冬の買い物 | Room Style Store

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2023/01/17 16:04


インバウンドの回復も重なり大手百貨店5社の12月売上が揃って前年超えとの報道。その一方、長年愛着を感じていた西武デパートの売却が決決まり投資ファンド傘下のヨドバシカメラが池袋本店や渋谷店に進出するようだ。長引く百貨店業界「冬の時代」に流通最大手のセブン&アイですら再生のかなわなかった西武百貨店の行く末が気になる。

その理由は簡単、昔も今もファンであるラルフローレンを初めて日本に引いたのが西武百貨店(以下西武と記す)だからに他ならない。1976年コティ賞の受賞を契機にラルフローレン事業部を立ち上げラルフ初の海外進出を日本にもたらした先見性…ライセンス契約とはいえラルフローレンの服が欲しければ西武に行くしかなかった時代を思い出す。

そこで今回は「冬の買い物」を楽しんだ西武池袋店と西武にまつわる話を書こうと思う。

※扉写真は秋冬物の購入品

(1) ラルフローレンといえば…
最近は限定色の強いRRLがお気に入り…シーズン毎に何かしら購入している。写真のカーディガンも今季もの。年末を過ごした信州の山小屋に持ち込んで撮影。陽光の下でくっきり浮かび上がるネイティブパターンは如何にもRRLらしい。店内で見るよりも自然の中で見た方が一層魅力的に映る。

(2) カーディガン(裏)
前面に合わせて背中もチマヨ柄かと思いきやまさかのロードランナー。1967年から放映されたアメリカンアニメ「ロードランナーショー」を思い出す。コヨーテがフルスピードで走るロードランナーを捕らえて食べようとするも毎度失敗するというワンパターンだがトム&ジェリーと共に懐かしのアニメだ。

【参考資料】
ロードランナー
写真は実物のロードランナー。日本ではミチバシリと呼ばれている。飛ぶのは苦手だが発達した足を持ち時速32㎞以上のスピードで地面を走る。ロードランナーの名に恥じぬ瞬足ぶりだ。アメリカンネィティブの神話に登場したりアメフトのチームロゴやナイキのシューズなどアメリカではなじみのある名前だ。

(3) ポケットのステッチ
両ポケット縁のブランケットステッチが如何にもRRLらしい手仕事を感じさせる。1977年に西武が100%出資してできたPRLジャパンも2003年には新会社として再出発。この時点で出資比率は5%に低下していた。原宿クエストのポロショップが閉店したのもこの頃、第1期RRLを買った店だけに残念だった。

(4) メランジ
上品なピンク色のボディはコットンやウールにリネンなど13種類の糸を編み込んだもの。なるほどメランジ調の絶妙な色合いは単糸だけでは出せない。原宿店の閉店から3年後の2006年には表参道店が完成。翌年にはPRLジャパンに45%出資していたオンワードが全株を売却、アメリカ本社の直轄となってアウトレットへのポロ出店が一気に加速した。

(5) ショールカラー
RRLのカーディガンといえばヘチマ襟が定番。今季秋冬物のランナップもカーディガンは全てショールカラーという徹底ぶりだ。IVY世代はヘチマ襟と聞くと秋冬物ならVANやマクレガーのドンキーコートを思い浮かべるはず。ローゲージの糸で編まれたカラー(襟)がふんわり折り返されるのが堪らない。

(6) 信州にて(その1)
ウール混のシャツと組んで試着…やや肌寒いが秋口から春先まで着回せるのが嬉しい。西武が100%出資したPRLジャパンの比率を5%に下げた2003年は西武が債権放棄や私的整理に加えそごうと統合した年でもある。2006年にはセブン&アイの傘下に入り翌年にはPRLジャパンから撤退するなど紆余曲折があったことをずっと後で知った。

(7) 信州にて(その2)
日差しがあれば真冬でも暖かいが太陽が雲に隠れると一気に寒さが忍び寄る。カップに注いだコーヒーで手を温めつつ野外作業を小休止。デニムとレッドウィングが定番の田舎暮らしにはネイティブ柄のカーディガンが好相性。馴染みのテイラーにツイードジャケットでも…と考えたがあまり着なさそうなのでブレザーに変更したところだ。

(8) 限定デニム
こちらは恒例のRRL限定デニム。一時は限定企画廃止か…と噂されたが中々の充実ぶり、勿論メイドインUSA。表参道のブティックが出来た後も西武池袋のポロラルフローレンは度々利用していたがここ数年は新型コロナの影響もあって客足が遠のいた感がある。デパ地下の賑わいとは裏腹に買い物した日も売り場は静かに時が流れていた。

(9) ビンテージ5ポケット
RRLでは定番のビンテージ5ポケットシリーズ。一番深い股上とストレートレッグで仕上げた、ラルフローレンで最もリラックスしたシルエットが特徴とのこと。会計の際以前売り場で薦められダウンロードしたセブン(&アイ)マイルプログラムを出そうとしたら店員から「間もなく終了みたいです」と言われ売却話の影響を間近に感じた。

(10) バックスタイル
ビンテージ5ポケットの名に相応しいバックスタイル。センターループの下に収まっているシンチバックはベルトを通すことを想定してやや下寄りに付いている。レッドキャストと呼ばれる赤みのあるコットンネップのセルビッジデニムは日本製。例によって「最初の90日間は洗わないように」との注意書きがある。

(11) シンチバック
シンチバック裏側のセルビッジについ「オオッ」と喜んでしまう。両側のサスペンダーボタンも一見メタル風だが実際は合成樹脂の軽いタイプ。これならサスペンダーのフックも傷まない。西武の売却が正式に決定するのが2023年の3月。西武百貨店で発行して貰ったクラブオンカードもやがて使えなくなるのだろうか。

(12) フラッシャー
デニム生地は軽めの11¼oz。「春夏物?」との問いに店員は「アメリカでは秋冬物」との返答。確かに10oz以下がライトオンス(春夏もの)で10~15ozがレギュラーオンス(秋冬物)のようだ。そんなやりとりが楽しい西武池袋店での買い物だったが今後はヨドバシカメラの出店で売り場も大きく変わるらしい。あと何回買い物ができるか…そんなことを考えてしまう。

(13) セルビッジ
サンフォライズドデニムで知られる防縮加工はSanforized®と表記するのが正しいとのこと。なんでも1930年に開発者のサンフォード(名前)によって商標登録された技術だとか。ジーンズがボタンフライからジップフライに進化できた偉大な(?)発明らしい。尤も防縮加工デニムでもRRLはボタンフライに拘っているが。

(14) オリーブグリーンのデニム
こちらはオンラインショップで早々と完売になったオリーブグリーンの限定デニム。基幹店の表参道でも在庫がなく諦めていたのにまさかの西武池袋店で発見。そんな頼りになるイケセイ(池袋西武の略)の将来を憂いてるのが地元の豊島区。区長自ら「今まで築き上げてきた文化のまちの土壌が喪失する」と訴えている。

(15) バックスタイル
RRLの中で一番細身のスリムフィットはフィッティングもタイト。ビンテージ5ポケットよりウェストを2インチ上げた32インチでちょうどよかった。西武池袋店の1~2階はルイヴィトンを始めロエベやグッチ、ティファニーが並ぶ。そこに家電量販店が入れば高級ブランドが撤退し集客力が落ちるのではという声も多い。

(16) フラッシャー
フラッシャーを読むとオリーブ色の縦糸(OLIVE WARP)とブロンズ色の横糸(BRONZE WEFT)を使ったセルビッジデニムとある。なるほど縦糸はWARP、横糸はWEFTというのか…検索すると色々勉強になる。ついでに西武池袋店の売却について検索したら土地面積の50%、延べ床面積の10%を保有する西武鉄道の存在も出ていた。

(17) セルビッジ
オリーブ色の表とブロンズ色の裏、ヘムにはお約束のチェーンステッチが走る。拘り満載のRRLを買うならどこが便利だろうか…品揃えの表参道を除けば駅と直結の西武池袋に軍配が上がる。伊勢丹や有楽町阪急にはない強みだ。西武池袋店の地権者である西武鉄道が「駅との一体性を踏まえた対応をする」というのも頷ける。

(18) スウェットシャツ
こちらはビンテージ風味のスウェット。新品なのに既にくたびれたような風合いが堪らない。1993年の第1期から長年古着加工にこだわったRRLの味付けが絶妙に効いている。実際ビンテージのスウェット類は古着の中でも最も人気のカテゴリーらしい。ないものはないといわれるラルフローレンらしい品揃えだ。

(19) エクスパンションガゼット
ラルフローレンではサイドガゼットと説明しているが元祖チャンピオンによればエクスパンションガゼットと呼ぶ両脇のパネル。横方向の縮み軽減と運動性を向上させる改良とのこと。今までスウェットといえばアメリカ製のチャンピオンかキャンバーを選んできたが、ここまで着込んだ感じは中々出せないもの。

(20) ダブルVガゼット
首下のVガゼットは①首部分の生地が伸びて頭の出し入れがし易くなると生地全体の伸びを防止するために生まれたはめ込み式と②汗留めとして生まれた貼り付け式の2種類あるとのこと。RRLでは貼り付け式を採用、(18)と(20)の写真からRRLでは前後にガゼットを張り付け30~50年代のビンテージスウェットを再現しているようだ。

(21) ロゴ入りマグ
さて冬の買い物最後は恒例のマグカップ。ひび割れたような表面が特徴のストーンウェアはビンテージテイストの得意なRRLにピッタリのアイテムだ。店頭にはロデオモチーフのマグと2種類並んでいたがオフプライスはこちらのカップのみだった。昔は人数分の食器を揃えたものだが最近はマグの1点買いが楽しい。

(22) コレクション
目下計画中なのが信州の山小屋に壁掛けタイプのマグラックを用意してお気に入りのマグを並べること。ところが市販品のラックだと何とマグが26個も入ってしまう。となるとマグのコレクションが全然足りないので今度はマグをせっせと集めることになりかねない。本末転倒とはいえRRLでの買い物のついでに食器売場まで覗いてしまった。

9.2兆円もあった1997年の全国百貨店の売り上げと比べると2021年は半分近い4.9兆円、2022年は回復基調とはいえ往時には及ばない。「百貨店は特別な時に出かけるニッチな存在で良い」と言う百貨店トップの発言に数えてみたら昨年デパートで買い物したのは4回だった。そのうち1回は贈答品だから如何にデパートへ足を運んでいないかが良く分かる。

かといって路面店や専門店で買い物をする機会が増えたのかと言われればそれほど変わらないし最近はファストファッションにも食指が動かない。買物の回数が減っていることもあるが、欲しいものが思いついた時はネットで検索して見つかれば買うという流れが一番多いことに気が付いた。EC化率は年々増加傾向にあるという統計に相応しい結果だった。

現在西武池袋のラルフローレンで買い物をすると10000円で1000円分のバウチャーが付く。有効期限は2月いっぱい、きっとバウチャーを使うためにまた西武池袋のラルフローレンに行くと思う。先のことは分からないが愛着のある西武池袋にもう少し足を運んでみようと今は思っている。

By Jun@Room Style Store