米国製のスウェット | Room Style Store

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2023/01/30 15:49



10年に一度の寒波に見舞われた日本。東京近辺は積雪こそなかったが近所のカー洗車場では「水道管が破裂して使えない」など予想外の気温低下だったようだ。初めて聞く「顕著な大雪に関する情報」が出された富山県や石川県など日本海側では引き続き警戒が必要とのこと。この後もまだ暫くは寒い日が続くらしい。

一方冬のセールが終わり早くも春物が出始めたショップをのぞくとなぜか心がうきうきしてくる。せっかくドレスシャツとネクタイから解放されたのにハイネックのセーターやフード付きのパーカにマフラーと窮屈な思いをしてきた冬の日々も終わりが近い。少々気が早いが首下すっきりの軽いスウェットに目が向く。

そこで今回は春一番に着たいアメリカ製のスウェットを紹介してみたい。

※写真はアメリカ製のスウェットシャツ

【Champion】
(1) 9オンス テリーフリース
まずはスウェット界のビッグネーム、チャンピオンの定番グレーのスウェットから。マイ定番のアメリカ製リバースウィーブはそろそろ仕舞って春らしい軽量かつクラシックな9ozテリーフリースを購入。裏起毛のボディは肌触りもよく着心地も良好。残念ながら無地しかないので何とかしてカスタマイズできないものかと計画中だ。

(2) Vガゼット(その1)
クラシックなスウェットに欠かせないディテールのVガゼット。衿ぐりにこの一手間をかけることで着脱しやすくなるだけでなく単調になりがちなデザインのスウェットに変化を与えてくれる。古着のスウェット通によれば40~60年代のディテールだそうだが、新作に取り入れるあたり流石のチャンピオン、やるじゃないか…。

(3) Vガゼット(その2)
ビンテージスウェットに見られるVガゼットは年代によって前後に付くものと前のみのものとがあるそうな。そのVガゼットも「はめ込みタイプ」と「貼り付けたタイプ」があり、捲って裏側を見ると違いが分かる。写真のチャンピオン新作は三角部分が裏起毛と違う素材なので「はめ込みタイプ」だと分かる。

(4) ビンテージのVガゼット
こちらはラッセルアスレチックのビンテージもの。三角形の布を重ねた「貼り付けタイプ」で汗留め用らしい。上のチャンピオンは「はめ込みタイプ」で伸縮補強用と見た目は似ているVガゼットも用途に応じて作りが違うなど結構マニアックな世界だ。因みに近頃人気のビンテージレプリカのスウェットは殆どはめ込み式のようだ。 

(5) リバースウィーブとの比較
定番12.5ozのリバースウィーブと9ozのテリーフリース比較。色の違いもさることながら袖リブの長さや生地の厚さなど写真からも両者の違いがすぐに分かると思う。因みに定番リバースウィーブの方はスウェットもパーカもカレッジプリント付きのお洒落なタイプがラインナップされていてつい食指が動いてしまう。

(6) 着こなし
スウェットといえばアメカジ…どうせなら上から下まで全てオールアメリカンメイドで…と思ったがこれが中々難しい。昔の服を引っ張り出さないと成立しないほどメイドインUSAものが減っている。90年代のLLビーンBDとRRL、コンバースとグローブレザーのベルトにオーガニックコットンのラグソックスは全てアメリカ製。

(7) 着てみる
Lサイズながら着慣れたパターンのテリーフリース。それもそのはずアメリカ企画ではなく日本企画のサイズとのこと。胸元にロゴのないシンプルなスウェットだけにVガゼットが目立つ。下にシャツを着るなら無地は厳禁チェックに限る。この後スウェットを脱いだらシャツに裏起毛の綿糸が付いた。何回か洗濯して馴染ませる必要がありそうだ。

【VELVA SHEEN】
(8) カレッジ御用達
お次は1932年オハイオ州シンシナティ設立のTシャツ&スウェットの老舗VERVA SHEEN(ベルバシーン)。カレッジやスポーツチームのボディ用として実績を重ね、アメリカ海兵隊のコスチュームとして正式採用されるなど品質の高さはお墨付きだ。ショップの紹介文によれば創業以来アメリカ生産にこだわる数少ないアパレルブランドとのこと。 

(9) ラインナップ
ショップサイトの写真をお借りして掲載。どれもビンテージテイスト溢れる出来栄えだが着古したような雰囲気が一番出ているのが手前のオートミールだろうか。グレーとクリームの糸をミックスさせてメランジ調に仕上げているせいか、買った時から日焼けして色褪せたような生地の雰囲気が出ている。

(10) 両Vガゼット
30~50年代のスウェットを思わせる前後のVガゼットが特徴のベルバシーンブルーレーベル。新品ながらディテールといいい生地感といいビンテージスウェットのようだ。しかもこちらは新品だから旬は長く続く。ジーンズもそうだが自分などビンテージレプリカで満足してしまうにわかファンの典型か…。

(11) プリント部分
ロゴは染み込みプリントと呼ばれるタイプ。ラバー文字のようにゴワつかず柔らかな感触が特徴。洗うことで徐々に色落ちするあたりはジーンズにも似て洗濯が楽しくなる。写真のブルーレーベル以外にベルバシーンでは日本企画のイエローラベルや2015年スタートのホワイトラベルなど意外にも商品が豊富なことに驚いた。

(12) RRLと比べてみる
古着加工といえばRRLだがベルバシーンと並べるとなるほどよく似た雰囲気だ。着古したような首回りと両Vガゼットは両者互角、ひび割れたレターでビンテージ感演出のRRLに対して手間のかかるはめ込み式両Vガゼットで対抗するベルバシーン。しかもアメリカ製という紋所を前に流石のRRLも一歩退かざるを得ない。

(13) 着こなし
10ozとチャンピオンより重めながら柔らかな感触のボディはコットン100%(正確には綿99%+ポリエステル1%)ならでは。50年代頃まで化学繊維は一般的ではなくコットン100%が標準だったことを考えれば納得の生地だ。30年以上履いた501にブラックフリースのBD、ベルトやハイカットにソックスも全てメイドインUSA。

(14) 着てみる
ラグラン袖ながら身頃は細身、Lサイズなのにジャストだ。もしやチャンピオン同様こちらも日本企画か?首回りが広いのでシャツ襟を外に出してみた。「襟だしスタイル」と言うらしい。ところでラグラン袖の由来はと調べたらウォータールーの戦いで右腕を失ったラグラン男爵がクリミア戦争で負傷した兵のために考案したものだとか。

【MIXTA】
(15) ロサンゼルス発
最後は古着業界に長年携わってきた2人組が2010年ロサンゼルスで創業したカットソーブランドMIXTA。糸の染めから生地やデザイン、縫製にプリントまで全てアメリカ国内の自社工場で行っているそうだ。因みにMIXTAとはアメリカの古着ディーラーの間で使われている造語で「ごちゃ混ぜ」という意味だとか…。

(16) こだわりのコットン
70年代のチャンピオン製フットボールTシャツをサンプリングに生地からこだわってMIXTAが採用したのがスカワーコットン。何でも綿花に含まれる茶色のカスをそのまま織り込んだ生地とのこと。信州名物に例えるなら麺に黒いホシ(蕎麦殻)の入った農家風手打ち蕎麦のようなものか…確かに独特の風合いがある。

(17) セットインスリーブ
デザインは肩幅を広めに取ったセットインスリーブ。着ると肩が落ちるドロップショルダー気味のデザインだ。セットインスリーブ自体は40年代の定番スタイルらしく、ベルバシーンのようなラグランスリーブはもう少し時代が後の60年代に多いとのこと。Vガゼットこそないが素材や縫製など随所にこだわりが感じられる。

(18) レター部分
イラストのベアやレター部分を横から見ると文字が立体的になっているのが分かると思う。なんでもフロッキープリントと呼ばれ、図柄部分に細かく切った繊維を静電気によって植毛していく方法だそうな。プリントより手間は掛かるが存在感はかなりのもの、カレッジプリントでよく使われるとのこと。

(19) 素材と縫製
毎シーズン人気の動物シリーズということでこちらはヨセミテのベアがモチーフ。首部分は身頃を両側から挟むバインダーネック製法。裏面にロック付けのような出っ張りがないので肌触りも快適だ。袖先や裾は針抜きリブを採用、普通のゴム編みより横方向の伸びが多くなるとのこと。

(20) 着こなし
スウェットといえばデニムと同じくチノパンとも相性良し。それも今時のスリムフィットよりワタリの広いミリタリーチノが気分だ。アメリカ製を絶やさぬシップスのバリーブリッケンのチノパンツとギットマンのBD、久々のアメリカ製トップサイダーに90年代ポロのラグソックスとコットンベルト、もちろん全てアメリカ製だ。

(21) 着てみる
同じセットインスリーブでもチャンピオンより袖ぐりはきつめで肩幅は大きめなので脇下から肩にかけて生地が余ってしまう。このあたりは日本人のパターンを熟知したチャンピオンに一日の長あり。袖と身頃下のリブ編みはどちらも長めで畝がくっきり出ている。これが”針抜きリブ”か…

(22) 足元
久々のアメリカ製デッキシューズ。しかも元祖トップサイダーのものだ。既に自社工場をアメリカ国外に移転したトップサイダーがメイン州のファクトリーに別注して実現したもの。踝で弛ませるのがお約束のラグソックスと合わせれば何やら80年代のポロの広告のようだ。

【参考資料】
ポロの広告
ラグソックスや登山用のブートソックスをクシャクシャに弛ませてモカシンやデッキスニーカーと合わせるのがラルフ流。上の広告なんて今見ても格好いい。90年代に入ると時々やっていたラルフのファミリーセールに女子高生が押しかけ袋いっぱいにブートソックスを買ってルーズソックスファッションに取り入れていたのを思い出す。

最近は80年代の古着が現行品より高値で売られるなどビンテージデニムの時にも似た盛り上がりぶりだ。VAN世代にはお馴染みのYALEやHARVARDといったアイビーリーグ校だけでなく全米各地のカレッジネーム入りスウェット類が人気らしい。ただ卒業生でもないのにカレッジものを着るのはどうも気が引ける。

一方でアメフトやバスケットなどスポーツ系ならチームファンということで問題なし。NBAやMLBのチームロゴ入りスウェットはかなり恰好良いしナショナルパークやステート(州)といったご当地もののデザインも秀逸だ。人と違ったお洒落を楽しむ若い世代の間でビンテージスウェットがブームなのも良く分かる。

同じビンテージでもデニムより手頃なスウェット、春になったら試しに買ってみようか…レプリカものを試着するうちになんだかそんな気分になってきた…。

By Jun@Room Style Store