冬のデイツーリング | Room Style Store

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2023/01/23 07:38


冬はつい乗るのが億劫になりがちだが、バイクに限らず機械は定期的に動かす方が調子を維持できると言われる。エンジンを回さないと内部のオイルが下がって可動部の固着を招くこともあるそうだ。最近のインジェクション装着車はまだしも旧式のキャブレター仕様の場合、例え乗らなくても週に一度はエンジンをかけた方が良いらしい。

年末の寒波から一転、暖かな日差しの平日を選んでデイツーリングに出かけた。今回の相棒は1975年式のZ1B、通称茶玉と呼ばれるカワサキの900スーパー4だ。バイク2台を満遍なく乗るのは意外と難しい。隣にあるインジェクション仕様のハーレーを選びがちだが昨年発売から50年の節目を迎えたZ1、新年乗り始めはカワサキと決めていた。

そこで今回は冬の日帰りツーリングで訪問した近場の名所・旧跡を中心にバイクライフを紹介しようと思う。

※扉写真は愛用のカワサキとハーレー

(1) 中央自動車道へ
ツーリングの候補地といえばまずはバイク映えする場所。さらに高速道路を使ったルートかどうかがポイントになる。何しろ古いバイクだけあってエンジンを快適に保つには「時々高速道路を巡航すること」が欠かせない。合流で一気に加速して巡航するだけでエンジン内のカーボンやガソリンの燃えカス、マフラー内の水気を飛ばす効果があるらしい。

(2) 新滝山街道へ
休日の中央道下りは行楽客で混雑するがこの日は平日とあって車の流れは順調。春に近い陽気とはいえ時速80㎞で飛ばし続けるとさすがに体が冷える。中央道八王子ICで降りてあきる野市方面へ。新滝山街道に入って最初のコンビニで休憩した。それにしても都心の混雑を見慣れていると道の空き具合などまるで地方都市のような錯覚に陥る。

(3) 小休止
コンビニの定番ドリンクと言えばファミリーマートのカフェラテ…久々に買ったら値上げしていた。物価高騰の日本だがそれでも上昇率は欧米と比べると緩やかとか…因みにガソリンの場合日本はレギュラー1ℓが168円、米国で173円、英国が311円でイタリアの親戚に聞いたら300円弱だとか…ハイオク指定のハーレーよりレギュラー指定のZ1はコスパが良い。

(4) 目的地に到着…
予定より30分以上も早く目的地に到着。あきる野市小川にある見世蔵「久森」が今回の訪問先だ。店舗は築160年の土蔵を飲食店に改築したもの。入り口には準備中の看板と営業時間12:00~19:00火曜日定休との張り紙が…玄関先を掃除していた店員さん曰く「以前はランチもやっていましたが今は喫茶のみです」とのこと。


(5) 外観
嘉永5年(1852年)に建造された土蔵。当時、写真左のガラス部分は揚戸による開口になっていて酒類を販売していたようだ。もともと所在地の小川地区は多摩川と秋川の合流する地にある。豊富な水量と水質に恵まれ多摩地区屈指の水郷地帯として元禄から幕末にかけて酒づくりが盛んであったと記されている。

(6) 店内(その1)
店の中に入るとまず目を引くのが太い梁(はり)。歴史を感じさせる作りだ。何しろ嘉永5年といえばアメリカのペリー提督が4隻の黒船を率いて浦賀沖に到着する前年にあたる。徳川家でいえば12代将軍家慶の頃。明治元年が1868年だから幕末の動乱を生き抜いた建物として歴史好きでなくともロマンを感じる。

(7) 店内(その2)
店の裏手はかつて「森田酒造」があったという。車で4分の至近にあり親戚関係でもある清酒「多摩自慢」の石川酒造に依頼して昨年4月に往年の銘酒「八重菊」を復刻したそうだ。甘味処なのに何故かメニューに「純米酒八重菊グラス」と書かれていたのもそんな経緯があったからなのか…と納得。レジ前の人気土産くんせいたまごといい意外な発見が楽しい。

(8) 店内(その3)
「準備中ですが、中の見学よろしければどうぞ…」と店員さんの声かけにあまえて開店前に店内を撮影。左の道路に面したカウンター席部分がその昔揚戸だった部分だ。戸を跳ね上げて蔵の中を見せながら酒の売買を行っていた様子が「見世蔵」という名前からも想像できる。由緒ある建物をじっくり見学できるなんて今年は幸先が良い。

(9) 店内奥
店内の一番奥から入り口を見たところ。開店前なので店の前にバイクを置かせてもらったが店に向かって右側には車が5台分の駐車場がある。もし復刻銘酒の「八重菊」を味わうならJR五日市線の東秋留で下車、徒歩で13分という絶好のロケーション。次は車やバイクを置いて訪れてみたい…。

(10) 奥まった席
店の奥にある席。本来の蔵に「建て増ししたスペース」とのことだが、元の蔵と違和感のない作りになっている。席と席との間はゆとりも十分、ゆったり寛げるよう配置されている。右側のサッシ外側は小庭とテラス席も用意されていて夏の名物かき氷を冷房の効いた室内で食べるのが苦手な人には格好のスペースだ。

(11) 甘味処の品揃え
こちらが冬のメインメニュー。下にあるのは夏向き…南アルプス・八ヶ岳の天然水を使った氷を削ったかき氷のメニューだ。五平餅や白玉ぜんざい、お汁粉も悪くないが名古屋名物「小倉トースト」を思わせる「あんこトースト」のセットを注文。平日ランチがないのは残念だが、一番ボリュームのありそうなものをチョイス。

(12) 街道をのぞむ
注文が運ばれるまでの間サッシ越しに外を眺めていた。平日の昼だからか車の量も人影も少ない気がしたがあきる野市の人口は年々減少しているそうだ。市民活動の停滞や農業経営者の高齢化、商店街組織等の衰退といった弱みと恵まれた自然環境や観光資源、安価な地価といった強み…山小屋のある信州の田舎町と同じ問題を抱えている。

(13) あんこトースト
運ばれてきたあんこトーストセット。トーストの間の小倉あんがまるでカツサンドのようだ。手前のスプーンはミニソフトクリーム用、箸は漬け物用か。因みにソフトクリームは東京牛乳を使った自家製、ウェブサイトトップに「スローライフ、スローフード」を掲げる「久森」では地産地消の素材を使い丁寧に仕上げた食べ物で客の心を和ませる。

(14) あんの入り具合
小倉トーストの発祥は名古屋。午後でもたべられるモーニングセットにはドリンクにソフトクリーム付きが定番だそうな。見世蔵「久森」のあんこトーストセットも名古屋名物に負けないこだわりを発揮している。小倉あんは甘さ控え目…ソフトクリームのミルキーな甘さと互いを引き立てる。


(15) コーヒーセット
セットのコーヒーも中々のもの、メニューを読むと有機コーヒーとのこと。一つ一つに拘りのある「久森」。お土産に買って帰りたいほど美味しかったのが右端の漬け物。地元の野菜を使って自家製で漬けたものなのだろうか。適度な塩味と歯ごたえは「八重菊」との相性も抜群に違いない。

【参考資料】
旧森田家
見世蔵「久森」はあきる野市の森田家(屋号は久森)にある蔵を改造したもの。こちらは隣接する森田家の玄関に当たる。江戸時代は当地の名主であり酒造業を営んでいたとのこと。敷地内の建造物9点が国の文化財として登録されている。勿論今回訪れた見世蔵「久森」も登録されていて邸内には米蔵や味噌蔵など見どころが沢山あるようだ。

(16) 高尾山へ
由緒ある土蔵でゆったりと時間を過ごした後はあきる野市を後に高尾山へ。あきる野市から八王子へ行くなら七曲り(雨間)峠と呼ばれる道路が近道。旧道は七曲りという名のとおりカーブが連続したようだが(今でもその跡が残っているらしい)、今は写真のように大きなカーブで一気に超えていける…。

(17) 祈祷殿
デイツーリングのもう一つの目的地が高尾山薬王院の自動車祈祷殿。人車一体の「お祓い」は無理にしてもお札を授かって今年1年間の安全運転を祈願したいもの。写真奥の祈祷殿に車を留めて山伏によるお祓いをするのが本式らしい。ちょうど訪問した時も車がお祓いをしていたのでバイクを留めたままご利益にあやかることにした。

(18) お札所
祈祷殿に横の受付からお札授与所に進んでお札を購入。免許証入れに収まる小ぶりな交通安全のお守りを選んだ。車に貼るステッカーも一緒に付いていて、色は赤と黄色と他に金色もあったそうだが人気色のせいか「売り切れ」たとのこと…。薬王院の色に相応しく朱色のシールをお願いした。

(19) 高尾の天狗
高尾山は天狗信仰の霊山として知られている。山伏が修行を重ねるうちにその姿を天狗に重ね合わせることから広まっていったそうだ。右は高い鼻と手にした団扇が特徴の大天狗、神通力で開運をもたらすとのこと。一方左は嘴と剣を構えた姿が特徴の小天狗、烏天狗と呼ばれ手にした剣で魔を断つといわれる。

(20) 交通安全のお守り
授かった交通安全のお守りとステッカー。運転中は常に安全を見守ってくれるように免許と一緒にしておくのが一番。いつもゴールド免許でいられるようお札は欠かせない。…因みにゴールド免許の導入が始まったのが1994年、既に30年近く経とうとしている。一度ゴールドに昇格すると維持しようと一層安全運転を心がけるもの、効果のある制度だと思う。


(21) 八王子名物
帰りに通過する八王子といえばご当地ラーメンで有名。SNSかつバイク仲間から教わった甲州街道沿いの人気店「吾衛門」に立ち寄ることにした。八王子ラーメンといえば油の浮いた醤油スープに刻んだ生たまねぎが薬味としてたっぷり乗っているのが特徴。両者が絡まって絶妙の味を醸し出している。


(23) 生たまねぎのトッピング
写真はチャーシュー麺。スープは御覧のとおり一見あっさりした醬油味ながら表面に浮かぶ油(ラード)と玉ねぎ(甘い)を絡めて麺を口にすると見た目以上にパンチがある。チャーシューもメンマも美味しいがトッピングの玉ねぎを多めで注文すると全ての具が見えなくなるほど乗ってくるのに驚く。次はぜひ試してみたい。

(24) バイクウェア
以前は冬のツーリングといえばムートンレザーのボマージャケット(B-3)だったが最近はヒートテックとインナーダウンベストにボアなしライダースが定番。今やユニクロのヒートテックはバイカーの心強い味方だ。夏場以外いつも着ている写真のRRLライダースは黒の表面が擦れて茶芯が良い具合に出てきた。


コロナ禍で密を避けることのできるモビリティとして二輪車が再評価され免許取得者も増加、2021年の末の累計では普通二輪が11年ぶりの20万人超え、大型二輪も14年ぶりに9万人を超えている。一時期教習所の混雑が話題になっていたが昨年秋の時点でも「二輪教習混雑のお詫び」を出す教習所があるなど増加傾向は続きそうだ。

免許の取得者数の増加に伴い新車・中古を問わずバイク市場も活性化している。最初はリターンライダーがけん引しているとも言われていたが新たに免許を取得した各世代の熱量は高い。特に2021年に普通・大型二輪免許を取得した女性は前年比3割増しと性別を超えてバイクに対する興味が広がり販売台数も前年超えが続いている。

自分など昔乗りたかったカワサキやハーレーを直球で選んだが新たな免許取得者は自分の趣味に沿ったバイクを選ぶという。キャンプ好きが選ぶバイクやレトロ好きが選ぶバイク…なるほど巷にお洒落で個性的なライダーが増えたのも気のせいではなさそうだ。「ライフスタイルギア」としてのバイクライフ定着を大いに期待したい。

By Jun@RoomStyleStore