梅雨時の靴ケア | Room Style Store

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2023/06/23 09:24



梅雨時は何かと体調を崩しがちだという。活動量の低下によって血の巡りが悪くなり肩がこったり気圧の変化で感情が乱れたりと心身どちらにも影響を与えるとか。「適度に体を動かすのが良い」と聞いて室内トレーニングに励んでいたらアキレス腱を痛めてしまい、歩けない日々が暫く続いていた。

裏目に出た己を笑うに笑えず。おかげでプレセールもショップイベントも行けていないが天の戒めと反省しつつ安静にしてた。とはいえこう長いと流石に飽きる。今日は足を庇いつつ家の中を動き回って靴の手入れに励んでいる。まずはカラカラのワックス缶を処分してケアグッズの点検から始めた。

そこで今回は梅雨時に欠かせない靴の手入れについて書いてみようと思う。

※扉写真はシューケアボックスと靴

(1) カラーレス(無色)製品
昔は靴の色に合わせてクリームやワックスを数多く揃えていたが目下ケアグッズはカラーレス(ニュートラル)が中心。上段のウェストン(左)とイングリッシィギルド(中)は今回使わなかったがキィウィ(右)や下段のモウブレイ(左)やコロニル1909(中)、ベネチアン(右)を中心にケアを進めていった。

【1786ロシアンカーフ】
(2) ブルーム
海底から引き揚げたロシアンカーフは一度乾燥させているので油分や水分が抜けやすいとか。ハッチ(模様)の谷間にブルーム(ロウ分)が出ているのもそのためだろうか…毎回「靴の手入れ」というと真っ先に選ぶのがこの靴だ。まずは浮き出た白い粉をブラッシングで搔き出すことからスタート。

(3) クラック
欠かさずチェックする履き口のクラック。前回のケアから数回しか履いていないので変化はないが念のためにスマホで写真を記録…何しろ小さな裂け目が大きな亀裂になることもある。知人のチェルシーブーツはストレートチップのように甲で真一文字に裂けてしまったがこればっかりは運もあるようだ。

(4) モゥブレイのデリケートクリーム
今回も使用したのはモウブレイのデリケートクリーム。公式サイトの説明によればツヤ出し成分(ロウ)が控えめなかわりに保湿成分(油分や水分)が多いデリケートクリームは乾燥しやすいロシアンカーフにはうってつけ…ルイヴィトンのヌメ革部分(取っ手部分など)にお薦めというのも納得だ。

(5) 履き口のケア
クラックの入った履き口は特に念入りにデリケートクリームを塗って保湿(油分/水分)成分を補給。アッパーを触ってみるとしっとりした状態…この後夏場をむかえると保湿成分もどんどん抜けていくに違いない…秋口になったら再びデリケートクリームでケアしてから履くのが良さそうだ。

(6) ブラッシング後
ケア終了。ブラッシングで浮き出たロウ分を取り除いてからデリケートクリームを塗り込んで乾拭き、最後にもう一度ブラッシングして自然なツヤを出す。もっちりとしたアッパーの様子が写真からも分かると思う。因みにレースステイ横の黒い染みは海底に沈んでいた時に付着した泥の跡だとか…。

【ジョッパーブーツ】
(7) 経年劣化
1992年製のエドワードグリーン製グレシャムはクラックが目立つ。ジョッパー(やチェルシー)ブーツの前部分は一枚革を足首に沿わせるため足型の板に貼ってクセを付ける。水と柔軟剤で柔らかくしてから革をワニ(下図)で強く引いて釘で留めるクリッピング(ブロッキング)と呼ばれる工程は革への負担が大きそうだ。

《参考資料①》
ブロッキングの様子(Sakai Worksより)
写真は東京都板橋区に工房と教室を構える手作り靴・かばんの工房・教室Sakai Worksさんのブログから写真をお借りした。一番Rのきつい部分にはまだ皺が残っているが繰り返しワニ(手に持っているペンチ)で革を引くことで最後はシワのない状態になるらしい。かなりのテンションが掛かるだろう。

《参考資料②》
ワニ(道具)
こちらがワニ。英語ではピンサー或いはラスティングピンサーで綴りはPincer。ペンチの仲間だがカニのはさみもピンサーと呼ぶとか…。凸部分をてこに革を引っ張って木型に釣り込んだり凸部分の頭で釘を打ったり…釣り込んだアッパーを叩いたり釘を抜いたりとワニ1つで色々な使い道がある。

(8) モウブレィ再び
保湿成分を多めに与えてクラックが広がらないよう再びモウブレイが登場。ストラップのささくれはバックルにベルトを通すうちに付いたたもの。ぐるりと一周するベルトをバックルに通さないわけにはいかないデザインゆえの症状だ。よく似たデザインでもサイドゴアならばこうはならないだろう。

(9) キィウィ(パレードグロス)
モウブレイの後はキィウィのパレードグロスでつま先を磨く。そういえば昔欧州の靴仲間に「キィウィUS製はシリコン入りだからサフィールの方が良い」と言われたことがある。当時「良く光る」と評判で使ってみたが今は絶版のようだ。幸いこちらのプレステージはシリコンなしの天然由来。

(10) ケア終了
ケアを終えた傷だらけのグレシャム。独特のデザインが魅力のジョッパーブーツに惹かれて買ってはみたもののいざ履くと手持ちの服と相性がイマイチな靴の一つだ。ツイードスーツでもジャケパンでもしっくりこない。やはりルーツが乗馬だけに乗馬服が一番しっくりくるのかもしれない。

【コードバン靴】
(11) ウイスキーコードバン
さて今度は一時期「コードバンに最適」と評判になったベネチアンシュークリーム久々の登板。靴はホーウィンのコードバンでも一番人気のウィスキーシェルを素材にローマの誂え靴屋マリーニで作らせたプレーントウだ。寝かせておいた起毛層の表面がささくれ立って履きジワ部分が白っぽくなっている。

(12) 履き口のほつれ
その前に履き口の綻びを発見。珍しいダブルステッチの縁はぎりぎりに縫われているので履いたりツリーを出し入れしたりするうちに緩んできたようだ。馴染みの靴屋に修理に出したところ元の縫い跡に沿って手縫いで仕上げてくれた。お陰で内側は跡が残るものの外側は全く分からない。

(13) 毛羽立ち
上は毛羽立った状態。下は毛羽立ちを寝かしつけたケア後。ワックスを布に取って皺に沿って薄く塗り、ガラス瓶の縁で表面を押さえていく。ネットショップを見ると水牛の角で出来たアビィレザースティックが有名だがわざわざ買わずとも薬ビンに指を入れて強く撫でるだけで効果がある。

(14) 艶出し
久々のベネチアンシュークリームだが結果は上々。コードバンの艶とうねるような深い皺が戻ってきた。ホーウィン社の社長お薦めとの触れ込みだったがビン入りのせいか「使いにくい」という声もある。それでも「汚れ落とし+保湿+艶出し」の3役をこなすマルチぶり…ビンが空になるまで使ってみたい。

【アルディラカーフ】
(15) シャンボード
今回はカラーレスのクリームやポリッシュで仕上げる靴を選んでいる。お次はジョンロブの名革「アルディラ」を纏った手縫い率高めの名靴「シャンボード」だ。一時モウブレイのベージュクリームを使ってみたが「革の色が濃くなる」のが嫌で随分前から無色タイプでケアし続けている。

(16) サブスタンダード
因みに写真の靴はジョンロブのファクトリー購入品。原因は出し縫いでアッパーに傷が付いたため(写真上)。定価ならばクレームもこようが納得しての購入ゆえ問題なし。ライニングのⓈスタンプはサブスタンダード(検品もれ)の意。インスタのフォロワーからよくⓈについての質問が来る。

(17) 色褪せ
途中からニュートラルクリーム一択なので退色が進んでいるようだ。試しに外羽根を開いてみるとタン部分と比べてアッパー部分がかなり色褪せている。それにしてもモカステッチの頑丈そうなこと。エドワードグリーンのドーバーに対抗して作られた後発モデルだけに耐久性ではジョンロブの圧勝だ。

(18) コロニル1909
こちらはモウブレイではなくコロニルの1909シュープリームを使用。プラスチックの容器は軽く使いやすい。コロニル1909はどの色もプリンのような状態(コロイドと呼ぶそう)。布にとって薄く延ばすと一気に浸透していく。その分色付きのクリームだと色変わりの可能性もあるので要注意だ。

(19) 乾拭き後
塗った後は①しばらく放置②タンの部部のみ乾拭きして磨く③紐を付けて④ツリーを入れて⑤軽くブラッシング⑥靴全体を乾拭きする。以前鏡面磨きをしたつま先部分も元の輝きが戻ったようだ。コロニル1909は靴以外にも革の鞄や革小物などにも使える優れもの。中でもニュートラルが一推しだ。

【黒靴】
(20) 色落ち
コロニル1909ニュートラルがお薦めだが黒靴の場合はニュートラルだけだと徐々に白けてきてしまう。そこで黒靴用には同じコロニル1909のブラックを用意する。調べてみたところ染料と顔料の両方を含むらしく色が抜けてきた黒靴にびしっと漆黒の輝きを取り戻すのに最適だなケア用品だ。

(21) 黒靴には黒のクリームを…
写真撮影のため多めに縫ったがすぐに浸透していく様子が分かる。ひととおり塗り終えて放置すると艶消しの状態になるが染料がしみこむまで我慢。勿論タンにも保湿を兼ねて塗っている。仕上げはタンの乾拭きからスタート。その後紐を通してツリーを入れて全体をまずはブラッシング…。

(22) 黒光り
ブラッシングで全体に馴染ませながらキャップの段差に付いたクリームを取り除き全体を均す。最後は乾拭き専用の布で磨き上げて終了。鏡面磨きのキャップも上からコロニルを縫るだけで元の輝きが戻る。黒光りした黒靴はやはり良いもの、ニュートラル以外に揃えるべきは黒靴クリームだ。

(23) 作業後
作業を終えた靴。自分にしか分からないが手入れをした後の靴は表情が全然違う。シボ革の靴は陰影がはっきりと出ているしスムースレザーの靴は輝きが戻っている。不思議なものでピカピカに磨き上げた靴を履いてどこかに出かけたくなる。洗車した後の愛車でドライブに行きたくなるのと同じか。

靴の数が多いほどケアは大変、世間では一体靴を何足所有しているか気になる。この5月に10~60代の男性に調査した結果(PRTIMESより)を見るとで平均8.2足という結果だった。因みに女性は12.2足と男性より多い。ところがその内容に驚く。革靴の平均所持数は何と1.9足、最も多い答えが1足だった。

更に読むと自身を「お洒落」と評価した一部の人で調べると平均靴所有数は11.3足と3足ほど多い結果が出ていた。お洒落に敏感な人は靴の数も増える傾向にあるようだ。残念ながら「お洒落」と自己分析する男性の革靴所持数は分からなかったが2足所有する層が2番目に多くあとは3足、5足、4足と続く。

所有する革靴が1~2足なら手入れも楽なのに…と思いつつ革靴が並ぶシュークローゼットを前に梅雨時のシューケアは暫く続きそうだ。

By Jun@Room Style Store