純正パーツが豊富なハーレーは購入時にあれこれ取り付けると総額が一気に増える。納車時に2人乗り登録だけしておいてタンデム一体型のコブラシートは後付け。事前にインチ工具が必要なのもハーレーならでは。写真のバックレスト(背もたれ)は便利なデタッチャブル方式、さらに背面に防水バックを付けると雨具や着替え入れに重宝する。

(7) レザーパンツ
ハーレーといえばレザーパンツ。夏場は流石に暑いが秋になれば絶好の季節到来だ。写真は上がポロラルフローレンで下がポロジーンズカンパニー。どちらも5ポケットのジーンズタイプで色は上がブラック、下がブラウン。バイク専用のレザーパンツは立体的でプロテクター付きなど機能性や安全性に優れているがバイクを降りると見栄えが今一つになる。

【参考資料②】
茶レザーパンツ×エンジニアブーツ
ハーレー乗りというとターミネーターのシュワちゃんよろしく黒レザーパンツに黒エンジニアブーツが思い浮かぶ。一方写真はレザーパンツもエンジニアブーツも茶色…黒から茶色に替えると印象もグッとソフトになる。スーツやジャケパンと紐靴、デニムとローファーなど日頃慣れ親しんだ組み合わせとは全く違うテイストも良いものだ。

【参考資料③】
黒レザーパンツ×ベックマン
こちらは黒のレザーパンツとレッドウィングのブラックスミス。やはり黒同士だとかなりハードな印象になる。黒タンクのオールブラックハーレーなら抜群の相性だろう。写真のレッドウィングをはじめチペワやウェスコ、ジュリアンブーツなど有名どころはなぜかブラックのアッパーに茶色のウェルトの組み合わせが多い…。


(8) 上総鶴舞駅
次に向かったのは上総鶴舞駅。駅前にはバスの発着所があり、列車の到着を待つように始発バスが待機している。行き先を見ると「茂原駅南口」、運営は同じ小湊鉄道の路線バス部門だ。因みに小湊鉄道の需要を調べてみると一日の平均乗車数は8人…都内ではあり得ないが地域住民にとっては大切な足なのだろう。


(9) 有形文化財
かっての賑わいを物語る出札口と駅舎内。月崎駅と同じく無人駅だがとても手入れが行き届いている。これも鉄道会社と地域住民の協力体制の賜物。訪問者としては貴重な大正時代の建物がこうして今も残っていることに感謝の念しかない。窓の先に見える古いホームは現在使われていないが、昔は列車が行き交ったのだろう。

(10) 関東の駅100選
(9)の写真で見えたホーム側から上総舞鶴駅を写したもの。草むした古い島式の2線ホームが雰囲気を盛り上げる。東京から僅か100㎞の小湊鐡道には古き良き時代を偲ばせる名所が随所に残っている。大正時代の開設当初の面影を残す瓦葦屋根の駅舎には春になると桜が咲き誇るという。さすがは関東の駅100選に選ばれるだけのことはある。


(11) 上り始発の入線
やがて踏切の警報が鳴り始め養老渓谷行きの列車が入ってきた。キハ210とキハ212の2両編成だ。車両の基本設計は国鉄のキハ20だが前照灯が中央1灯から左右2灯に変更されるなど小湊鐵道独自の仕様らしい。中にはダイハツのディーゼルエンジン搭載車両もあるとか。昭和時代、日本各地の鉄道風景を求めてキハ20に何度も乗ったことが懐かしく思い出される。

(12) 出発進行
ホームに降りた客から切符を受け取る車掌。降車客は駅前で待つバスに乗ったのだろうか…。駅のホームと列車のドアとの段差が結構ある。子供やお年寄りだとひと苦労するかもしれない。そういえば欧州の鉄道もホームと列車の段差がかなりあったな…昔の旅を思い出すうちに車掌の合図で列車のドアが閉まり、列車の出発だ。

(13) のどかな景色
養老渓谷行きの列車が上総鶴舞駅を出発したところ。黄金色に染まる水田の中を進む列車とススキの穂がなんとも絵になる。小湊鉄道の魅力は何といっても非電化路線であること。ポールが立ち並び架線が張られてしまうと写真のようにのどかな雰囲気は出ない。この景色を見るだけでも来た甲斐があるというもの。


(14) ヘルメット
バイクに乗る時一番大切なのがヘルメット。昔から買うならアライかショウエイの純国産派だ。写真はハーレーNo.1ロゴヘルメットだが帽体はアライ製。上のようにシールドなしでゴーグルを付けて被るタイプだが高速では結構辛いのでシールド(スモークVer)をつけている。まだまだ小さな虫が飛んでいてシールドに当たる。素顔のままじゃ大変だ…。

(15) 養老渓谷駅
上総鶴舞駅から養老渓谷駅へ。途中渓谷の絶景を見ながらワインディングロードを駆け抜けるとほどなく目的地に到着、千葉県有数の景観を誇る「養老渓谷」の玄関駅だ。乗降客も多いようで時間帯有人駅になっている。駅前も駐車場や貸自転車、交番や自動販売機などひととおりの施設が揃っていた。

(16) 手入れの行き届いた駅構内
上総鶴舞駅で出発を見送った2両編成の列車が折り返し五井行きとなって出発を待っている。駅のホームはゴミもなく清潔な上に藤棚が張られるなどガーデンさながら。藤の花が咲く春は訪問客を和ませるのだろう。房総随一の温泉郷といわれる養老渓谷、今回はバイク訪問だったが小湊鉄道で来るのも大いにありだと思う。

(17) 出発を待つ列車
ホームの屋根や柱など木造の駅舎は近代的な鉄筋の駅舎を見慣れた人には懐かしさを感じさせる。その分手入れも大変なようで定期的にペンキを塗ることが欠かせない。調べたところ塗装の耐用年数はおよそ10年、これだけ立派な屋根や柱のある駅だとペンキの塗り直しもさぞ大変だろう。

(18) 五井行き列車の出発
秋の日差しを受けて養老渓谷を後にする五井行きの列車。のどかな田園風景の中を走る小湊鐡道の起点、五井駅はJR内房線との接続駅。数少ない有人駅で駅前には飲食店や銀行にホテルなど都心と変わらぬ街並みが広がる。東京に隣接する都市部と小湊鐡道やいすみ鉄道が走る地方のギャップが千葉県の魅力の一つだと思う。

(19) 房総ローカル線の旅
今回はバイクで訪れたが小湊鐡道に乗るなら1日フリー乗車券がお得のようだ。値段は1,840円でモバイルチケットも有り。ローカルの旅をハイテクチケットで楽しめるなんて小湊鐡道も中々やるな…という感じだ。更に上総中野から先は外房の大原駅までいすみ鉄道と提携して房総横断記念乗車券(前進のみ後戻りは不可)も用意されているという。

(20) 保温パンツ
レザーパンツはちょっとハードだな…と思ったらジーンズやコットンパンツもイケるのがフォーティーエイトの魅力。上はヒートテックストレッチジーンズ、下は防風スリムフィットチノ、どちらもユニクロだがバイク用に最適のギアだ。バイクを降りても様になるし、一旦バイクに乗れば無類の暖かさを誇る。街履き用と違って裾は長めに仕上げて履くのがコツだ。


【参考資料④】
防風スリムフィットチノ+コンバース
日頃履き慣れたチノパンとほとんど変わらない防風スリムフィットチノ。合わせる靴も秋ならくるぶしを覆うコンバースのハイカットで十分だ。ユーザーのレビューを読むと「バイクに最適」なんてコメントもある。真冬は下にヒートテックのタイツをかませれば問題なし…。HPで調べたらこの秋冬はラインナップされていないようだ、残念。

(21) 静かなホーム
列車が出発した後の静かなホーム。養老渓谷には渓流沿いのハイキングコースが整備されていて途中5つの滝を間近で見ることができるし、囲炉裏懐石やジビエ料理を楽しめる宿、日帰り温泉施設も充実している。一帯は黒湯といわれる焦茶色の温泉が特徴、泉質はナトリウム炭酸水素塩で肌がすべすべになるという。時間があれば是非立ち寄りたい。

同じことを繰り返しながら違う結果を望むこと、それを狂気という…。アインシュタインの名言を座右の銘にしたいすみ鉄道の社長は国の提案「路線バス」案を断固拒否したという。バスに切り替えた全国86の地域の殆どで地盤沈下が進むのを見て「同じ轍は踏むまい」と自然豊かな沿線をムーミン谷に例え、車体にシールを貼ったムーミン列車を走らせる驚きの手法で黒字化を達成した。

更にいすみ鉄道は昭和40年製の古いディーゼルカーをJRから安く買い入れ運行することで鉄道マニアも呼び込んだ。ムーミン列車は女性客に、ディーゼル列車は男性客にと商品の品揃えを充実させ「他とは違う取組」で結果を出したという。一方の小湊鐡道は単体で黒字といすみ鉄道とは状況が異なるが、自動車の普及で減少していく乗者数に危機感を覚え様々な対策を打ち出している。

小湊鐡道は起点である内房線の五井から上総牛久までは黒字だが上総中野までの残り10駅間は赤字だという。会社は路線バスの収益で補っているが赤字区間を切り捨てることなく「里山トロッコ列車」を走らせるなど経営努力を続けてきた。昨年はコロナ禍の影響で収益が一気に3割減という厳しい結果となったが今年(2022年)の7月には「夜行列車」を走らせるなど新たな取組を推進している。

いすみ鉄道の前身は木原線、内房の木更津と外房の大原を結ぶ予定でその名を付けたという。一方の小湊鐡道も内房の五井から外房の安房小湊を結ぶ予定で小湊鐡道と名乗ったようだ。共に房総半島横断を目指した両鉄道が志半ばとはいえ上総中野駅で出会い半島横断が実現したことになる。そんな過去を知った上でこの地を訪れると旅の魅力もまた格別だ…。

By Jun@Room Style Store