カタログの時代(続編) | Room Style Store

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2023/05/10 11:19


GWは信州から東京に戻って庭木の手入れやら押入れの片付けに精を出した。どこに行くにも混雑必至…それなら連休中は日頃できないことをするのも一考だ。FNNによればインバウンド回復とGWの人出が重なり各地で混雑が発生、原宿の竹下通りは日頃4~5分で通り抜けられるのに12分もかかったとか。

今まで手付かずだった天袋を整理していたらお洒落なカタログを発見。ポールスチュアートにJ.プレスとラルフローレン…服飾への関心がアメリカに向いていた頃のものだろう。1990年にNYのショップを訪問しているのでその前後のはず。どれも見覚えがあるしカタログからメールオーダーもしたと思う。

そこで今回は2022年11月のブログ記事「カタログの時代」の続編を書いてみようと思う。

※扉写真は80~90年代のカタログ

(1) ポールスチュアート(1994年)
最初に紹介するのはポールスチュアートのカタログ。「1994年春もの」はエトロのお株を奪うかのようなペイズリーのタイやダブルカフのシャツにカフリンクスが目を惹く。これだけゴージャスで凝ったカタログは当時から有料、確か10㌦くらいだったと思う。この後も何回か取り寄せてメールオーダーしたことを覚えている。

(2) シャツ(その1)
カタログのシャツ頁にずらり並んだBDシャツ。下から2番目、ブルーのマイクロチェックを注文したのに届いたのはなんとタブカラー。アメリカ通販あるある事例だ。返品や交換も面倒だしたまには変わった襟型も良いか…とすんなり受け取った。ポールスチュアートのシャツはギットマン別注で知られていたがこちらはトロイ製

(3) シャツ(その2)
ポールスチュアートがNY以外で初の路面店をシカゴにオープンしたのが翌年の1995年。丁度海外勤務が始まったこともあって再度メールオーダーしたのが写真のシャツになる。ラウンドのクレリックシャツという珍しさに購入したがこちらも(2)と同様トロイ(シャツメーカーズギルド)のものだろう。

(4) エドワードグリーン
カタログの男性が履いている靴は何とエドワードグリーン製。グッドイヤーのビットローファーじゃ「硬そう」と思いきやアンラインド仕様でグッチの履き心地に迫る。隣の名靴ハーロゥとは兄弟靴だが当時エルメスによる買収騒動が勃発。1995年の年明け早々ポールスチュアートはグリーンの在庫一掃セールに打って出た。

【参考資料①】
エドワードグリーンのアンラインド仲間
当時のエドワードグリーンのカタログから。アンラインド仕様の靴はハーロゥとミルフィールドの2型のみ、ポールスチュアートではどちらも扱っていたが1995年の年明け2日にマディソン街のショップに到着したら既にマイサイズはハーロゥのみ…因みに定価は525㌦の半額だから今となっては激安価格だ。

(5) Made in Maine
カタログ読み進めるとオールを持った男性が登場。足元はメイン州名物デッキモカシンだがこちらもエドワードグリーンの別注。製造は確かアンソーンだったと思う。廃業後はランコート社に引き継がれ靴作りを再開。ポールスチュアートでもメイン州産の別注靴を取り扱い始めた。写真は2010年のワニ革ローファー。

(6) トラウザーズ
ポールスチュアートの魅力は素材使いにあり…カタログの男性が着ているジャケットはシルク/リネン/ウールのイタリア製3者混生地をカナダで仕立てたもの。定価は694㌦と書かれている。因みにカタログ下のトラウザーズもウール/シルクのスコットランド製生地を使用。複雑な色合いがポールスチュアートらしい。

(7) J.プレス(1996年)
お次はJ.プレスの1996年春夏ものカタログ。1990年にNYの店を訪れた時は記念のネクタイ1本のみ、せめてと1995年の海外駐在時にカタログを取り寄せメールオーダーにトライしてみた。表紙からしてシアサッカーの3ツ釦段返りにハケ目のシャツにレップタイと正統派アイビースタイル全開だ。

(8) リボンベルト
ポールスチュアートの方でも書いたがいきなり重衣料をオーダーするのはリスクが大きい。初心者はシャツやネクタイにアクセサリーなどから入るのが無難だった。まずはカタログ頁下のリボンベルトを注文。カタログではシルクシンチベルトと書かれているがイエロー/ネイビーのMサイズをシートに書き込む。
※写真のベルトは実際に届いたもの

(9) アクセサリー
J.プレスのカタログを見て急遽ロンドンのバッジ&ボタンからカタログを取り寄せメールオーダーしたのが写真のカフス群。右上の陶製カフスは敢えてカタログにない”シャワー&バス”を注文している。下右のマネークリップやチェスの駒(ナイト)はシルバー925、徐々に高価なものもメールオーダーするようになっていった。

(10) BDシャツ
J.プレスといえばBDシャツ、スプリットヨークやガウントレットボタンにフラップポケットなど元祖ブルックスより凝った作りは「日本のアイビー道」では正統派と言われたこともある。カタログを見るとピンポイントオックスフォードのBDシャツはどれも60㌦、今の定価145㌦とはかなりの開きがある。

(11) ファクトリー
ポールスチュアートとJ.プレスのシャツ…襟型は違うがどちらもトロイ製だろう。小ロット別注を受けるイタリアのシャツ屋に対してミニマム1000枚のトロイ…1990年代中頃に取扱いを止めた経緯がビームスの中村さんのブログに書かれている。1993年に倒産したトロイにとって当時既に小回りの利く状態ではなかったはずだ。

(12) 封筒
カタログの中ほどにある封筒。ここに注文票を入れて郵便で送れば1か月もしないうちに手元に届いたのだから当時としては実に便利なショッピングだったと思う。実際はこの封筒を利用せずファックスで注文票を送ったがクレジットカードの情報など今と違って結構いいかげんだった気がする。

(13) 当時のスーツ
当時のスーツを見ると「プレジデンシャル」レーベルは695㌦で勿論アメリカ製。今なら英国製の生地だろうが当時はイタリアものが天下の時代、大々的にロロピアーナを宣伝している。スタイルは王道のサックスタイル、アルマーニを筆頭に3G時代(携帯のシステムではない)の中ダーツなしの寸胴なI型は苦戦したと思う。

(14) 最新のスーツ
時は流れて2023年のオンラインカタログから。左がアメリカ製だからプレジデンシャルに該当するモデルで定価は1295㌦、右はカナダ製で995㌦、1996年当時の当時のカタログでは「プレスクルーシヴ」レーベルに当たるもので495㌦で販売されていた。当時も今もスーツは2ランク展開のようだ。

(15) ラルフローレン(1989年)
カタログの最後はポロラルフローレン。とはいっても中身はどれも写真家ブルースウェーバーによる広告を一つの冊子にしたようなもの。これを見ても何を買えば良いのか実際店舗に行って確かめるしかないが「どんなものが買えるんだろう…」とワクワクさせるようイメージ戦略に乗せられたファンも多かったと思う。

(16) アメリカ製本
裏を見ると1989年の製本、しかもアメリカで作られていることが分かる。多分日本のブティックで貰ったのだろう、中を見ているうちにふつふつとNYへの思いが募り、思い切って翌1990年の夏にマディソン街の本店を訪問。大したものは買えなかったが上から下まで店内を見るだけで感動したことを思い出す。

(17) マドラスシャツ
まず1階のシャツコーナーでマドラスチェックのシャツを購入。ディスプレイ棚の一番上にあるものを取ってもらうだけで必死にやり取りしたことを覚えている。色褪せて毛羽立っても捨てられない思い出の1枚だ。当時のシャツはPoloが付かずラルフとローレンの間にポロポニーが入るタグだった。

(18) USAかNIESか
翌1991年に再びNYを訪問。サックスやメイシーズなどデパートの品揃えがポロのマディソン本店ロ違うことを知って購入したのが写真のチノBDシャツ。80年代既にアメリカ製からNIES(新興工業経済地域:主にシンガポールやマレーシアなど)に製造をシフトしていたラルフローレンも少量ながらアメリカ製のシャツを並べていた。

(19) ポロスポーツ
こちらはカタログに影響を受けて購入したポロスポーツ(の前身)。当時カタログに載っていたスキーウェアの丸型エンブレム(パッチ)を見て同じものが付いているヨットパーカを購入。こちらもNIES製品だが今も立派に現役だ。今まで何度も断捨離してきたが思い出深い品はその度にリストから外れこうして余生を送っている。

(20) チノBDと腕時計
1991年のカタログに登場するウォッシュの効いたチノBDシャツ。無造作に置かれたビンテージ腕時計は実際マディソン街のポロ本店の1階アクセサリーコーナーにディスプレイされていた。ガラス越しに見るだけで値段は分からなかったがどれも状態は良さそう…如何にも値の張りそうなロレックスなどが置かれていた。

(21) ビンテージウォッチ
カタログやマディソン街の実物を見て俄然興味が湧いたビンテージの腕時計。ポロ本店では買えなかったが帰国して最初に買ったのが中央のブライトリングトップタイム。次に右端のトロピカル14Kピンクゴールドのロレックスバブルバックを海外駐在時に購入、帰国後アメリカの友人から譲り受けたのが左のエイランになる。

(22) ビッグシャツ
1990年に初めてNYのポロ本店を訪問した翌年にはビッグシャツが大流行。今でいうオーバーサイズのブームが突如やってきた。多分ビッグポロが始まりですぐにビッグ(BD)シャツがスタート、アイテムはその後ビッグチノにまで拡大していった。ラルフファンだった当時はそのどれもに飛びついたものだ。
※写真は珍しいレディスのビッグシャツ

古いカタログを見ると昔のことが鮮明によみがえる。買いたかったものや吟味してオーダーしたものは今も殆ど健在だし届くまでのワクワクする気持ちはいつの時代も同じだ。未知のショップより「実店舗を訪問してからメールオーダーにトライすること」が多かったのも安心できるからだろう。

その後は本場テキサスのウェスタンショップにリーバイスを注文したりアウトドア専門店から日本未展開のフィルソンを取り寄せたりと場数を踏んだ。通信手段も初期の封筒からファックスを経てインターネットへ。今やスーツやコートといった重衣料も取り寄せられるほど経験値を上げている。

最近L.L.ビーンが無料カタログ配布を再開した。ネットの方が検索しやすいのについカタログに見入るのは昔取った杵柄なのか当時のことが忘れられないからか。因みに懐かしい物事や映像を語る"回想法"は思考の活性化に欠かせないとか。きっと最近ブームのカタログ通販も脳トレに良さそうだ。

By Jun@Room Style Store